ビジネスにおけるデザイン手法〜戦略的なデザインを実現する手法に迫る〜

2020年11月17日に開催されたCREATORs meetup。第2回の開催となる今回は、ビジネスにおけるデザイン手法〜戦略的なデザインを実現する手法に迫る〜がテーマです。

登壇者は、デザインと経営を結びつけながら「デザインの価値」を伝え、第一線でビジネスを牽引している方々をお迎えしました。

常日頃どのような思考や手法を用いて優れたデザインをプロダクトに落とし込んでいるのか、非デザイナーとどのようにコミュニケーションを取っているのか、その秘密に迫ります。

登壇者

生谷 侑太郎 氏
生谷 侑太郎 氏|MNTSQ,Ltd 取締役/デザイナー

AnyPayにてわりかんアプリpaymoおよびブロックチェーン関連プロダクトの立ち上げに参画した後、PM & UI/UX Designerとして独立。リーガルテック・カンパニー「MNTSQ」を共同創業し、プロダクトとHR/コーポレート領域を管掌。
山崎 聡 氏氏
山崎 聡 氏|エムスリー株式会社 執行役員 VPoE/PdM/CDO

大学院博士中退後、ベンチャー企業、フリーランスを経て、2006年、臨床研究を手がけるメビックスに入社。2009年、メビックスのエムスリーグループ入り以降、エムスリーグループ内で主にプロダクトマネジメントを担当する。2018年からエムスリーの執行役員。2020年4月からはエンジニアリンググループに加えて、ネイティブアプリ企画部門のマルチデバイスプラットフォームグループと全プロダクトのデザインを推進するデザイングループも統括。2020年10月よりCDO(Chief Design Officer、最高デザイン責任者)に就任。

ビジネスにおけるデザイン手法について

デザイナーが幅広い領域を手掛け、事業をリードしている2社

ファシリテーター:今回のテーマは「ビジネスにおけるデザイン手法」ということですが、日本企業に所属しているデザイナーの大きな悩みは「どのようにビジネスに貢献すればいいのか」または「ビジネスへの貢献をどのように証明すべきなのか」という部分です。そのあたりについて、本日は数字に責任を負う立場としてデザインに関わっていらっしゃるお二人に伺っていこうと思います。

まず、生谷さんは企業で唯一のデザイナーだそうですが、普段はどんな立場でどのようなミッションを持って活動されているのでしょうか。

MNTSQ,Ltd 取締役/デザイナー 生谷 侑太郎 氏(以下、生谷):当社はまだ人数が少なく部署が分かれていないので、メンバー全員で会社のマイルストーンや事業計画、営業のログなどを共有しています。プロダクトの方向性や検証したい価値仮説もシェアしていて、「ユーザーがこういうときに困りそう」「こういう機能が必要なのではないか」「こういう価値を訴求すべきではないか」といった社内メンバーの思いつきやインサイトがどんどん上がってくるようになっています。

僕自身もいろいろとアイディアを出しつつ、特に事業として価値がありそうな事柄は何か、足元では何から優先してやるべきかといった全体の計画や方向性のアラインをリードしています。その過程ではある程度デザインも作り、実際に実装した上で継続すべきかどうかをどんどん議論します。

基本的には僕がデザイナーとプロダクトマネージャーを兼任し、プロダクト開発をどういう方向性に進めるかを最終的に決めるという動き方ですね。

ファシリテーター:プロダクトマネジメントができるデザイナーというよりは、デザインができるプロダクトマネージャーに近いですね。MNTSQ(モンテスキュー)さんの社員20名が1つのチームとなって新しい事業を作っている点を踏まえると、まさにスタートアップの前線で戦っている孤高のデザイナーという立ち位置なので、非常に面白い話が聞けそうです。

では、山崎さんはいかがでしょうか。エムスリーのデザイナー組織はどんな組織で、どのようなことをしているのでしょうか?

