個人事業主として起業するには? 手続きの流れとやること3つ、メリットも解説
個人事業主として起業するにあたっては、副業で行う方法や、会社を辞めて起業する方法などがあります。この記事では、個人事業主になるためにどのような手続きが必要か、個人事業主がしなければならない業務や、メリット、デメリットなどを解説します。
目次
個人事業主として起業するには?手続きの流れ
個人事業主になるために特別な資格や条件などはありません。基本的には、税務署に開業届を提出するなどの手続きを行えば多くの人が個人事業主になれます。ただし、法律で副業が禁止されている公務員や、副業禁止の会社に勤めている会社員の場合には、個人事業主になれません。
自身のスキルを活かして個人事業主になった場合、事業主として事業の経営や管理などを行わなければならず、人によっては向かないケースもあります。個人事業主の適性がない場合、事業の成功や収益の維持などは困難です。 以下では、起業に要する手続きの流れを6項目に分けて解説します。
1.就業規則をチェックする
会社員の場合、会社勤めを続けたまま副業での起業も可能です。副業で個人事業主になりたいと考えているなら、最初に勤務先の会社の就業規則をみて副業が可能かどうかを確認しなければなりません。近年では、政府が推進する「働き方改革」に基づいて働き方が多様化しています。会社員の副業・兼業が促進される流れを受けて、従業員の副業を認める会社は今後増加すると予測されています。ただし、現在勤務している会社が副業を許可していない場合に個人事業主になると、会社の就業規則に違反してしまうため注意が必要です。副業を開始する際に会社への届出を定めている会社もあり、その場合には事前に届出を出すなどの準備をしなければなりません。規則違反によるトラブルの発生を防ぐためにも、就業規則を確認してから起業を開始することが大切です。
2.税務署に開業届を提出する
個人事業主として開業した場合、開業から1ヵ月以内に住所地の管轄の税務署へ個人事業主は開業届を提出する必要があります。税務署に提出する書類は、事業開始、廃止、事業所の増設・移転などの手続きで使用する「個人事業の開業・廃業等届出書」です。
提出が遅れると、青色申告や屋号での口座開設ができない、小規模企業共済に加入できないなどさまざまなデメリットが生じるため早めに提出を行いましょう。
開業届の用紙は税務署で手に入ります。窓口では書類の書き方や手続きの方法なども教えてもらえるため、書き方に不安がある場合は税務署で提出するのがおすすめです。税務署に訪れる時間が取れない場合には、e-Taxでの作成・提出、もしくは国税庁のサイトから用紙をダウンロード・記入してから郵送などで提出が可能です。
3.屋号を決める
屋号とは、法人では会社名にあたる、商業上で使用する名前のことです。個人事業では、店や事務所などの名前を決め、主に請求書や領収書、銀行口座名などに使用します。屋号を決めない場合には事業者の名前で仕事を行えるため、開業時に決めなくても問題ありません。必要に応じてあとから屋号の追加も可能です。屋号をつける場合は、事業内容をアピールできる名前、覚えやすい名前などにするのがおすすめです。なお、個人事業で屋号をつける際には、「会社」や「法人」などの文字を使用できません。有名な会社が連想される名前や、競合他社と同じ名前などは、トラブルの原因になるため、屋号を決める前によく調べておきましょう。
あとから屋号を追加・変更する際、屋号を開業届で申請しただけの場合には屋号の変更届などがないため、手続きなどは必要ありません。確定申告の際に新しい屋号を記入するだけで変更が可能です。ただし、屋号を商号登記していた場合には、法務局にて商号変更の登記をしなければなりません。
4.確定申告の種類を決定する
個人事業主には、事業所得を計算して確定申告を行い、税金を納付する責任があります。個人事業主の場合、「白色申告」と「青色申告」のどちらかの方法で確定申告を行います。確定申告の際に、白色申告では収支内訳書、青色申告では青色申告決算書を作成して提出しなければなりません。
青色申告を選択すると白色申告よりも提出書類が多くなる反面、赤字が発生した場合に3年間繰り越しが可能になる、65万円の税額控除が受けられるなど税制面でのさまざまなメリットが得られます。青色申告を選ぶ場合には、原則として開業時や開業した日から2ヵ月以内に「青色申告承認申請書」を税務署に提出します。申請をしなかった場合、開業した年度の申告は白色申告しか選べません。
5.地方自治体に事業開始等申告書を提出する
