資金調達時に重要なのはVCへのプレゼンテーション:PLAID柴山氏

PLAID柴山直樹氏

※本記事は2016年7月に公開された内容です。

先日、FLEXY関連イベントとして開催された、第2回Ex-CTO meetup。「ベンチャーの資金調達方法と使い道、CTOの果たすべき役割とは?」をテーマにCTO経験者同士のディスカッションが行われました。
今回は、当日深掘りし切れなかった内容について、ご登壇頂いた株式会社プレイドの柴山氏に、個別に話を伺いました。

インタビュイー/インタビュアー紹介

柴山 直樹(しばやま なおき)氏

柴山 直樹様

株式会社プレイド 取締役CTO

東京大学工学部にて神経科学、チューリッヒ工科大学にてロボティクス、 東大大学院にて分散環境における機械学習の研究に従事。2009年未踏本体採択。2013年同大学院博士をドロップアウトし、同社CTOとして参画。

専門家:黒田 悠介氏

黒田 悠介様

サーキュレーションの登録 NOMAD
日本のキャリアの多様性を高めるために自分自身を実験台にしている文系フリーランス。ハットとメガネがトレードマーク。ベンチャー社員×2→起業→キャリアカウンセラー→フリーランスというキャリア。
主な生業はインサイトハッカー(プロインタビュアー)とディスカッションパートナー(壁打ち相手)で、新規事業の立ち上げを支援しています。 個人では「文系フリーランスって食べていけるの?」というメディアを運営。

「カネ」の調達だけでなく、「ヒト」の調達も大事

黒田悠介氏(以下、黒田):先日はイベントにご登壇いただきありがとうございました!ここがイベントでもお話されていた例のオフィスですね。オシャレで働きやすそうです。

柴山直樹氏(以下、柴山):ありがとうございます。ここには2回目の調達後に引っ越してきたので、まだ8ヶ月くらいですね。

黒田:調達は確か2014年に1.5億円と2015年に5億円の2回でしたよね。イベントでお聞きして「人」と「設備」に使っている印象を受けました。

柴山:そうですね。分かりやすく人とオフィスに使いました。オフィス自体も「採用」と「働きやすさ」を目的としているので、全て「人」のために使ったとも言えます。1回目の調達では恵比寿に、2回目の調達でこの五反田に移転しました。

黒田:調達した資金は元々の計画通りに使えたということでしょうか。

柴山:1回目の調達時にはリリース前のステルス状態でやっていたので、人への投資に限定して割と計画通りに使いました。1.5億だとすぐなくなっちゃうね、みたいな(笑)2回目の調達では、採用計画ではもっとアグレッシブだったんですけど、思うようにいかないという誤算がありました。ほぼ僕や代表の知り合いで集めた30人くらいの社員でやっているのですが、計画では現時点で50人を超えている予定でした。また、売上はまあまあ予測通りだったので、それもあってお金が余ってしまった感じです。もっと他のところにも使えばよかったです。

黒田:例えばマーケティングとかですよね。

柴山:ええ。お金の使い方次第ではスピードがもう少し出せたなと。マーケティングにもアグレッシブな予算をつけていたんですが、なかなかそのお金を使って動かせる余裕がみんなに無かった。お金を使うのにも頭を使いますし、社内にナレッジを貯めていく作業も必要ですし。

黒田:完全に外注してしまうと社内にナレッジが貯まらなくて、外注に依存しちゃいますしね。

柴山:そうなんですよね。ナレッジを残しながらお金を使いたいが、そのための人的リソースが足りないというのが課題です。2015年の調達前は特に、VCに話せる実績を作るためにも「クライアント数」や「売上」を追求していたのですが、そういった目標を追っていると少人数では開発と営業以外には人が回らない。

黒田:ここに使えばよかった、というよりは使うためにも採用計画を前倒しにしておけばよかったという感じですね。

柴山:合わせて、元々の計画ではもう少し代理店を動かせているはずだったのですが、そこもうまくいかずに直販ばかりになってしまいました。サービスがちょっと単純ではなかったのと、運用に負荷がかかってしまうのがネックでしたね。それによってなおさら人手が足りなくなっていった感じです。

