リモートで働くエンジニア組織を組成するCTOに聞く、リモートを成功させるために不可欠なこととは? 【CTO大関さん×FLEXY村田】対談インタビュー

CTOインタビュー

※本記事は2019年5月に公開された内容です。

働き方改革が進む中、エンジニアの働き方も変わってきています。本記事では、常駐しない働き方を推奨する株式会社LEARNieの取締役CTOの大関さんをお迎えし、FLEXYコンサルタントの村田と、「リモートワーク」をテーマに対談を実施しました。

【CTOから見たリモートワーク導入の利点】

  • 採用へのインパクト(現職を持っている優秀な人を、副業として採用できる)
  • 時間と費用の観点からもリモートを導入することでコスト削減が図れる
  • 会社に拘束されない、自由な時間が手に入る
CTO大関さん 株式会社LEARNie 取締役CTO 大関 隆介 氏
Web系開発会社にて、大手飲食店検索サイトの要件定義~運用までを行いPHP・Perlなどのサーバーサイドの開発に従事。その後、株式会社ゆめみに入社。大手企業を中心としたプロジェクトの統括責任者として40名のメンバーをマネジメントし、多くのプロジェクトを成功に導いてきた。最大手アパレルメーカーのグローバル(12か国)アプリ開発や大手外食ファストフードのアプリ開発などが代表的なプロジェクト。その後、2018年4月からLEARNieに参画。現在はLEARNieの他にスポットメイト株式会社の社外CTOとデザイン系の会社の技術顧問も行っている。

■株式会社LEARNiehttps://www.learnie-inc.com/
■スポットメイト株式会社https://www.spotmate.com/

リモートワークを導入した理由

FLEXYの村田です。本日は『リモート導入』をテーマに成功の秘訣を株式会社LEARNieのCTOの大関さんにお伺いします。

まず最初の質問ですが、CTOとしてリモートでの働き方を取り入れている理由を教えてください。

リモートの働き方は、前職でも取り入れていましたし、子供との時間を大切にしたいというのが一番の理由です。ちょうど妻が出産するときにローンチのタイミングだったのですが、分娩している間もプログラミングをかけました。笑。

村田:
それは、すごいですね!笑。前職では海外のエンジニアの方もいらっしゃったんですよね?

大関:
インドやカナダから参加しているエンジニアがいました。海外からのエンジニアの場合、やはり時差があるのでWeb会議の時間帯などは大変ですね。

村田:
リモートを導入するときの大きな障壁は何だと考えますか?

大関:
完全出勤しての仕事方法をリモートで実際にやろうとするのは難しいです。
リモートを導入するためには、リモートのやり方をしなくてはいけません。 リモートで業務を行うためのツールの選択と活用が当然必須になってきます。ただ、あくまでツールはうまく活用すれば良いだけなので、障壁という表現としては、マネジメント側の「意識を切り替える」というステップでしょうか。

村田:
確かにリモートでの働き方は、成果やコミュニケーションなどが変わってきますね。

大関:
タスクやアウトプットはあえて100%を求めず、60%で期待しPDCAを実践します。

そうすることで自動的にコミュニケーション量が増え、場合によってはZoomなどのTV通話を活用して1on1を実施することで、心理的安全性を高めます。コミュニケーションはSlackベースで行なっていますが、リモートにするとSlackを見る時間は当然増えますね。

常駐にこだわらない働き方

採用や働き方について

村田:
リモートの方の採用ってどこをポイントに見ていますか?

大関:
ソースコードとコミュニケーションが能動的にとれそうかを見ています。優秀な方の採用と考えると、常駐にこだわる必要はないと考えています。また、副業での採用を主に行っているのでリモートを前提とした採用を進めています。

村田:
今、大関さん自身はどんな働き方をされているんですか?

大関:
今はLEARNieの他にスポットメイト株式会社の社外CTOとデザイン系の会社の技術顧問をやらせてもらっています。スポットメイトではエンジニアの組織づくりやアーキテクチャ選定、エンジニアリングのマネジメントを行っています。

LEARNieでは、必要に応じて出社して、他は自宅や外出先からslackや弊社のプロダクトを使ってコミュニケーションとっています。他の2社に関してはほぼリモートでの作業となっています。

また、1on1を弊社のプロダクトを使って実施しているのですがプロダクトが自分が話している時間や相手がどれくらい話しているかをリアルタイムで可視化しているので自分が話しすぎていないかをウォッチしながら実施しています。

村田:
すごく便利なツールですね!