税務署に提出する開業届以外に、都道府県の税事務所や市町村への「事業開始等申告書」の提出も行っておきましょう。書類内容が簡単で手続きも複雑ではないため、比較的簡単に手続きを済ませられます。ただし、提出する書類や提出期限などが自治体ごとに異なることから、事前に各自治体へ問い合わせたり自治体のサイトで確認しておいたりするなど、手続きの方法には注意しなければなりません。
6.社会保険の加入手続きを行う
会社員の場合、会社が従業員の社会保険の加入手続きを行います。ところが会社を辞めて個人事業主になった場合には、自分で社会保険の加入手続きをしなければなりません。個人事業主が加入できるのは、「国民健康保険」「介護保険」「国民年金」の3種類の社会保険です。手続きは、会社を辞めてから14日以内に住所地の市町村窓口で行います。
国民健康保険は、退職後2年間までは前会社の健康保険を引き続き利用する任意継続の選択も可能です。国民健康保険の保険料は収入に応じて変わるため、個人事業の収入が多い場合には任意継続を選ぶと保険料が抑えられるケースがあります。ただし会社負担分も自己負担になるため、気をつけて計算、比較しましょう。年金は厚生年金から国民年金に変わり、年金保険料は一律になります。
国民年金は厚生年金よりも将来の年金受取額が少なくなるため、国民年金基金、個人年金保険といった制度の活用も検討するのがおすすめです。
個人事業主になった後に毎月やるべき3つのこと
個人事業主になると、毎年正しく確定申告をするために、売り上げや仕入れ、営業活動、給料関連の経理業務を行わなければなりません。事業の収支を記録し、正しく把握するための経理業務には、毎月の帳簿作成、請求書などの発行、給料計算といったものがあります。
1.帳簿に関する経理業務
個人事業主は、日々の収入、経費を正確に計算して年間の所得や税金を算出、納付しなければなりません。主な経理業務には、経費支払いなどの領収書・レシートの整理、現金の管理、預金口座の入出金と残高の確認作業などがあります。日々のお金の動きや取引をまとめた各帳簿の作成と残高の照合、試算表の作成などの経理業務も必要です。
帳簿のつけ方は白色申告と青色申告で異なります。白色申告では、1種類の帳簿に取引などの動きをまとめる、シンプルな「簡易式簿記(単式簿記)」のみで確定申告が可能で、帳簿作成も比較的簡単に行えます。青色申告は、主要簿の総勘定元帳、仕訳帳のほかに、補助簿の現金出納帳、預金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など複数の帳簿を作成する「複式簿記」の方法で経理業務を行います。
2.取引先とのやり取りに関する経理業務
売り上げ、仕入れなど、事業活動で生じる取引先とのやり取りでは、請求書や納品書、領収書などの発行といった経理業務も必要です。日々の取引で発生する売り上げの売掛金回収、仕入れの買掛金支払いも行い、残高が合っているかどうかを確認します。事業活動を行う際に欠かせない取引先とのやり取りにはお金の動きも関係してくるため、さまざまな経理業務が行われます。
3.給料に関する経理業務
従業員を雇用している場合には、従業員の給料関連の業務を行う必要があります。従業員に給料を支払う個人事業主は、給料の源泉徴収も行わなければなりません。毎月の従業員の手当、残業時間、有給などを確認して給料支給額を計算します。社会保険に加入している場合には給料から社会保険料を天引きし、所得税の源泉徴収税額も計算してから、給料の手取り額を従業員に支払います。
天引きした社会保険料や源泉徴収額などは、従業員分もまとめて事業主が納付しなければなりません。源泉徴収した税金は、給与支払い日の翌月10日までに事業主が納付します。ただし、給与支払い人員が10人未満の場合には、税務署に申請を行うと所得税の納付回数を7月と1月の年2回にまとめられます。1月~6月分の納付は7月10日まで、7月~12月分の納付は翌年1月20日までです。
個人事業主として人気の職種
システムエンジニアなどのエンジニア系の職種やWebライターなどのライター系の仕事は個人事業主として働くのにおすすめの職種です。個人事業主になるには何をするべきかまとめたページでは個人事業主のおすすめの職種もまとめてありますので、ご覧ください。
個人事業主になるメリット
個人事業主になると、会社員とは異なる働き方によるさまざまなメリットがあります。定年退職がない、自由な働き方が可能、税務申告が簡単になるなどのほか、働きやすさ、収入アップも期待できます。
定年退職がない
会社員には60歳や65歳などの定年が会社の規定で定められているため、定年になったら仕事を辞めなければなりません。他方で、個人事業主には会社員とは異なり定年退職の年齢が定められておらず、年齢に関係なくいつまでも働き続けられます。