エムスリー株式会社 執行役員 VPoE/PdM/CDO 山崎 聡 氏(以下、山崎):実はMNTSQさんに近い状況でデザイナーがそれぞれの事業で各自頑張っています。まず会社について簡単に説明すると、当社は東証一部上場で、時価総額は5兆円超(当時)。昨今のコロナ禍もあって非常に注目度の高いメガベンチャー企業と言われています。一方、エムスリー本体の従業員数は470名ほどです。20を超える事業を展開しているため、事業あたりの従業員数の平均は20~25名程度です。

デザインに関してはデザイングループと呼ばれる全社横断的な組織があり、所属デザイナーは2020年11月現在で12名です。この12名が1人1事業を見る形で配置されています。そのためデザイナーがカバーする領域は非常に幅広く、サービスデザインや事業のロゴデザイン、プロダクトデザイン、さらにプロモーションまで行います。事業単位で見るとスタートアップ的で、デザイナーはそこに所属する唯一のデザイナーという感じです。

実際のスタートアップのデザイナーと異なるのは、デザイングループの12名が横で連携して勉強会や事業説明会などを行い、お互いの最新状況をシェアできることですね。

ビジネスにおけるデザイナーのバリューは「事業の成功」にある

ファシリテーター:では改めて、第一のテーマである「ビジネスにおけるデザイン手法」についてディスカッションしていきます。手法と言うとハウツーのようになってしまうので、どちらかと言えばデザインのバリューそのものに関するトークができればと思っています。

デザイナーはまだ世間的に「絵を描く人でしょ」と言われたりしますが、これはデザイナーという職種の生み出す結果を数値化して評価しづらいことが要因の一つです。さらに、案件に応じて発揮すべき能力も全く異なります。

このような状況において、デザイナーのビジネスにおけるバリューはどう測るべきか、そもそもビジネスにどうコミットしていくべきかという点についてお伺いしたいと思います。山崎さん、いかがでしょうか。

山崎:エムスリーは今まさにそこを工夫しています。先程お伝えしたように、エムスリーは1事業に対してデザイナーが1人配属されるのが基本スタンスで、業務委託の方を含めても2人程度です。こういった体制では、最終的にデザイナーも事業責任を負うことになります。事業を成長させるためにデザイナーとして何ができるのか、さらにはプロダクトチームの一員としてデザイナーがどういうバリューを発揮していくのかが仕事のテーマです。

ファシリテーター:成果が果たしてデザインのおかげなのかどうか、どのように説明しているのでしょうか。

山崎:大きくは2つあるのですが、第一の軸は「事業が成功していればそれで良い」という考え方があります。

プロダクトやデザインは方法論であり、最終的なゴールはユーザーの困りごとを解決して対価を得ることです。これがビジネスの基本なので、サービスやプロダクトが世の中にバリューを発揮しているかどうかが最も重要な評価指標になります。

我々で言えば医療を前進させるイノベーティブなサービスを展開できているかどうかですね。ですからデザイナーもプロダクトチームの一員として、例えばクラウド電子カルテ事業なら半年間で何件導入できたのか、といった具体的な数字を背負うことになります。

第二の軸は、事業目標の達成にデザイナーとしてどう貢献できたのかということです。デザイナーがそれぞれ今期にチャレンジしたいことを決めて、果敢に挑むという取り組みをしています。

評価方法はいろいろとありますが、わかりやすいのがNPSを取ることです。9点や10点の人に理由を聞くと、「使いやすい」「目に優しい」といった意見が直接出てくる場合があります。それはやはりデザイナーの頑張りによるものですし、「デザインが優れているからこのプロダクトは良いものである」と経営陣に説明しやすい状況を作れます。

「デザインありきのプロダクト」によって価値を発揮

ファシリテーター:MNTSQさんとしては、デザイナーの事業貢献の在り方についてどのように考えていますか?