他に、リモートにして良かった、というオススメポイントはありますか?

大関:
電車に乗らなくても良い、自由な時間が取れるということはすごくいいですね。

電車に1時間乗っている時間を考慮すると、その時間に作業を進めた方が絶対に効率的です。スタートアップ時期は特に資金余裕がないため、時間と費用の観点からもリモートを導入することでコスト削減が図れます。また採用へのインパクトも非常に大きいですね。

村田:
採用へのインパクトについて具体的にお伺いしていいですか?

大関:
まだネームバリューがない中で、優秀な人材を確保するのは非常に困難を極めますが、スキルが高い方にも関わらず個人的な理由によって常駐が難しい方などに対して、働き方の選択肢としてリモートが可能であることが、一つのバリューになります。また同時に中長期的目線では、明確なバリューを打ち出すことで余計な採用コストを抑えることにもなります。また副業・兼業での参画もしてもらい易くなることも大きなメリットですね。

CTO大関さん

リモートでの開発環境

村田:
採用においてはソースコードを見るとのことでしたが、良いコードかどうかの見極めはどうやって行うんですか?

大関:
なぜそのコードを書いたのか、自分なりの意図や理由がしっかりあるかどうか、そしてそれらが自分の中で整理されていて、説明できるかどうかですね。中には「なんとなく書いている」という人もいるので、そういう人は落とします。また、プロパー社員が2名なのですが、両方の承諾が無い限り採用しないようにしています。採用したエンジニアと一緒に働く時間は、僕よりも彼らの方が圧倒的に多いですから。

村田:
なるほど。現在の組織体制と開発環境を教えていただけますか?

大関:
LEARNieがプロパー2名、副業が7名の体制です。メインのプロダクトがMacとWindowsのデスクトップアプリケーションなのでSwiftとC#で実装されています。backendはnodeとgoで書いていて、バックエンドはAWSを使っています。基本的にはマイクロサービスに移行しやすいように疎結合なシステム開発をしています。これからfrontendをvueかReactを利用して進めようとしているところです。また、スポットメイトでも副業エンジニアが6名いるので私が見ている人数で言うと14名ほどいます。

村田:
リモートメンバーの管理が必要という面では、どのように開発を進めているのでしょうか。

大関:
GitHubのissueとprojectsを利用してタスク管理をしていて、優先順位の高いものからどんどんこなしてもらうのが基本です。それぞれのissueにはプロジェクトの背景と作業の意図なども記載しています。週に1回振り返りも行っていて、先週やったことと今週やることをヒアリングする機会を設けています。

村田:
コミュニケーションの取り方にリモートならではの特徴はありますか?

大関:
副業の場合稼働時間が21時以降の方が多いので、必ずしもリアルタイムで応答できるわけではありません。たとえばタスクを分担しているなら、副業の方からの応答がなくても進められる部分を先にやっておくなど、滞りなく作業が進められるように工夫しています。

村田:
リモート環境とそうでない場合に、新たに採り入れた技術スタックやツールはありますか?

大関:
基本的にありませんね。それぞれのエンジニアが使いたいものを使ってくれればいいと思っています。オンラインで会話ができれば問題ありません。

村田:
副業の方は業務委託契約だと思いますが、勤怠管理はどうしていますか?

大関:
ジョブカンを使って誰が何時間働いているのかは管理しています。副業の場合本業と合算すると労働時間はやはりかなり長くなってしまいますし、月ごとの契約時間もあるので、もし頑張りすぎているようだったら大丈夫かどうか声をかけていますよ。

リモートでの働き方

リモートで働くことが可能な組織とは?

村田:
現在大関さんが統括している組織より、今後拡大化したときにリモートという働き方が難しくなる、あるいは弊害が出てくる場面はあると思いますか?

