組織で課題解決!初めてのDX![CTO meetup]

組織で課題解決!初めてのDX!

スタートアップの立ち上げから開発チームの顧問、情報セキュリティ構築、サービス開発まで、IT支援・DX支援サービスを幅広く提供している合同会社リーンアウト。
今回は同社のCEO/CTOである宮田氏にお話を伺い、初めてDXに取り組む会社のための心構えから、「DXはなぜ必要か」「DXってどうして上手くいかないの?」という疑問への提唱まで、DX初級編的「掴みのアドバイス」をいただきました。

2月10日に開催したCTO meetup「関西CTO/技術責任者10名が語るDX時代のエンジニアリング組織戦略」

関西CTO/技術責任者10名が語るDX時代のエンジニアリング組織戦略

CTO meetup初の試みとして2023年2月10日に大阪なんばのイベントスペースFun Space Dinerを貸し切り、関西のCTO/技術責任者10名をお呼びしカンファレンス形式でオフラインイベント「関西CTO/技術責任者10名が語るDX時代のエンジニアリング組織戦略」を開催しました。
採用/育成/技術戦略をはじめとしたエンジニアリング組織戦略を軸に、各社での取り組みをお話しいただきました。

「組織で課題解決!初めてのDX!」をテーマに合同会社リーンアウト CEO・CTOの宮田 延昌氏にセッションいただいた内容をご紹介します。

DXへの取り組み方と「薄毛の悩み」の共通点とは

合同会社リーンアウト CEO・CTO 宮田 延昌氏

製薬業界SIerからキュレーションメディアを経て現在まで

私のセッションでは、「組織で課題解決!初めてのDX!」ということで、初級編とも言えるテーマでお話しさせていただきます。早速ながら、自己紹介からいたしますね。合同会社リーンアウトの代表を務めております、宮田と申します。
私はもともと、製薬業界向けのSIer出身です。その後自社を立ち上げ、独立。当時(10年程前)はキュレーションメディアが流行していたため、自社で行っていたのも、情報をまとめてサイトで公開するといったようなキュレーションサービスです。

そのさらに後、2017年には株式会社ネクイノの取締役CTOに就任しました。ネクイノはオンライン診察のプラットフォームを展開するサービスを行う会社で、創業時からシリーズBぐらいまで牽引させていただきました。2021年に「合同会社リーンアウト」を創業し、今に至ります。リーンアウトではプロダクト開発やDX推進に関して、短いスパンではなく、一気通貫で対応させていただく事業を行っています。

DXの悩みは薄毛の悩みに通じる!?

宮田 延昌氏 自己紹介

今、リーンアウト創業当時の写真を皆さまにお見せしております。できるだけ良く写った写真を用意したのですが、ご覧の通りちょっと今の私とは雰囲気が違いますよね?(笑)実は当時の私は、薄毛で困っておりました。現在まで薄毛治療を受けてだいぶ髪が増え、いっそ髪を伸ばしたいなあと思えるところまで来ました。

なぜ急に薄毛の話を始めたのかというと、「薄毛に悩むこと」はなんとなくDXと通じるところがあるな、と思ったからです。
加齢などの原因でどんどん髪が失われてしまう状況になると、皆さん「仕方ないよ」とか「今さら毛を増やしてモテたいなんて思えない」とあきらめてしまうものです。でも今なら、しっかり治療を始めれば半年、1年先に髪はちゃんと生えてきます。今すぐに対処すれば、半年後、1年後に成果が出る点で、DXに通じるなと。これは、冒頭のアイスブレイクとしてお話しさせていただきました(笑)。

DXってどうして上手くいかないの?

DXの3要素をおさらい

出典:経済産業省 DXレポート2

DXの3要素をおさらい

そもそも、なぜDXは上手くいかないのかというお話からいたしましょう。今回は「組織」についてターゲットを絞らせていただきました。
現在ご覧になっていただいているスライドですが、こちらは経済産業省が出している資料です。

DXには段階的な3つの要素があります。
1つ目は、アナログから電子データへの移行を図る「デジタイゼーション」。次の段階は「デジタライゼーション」。こちらはプロセスのデジタル化ですね。私もサラリーマン時代に判子を押した稟議書を持っていったら、係長に「俺のハンコよりデカい」と怒られて返されて(笑)、いやいや稟議の検討してくださいよ!……なんて時代も過ごしておりました。それらの過程も、今はワークフロー自体がデジタル化されています。ここまでが、狭義のDXです。
これらデジタル化の取り組みによって、事業やビジネスモデルを変革、または再構築するのが第3段階です。顧客起点での価値創出まで行うのが、いわゆる「デジタルトランスフォーメーション」ですね。

デジタルトランスフォーメーションについて突っ込んで語るとかなり難しくなってしまうので、今回はそれらをひとまとめにしまして、簡単な領域からお話ししていきたいと思います。