生谷:当社はプロダクトで価値を出して対価をいただく企業なので、最終的に良いプロダクトがユーザーに価値を提供できているかどうかが一番重要です。

その中でデザイナーが頑張るべきなのは、たくさんのアイディアを比較検証し、どこに力をかけるとどんな価値が生まれるのか、解像度を高く保つことです。価値の源泉を生み出し、どういうビジネス展開をするか選べる状況を作るのが、デザイナーに期待されている部分だと思います。

評価の仕方は事業のフェーズによって異なります。当社の場合はまだPMFの前段階で、価値仮説の検証をガンガン行っている立ち上げフェーズです。このタイミングでは価値仮説の検証による学びを最大化できたか、あるいはどの程度アドバリューしたかを見ることができます。事業全体の成果を個々人の動きに分解はできませんが、価値仮説の検証で毎日誰が何をリードして何を学べたのかといったことは、意外とわかりますよ。

事業のフェーズが進んでスケールさせていく段階になったら、やはり選んでもらえる理由をどれくらい作れたかが重要です。事業がB向けかC向けかで気にするポイントは変わりますが、当社は基本的に大企業を相手にしているので、顧客企業の内部決裁において「使いたいプロダクトはMNTSQだ」と言ってもらえることが大きいので、プロダクトがしっかり現場のオペレーションに浸透しているか、企業に分かりやすく価値を提供できているかといったことを見ながら、例えばNPS、インタビュー、アンケートなどの結果の変化を重視するかなと思います。

ファシリテーター:社内で「デザイン価値が高い」と一番思われるのは、やはり学びを最大化したりフィードバックをしたときなのでしょうか?

生谷:学びの最大化に関してはメンバー全員がコミットするのですが、特にデザイナーは高い期待がかけられますね。「デザイナーが持ってくる学びや解像度の高さはすごい」と評価されていることは大切だと思います。

また、プロダクトを立ち上げて初めてお客さんに導入してもらう段階において、我々は常にデザインで事業をドライブしてきました。もちろんプロダクトの構想や市場背景、経営課題などのアラインを取ることも重要ではあります。しかし、「それらを解決するものとして我々が考えたプロダクトがこれである」と最終的に提示するときには、デモを見せるだけですごさを伝え、デザインを中心に説得を前進させられるようにこだわっているんです。その結果、うちの会社では「事業はデザイン(プロダクト)ありきだ」という認識になっています。

メンバーとプロダクトの違和感を共有し、コミュニケーションを取る

ファシリテーター:生谷さんは自分以外は非デザイナーという状況ですが、他のメンバーとはどのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか。気をつけている点があればお伺いしたいです。

生谷:社内コミュニケーションにはSlackを使っています。その中に#product-feedbacksというチャンネルがあり、プロダクトに対して思ったことや感じたこと、不具合なども含めて何でも投稿してもらっています。チャンネル運用のために、投稿しやすい空気と、みんなが定期的に投稿できる時間も作りました。

メンバーがプロダクトに対するクレームや違和感を投稿してくれるのが一番助かるのですが、最初はプロダクトを否定するようなことをどこまで書いていいのか不安に思ってしまうものなので、そういう状態になっていそうな人については個別にコミュニケーションを取ります。「僕は全然イケてないと思っていて、ここがだめだと思う」と言うと「自分もそう思いました」と返ってくるので、そこを教えてほしいのだと伝えます。

もちろんデザイナーと素人なので見解には差が出ますから、受けた意見に対しては時間の許す限り、どういう理由でそのデザインにしているのかを具体的に伝えます。するとデザイナーが何をどんな風に考えてデザインしているのかをわかってくれますし、自分が感じたことをとりあえず投稿したらプロダクトが前進するのだと受け取ってくれます。

気をつける点は、フィードバックに対する反映が遅くなり、モチベーションが下がってしまわないようにすることです。スピーディに進められるものは素早く進め、判断が難しいものは議論の進捗が見えるようにしています。

ファシリテーター:山崎さんはいかがですか?

