フリーランスの報酬に関わる源泉徴収とは?気を付けるべき点やよくある疑問を解説

フリーランスとして案件を獲得し活動を開始する、その前に確認しておきたいことがあります。それは報酬に対する「源泉徴収」についてです。突然ですが、あなたの仕事の報酬は誰が源泉徴収しているか把握していますか?

「源泉徴収は税金に関わることであるため、詳しく理解しようとすると少々気が引けてしまう」という人もいるかもしれません。しかしフリーランスが初めてのクライアントと取引をするときや案件を紹介するエージェントを初めて利用するときなどには必ず確認しておくべき事項です。源泉徴収について、簡単にご紹介します。

フリーランスの源泉徴収について

会社員は働いている会社から給与を受け取っているため、所得税は給与から源泉徴収されています。フリーランスの場合も報酬から源泉徴収されるケースがありますが、源泉徴収された分は確定申告に関係するため、しっかり把握しておく必要があります。

源泉徴収とは

源泉徴収とは、報酬から税金を天引きする制度です。具体的には、報酬を支払う側の企業が本来支払う報酬額をもとにあらかじめ税額を計算して、その税額を差し引いた額を本人に支払います。報酬を受け取る側(納税者側)から見れば、手取り金額が減っているため損をしたように見えるかもしれません。しかし源泉徴収は報酬を受け取る側に税計算の負担がかからないようにする制度であり、納税者側にメリットがあります。

現在、天引きされる税金の内訳は、所得税と復興特別所得税です。所得税とは、1年間(1月1日~12月31日)に生じた個人の所得に対してかかる税金です。所得税額は、所得によって異なります。復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興に使われる税金で、2011年の特別措置法(平成23年法律第117号)を根拠としています。復興特別所得税の徴収は、2037年(特別措置法では平成49年と表現)まで実施される予定です。復興特別所得税額は、基準所得税額の2.1%です。

参考: 国税庁、個人の方に係る復興特別所得税のあらまし

フリーランスの場合

会社員の場合は、毎月の給与から給与の額に応じた税額が源泉徴収されています。12月の給与額が決まったら1年間の所得額が確定するため、年間所得にかかる納税額も明確になります。所得税の年額は、毎月源泉徴収されてきた所得税の合計額と異なるケースがあるため年末調整で納税額の差額が調整されます。

会社員は、源泉徴収制度によって所得にかかる税金を会社が給与から天引きし、納付、年末調整まで行うため、確定申告をする必要がありません。一方、フリーランスは、クライアントから源泉徴収をされていても1年間の所得税を計算して年末調整されることはありません。そのため、年末までの源泉徴収額をまとめ、本人が所得税の確定申告をする必要があります。

フリーランスでは、報酬の種類によって源泉徴収されるケースとされないケースがあります。源泉徴収された所得税は、基本的に年末までにはクライアントから税務署に納付されているため、確定申告のときすでに源泉徴収された税額がある場合には、正しい源泉徴収額を申告することが大切です。 所得税のうちいくら徴収されて納付されているか確認できると、正確な未納額もしくは還付額が算出可能になり、確定申告で所得税を二重に納付するリスクを避けられます。源泉徴収は、確定申告を正しく処理するためにもよく確認しておかなければならない制度です。

源泉徴収が必要な仕事

源泉徴収が必要な仕事については、所得税法204条に記載があります。フリーランスにはさまざまな仕事があるため、その仕事の内容によっては源泉徴収の対象になりません。源泉徴収の対象になるケースは、原稿の執筆料をはじめ、特定の資格をもつ人への報酬、プロ野球選手への報酬などです。源泉徴収が必要な業務内容は、報酬の受取人が個人の場合と法人の場合で異なります。

    【源泉徴収が必要な主な業務(個人)】
  • 原稿料、講演料など
  • 弁護士、公認会計士、司法書士等への報酬
  • 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  • プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデル、外交員などの報酬
  • 映画、演劇、テレビ放送などへの出演報酬・料金、芸能プロダクションを経営する個人に支払う報酬・料金
  • 宴会などで客に対して接待を行うコンパニオン、バー、キャバレーなどのホステスに対する報酬・料金
  • プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
  • 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
    【源泉徴収が必要な業務(法人)】
  • 馬主である法人に支払う競馬の賞金

デザイン制作が関わる場合はフリーランスのエンジニアやデザイナーの仕事も源泉徴収の対象になります。ただしエンジニアの場合、コーディングやプログラミングのみの業務であれば、源泉徴収は不要です。 自分の業務が源泉徴収の対象かどうかの判断に迷う場合は、その都度クライアントに相談すると安心です。