DXは「生き残るために取り組む」段階になってきた

そもそもDXはなぜ必要なのかというと、現状ビジネスではDXをやっていかないと生き残れない時代になっているからです。それには、非常に大きな社会的背景があります。まずは少子高齢化に伴う採用難ですね。若手の方を採用できないので、業務知識も継承できません。
もう一つは、経済面の問題です。日本全体で「売り上げは上がらない、でも価格高騰でコストは上がっていく」ようなつらい状況に、今現在なってしまっています。
生活様式の変化も背景となってきています。コロナ禍によって、仕事はリモートで行うようになりました。若い方々の場合、従来ですとリビングでテレビを見ていたような一家団欒の状況から、自分の部屋でTikTokをスマホで視聴する……こんな具合に、環境自体がどんどん変わってきています。

これまで述べたようなニーズの変化に対応していくには、DXが必要不可欠になりました。やっていかなければ、企業は衰退してしまいます。
とはいえ、いきなりDXと言われても何をしたらいいか見当が付かない方もいるでしょう。これについては、「少しずつ変革を進めていって、成功体験を積み重ねていく」のが、私の中での正解かなと思っております。

いきなり高い理想を追おうとしない

課題解決のためのDXではあるのですが、課題は組織によって異なります。現在組織が置かれている状況にも、やはり違いがあるものです。
例えば、今すぐDXに取り組まないと手が回らなくなる状況を抱えている場合もあるでしょう。一方で、課題はあるけれど喫緊な解決は必要ではなく、すでに自分の業務の一環みたいになっている、あるいは課題は特に感じてない状況もありそうです。
課題やその程度は人それぞれなのですが、一つひとつ小さなところから始めてみて、成功体験を積み重ねることが、DXに失敗しないための秘訣かなと思います。

なぜDXが上手くいかないのか、失敗してしまうのかというところですが、私が沢山の会社さんの事例を見てきた中では、「理想像をいきなり追いすぎている」と言えるのではないかと感じました。
今すぐスーパーマンになろうと思ったら大変です。そういうことにいきなりチャレンジしようとしてしまうと、やはりそれは失敗につながりがちになります。

例えば私は小学生の頃、「空を飛べるんじゃないか」と思って、神社の石や木に登って飛び降りてみたことがありました。当然ながら、やっぱり空は飛べないですよね。そのとき、「なぜ飛べなかったか」を具体的にイメージできなかったのが、失敗要因かなと思ったんです。唐突に理想像に挑んでしまったから、失敗したのだと言えます。

解像度が低く、解決の仕組み化ができていない

いきなり高い理想に挑戦して失敗してしまう、その原因は何なんだろうと考えてみました。まずは「解像度が低い」という点。それと「解決の仕組み化ができていない」、そして「組織のアレルギー反応」。この3つが大きいのではないかなと思います。

「解像度」をわかりやすく考えると、「理想像自体が、誰からも鮮明にイメージできるぐらいまで言語化できているか」がキーになると思います。
例えば、「他社さんでこういういい事例を聞いたからやってよ」というアバウトな発注だと、非常に実現が難しい。やる側、あるいは「こういう風にしたい」と思い描いている側が高い解像度で理想を描かないと、ギャップの幅が埋まりません。理想像と現状のギャップだけが浮き彫りになってしまって、結局「課題って何だっけ?」という状態に陥り、前に進めなくなってしまいます。

次に「解決の仕組み化」についてですが、そもそも解決できる課題になっていない場合があります。課題の設定自体が間違っている例です。 私の子供の頃の「空を飛ぶ話」でいうと、ドラゴンボールの影響で「『気』を溜めたら空を飛べる」と思ってそのままやろうとしましたが、当然上手くはいかなかった。これは、解決したい課題設定が間違っているのです。仕組み化以前に解決不能ですから、こういう課題は設定しないようにしなければなりません。

組織アレルギーを生む3つの要因

最後に「組織アレルギー」についてです。組織アレルギーを生む要素、もしくは原因には大きく3つあると思っています。
1つ目は「変化することへの恐怖」。2つ目は「課題の認識不足」。そして3つ目は「余暇が足りていないこと」。これらについて、事例も挙げつつご説明しましょう。

まず変化の恐怖について、具体的には自分たちが業務としてどういう形でDXを実現するか、イメージができません。そのため、「何か難しそう」とか、「なんとなく怖い」と考えられて、一歩遠ざけて見られてしまう。それで前に進めなくなってしまいます。
中には、「今までの自分の仕事が否定されている」と受け止められるケースもありますね。あるいは「自分の仕事がなくなる、退職に追い込まれるかもしれない」という勘違いも発生します。

2つ目の課題の認識不足ですが、これは「課題が理解できていない」という意味です。自分の業務だけにスポットを当てがちになるため、全体が見えていないことが多いですね。 そうなってくると、課題自体は把握できていても、「今まで自分はこの通りやってきて問題がなかったんだから、これでいいんじゃないか」と思ってしまうわけです。その他、「重要度や優先度がわからない」「今の既存業務があるのに、違う業務に取り組む必要ってある?」といったような疑問を持たれるケースもあります。