山崎:デザイナーはモテモテですね(笑)。各事業に一人か二人しかいないので、みんなの相談役です。メンバーにとってデザイナーはプロダクトマネージャーと伴走してくれる事業上の良きパートナーという立ち位置なので、デザイナーとそれ以外の職種の間でコミュニケーションの問題はあまり起きていません。

これからのデザイナーに求められる能力について

デザイナーとしての専門性の上に必要なプロダクト志向

ファシリテーター:では次のテーマに移ります。デザイナーは領域が幅広い職種で、企業によっては専門分野ごとに仕事を切り分けていたりします。そんな中でデザイナーに求められる能力とはどういうものなのか、山崎さんいかがでしょうか。エムスリーの定義でも構いませんし、広くデザイナーという見方からの答えでも構いません。

山崎:2階建てになっている気がします。1階部分となるのは、やはりデザイナーとしての専門性です。絵が下手だったり色彩センスが無いデザイナーはどうなんだという話になってしまうので、専門性は当たり前のように必要だと思っています。

その上にこれからのデザイナーに求められる要素があるわけですが、それを知るにはまず今の世の中の大きな流れ、例えばSaaSやIT、さらに言えばビジネスがどうなっているのかを知る必要があります。現在はやはりプロダクトの重要性が増していますね。書籍『1兆ドルコーチ』でも言われていましたが、「最後はプロダクトだ」というのが世界的な流れです。

日本においてもそれは同じで、企業が生き残るための競争戦略として最終的にサービスの差別化をするには、プロダクトが重要になっています。そういう意味では、デザイナーに求められているのは一言で言うと「プロダクトチームの一員としてバリューが発揮できるかどうか」です。ここが今までとこれからのデザイナーの大きな違いになると思います。

ファシリテーター:プロダクトにどれだけ向き合えるかということですね。

山崎:プロダクトもそうですし、プロダクトチームに向き合うことも重要です。例えばプロダクトマネージャーの意図をどこまで汲めるか、エンジニアをどこまでやる気にさせられるかといったことですね。

プロダクトマネージャーはどちらかというとプロダクトの世界観や方向性といった目に見えないものを創るのが仕事で、デザイナーはその世界観を目に見えるリアルな形にするのが一番重要な仕事です。そういう意味でも、これからのデザイナーにはよりプロダクト志向やプロダクトチームの一員であることが求められるだろうと思います。

常に最善を求め、昨日の決定を「ぶち壊す勇気」が重要

ファシリテーター:生谷さんはプロダクトマネージャーとしてもUI/UXデザイナーとしても活躍されており、あらゆる仕事をこなしてきたと思いますが、デザイナーには今後どんな能力が求められるとお考えでしょうか。

生谷:山崎さんがおっしゃったことにかなり共感していますが、僕の言葉で追加できる部分をお伝えできればと思います。

まず、プロダクトについて経営レベルで意思決定をする際は、どうしても売上アップのための機能リストの話になりがちです。しかし、プロダクトに価値が出ているかどうかは機能面だけではなく、さらに高い解像度で言語化しなければいけません。その上でまず何をすべきなのかを見定め、事業の意思決定を舵取りする必要があります。

よくあるわかりやすい例が他サービスとの連携です。AとBを連携させることが経営や事業の意思決定においてマイルストーンになったりするのですが、どう連携すれば良いユーザー体験になるのかには3~5段階のレベルがあります。プロダクトが事業そのものになっている現状においてどのレベルまで到達すべきなのか、逆に最低限クリアすべきレベルはどこなのかといった議論にまで踏み込んで意思決定しないと、厳しい状況になります。逆に言えば、そこまで踏み込めるデザイナーは非常に価値があるんです。

そうなると、ファシリテーションや言語化能力が必要になります。相手の違和感を具体化して認識を擦り合わせ、言葉やストーリー、あるいは絵やプロダクトといったさまざまな手法を使いながら意思決定をサポートすることが重要ですね。