参考: 国税庁、No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは
参考: 手取契約の場合の源泉徴収税額の計算方法
参考: 第5 報酬・料金等の源泉徴収事務

源泉徴収の計算

源泉徴収額の計算は、月額報酬によって異なります(消費税については後述)。

月額報酬100万円以下の場合

源泉徴収税額 = 支払金額 × 10.21%

月額報酬100万円以下の場合は、所得税と復興特別所得税を合わせた税率10.21%を報酬額にかけて計算します。

月額報酬が100万円を超える場合

源泉徴収税額 =(支払金額 – 100万円)× 20.42% + 102,100円

月額報酬が100万円を超える場合、支払金額から100万円を超えた分に税率20.42%をかけた額、さらに固定額として102,100円がプラスされます。

源泉徴収税額表も参考になる

ほかに、「源泉徴収税額表 」が参考になります。これは国税庁で公表されているもので、給与所得の月額や日額を基準にした表、賞与や退職所得の源泉徴収税額などの表があります。自分の報酬額と照らし合わせて詳しい源泉徴収額を確認したい場合は、参考にしてみてはいかがでしょうか。

参考: 国税庁、令和4年分 源泉徴収税額表
参考: 国税庁、復興特別所得税の源泉徴収のあらまし

フリーランスの源泉徴収で気を付けたいこと

フリーランスの場合、源泉徴収で気を付けておきたいことがあります。

フリーランスの仕事は源泉徴収される場合とされない場合がある

フリーランスが受ける仕事には、源泉徴収が行われる場合と、源泉徴収されずそのままの金額で報酬が支払われる場合があることに注意が必要です。報酬や給与から税金を差し引き、その税金を国に納める義務がある人のことを、源泉徴収義務者といいます。源泉徴収の対象となる業務を依頼するクライアントには、源泉徴収をする義務があります。

ただし、一部のクラウドソーシングでは、クライアントと働く人の二者間契約を行っています。その場合クラウドソーシング側は給与支払者ではないので源泉徴収の義務が発生しません。この場合は仕事を受ける前に、報酬の源泉徴収について把握し、自分でクライアントと交渉して源泉徴収をしてもらう必要があります。

また、個人事業主やフリーランスが源泉徴収義務者の立場になることもあります。自分がフリーランスでも他のフリーランスに発注して報酬を支払った場合、源泉徴収を行う義務が発生します。ただし、「従業員の雇用や外注がない」「従業員がおらず、2人以下の家事使用人だけに給与を支払っている」、「給与や退職金の支払いがなく弁護士などの報酬や料金を支払っている」のどれかに当てはまれば、源泉徴収の義務はありません。

クラウドソーシングに限らず、フリーランスとして複数のクライアントやエージェントを介して仕事を請け負っている場合は、源泉徴収の有無について注意したいところです。ちなみに、フリーランス向けの案件を紹介するエージェントであるFLEXYでは、源泉徴収を行っています。

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自分が源泉徴収義務者になる可能性もある

フリーランスの立場でも、従業員を雇用した場合などに源泉徴収義務者になるケースがあります。源泉徴収して納税する義務があるにもかかわらず怠ると、フリーランスも延滞税や不納付加算税というペナルティを受ける場合があるため注意が必要です。

法人の場合は、従業員を雇ったときに「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出して源泉徴収義務者になります。個人の場合は、開業時に提出する「個人事業の開業届出書」の「給与等の支払の状況」欄に記載してあれば、「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要はありません。

開業時には従業員を雇用しておらず、途中から従業員を雇うようになった場合には提出が必要です。フリーランスの人が源泉徴収義務者になるケースには、「個人事業主が法人化した」「正社員やパート、アルバイトなど従業員を雇用して給与を支払っている」「青色事業専従者に月額88,000円以上の給与を払っている」などがあります。

また、源泉徴収義務者にならない主なケースは、「従業員の雇用、外注を行わずに事業を経営している」「常時二人までの家事使用人だけに給与や退職金を払っている」「給与や退職金を払う従業員を雇用しておらず、弁護士や税理士などへの報酬だけを払っている」などです。

謝礼や物品も源泉徴収の対象となる

「謝礼」「取材費」「研究費」などの名目の支払いでも、実態が報酬であればそれらも源泉徴収の対象です。

取材協力や講演会の講師などをした場合に支払われる「車代」や「宿泊代」も、報酬・料金だと判断できる場合には源泉徴収の対象です。ただし、旅行会社やホテルなどへ通常必要な範囲の交通費や宿泊費が直接支払われる場合には、報酬・料金に含めなくてよいとされています。つまり源泉徴収は不要です。

