AWSエンジニアの仕事内容は?必要なスキル・資格や向いている人の特徴
AWSエンジニアは、AWSを用いてITインフラや開発環境を構築するエンジニアです。AWSエンジニアの需要は高まっており、高収入を得られる一方で、インフラの知識のほか、AWSに関する専門的な知識・スキルも求められます。この記事では、AWSエンジニアへの転職を目指す方に向けて、仕事内容やおすすめの資格などを解説します。
目次
AWSエンジニアとは
AWSは「Amazon Web Services」の頭文字をとった略称であり、アメリカの大手ECサイト「Amazon」が提供するクラウドサービスです。このサービスを扱う技術者をAWSエンジニアと呼びます。AWSの主な機能は、下記のとおりです。
- 開発環境の構築
- サーバ環境の構築
- データベースの構築
- セキュリティ対策
- AIの利用や機械学習
これらの機能を含め、AWSでは321個(2023年末時点)のサービスが提供されており、企業ごとにカスタマイズできます。
企業が自前でデータベースや開発環境を構築する「オンプレミス」は、初期費用や時間、労力がかかります。そして、設計・構築にはサーバエンジニアやネットワークエンジニアなどのインフラエンジニアも必要です。一方、AWSは初期費用を抑え、インフラ環境を短時間で構築できるメリットがあります。AWSを導入する際のデータ移行や環境構築などのインフラ整備を担うのがAWSエンジニアです。
詳細は後述しますが、AWS上のインフラ構築や運用、保守、管理がAWSエンジニアの担う基本的な業務と言えるでしょう。これらに加えて、AWSエンジニアはシステムやアプリケーションの開発など、幅広い業務に携わるケースもあります。
AWSエンジニアの仕事内容
AWSエンジニアが担う主な業務は、下記の2つです。
- AWSを使用したシステムの設計・構築
- 安定稼働のための保守・運用業務
詳細について解説します。
AWSを使用したシステムの設計・構築
AWSエンジニアは、AWSクラウドプラットフォームを利用したシステム開発やデータを管理する環境の設計・構築を担います。
AWSは従量課金制です。利用するデータやストレージの量、導入するサービスによって料金が決まります。初期費用を抑えられたり、拡張性が高かったりするなどのメリットがあるAWSですが、使い方が適切でなければランニングコストが高騰するでしょう。そこでAWSエンジニアは、利用するアプリケーションやストレージ、セキュリティーなどのコストパフォーマンスの最適化を図り、クラウド上でのシステム開発・運用を前提としたクラウドネイティブな環境の構築を実施します。
安定稼働のための保守・運用業務
AWSエンジニアは、AWS上に構築したシステムが安定稼動を維持できるよう、保守・運用も担います。企業が扱うデータ量が増えれば、その都度ストレージを拡張し、システム障害が発生した場合は対応します。
経営戦略上、最適なサービスやアプリケーションが変わることは少なくありません。AWSが新しいサービスやアプリケーションを開発したり、既存のものをアップデートしたりすることもあります。企業の経営戦略やAWSのサービスに応じて、システムを安定稼働させつつ、常に最適化を図ることもAWSエンジニアの仕事です。
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AWSエンジニアの年収
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」によると、2022(令和4)年のAWSエンジニアを含むエンジニア(基盤システム)の平均年収は660.4万円です。また、フリーランス向け案件サイト「フリーランススタート」が公開するデータでは、フリーランスのAWSエンジニアの平均年収は925万円で、最高年収が2,024万円、最低年収は240万円でした。
出典:厚生労働省「jobtag」
フリーランススタート「AWSエンジニアの年収とは?エンジニアの年収比較や年収アップの方法を解説」
国税庁が実施する「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、同年の給与所得者の平均年収は458万円です。AWSエンジニアの平均年収は、給与所得者全体の平均年収より高く、フリーランスではより高収入を目指せる可能性があります。AWSに関するスキルや知識は希少性が高いために、高収入を得られると考えられます。
AWSエンジニアの詳しい年収事情や他エンジニアとの年収比較をまとめた記事もあわせて参考にしてみてください。
AWSエンジニアに求められるスキル・知識
AWSエンジニアには、下記のスキルや知識が必要です。
- AWSの設計・構築・保守スキル
- ITインフラ整備のスキル
- ストレージ管理スキル
それぞれのスキルや知識について解説します。
AWSの設計・構築・保守スキル
AWSが提供するサービス・商品の数は、2023年末時点で321個です。その中から企業の経営戦略や開発目的に最適なサービス・商品を選択し、AWSクラウドプラットフォーム上に設計・構築するスキルが求められます。AWSが提供するサービス・商品は増え続けているため、常に情報収集し、最適解を追求する姿勢も必要です。