大関:
どんな単位のチームを作りたいのかにもよると思います。組織が100、1000人になった場合、一人のマネージャーが全員を管理するわけではないですよね。大きな規模の会社の中にある10~20人単位のチームなら、リモートでもそれぞれのマネージャーが充分管理できるレベルです。

村田:
逆にチームの単位が確立されているのなら、チームごとのリモート導入ができそうですね。

大関:
いけると思います。アーキテクチャに似ているかもしれませんね。マイクロサービスが流行っていますが、それと同じで塊は小さい方が管理しやすいですよね。7-10名くらいのチームの方がまとまれますし柔軟に動けますと 前職でも40名いましたが、40名を5−6のチームにわけて動いていました。もちろん、それぞれのチームに責任者もおいてました。

リモートワークに技術的ボトルネックはあるかどうか

村田:
リモート導入にあたって、技術的な側面でボトルネックになることはありましたか?

大関:
僕はあまり思い当たる点はありませんね。他の企業とかだと何かありますかね?

村田:
よくある話は、セキュリティ面ですね。ただ、僕の感覚からしてみると、リモートでもリアルでも本番環境にデプロイできるのはマネージャー以上の権限を持つメンバーだったりしますから、同じじゃないかなと思っています。

大関:
なるほど。その点は確かに同じだと思います。ネットワークくらいじゃないでしょうか。ただ、今はAWS VPNなんかも登場していて、ネットワークにいくらでも制限をかけられます。 一般的な企業であれば暗号化されたパソコンを支給することもできますし、あまり気にしなくてもいいでしょう。ただ、スタートアップの場合は私物のパソコンを利用せざるを得ない面がありますし、副業メンバーがいる場合もしかりですから、そこはリスクだなとは思います。

村田:
私物のパソコンを使っている方に対して、セキュリティを入れるよう指示などはしているんですか?

大関:
個人の方に対してセキュリティソフトを指定するのはなかなか難しいのでしていませんが、何を使っているのかはヒアリングして把握しています。また、極力暗号化もお願いしていますね。

村田:
FLEXYも副業やリモートで働いている方が多いのですが、多くのケースで個人のパソコンを使って参画しているはずです。現在のリモートはある程度性善説で成り立っているのかもしれません。

大関:
そうかもしれません。「万が一」を追求するなら、パソコンを貸し出すしかないと思います。

村田:
セキュリティ面以外で技術的に迷う部分がないとすれば、リモート導入を阻害するのは心理的安全性が大きいのかもしれませんね。

リモート導入

リモートはコミュニケーションコストが高い?

村田:
リモートはコミュニケーションコストがかかるという懸念点も耳にすることがありますが、大関さんはコストに感じることはありますか?

大関:
現場にいないわけですから、「場の空気」が読めないのは事実です。ただ、リモートの場合はslackのチャットを見て困っていそうだな、揉めているな、と読み取ることに置き換わりますし、問題がありそうなら一度音声で話そうという流れになります。現場でメンバーの表情を見るのか、自宅でslackのテキストを読むのかという違いじゃないでしょうか。

村田:
テキストから周囲の状況を読み取るスキルが必要になるということですね。対面ではない場合一番ストレスに感じるのは、やはりリアルタイムで相手が反応しない、という点もあると思います。たとえば、必ず決まった時間には返信をするといったルール付けなどはしているんでしょうか?

大関:
一切していません。slackはそもそもチャットルーツなので、本当に緊急であれば音声通話します。slack上でしか連絡をしないという人もいるかもしれませんが、逆になぜ音声通話をしたがらないのか疑問ですね。きちんと音声でリアルタイムにコミュニケーションをすれば、お互いの認識にズレもなくなるはずです。結局、slackだけでどうにかしようとすると、コミュニケーションコストが高くなってしまうのではないでしょうか。文章だけでは感情も温度感もわかりませんから。文章がきついけれど直接話してみたらそうでもなかった、という人もいますしね。

村田:
リモートで使えるツールを適宜使っていけるかどうかですね。

大関:
「slackで送ったのに反応がない」ということもありますが、それならリマインドをすればいいだけです。送って終わりではないのはリアルでも一緒です。

メンバーがリモートワークに向いているかの見極め

村田:
リモートでのコミュニケーションに関連して、それぞれのエンジニアがリモートワークに適しているかどうかを判断する要素はあるのでしょうか?