また、チームで動くときにデザイナーが持っていないと厳しいのが「ぶち壊す勇気」です。ものを作るときは前段階でいろいろな意思決定をして大体の方向性決め、その上で検証を始めます。しかし、トライしてみて駄目そうだったら、全部ひっくり返して別の方向で進めなければいけません。前工程で決まったことを確定だと捉えていると良いものはできないので、ヤバいものは遠慮なくぶち壊すということです。企業によっては壊すことで空気が悪くなるタイミングもあると思いますが、良い意味で空気を読まずに、ヤバいものはヤバいと言えることが重要です。

ファシリテーター:そのために必要なのが、山崎さんがおっしゃっていたようにプロダクトチームにどれだけ向き合ってコミットするかということですね。巻き込み力やコミュニケーション能力と言ってもいいと思います。急に「この方針じゃだめだ」と何の前説もなく言われると「だったら先に言ってくれ」ということになるので、同じ説得でも言い方に左右されるのだと思います。

山崎:非常に共感する部分が多い話でした。エムスリーは基本的に社内ミーティングや経営会議の議事録は取らない文化があるのですが、それはやはり昨日の答えが今日も正しいとは限らないからです。今日新しいことを言ってもいい雰囲気を作りたいので、生谷さんがおっしゃっていたことと本質は同じなんですよね。

より良い答えを模索する中で我々は常に学んでいますし、学びを得たことでさらに新しい気づきもある。デザインのみならず、クリエイティブな場面には重要なエッセンスだと思います。

デザイナーはプロダクトを作り終えた後のことを意識してほしい

ファシリテーター:先程は上位概念の話でしたが、例えばワイヤーを組んでディレクションすれば問題なくデザインできるデザイナーが入社したら、具体的にどんなスキルを身に付けてほしいでしょうか。山崎さんの場合は新規事業のリードデザイナーの下に付くデザイナー、生谷さんの場合は自分の後継デザイナーというイメージです。

山崎:エムスリーは本人のWillを非常に大切にする組織なので、その人によって変わります。一人のデザイナーに求められる範囲が広い分、どの事業でもバリューを発揮できますから、配属先も本人の興味や伸ばしたい分野をヒアリングし、我々の課題と擦り合わせた上で本人が成長できるチームにアサインを決めます。

プロダクトが数多くあり、事業ごとのフェーズも異なるからこそできることなので、そういう意味では恵まれた環境なのかもしれません。

ファシリテーター:ちなみにエムスリーさんは現在デザイナーの募集はしていますか?

山崎:バリバリ募集しています。4月時点で10名だったところから2021年3月末までに20名に増やす計画があるので、ぜひご応募よろしくお願いします。「エムスリー デザイン」で検索いただければ採用関連の情報が出てきます。

ファシリテーター:デザインチームの環境はかなり良さそうですね。では生谷さんはいかがでしょうか。

生谷:デザイナーとしてのしっかりした基礎能力は必要です。あとはiOSやAndroid、Web、PCのネイティブといった閲覧デバイスごとの「それっぽさ」を出すための作法やマナーを知っておくことですね。最低限、適切なユーザーインターフェースや部品を選べなければいけません。

ただ、デザインを作って終わりではそこで停滞してしまいます。プロダクトに永遠にそのままでいい、今の状態で完璧だというものはほとんどなく、大体はわからない部分があったり、状況次第ではアップデートが必要だと思いながら作っています。お客様にプロダクトをデリバリーした後、実は想定した使われ方をしていなかったということもあり得ます。

プロダクトが使われているシーンを観測した上で「思っていたのと違った」「もっと良いものにできたのでは」といった要素を持ち帰り、次は何をしたらいいのかを議論し、仮説検証する。どれだけ時間がかかってもいいので、まずは一つの機能ユニットでこれをできるようになることを最初の目標にすると、ステップアップにつながるのではと思います。

ファシリテーター:クリティカルなスキルというよりは、そういう思想が無いといけないということですね。

質疑応答

デザインを追求するのはプロダクトに投資をするのと同じこと

質問者:デザイン経営をするにあたり、CEOなど経営陣を納得させることが重要だと思いますが、どのように理解させ、納得してもらう方法がありますか?


