新しい環境でいかに信頼を勝ち取るか?「任されるPdM」の共通項を探る [FLEXY meetup イベントレポート]
2025年12月23日に開催されたFLEXY meetupのテーマは「任されるPdMの条件」。
プロダクト開発の要であるプロダクトマネージャー(PdM)は、新しい環境に飛び込んだ際に、どのようにして信頼を獲得し、成果を出していくべきなのでしょうか。
今回は、民放公式テレビ配信サービスTVerで活躍されている松岡さん・田寺さん、そして数々の企業でPdM育成に携わってきたProduct Peopleの横道さんをお招きし、転職や新しい役割を担う際に直面する壁や葛藤、それを乗り越えるためのマインドセット、そして受け入れる側のマネジメントの工夫について、実体験を交えながら深く語っていただきました。
本レポートでは、PdMが新しい環境で最速で価値を発揮し、「この人に任せたい」と思われる存在になるためのヒントを、当日の熱い議論の中からお届けします。
登壇者紹介
松岡 綾乃さん|株式会社TVer サービスプロダクト本部プロダクト推進部部長
2011年株式会社ミクシィ入社。家族アルバム「みてね」など、複数の新規事業の立ち上げを歴任。退社後は独立し、多数の新規事業・プロダクトの立ち上げ支援を手掛け、2016年12月よりメディカルノートに参画。出産・育休を経て2018年に正式に入社。開発組織の立ち上げを担ったほか、コンテンツ事業責任者としても「Medical Note」のメディアグロースを牽引し、2,300万MAU突破を実現。2021年、同社執行役員CPOに就任。2022年より取締役CPO兼CCOとして人事・広報領域も管掌し、企業文化の醸成・伝播を担った。2024年1月、TVerに参画。現在はサービスプロダクト本部プロダクト推進部部長として、プロダクトマネージャー組織・デザイン組織の牽引およびプロダクト戦略の推進を務める。
田寺 琢人さん|株式会社TVer サービスプロダクト本部 プロダクト推進部 兼 サービス事業本部 サービス戦略部
LINE株式会社(現LINEヤフー株式会社)に新卒入社し、LINE MUSIC初の新卒社員として配属。日韓グローバルPMOチームでの施策推進や日本側サービス企画チームの立ち上げを主導。グローバルチームでのコラボレーション、および0→1施策の立ち上げ・推進による事業影響の積み重ねが評価され、新卒3年目でマネージャーに就任。2024年12月より株式会社TVerに参画。現在はサービスプロダクト本部とサービス事業本部を兼務し、TVerサービスの事業とプロダクトの架け橋を担う。
エンタメtoCプロダクトの経験を活かし、「目的とする番組がないユーザーにも良質な出会いを提供する」ミッションを抱えた開発チームのオーナーを務めている。
横道 稔さん|Product People株式会社 代表取締役プロダクトコーチ
2023年にProduct People株式会社を創業し、多数の企業にプロダクトコーチングを提供している。起業前は LINE、サイバーエージェント、SIer などで、プロダクトづくりに関わる様々なリーダーシップロールを歴任。元 LINE株式会社 プロダクト組織戦略担当フェロー。元プロダクトマネージャーカンファレンス実行委員会 代表理事。翻訳書に『TRANSFORMED』『LOVED』『プロダクト・レッド・オーガニゼーション』。
民放公式テレビ配信サービス「TVer」のプロダクトと組織
テレビの新しいプラットフォームを目指す「TVer」
松岡氏:
TVerは、民放公式のテレビ配信サービスです。単なるtoCプロダクトというだけでなく、「テレビの新しいプラットフォーム」というミッションを背負っています。
ビジネスモデルは、広告で事業が成り立つ「AVOD(Advertising Video On Demand)」です。全てのコンテンツを無料で提供しており、動画広告市場の成長をTVerが牽引している状況です。
立ち上げ当初はドラマのイメージが強かったかもしれませんが、今ではバラエティやスポーツのライブ配信など、テレビで放送されたあらゆるコンテンツを配信しています。スマートフォンだけでなく、コネクテッドTVやタブレット、さらにはカーナビなど、多様なデバイスに展開しているのが特徴です。