AWSが提供するサービス・商品は、値下げされることも少なくありません。2006年のサービス開始から2023年3月時点で129回以上の値下げが実施されています。AWSは利益を技術向上や効率改善に投資してコストダウンを図り、サービス・商品の値下げで顧客に還元しています。新しいものだけではなく、既存のサービス・商品の仕様や料金も変わるため、AWSエンジニアには最適な環境構築とランニングコストの実現に向けた情報のアップデートが必須です。
また、OSと開発するアプリケーションの間に構築されるミドルウェアに関するスキルと知識も求められます。具体的にはLinuxなどのOS、情報を処理するためのWeb・アプリケーションサーバー、必要なデータを組み合わせて取り出すRDBMSなどに関するスキルや知識、経験です。
ITインフラ整備のスキル
AWS上のインフラ構築や運用、トラブルシューティングなどを担うため、AWSエンジニアにはITインフラ整備のスキルが必要です。サーバーやネットワークなど、ITインフラストラクチャの総合的なスキルと知識が求められます。サーバーやネットワークの設計・構築、それを分離・統合するための仮想化スキルなど、求められるスキルや知識は広範囲にわたります。ITインフラに関するスキルや知識がベースになり、それをAWS仕様に適応させる能力がAWSエンジニアには必要です。
ストレージ管理スキル
AWSエンジニアにはストレージ管理スキルも必要です。最適解は開発環境の性能に限った話ではなく、コストに関しても求められます。AWSは従量課金制なので、ストレージやデータの使用量、扱うアプリケーションが増えるほど料金は高くなります。そのためAWSエンジニアには、AWS上に構築したインフラ・開発環境の安定稼働を維持しつつ、ランニングコストを抑えるスキルも必要です。
AWSはストレージの容量やデータ量に配慮しなければ、オンプレミスよりコストが高騰する事態に陥りかねません。重複するデータや破損したデータはストレージを圧迫し、ランニングコストが高くなる原因になります。コストを抑えてAWSを運用するには、こういったデータの整理・管理が必要になるため、データエンジニアとしてのスキルも求められます。
AWSエンジニアにおすすめの資格
AWSエンジニアを目指すなら、下記の資格があると求職活動の際に有利です。
- AWS 認定ソリューションアーキテクト
- AWS 認定デベロッパー
- AWS 認定 SysOps アドミニストレーター
それぞれの資格について解説します。
AWS 認定ソリューションアーキテクト
AWSアーキテクチャ(基本設定や設計思想)、クラウドソリューション(クラウド上の問題解決)に向けた提案などに関するスキルと知識を証明する資格です。インフラ、セキュリティー、ストレージをコスト効率に配慮した上でバランス良く構築するスキルと知識が求められます。出題される問題は、AWSが推奨するベストプラクティスを基に作成され、その内容は実践的です。
AWSソリューションアーキテクトには「アソシエイト」と、上級の「プロフェッショナル」があります。アソシエイトは費用が150ドル、試験時間は130分です。問題は65問あり、形式は複数選択または複数回答です。受験者には、分散システムの設計に関する業務に1年以上携わっていることが推奨されています。
プロフェッショナルは費用が300ドル、試験時間は180分です。問題は75問、形式は択一または多肢選択式です。受験には、AWSにおけるクラウドアーキテクチャの設計・構築・運用に2年以上携わっていることが推奨されています。
AWS 認定デベロッパー
AWS上のクラウドネイティブな環境で、アプリケーションを開発するスキルを証明する資格です。AWS環境でのアプリケーション開発・運用、デバッグするスキルが求められます。また、アプリケーション同士をつなぐAPIの設計やデータストレージなどの知識・スキルも必要です。
AWS認定デベロッパーの試験費用は150ドルです。試験時間は130分、65問が出題され、形式は複数選択または複数回答のいずれかです。受験には、AWSを利用したアプリケーション開発・保守に1年以上携わっていることが推奨されます。
AWS 認定 SysOps アドミニストレーター
AWSにおけるシステム運用に特化した資格です。AWS上のシステムの安定稼働や可用性の確保、安全性の高いセキュリティーの構築などに関するスキルと知識が求められます。AWSが提供するサービス・商品から運用に最適なものを選出し、効率的に構築・管理した上で、トラブルシューティングを円滑に実行する能力が証明されます。
試験費用は150ドル、時間は130分、複数選択または複数回答形式の問題が65問出題されます。受験にはAWSに関する1年以上の実務経験が推奨されています。
AWSの資格についてさらに詳しい情報が知りたい方はAWSに関する資格12種の基本情報や難易度をまとめた記事をご覧ください。
AWSエンジニアに向いている人
AWSエンジニアに向いている人は資格のほかに下記のスキルや個性を有していることが多いです。