山崎:サービスやプロダクトがより重要になっていることは経営陣であれば当然理解しているはずなので、デザインが収益に直結すると説明するのが一番早いですね。デザイナーの中にはたまに「利益に関係無いけれど、こういうことをしたい」と言ってしまう人がいるのですが、そう表現すると利益に関係無いならやめておこうという話になってしまいます。しかし、本来プロダクトを良くしていくことであれば利益に関係無いなんてことはあり得ません。

そもそも説明しなければならない状態になっている時点で負けているので、デザインが利益に直結するのだという認識の土台を作ることが非常に大切ですね。

ファシリテーター:デザインはともすると表面的、一義的なものに見えてしまいますし、非デザイナーの方でもなんとなく好き嫌いだけは言えてしまう側面があります。デザイナーはそういった土俵外の部分を、理路整然と説明する能力が必要かもしれません。生谷さんはいかがですか?

生谷:意思決定者との認識を上手くアラインできていないだけというケースは結構あるかなと思います。プロダクトによって事業収益が生まれているのなら、「デザインに力を入れたい」というのは「プロダクトに投資をしましょう」と言っているに過ぎません。それが大前提です。自分がデザイナーという立場だとデザイン以上のことに言及してはいけないと思ってしまうかもしれませんが、やはりデザイナーもプロダクトの価値にコミットしているので、「プロダクトを良くしていきましょう」と大きな言葉を使って構わないのだと思います。

一方で、プロダクトから得られる収益は市場を見ていてもこれ以上伸びなさそうで、労働集約型のサービスとして売上を伸ばすのが事業にとって正しいフェーズもあり得ます。その場合、デザインに力を入れるべきなのは別の事業かもしれません。だとすれば新しい収益源を作るために近接領域のニーズを発掘し、新事業やプロダクトを立ち上げる方向にデザインを使いませんかという提案の方が筋が良いですし、経営陣も「それは今のうちにやっておいてほしい」と同意してくれるのではないでしょうか。

プロダクトで実現したいことや方向性が変化する過程を共有

質問者:チーム内の共通認識の伝え方で特に注意していることや意識していることなどを具体的にお伺いしたいです。


山崎:開発時にプロダクトのPRD(製品要求仕様書)を作るのですが、これはプロダクトの世界観を共有するために重要なものです。我々は仮説検証をしてどんどんピボットしていきますから、PRDもどんどん進化します。その中で方向性も変わるわけですが、特になぜその時点で変わったのかという理由を共有することが大切です。これは良いプロダクトを作っていくためでもありますし、何をしたらチームからそれぞれのメンバーが評価されるのかを認識できるからでもあります。デザイナーであればどういうアウトプットを出せば事業に貢献できるのか確認する意味でも、ポイントになると思いますね。

ファシリテーター:生谷さんはいかがですか?

生谷:何か制作するとなれば、デザイナーだけではなくエンジニアやビジネスサイドのメンバーを巻き込んで進めることになると思いますが、そのときによくやるのがキックオフです。キックオフドキュメントにやりたいことや想定している設計、スケジュール、メンバーなどを書いて認識合わせをします。

このとき意識するのは、HowよりもWhyです。Howが書かれているとエンジニアなどは何も考えずに業務をスタートできるかもしれませんが、あくまで今の想定でしかありません。本当にそれで良いのかどうかはわかりませんし、何か変化が起きたときにHowだけが羅列してあっても理解しづらくなってしまいます。そもそも何がしたかったのかという大枠の認識をアラインできるかどうかが全てのスタートなので、そこを手厚く書くんです。

仕様書のように実現したいことを細かく羅列しても良いのですが、それよりもさらに上のハイレベルコンセプトのイメージで、このプロジェクトの目的を示す言葉を頑張って作ることを意識しています。僕が勝手に作った最初のたたき台を、みんなでコミュニケーションを取りながらより良いものにアップデートしてもらって構わない、という感じです。