また、金銭ではなく物品などで報酬を支払われた場合も、源泉徴収の対象とされます。物品で支払われた場合には、その物品の処分見込み額を計算してその価額とみなします。株式や不動産など価額が変動するものは支払日の価額とみなし、商品券はその額面通りの額、その他の物品で支払われた場合は物品の小売販売価格の60%程度に対して源泉徴収されます。

支払調書が発行される場合と発行されない場合がある

クライアントから発行される、「どんな内容の報酬を支払ったか」を証明する書類を支払調書といいます。支払調書に書かれているのは、報酬額や源泉徴収額などです。クライアントは支払調書を税務署へ提出し、税務署はこの支払調書をもとに納税者が正確な申告を行っているか確認することになります。

そのため、本来クライアントが報酬を支払った相手に対して支払調書を発行する義務はありません。ただこれまでの慣習から、任意でフリーランスに支払調書を発行してくれるクライアントもいます。

支払調書は源泉徴収額の確認に役立ちます。支払調書が発行される時期は、例年1月~確定申告前の時期あたりです。発行してもらいたい場合は、クライアントと相談するようにしましょう。また発行された支払調書は、確定申告時に税務署へ提出する必要はありません。

消費税の取り扱い

消費税額を除いた報酬の金額を、源泉徴収の対象とすることも可能です。

消費税額を除けばその分、源泉徴収額も減らせます。消費税の金額を除いて計上する場合は、請求書などで報酬と消費税の金額が明確に分けられている必要があります。逆に報酬と消費税の金額が明確に分けられていない場合は、原則として消費税が含まれた額が源泉徴収の対象になります。

経理計算では源泉徴収額も明確にする

源泉徴収済みの報酬を受け取ったあとは、経理処理において源泉徴収額の記録も忘れないようにしましょう。

フリーランスは、確定申告で申告する所得額から所得税額が計算されます。ただし、すでに源泉徴収された額(納付した額)が自動で計算に反映されるわけではないため、自分でこれまでの納付額を確認して記載しなければなりません。確定申告までに正しく管理しておかないと、すでに納付している所得税を納税していないものとして申告し、二重で納付してしまう恐れがあります。

確定申告では報酬からかかった経費を差し引いて所得額を算出するため、毎月源泉徴収されていたとしても、その合計額が確定申告のときに計算した税額とは異なっているかもしれません。1年間の源泉徴収額をしっかり管理しておくと、確定申告時にその金額を適切に申告できます。

もし、源泉徴収された額の合計額よりも確定申告で計算後の所得税額が低かった場合には、過払いになった分が戻ります。フリーランスの場合には控除や経費が計算されると還付額が生じやすいため、税金を納めすぎないためにも徴収税額をきちんと管理する必要があります。

フリーランスの源泉徴収に関するFAQ

フリーランスの源泉徴収に関して、よくある質問とその回答を紹介します。

源泉徴収税と所得税の違いは?

源泉徴収税と所得税はどちらも個人の所得にかかる税金ですが、納付方法に違いがあります。所得税は本人が自ら計算して納付しますが、源泉徴収税は給与や報酬の支払い側が本人の代わりに計算して納付します。

所得税は、1月から12月までの1年間の給与や事業で得た所得にかかる税金です。1年間の所得から基礎控除や配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除などの所得控除額を差し引いた「課税所得額」に税率をかけて計算します。この税額は本人が計算して、直接納付します。

一方、源泉徴収税とは給与や報酬を支払う側が所得税見込み額を本人の代わりに計算して、税額を天引きし、天引きした預かり分をまとめて納付する税金です。会社員の場合はほとんどのケースで毎月の給与から源泉徴収され、年末には会社が年末調整を行います。そのため自分で計算から納付までを行う負担が軽減され、1年間の正しい所得税を納付できます。

フリーランスの場合、源泉徴収されていたとしても年末調整は行われません。1年間の正しい所得税は、自分で計算し、確定申告をしてから納付する必要があります。しかし、源泉徴収された場合には所得税を小分けにして納付することになるため、確定申告時に1年分の税金をまとめて納付する負担がかかりません。

クライアント側から源泉徴収されなかった場合はどうするの?