- 学習意欲の高い人
- コミュニケーション能力が高い人
- 問題解決能力が高い人
AWSエンジニアに向いている人に共通するスキル・個性について解説します。
学習意欲の高い人
IT技術は日進月歩です。クラウドサービスのトップシェアを誇るAWSは、提供するサービスや商品を頻繁に更新・追加しています。そのため、AWSエンジニアは常に最新の情報を収集し、習得したスキルをインフラ・開発環境に反映させ、適切に運用しなければなりません。現状に満足せず、常に向上心と学習意欲をもって業務に取り組む人がAWSエンジニアに向いています。
コミュニケーション能力が高い人
技術色の強いAWSエンジニアですが、高いコミュニケーション能力も求められます。なぜなら、設計や開発、運用などの業務は、一人ではなくチームで行うからです。メンバー同士や部署間で意思疎通を図り、円滑にスケジュールを進めるためにはコミュニケーション能力が求められます。
また、クライアントとの交渉を担う場合は、要望を聞き出し、提案するといったコミュニケーションが必要になります。コミュニケーション能力の高いAWSエンジニアは、プロジェクトの進捗共有やトラブルシューティングなどを円滑に進めることができ、効果的なチームワークを築けるでしょう。
問題解決能力が高い人
AWSエンジニアは複雑なシステムの設計や構築、トラブルシューティングに携わるため、高い問題解決能力が求められます。細かなミスに気づく注意力があり、突発的なトラブルにも冷静に対処する能力が必要です。
オンプレミスとAWSを併用する企業もあり、トラブルが発生した場合に、どちらに原因があるのかを究明しなければなりません。トラブルの規模によっては他部署やクライアントにまで影響が及ぶ可能性もありますが、パニックに陥らず、冷静に問題解決まで導ける人はAWSエンジニアに向いています。
AWSエンジニアになるには
高収入が目指せるAWSエンジニアになるには、どうすればよいのでしょうか。AWSエンジニアになるプロセスとしては、下記の2つが一般的です。
- プログラマーから転職する
- インフラエンジニアで経験を積む
それぞれのプロセスについて解説します。
プログラマーから転職する
プログラマーとしてシステムやアプリケーションの開発に必要なスキルを身につけ、AWSエンジニアに転職する方法があります。これらのスキル・知識がAWSエンジニアとしても有用なのは、AWSで環境を構築したり運用・保守したりする際には、Web開発やプログラミングに関するスキル・知識が求められるからです。AWSではコードを用いてインフラを管理するため、特に下記のプログラミング言語はAWSと高い親和性があります。
- Python
- PHP
- Ruby
- Java
- JavaScript
ただし、システムやアプリケーションの開発のみに携わり、インフラに関するスキルや知識が不足しているプログラマーは独学で補う必要があります。AWSエンジニアは、クラウド上のインフラ環境開発や運用、保守を担うため、インフラに関するスキルと知識は必須です。
インフラエンジニアで経験を積む
インフラエンジニアとしてインフラ環境の設計・構築に携わっていると、AWS上の環境構築にも類似性があるため、培ったスキルと経験を活用できます。オンプレミスでの環境構築とクラウドインフラストラクチャとの違いはあるものの、基本的な概念は共通しているためスムーズにAWSエンジニアに転職できます。インフラのコーディングや自動化が求められるケースもあり、インフラエンジニアの経験が生かされるでしょう。
システムやアプリケーションの開発に関するスキルも有しているとライバルとの差別化を図ることができます。なぜなら、システムを開発する側が求めるスペックや要望を反映させた開発環境を構築できるからです。インフラエンジニアからAWSエンジニアにキャリアアップする際には、AWSに関する知識とプログラミングスキルを身につけておくと、転職活動を有利に進められるでしょう。
AWSエンジニアは未経験からの転職は難しい
前提としてITインフラに関するスキルと知識を有しており、その上でAWSに関するスキルと知識も求められるため、未経験からAWSエンジニアへ転職するのは困難です。資格を取得すれば求職活動や転職活動の際に有利ですが、AWSの試験では受験対象者にエンジニアとしての実務経験を推奨しているので、未経験で資格を取得することは容易ではありません。まずは、インフラエンジニアとして実務経験を積むか、プログラマーの業務を行いながらITインフラに関するスキルと知識が身につくような副業から始めるのがおすすめです。
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まとめ
AWSエンジニアは給与取得者全体の平均より年収が高く、フリーランスとして活動すればさらに高い年収を得られる可能性があります。ただし、AWSエンジニアになるには、ITインフラの設計・構築に関するスキルと知識を有した上で、AWSの知識ももっていなければなりません。AWSエンジニアを目指すなら、まずはインフラエンジニアやプログラマーとして実績を積んでから転職するルートがおすすめです。