大関:
リモートはヌケモレや報告の有無、指示などをすべて相手がフォローしてくれるとは限りませんから、能動的なコミュニケーションを取れるかどうかが重要ですね。困ったときは自分から相談ができる、自分から仕事を取りに行ける。この2つがあればリモートワークは問題なくできると思います。仕様などに関しても、より良いものを自分から提案してくれる人が望ましいです。待ち姿勢の人にはつらいかもしれません。とはいえ、やはりこれはリアルでも同じことです。リアルで能動的コミュニケーションができていれば、リモートでもできるはず。リモートと会社、どちらの方が自分にとって集中できる環境かという違いだけですね。

村田:
マネジメント目線で見たとき、リモートを導入したことでパフォーマンスが上がるのかどうかという話もあると思いますが、大関さんの実感ではいかがでしょうか。

大関:
家族との時間などを大切にできる分リフレッシュしやすく、結果的に仕事に集中できるという面がありますね。パフォーマンスが上がります。逆に、先程言った能動的コミュニケーションが取れない人のパフォーマンスがガクッと下がったこともあります。事前にslackできちんと報告をするように話もしたのですが、進捗報告をしてくれなくて、状況が全くわからなかったんです。結局コーディングも完了していない状態でした。その人は普段からセルフマネジメントができていなかったので、当然リモートでもできなかった、ということなのだと思います。

村田:
組織全体としてリモートワークを受け入れるとなると、リモートに適合するかどうか一定のラインを定める必要もありますよね。「AさんはリモートワークしていいけれどBさんはだめ」という状況でハレーションが起きるという話も耳にしたことがあります。

大関:
起きましたね。そのときはきちんと理由を説明しました。リアルの場で上手くコミュニケーションできていない状態では、リモートも上手くいかないだろうと。それは僕だけの判断ではなく、周りのメンバーにも「その人がリモートで働くイメージができるかどうか」をヒアリングした結果でもあります。

村田:

360度評価に似ていますね。

大関:
僕一人では全員を完璧には評価できませんから。メンバーが「この人にリモートは無理だろう」と思った場合、ほぼ100%失敗します。

村田:
メンバーの欠点を指摘しあえるチームはチームとしてきちんと機能していると考えられますね。ある程度メンバーが同じ方向性で働いているからこそできる評価なのかもしれません。

大関:
何か仕事上のやり方がおかしいと思えば指摘し合いますし、僕自身もそういうチームを作りたいと思っていた部分は大きいです。空気を読んで発言しないのではなく、疑問に思えばぶつけて、わからなければ聞けばいい。スタートアップは強い思いを持っている人も多く、それが溢れて衝突しているように見えることもありますが、バックグラウンドを理解さえすれば全く苦ではありません。リモートを導入する前提としても、そういった組織の土台が必要だと思います。

副業の人材を採用するメリット

村田:
その文脈でいくと、正社員でも副業でも、ビジネスに対してどれくらいコミットしようと思ってくれているかの熱量も重要になりますね。副業の方に対して、ただタスクを渡してこなしてもらうだけという形になりかねないこともあると思いますし。

大関:
副業をしようという方は、働く先のビジネスに興味があると同時に、本業ではできないことを副業に求めているケースが多いです。

たとえば自社ではPHPは書けないけれど経験してみたいから副業を始めた、といったようなことですね。収入アップ以外のモチベーションが高いわけですから、スキルアップできる環境を用意する必要があると思っています。

そういった背景もあって、非常に優秀な人が多い印象です。フリーランスの場合、基本的にスキルの高い人たちはすでに囲われてしまっていて、市場から良い人材を見つけるのは大変なのですが、副業はそうではない。副業の方がさらに優秀な人を紹介してくれることもありますし、会社にとってのメリットも大きいです。

村田:
最後に、大関さんにとってリモート導入における最も大切なことは何ですか?

大関:
やはり新しい働き方の選択肢があって然るべきだということです。個人ごとにバックグラウンドが違い、企業側としては多様性への対応が求められる中で、時間と場所に縛られてアウトプットができない、成長ができないという環境は機会損失でしかないですから。重要なのは働き手が選択できることです。

もっと働く選択肢が増える世の中が早く来て欲しいですね!

村田:
そうですね! 本日は、ありがとうございました!

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伊藤 大樹
【 インタビュアー 】
村田 拓紀: 株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 FLEXY部 マネジャー
 
中古車のマーケットプレイスシェア首位の企業にて拠点責任者、営業戦略策定、メンバーの採用から育成まで幅広く従事。IT企業を経てサーキュレーションに入社。現在はIT戦略における中期ロードマップ策定、IT企画人材育成に向けた技術顧問活用プロジェクトなどDX推進に舵を切る多くの企業を支援。

企画/編集:FLEXY編集部

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