デザインに関する悩みの要因が本当はどこにあるのかを探る必要がある

質問者:デザイナーとともに、ユーザー価値やUX向上のためのさまざまな活動やプロダクト開発をしていきたいと思っています。しかし、現状として組織のデザイナーは表面的なデザインしかできません。どこから手をつければ良いでしょうか。


ファシリテーター:今日の本質的な質問ですね。生谷さんからいかがでしょうか。

生谷:デザインというよりは組織論に近いかもしれません。この質問自体は教育的な観点について考えているのかなと思いました。教育とは再現性のことなので、「こういう感じになるといいよね」という絵が何となくでも想像できている、あるいはロールモデルがあることが重要になります。

ですから、もし社内メンバーがデザイン的にあまり良い動きができていないとすれば、どんな手段でも構わないので「上手くいったケース」を最優先で作るべきです。例えばデザインファームのコンサルやフリーランスの優秀なデザイナーに声をかけて、プロジェクトのデザイナーとしてリードを依頼する方法があります。軋轢が出たとしてもできるだけその人の思うようなやり方で進めてもらい、何とか頑張って「良いデザイナーがいる場合の動き方」の事例を社内に作るんです。組織のデザイナーがオブザーバーとして見たり、一緒に参加したりします。

成功は大きな力になりますし、何より従来のやり方との具体的な差を振り返ると、次のアプローチが見えてくるでしょう。

ファシリテーター:ありがとうございます。核心的な部分でしたね。山崎さんいかがですか?

山崎:2つ想定したほうがいいと思いました。デザイナーの方に能力がなく上手くいっていないパターンなら、先程生谷さんがおっしゃったように外部人材を連れてきてお手本を見せるのが早いかもしれません。

一方で、この問題はデザイナー以外の人が原因の場合もあります。プロダクトマネージャーのコンセプトや世界観がデザイナーに伝わっていないといった可能性ですね。この場合は、まずデザイナーとじっくり話し合ってみてほしいです。画面設計などではなく、プロダクトがどんな人にどんな使われ方をされるのかというプロダクトの外側について繰り返し会話し、曖昧な点が出てきたらデザイナーと一緒にユーザーの話聞きに行く。すると、デザインの表層的な部分を担当しているデザイナーであってもプロダクト志向が身に付きます。

このようにデザイナーを巻き込んでみて、プロダクト志向があるかどうかを見極めてみるのが良い気がしますね。

ファシリテーター:非デザイナーのデザインリテラシーは大きな課題のような気がします。「良いデザイナーがいないから採用をしたい」とおっしゃる方は多いのですが、実は社内にちゃんとしたデザイナーはいるケースがある。ただ、社内の人とコミュニケーションが全く取れていなかったりするんです。特にPMやPOレイヤーには、そもそもデザインは何をするものなのか、哲学を知らない非デザイナーの方が多く見られるイメージはありますね。

山崎:冷静に見ると「いやいや、社内に良いデザイナーいるじゃん」というのはよくあるパターンですね。

ファシリテーター:しかも非常に優秀なことがありますからね。デザイナーかプロダクトマネージャー、どちらに問題があるのかは見極めたほうがいいでしょう。

では、今回のディスカッションはここで終了いたします。お二人ともありがとうございました。


企画/編集:FLEXY編集部


この記事を書いた人
加来麻衣子
加来 麻衣子
株式会社サーキュレーション FLEXY マーケター
上智大学文学部卒。パーソル(旧インテリンジェンス)を退社しWebデザイナーに転向した後、案件が増えたのでフリーランスの形を取りながらも会社を登記。2014年にはハワイ法人を設立してワイキキに移住、お土産物屋さんや海外コンサルティングを手掛ける。日本に帰国後、サーキュレーションに入社しFLEXY事業部専属のマーケティングをしています。

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