黒田:代理店を動かしてレバレッジをかける人が必要だったのかもしれませんね。

柴山:確かに。私たちの事業であるWeb接客は「価値観売り」の側面があって、なかなか難しかったみたいです。実利的なメリットだけではなくて理想論や世界観に共感してもらう必要がある。啓蒙のような時間もかかります。自分たちで営業する場合も、大手の場合は理解の浸透に時間がかかるため、何度も話をする必要があります。導入後にも使い方をレクチャーする手間もかかります。

黒田:営業の負担が大きいですね。

柴山:その負担を減らすサポートの部隊も作ったのですが、営業からの受け渡しが上手くいかず抱えてしまっていたようです。そうすると動きが悪くなって獲得営業に手が回らなくなっていました。プレイドとしてはまだまだ採用に積極的なので、採用計画のビハインドを取り戻していきたいと思っています。

黒田:特にエンジニアにとっては、経営者とエンジニアの距離がとても近くエンジニアリスペクトのある良い会社ですね。興味がある方は応募してみてください。

事業の「進め方」に理解のあるVCを選ぶ

黒田:採用計画からのビハインドについて、調達先のVCは何か言ってきませんでしたか?

柴山:そこは代表が上手だったのもありましたし、VCさんが僕らを見守ってくれるスタンスなのが幸いして摩擦はなかったですね。

黒田:VC側が長期スパンで見てくれている、という感じなんですね。「価値観で売る」というサービスとの相性が良さそうです。VCを選ぶときにそういった条件を持っていたということでしょうか。

柴山:僕らは長めに計画を立てるタイプなので、タイムスパンが合うことが重要ですね。夢の方を見てくれるというか。そういう意味でFemto Startupの磯崎さんは良いですね。他の投資先も順調ですし、VCとしてスタートアップの背中を押してくれる力があるんだと思います。Fidelityさんも似ていて、長期のところで僕らを評価してくれています。また、Femtoに曽我さんという方がいらっしゃるのですが、兄貴肌で前向きな方なので雰囲気を作ってくれます。

黒田:人柄や雰囲気も大事なんですね。

柴山:月に2回くらいVCさん交えて経営会議をするのですが、そこの雰囲気はいいと思います。人としての相性もそうですが、やはり事業の進め方との相性ですね。事業の進め方として短期で駆け抜けるタイプだったらそういうVCさんと組むべきだし、VCにハンドリングしてほしいという起業家がいたらそうしてくれるVCの方がいいわけで。

まず「数字」、次いで「価値観売り」

黒田:VCを選ぶ前の段階で、VCへのプレゼンテーションがありますよね。どういったところを工夫されたのでしょうか?

柴山:1回目と2回目の調達でそれぞれポイントがありました。1回目はデモ程度のものしかなかったので、数社にテスト導入して得た数字を元にプレゼンテーションしましたね。特に僕たちの場合は、導入によってどのくらいサイトのバリューアップにつながったのかを数字にして出しました。Google Analyticsのアカウントももらって数字と格闘していました。一番分かりやすく数値が出たのが、会員登録系のある施策でした。できたばかりのECだと登録者数が大事ですから、そこを重点的に対策して1ヶ月位試行錯誤してコンバージョンが倍になったんです。しかしある時、そのECがシステム改変をして僕達のサービスのタグが抜け落ちた状態になってしまったんです。するとコンバージョンが半分になったという分かりやすい結果が出ました。

黒田:予期せぬ実験になったわけですね。VCへのプレゼンテーションではまずは数字という根拠を作るのが重要だと。

柴山:VCさんとは担当者に会って話をするわけですが、彼が持ち帰ってから話を上げるためには数字が必要なんですよね。打ち合わせの場がどれだけ盛り上がったり、共感してもらえたりしてもあまり意味が無い。お客さんの声のような定性的なものは弱い。ある程度VCとの話が進んだ段階でそういった情報を提供するのはありかもしれませんが。

黒田:出せる数字次第でバリュエーションも変わってきそうですね。バリュエーションを上げるためのコツってありますか?