個人事業主の場合は自分のペースで働けることから、収入や労働時間などを調整して無理せずに長く働けるところが大きなメリットです。年金を受け取りながら仕事を続けて、一定の収入を確保するなどの働き方も可能です。
自由な働き方を選択できる
個人事業主には、自由度の高い働き方ができるメリットがあります。自分でスケジュールを決められるため、始業時間や終業時間が定められている会社員と比べれば、仕事以外の予定がある場合には勤務時間の調整も可能です。休日も、自分で休みの日を選べます。個人事業主の場合、毎日会社に出社する必要もありません。事務所や店舗で働く場合でも、事務所の場所や営業時間を自分で選べるため、基本的には好きな時間に好きな場所で働けます。オンラインで打ち合わせや商談ができる業務なら、働く場所も事務所などに縛られることがありません。
個人事業主は、自分の働きがそのまま収入に結び付きます。実力があり、仕事が認められると収入も増加するため、収入アップとやりがいを持って働ける点もメリットのひとつです。
税務申告に手間がかからない
法人の場合、個人事業主よりも経理業務が多くなります。決算や法人税計算など、複雑な計算がある業務については、税理士に依頼することが一般的です。これに対して個人事業主は、簿記の知識がない初心者でも、多くの場合、自分で確定申告を行えます。白色申告よりも複雑な青色申告を行う際にも、確定申告ソフトを使用すると比較的簡単に申告書類が作れます。また、税理士に依頼するケースでも、法人税申告より安い費用で依頼が可能です。
個人事業主になるデメリット
個人事業主には多くのメリットがあります。ただし、会社員を辞めて個人事業主になった場合には、デメリットが生じるケースもあり、注意が必要です。
社会的信用を得られにくい
個人事業主は、簡単に事業を立ち上げできる反面、法人に比べると社会的信用が低い傾向があります。会社によっては、社会的信用度の低い個人事業主を避けて信用度の高い法人との取引を希望するケースもあるため、契約数に影響するリスクがある点が問題です。金融機関との取引でも、融資が受けにくい、融資額が減額されやすいなどのデメリットがあります。
利益が多ければ税負担が重くなる
個人事業主には累進課税の所得税が課されます。所得が増えると税額は増加し、さらに約10%の住民税、事業によって税率が異なる個人事業税、消費税なども払わなければなりません。個人事業主の場合、所得が6,950,000円以上になると所得税率は23%、9,000,000円以上は33%の所得税がかかり、最大で45%の税率がかかります。法人の場合、所得税課税対象となる800万円を超えた部分にかかる法人税が税率23.20%です。
利益が増えるほど個人事業主のほうが税負担は大きくなるため、年間所得額が800万円を超えたあたりで法人化したほうが税負担を抑えやすくなります。所得税の税率などを考慮・計算して、法人税の税率を上回った場合には法人化を検討するのがおすすめです。
個人事業主と自営業・起業の違い
個人事業主とは、事業を個人で行っている人のことです。法人を設立して経営する場合とは異なり、開業届を税務署に提出するだけでもすぐに個人事業主になれます。個人事業主には、IT系やクリエイティブ系、コンサルタント、建設業、飲食業、小売業など、さまざまな職種があります。
個人事業主と自営業の違い
自営業者は、会社などに所属せず、自分で事業を行い収入を得ている人です。自営業には小売店、飲食店、美容院、デザイナーなどさまざまな職種があり、個人事業主とも重なります。ただし、自営業は個人事業主よりも幅広い範囲を意味するため、法人化していない個人事業主と法人を設立した個人経営者のどちらも自営業とされます。
個人事業主と起業の違い
起業とは、事業を立ち上げることです。起業には、法人を設立して事業を立ち上げる場合と個人で事業を立ち上げる場合の両方が該当します。株式会社や合同会社などの法人を立ち上げる起業とは異なり、非法人での起業を行った者が個人事業主です。
個人事業主として働くならFLEXYの活用もおすすめ
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まとめ
個人事業主として起業するには、会社員のまま副業として起業する方法や会社を辞めて個人事業主になる方法などがあります。屋号や申告方法を決めて税務署へ開業届を提出することで開業が可能です。開業してからは、本業のほかに経理業務も行わなければなりません。
個人事業主になると、定年がなく、自由な働き方ができるなどのメリットがあります。ただし、社会的信用が低くなる、利益が上がると税負担が重くなるなどのデメリットもあるため、状況に応じて法人化を検討するのもよいでしょう。