源泉徴収の対象となる業務に該当しない場合はクライアントから源泉徴収されることがありません。ただし、海外に住所がある場合や個人事業主がクライアントの場合など、源泉徴収が必要な場合に報酬から天引きされないケースもあります。

もしクライアントから源泉徴収をされずに報酬を受け取った場合でも、その時点ではフリーランスの側が直接税金を納付する必要はありません。しかし納税の義務から免れるわけではないため、源泉徴収されなかった分は、確定申告のときに納税額を計算し、確定したうえでまとめて納付します。

クライアントによっては源泉徴収をしていないこともあるため、複数のクライアントから報酬を得ている場合には源泉徴収額を間違えず、しっかり把握することが大切です。源泉徴収対象でない場合には、確定申告書の「源泉徴収税額」欄に記載する内容はありませんが、受け取った報酬額は正しく申告する必要があります。

なお、1年を通じて源泉徴収されなかった場合や予定納税(前年の税額が一定以上だった場合の前払い制度)をしていない場合は、確定申告の際に還付される所得税がありません。一方、支払っていない分の所得税を納める必要があります。納税額が多額になる場合に備えて金銭の管理も必要でしょう。

源泉徴収済みの報酬の確定申告はどうすればいい?

源泉徴収された税金は、基本的にその翌月にはクライアントがすでに納付を済ませています。確定申告では、源泉徴収の合計額を確定申告書の「源泉徴収税額」欄に書き込んで申告します。

源泉徴収額は、確定申告時に正しい額をすぐに把握できるようにするため、源泉徴収が生じたときにしっかり報酬額と源泉徴収額を経理処理することが大切です。そうすることで、申告時にはそれまでにまとめていた源泉徴収の合計額を確定申告書に記入するだけで申告を済ませられます。正しく計算して確定申告をしないと、所得税を余分に納付してしまう場合もあるため注意して行いましょう。

源泉徴収票と支払調書は何が違うの?

源泉徴収票は、会社に勤める従業員が1年間に受け取った給与額や源泉徴収税額が記載されている書類です。基本的に1年間の所得が確定して年末調整を行ったあとで、正しい所得税額を記載した源泉徴収票が作成されます。源泉徴収票は、給与を支払っている会社が従業員に交付しなければなりません。

支払調書は、クライアントがフリーランスなどに対して支払った報酬の内容や金額、源泉徴収額などが記載されている書類です。会社員の給与所得で受け取る源泉徴収票とは異なり、主に報酬、料金、契約金、賞金、不動産の使用料、不動産の売買又は貸付のあっせん手数料などの収入で支払調書が作成されます。

ただし、支払調書は報酬の受取人に対する交付義務はありません。確定申告では支払調書に記載されている内容をもとに申告書類を作成できるため、支払調書の交付を希望する場合は早めにクライアントへ問い合わせるのがおすすめです。また源泉徴収票と支払調書はどちらも法定調書のため、税務署への提出が定められています。もしも給与や報酬を支払う側に該当して書類を作成した場合には、翌年の1月31日までに税務署へ提出しなければなりません。給与や報酬を受け取る側がこれらの書類を税務署へ提出する必要はありません。

フリーランスは確定申告を忘れずに

改めて確定申告とは、所得税及び復興特別所得税の納付額を確定させる申告で、例年2月半ば~3月半ばに行われています。確定申告では1年間の所得をもとに所得税及び復興特別所得税の額を計算し、すでに源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金などと差異がないか確認します。

確定した所得税及び復興特別所得税額よりも、事前に源泉徴収されている金額の方が上回っている場合は、還付金を受け取れます。フリーランスの場合は所得控除に加え、経費を所得から差し引くことができるので、所得税額が減り還付金を受け取れる可能性が高くなるでしょう。その他にもメリットがあるので、確定申告は忘れないようにしましょう。

源泉徴収をしていない報酬を含む場合は、確定申告で納税額を確定させた後、納税を行うことになります。

確定申告について詳しく知りたい方はこちらをご確認ください。

まとめ

フリーランスとして仕事をする中で報酬の話はなかなか話題にしづらいかもしれませんが、源泉徴収は納税に関わることであり、クライアントにも大いに関係します。お互いのために、細かな部分までしっかり確認しておきたいところです。

業務内容によっても必要な場合や必要ない場合があるため、フリーランスの場合は、必ず源泉徴収されるとは限りません。源泉徴収されたとしても、クライアント側に支払調書の交付義務がないため、確定申告で必要な場合にはクライアントに相談することをおすすめします。エンジニアやデザイナーとしての仕事に集中するためにも、経理に関しての疑問は早めに解消しておくと安心です。

企画/編集:FLEXY編集部

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