柴山:いろいろやり方があると思いますが、バリュエーションを上げるためには未来の話をして理解してもらう必要がある、というのが僕らのやり方でした。ここも「価値観売り」と共通するのですが、世界観や未来像を伝えていくイメージです。数字で伝えられるのは時間軸としては直近のことに限定されてしまうので、その後にどういったステップがあって、最終的に何を目指しているのかを伝えていくのが良いですね。あと自分たちとはあまり関係ないですが、AIやフィンテックのようなバズワードと事業会社さんであればバリュエーションのセオリーみたいなのが違うようなので、上手く使っていくといいかも。とはいえ、あまり”AI”のようなものに頼ってバリュエーションをつけると自分達もVCさんも本質を見失うと思うので、僕らとしては極力そういう話はしないようにはしています。あとで自分達が困りますしね。

黒田:デモのときには誰が話をされたのでしょう。

柴山:私と代表の倉橋ですね。1回目の面会は倉橋がして、2回目に私と倉橋がデモをするという感じでした。倉橋の方ではわざと僕を2回目に出すことが多かったようです。1回目ではビジネス面での温度感を高めて、2回目で僕の経歴を伝えたり数字を出したりしてテクノロジー面での温度感を高めるという役割分担をしていました。

黒田:かなり戦略的に面会していたんですね。2015年の2回目の調達についてはどういったプレゼンテーションをしていたのでしょうか。

柴山:一回目の1.5億で数値を作ろう、というところでやっていたので、まずは分かりやすく「アイコン企業」と「クライアント数」ですね。また一回目と同じく長期の話をする「価値観売り」をここでも意識していました。

黒田:ちなみに次の調達の可能性はいかがでしょう。

柴山:次の調達はマストなのかどうか、まだ議論はまとまっていませんね。すでに収益化できているので、過去2回のリードタイムを生き抜くための資金調達とはフェーズが異なります。攻撃的に行くための資金調達としてはアリだと思っています。CFOの採用を若干やっていたりはして、面接でもそういう話をすることはあります。ただ、外部の方は難しいかもしれません。未来のことを伝えきれないうちに「どんなファイナンスしますか?」と聞いても有り体の答えしか返ってこない。

黒田:「そりゃそうだよね」みたいな感じになっちゃうわけですね。事業内容や社内状況とか、色々な要素がありますもんね。

柴山:そういうわけで、追加で資金調達するかどうかはまだ考え中ですね。今のうちに調達しておけ、みたいなアドバイスもありますが。

黒田:今はちょっとしたバブルとも言えますね。そういう事情に流されず、可能なら自己資金でやっていくのが一番だと思います。

資金面だけでなく、技術面も支援できる投資家が必要

黒田:少し話題が変わりますが、VCに技術がわかる人間が少ないのではないか、という話題があります。

柴山:確かにいたほうが良い場合もありますね。技術的な戦略も分かってくれそう。僕達は大手企業が参入することを前提に考えて1年間は解析技術でリードタイムを取るということを目標にVCにも伝えていたのですが、それが実際技術的にどれくらい難しいのか、先行者利益がどのくらいあるのか、そういったポイントを理解してもらいやすいと思います。

黒田:デモだけでは分かってもらえない部分ですね。理解してくれるが故に「人工知能って言ってるけど違うよね?」みたいな厳しい指摘をしてくるかもしれませんが。

柴山:それはありますね。実際、僕もVCさんからの依頼でヒアリングの同行をすることがあります。特に自分が大学の頃専攻してたことから人工知能・機械学習系のベンチャー企業に行って技術面とビジネス面からVCにアドバイスを求められたりすることはあります。特にテクノロジー寄りのサービスだと技術的な評価が難しいですからね。

黒田:それは面白いですね。やはりVCにおけるCTO的人材のニーズはありそうです。採用面でのサポートにもなるかもしれませんし。

柴山:それはいいですね。採用の広告塔になってもらえたら尚良いですね。ただその場合はエンジェルとして関わってもらう方がいいかもしれませんが。

黒田:なるほど。インタビューは以上です。VCへのプレゼンテーションやVCの選び方、お金の使い所などお聞かせいただきありがとうございました!

まとめ

資金調達におけるCTOの役割をテーマに、株式会社プレイドの柴山直樹氏にお話を伺いました。「カネ」の調達はもちろんですが「ヒト」の調達の重要性や、資金面だけでなく技術面でも支援できる投資家の必要性については共感できるポイントも多かったのではないでしょうか。

記事作成:黒田悠介・村上 亮太
撮影/高瀬 亜希

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