皆さんのおかげで再生数は右肩上がりに成長を続けており、直近の2025年11月には月間動画再生数が過去最高の5.8億回を記録しました。本当に日本の皆さんに愛されているサービスだと感じています。
急成長を支えるビジネスモデルと組織の変遷
田寺氏:
プロダクト組織の内製化は比較的最近のことで、この1年で組織はダイナミックに変化してきました。
フェーズ1では、まずプロダクトをデリバリーできる組織基盤を構築しました。基盤ができたフェーズ2では、事業側との連携を強化するため、PdMとデザイナーがサービス事業本部に異動しました。そして現在、事業とプロダクトが一体となって推進するフェーズ3として、再びプロダクト側のサービスプロダクト本部に組織が戻りました。この1年で目まぐるしく変化しながらも、組織として良い方向に向かっていると感じています。
直近のプロダクトアップデート:縦型ショート動画機能
田寺氏:
直近で私が担当したアップデートとして、アプリに縦型ショート動画機能を導入しました。テレビ番組は30分や1時間と尺が長く、視聴のハードルがありましたが、ショート動画でお試し視聴できるようにすることで、より多くの番組と出会い、視聴していただくことを狙っています。
新しい環境で「任されるPdM」になるために
新しい環境への挑戦:期待と不安の交錯
最初のテーマは「新しい環境に飛び込む際に感じていたこと」。初めての転職だった田寺氏は、当時の心境を次のように振り返りました。
田寺氏:
初めての転職だったので、「転職したらどうなるんだろう」という底のない不安がありました。一方で、前職でキャリアを積み、同じエンタメドメインのtoCサービスだったこともあり、根拠のない自信や安心感も同時に存在していました。その2つの感情が常に入り乱れている状態でしたね。
松岡氏:
私もTVerに入社してから2年経ったところなのですが、転職前に7年在籍していたスタートアップでは裁量と責任しかない環境でした。転職することで、自分が作ってきたやり方ではないものに馴染まなければならないという不安は率直にありました。逆に誰かが作った組織を壊してはいけない、まずは馴染むところからどう貢献できるか、と考えていました。
横道氏:
私も1回目の転職では不安と期待が入り混じっていました。その前の会社では技術力がある方だと思って肩をぶん回して入社したら、すでに持っていた知識は3日くらいで「それくらい分かってるなら話は早いね」とただの前提知識程度のものでしかなく、いきなり大きな壁にぶつかりました。最初の転職で本当に大変だなと今でも思います。
入社直後の壁:理想と現実のギャップをどう乗り越えるか
田寺氏:
私が入社したタイミングは、組織の内製化が始まったばかりで、まさにこれから色々な施策をやっていくぞ、という時期でした。例えるなら「文化祭の前日にいきなり放り込まれた」ような感覚です。前職は完全に出来上がった組織とフローで仕事をしていましたが、TVerではそれが通用せず、自分がやってきたことが通じるか分からないという壁にぶち当たりました。
松岡氏:
当時はPdMが3人目という状況で、人も少なく、任せる側も「ハイボールを投げている」という自覚がありました。入社したての人には大変な業務だと分かっていてお願いしていたので、田寺さんが辛そうなのは見ていて分かりました。
横道氏:
田寺さんが新卒で入った LINE と TVer ではコンテクストが全然違うと思いますよね。また、新卒で入社すると丁寧に育成してくれることが多いですが、中途は「できるよね」という前提で入るので、そのギャップは最初の転職で誰しもが苦労する点だと思います。
過去の成功体験からの脱却:信頼を勝ち取るためのマインドシフト
田寺氏:
前職の成功体験が通用しないという壁にぶつかり、フローや戦略に固執している場合ではないと感じました。その時のプロジェクトはとにかく進めなければいけないフェーズでした。そこで、信頼を勝ち取ろうとするより、まずは今のサービスや組織の課題、期待に応えていこうと。結果を出せば、信頼は後からついてくると考えを切り替え、ひたすら目の前のことに向き合うことで、少しずつ壁を壊していきました。
松岡氏:
当時、田寺さんには「初めての転職だから感じる困惑」と「今のTVerのカオスさによる困惑」を分解した方がいい、という話をよくしていました。信頼貯金とドメイン知識の両方がリセットされた状態をちゃんと受け入れ、自己受容できることが本当に大事だと感じます。