3つ目の余暇が足りていないというのは、単純に物理的な時間が足りない状態です。既存業務が忙しすぎて、新しいことに協力していられない状況ですね。あとは既存業務にマインドを割かれ、話し合いをしていても上の空で、集中できないケースも発生します。

組織アレルギーの解決策は2つ

組織アレルギーの対策

以上のような要素で「組織アレルギー」が発生して、DXが上手くいかなくなってきたらどうするか。ここでは、その2つの解決策をご説明しましょう。

問題・原因・対策のステップを踏む

1つ目は、組織アレルギーの原因である「4つの力不足」を充足させることです。4つの力とは、「物事を正しく考える力」、「正しく伝える力」、「他者と正しく議論をして決める力」、そして「他者に正しく理解されて、組織として動かしていく力」の4つです。これらが足りていないと、アレルギー反応が非常に大きくなって前に進めない状況が発生します。

4つの力を養うためには、「問題⇒原因⇒対策」のステップをしっかり踏み、一つずつ当たっていく必要があります。

例えば原因や課題がまだ浮き彫りになっていない段階で対策しようとすると、大きく失敗する原因になります。

まずは今どういう業務をやっているのかを洗い出し、その中にある問題を定義しましょう。その上で、原因や課題を深掘りしていきます。その課題は、解決可能かどうか評価します。解決できるとわかったら、対策に移る順序です。場合によっては、この過程をぐるぐる繰り返す活動も必要になります。

原因や課題の深掘りが、特に大事なポイントです。何か問題があったときにそれを構造化して、深掘りをしていく作業を行いましょう。この作業が深ければ深いほど、横に広ければ広いほど、解像度が上がっていきます。
「なぜこの問題が発生しているのか」をしっかりと言語化できて、「こういう状態だからこう解決すればいいんだ」まで踏み込んで喋ることができれば、周囲の人の理解も得られるでしょう。

「考え抜く力」を使って、「課題や原因を構造化して深めていく」。そして「構造化したものをしっかり理解してもらう形で議論し、伝える」。これが、4つの力が身に付いている状態です。

変えにくい「空気」をマネジメントする

もう一つが、空気のマネジメントです。組織に漂う「空気」は非常に厄介で、なかなか変えることができません。何か変えたい、改善しなければいけないという課題意識を持って何かやろうとしても、空気感的にそれが実現できない状態が往々にして発生します。チームの暗黙のルールに従わざるを得ず、「今、課題解決の話を持っていっても怒られそう」という感じの状況ですね。

このような状況を生む原因は、「合理と情理」の折り合いの付けにくさだと思います。合理的にはやる必要があっても、空気が邪魔する、感情的に納得してもらえない、組織全体の空気に従わざるを得ない状況ですね。この組織全体の空気を、いきなり変えるのは大変です。

とはいえ、中にはアクションを起こそうとする人もいます。そういった人を集めていく活動が大事になりますね。組織の空気を変えるのは至難の技です。一朝一夕にはできないので、最初の一歩目として推進派の人たちを何とかつかまえ、「小さく始めて小さく成功する」ということを徐々にやるのみでしょう。
いきなり大きな改革をしようとすると村八分になるかもしれませんが、小さく始めていけば組織の文化や空気感を保ちながら、少しずつ納得感が得られます。ある意味「見逃してもらう」形で成功の輪を広げていき、人をどんどん巻き込んでいきましょう。
ここまで到達できれば、組織そのものの空気も変えられるかもしれません。小さなチャレンジ、小さな成功を

繰り返していくのが重要なのです。

ただ人を集めるといっても、単にやる気のある人をアサインするだけでは難しいので、マネジメントサイドとしては、先ほどの課題でも挙げた「余暇」を与える必要があります。「時間が足りないから行動できない」状況にならないよう、業務調整をしてあげなければいけません。
あとは心理的な余裕も確保しましょう。失敗すると叱責を受けるような風潮は非常に良くないですね。誰でもチャレンジできる雰囲気づくりや、チャレンジ自体を評価する空気感の醸成も必要です。

まとめ

組織単位で新しいことに取り組みやすい空気を作りつつ、4つの力を養い、小さく始めて小さく成功する。そういった循環を作っていけば、DXは大きく加速できます。
手順としては、最初にDXを推進していきたい、やっていきたいメンバーを集めます。そのメンバーの余暇を調整して、小規模な取り組みからスタートしましょう。先にご紹介した問題・原因・対策の中で、特に原因の深掘りを徹底的に行ってください。 最終的に「これなら対策できる」という課題に対して実際に対策を施し、成功体験を作っていく。このループを回していくことでDX推進派を作り、広げていきましょう。

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