横道氏:
私が以前、シニアマネジメント層に「どういうプロダクトマネージャーに機会が提供されるか」を調査した結果、最重要視される観点はコミットメントや能動的な姿勢でした。逆にほとんど重要視されないのが、前の会社での実績や役職です。
コミットメントは当然、自己評価ではなく、周囲がどう感じるかが評価の対象です。入社直後に当人は頑張っているつもりでも周りからはそう見えないことがあります。そこを客観視し、冷静に成果を考えることが重要です。
参考:任されるプロダクトマネージャーのリアル
https://speakerdeck.com/ykmc09/pm-growth-opportunity-survey
田寺氏:
負荷をかけたとしても自分の中に余裕を作って認識合わせのコミュニケーションやドキュメントの整理などを行わなければならないなと思いました。
松岡氏:
田寺さんが周りからすごいと認められるようになるまでいくつかきっかけがありましたが、その最初の段階はシンプルに仕事の質が常に高かったという点でした。どんな状況でもまずはやるべきことを高い質で返すという形で信頼を積み上げ始め、その次の段階で田寺さんにとって得意な領域・やりたい領域に業務を広げ、価値を証明してもらったというのが非常に大きかったです。
業務を拡げるにあたっては負荷の観点は気にしましたが、これによって明らかに田寺さんが「ここでやれている」という自信を持ったように見えたので、一時的に負荷が増えても成功体験を優先させるタイミングは大事だなと改めて気づかされました。
受け入れ側の役割:「組織の防波堤」としてマネージャーがすべきこと
松岡氏:
田寺さんが最初に関わったプロジェクトはステークホルダーが多い難易度の高いプロジェクトで、当時のTVerではまだPdMという仕事の業務領域や考え方が文化として浸透しきれていない時期でした。善意から「代わりに決めておくよ、調整しておくよ」と助けようとしてくれた方がたくさんいたのですが、それではPdMがプロダクトに対して意思決定が仕切れず、本人も周りも混乱してしまいます。
そこで私は、「この案件のPdMは田寺さんです」と体制図を見せて回り、「彼の意思決定を尊重してほしい」と伝え続けました。上司がまずPdMとしての立場と裁量を作ってあげること、特にハードな環境であればこそ、その状況をデザインすることが必要だと考えています。
横道氏:
その行動のモチベーションはどこにあるのですか?
松岡氏:
シンプルに、私には採用責任と育成責任があるからです。自責も込めてですが、入社してすぐに合わないと辞めてしまうのは、採用側の問題が大きい。フィットすると思って採用したからには、その人が活躍できるようなオンボーディングを設計するのは自分の仕事です。
横道氏:
当たり前のようで、実はできていない組織は多いです。新しい仕事を任せたら、そこには任命責任が伴います。一番の悪しき習慣は、「お手並み拝見」です。マネージャーは、自分が持つ責任の果たし方を常に自問自答すべきだと思います。
「違和感」は宝:入社直後の気付きを成果に変える工夫
松岡氏:
入社直後の違和感は、ものすごく宝だと思っています。慣れてしまうと解決できない課題はたくさんあります。私自身、入社時に感じた課題をめちゃくちゃ書き殴って、今でもたまに見返しています。外の目を持ち続けるためにも、新入社員の違和感は歓迎されるべきです。
田寺氏:
僕も当時はメモをたくさん書いていました。松岡さんが先に同じような違和感をおぼえていたと知れたことで、自分の感情を分解しやすかったです。その結果、「変えていく自分」と「自分の軸として守っていく自分」という、2つの人格ができてきたように思います。
横道氏:
いわゆるメタ認知ですよね。リーダーシップロールは、その時々で自分を演じ分けないといけないシーンがあります。2人どころか、もっと多くの人格を使い分けることで、信頼が得られることもあります。達成すべき目的のためには、素の自分を一旦抑えるべき時もあるでしょう。
信頼を獲得し、裁量を広げる「任されるPdM」の共通項
田寺氏:
振り返ると、「任されたい」という気持ちより、「目の前のことに向き合い、結果に繋げたい」という思いが強かったです。向き合えば向き合うほど、組織やサービスをどんどん好きになって、結果的に任せていただけるようになった。その「好き」という気持ちが皆さんに伝わっていったのかなと感じます。
松岡氏:
まさにその通りで、田寺さんから成果を出し切るぞというコミットメントが感じられたからこそ、このまま任せていればブレイクスルーしてくれるだろうと思えました。
ただ、「これ」という単一の正解はないとも思っています。キャラクターは人それぞれ。その中で共通項を挙げるなら、やはりコミットメントと、成果を出すことに向き合う姿勢なのかなと。
横道氏:
先程の調査結果とも一致しますが、最初の原動力は承認欲求など内向きの感情でも構いませんが、重要なのは、そのエネルギーが結果的に顧客や事業という外向きの矢印に変換されていると、周りが感じられるかどうかです。自分のモチベーションの源泉を大事にしつつ、その向き先を意識的にコントロールすることが「任される」ことに繋がるのだと思います。
奮闘するPdMと支えるマネージャーへのメッセージ
田寺氏:
自分が向き合っていて楽しいこと、熱量を感じられることを早く見つけて、そこをブレイクスルーにしてほしいです。今感じている熱意は間違っていないので、信じて突き進んでください。
松岡氏:
マネージャーへは、「あなたには責任があるし、優位な立場にいるのだから、ちゃんとやれ」ということです。評価者になるのではなく、自分にこそより大きな責任があると思って、その人が大活躍できるまでやりきってください。
横道氏:
PdMもマネージャーも、こういうイベントを見ている時点で、もう充分頑張っています。まずは「頑張ってるね」と自分に言ってあげてください。
Q&Aセッション
信頼貯金の貯め方のコツは?
Q. 新しい環境では信頼貯金を1から積み立てる必要があります。そのコツや意識していることはありますか?
田寺氏:
まずはコミュニケーションを取り、その人が感じている課題やモチベーションを把握して、一緒に寄り添うことを意識しています。
松岡氏:
とにかく1on1をしまくって、みんなが一番困っている球を拾うことから始めました。何かしら有用なアウトプットを出すと、それがだんだん社内での自分の名刺代わりになっていきます。
横道氏:
期待値マネジメントを丁寧にやることです。上長に「自分への期待はこれで合っていますか?」と聞いたり、周りの人に「自分の動き方に違和感はないですか?」とストレートに聞いたりします。期待値を言葉にしてすり合わせることを、自分からやっていくのが大事です。
toCプロダクトにおけるPMFのアプローチは?
Q. toCプロダクトは不特定多数が相手のため、解像度の高い課題特定が難しいです。PMF(プロダクトマーケットフィット)のアプローチについて教えてください。
松岡氏:
基本的には、KPIトラッキングなど定量データから仮説を作り、ターゲットユーザーにヒアリングしに行くという定性調査の流れはtoBと変わりません。入口の仮説設計の仕方が違うだけだと思います。
田寺氏:
私の持論ですが、事業を成長させるためには、KGIを指標に分解してどこに課題があるかを見つけにいくことが重要だと思っています。その上で、その課題への解決策が既存の体験の延長線上でユーザーに受け入れられるかを、定性調査や自分で使うことで探っていきます。
横道氏:
toCは課題が潜在的なことが多いので、いかに仮説検証のサイクルを早く回すかが重要です。そのための基盤やチーム体制を整えることに力を入れるべきでしょう。
コミュニケーションや言語化が苦手な場合、どう成長すべきか?
Q. コミュニケーションや言語化が苦手な場合、どう成長すればよいでしょうか?
横道氏:
コミュニケーションと言語化は別のスキルです。コミュニケーション力の向上については、自分のミーティングを録画して客観的に見返すのがおすすめです。言語化はトレーニングで上達するので、書籍などを活用して実践量を上げることがポイントです。
松岡氏:
私の場合、苦手なことをオープンにして自ら上司に積極的にフィードバックをもらうようにしています。また、分解して考えることも重要で、話すのが苦手でもチャットは得意など、自分の得意な土俵に引きずり込むのも一つの手です。また、苦手なことはAIを壁打ち相手にするなど、事前準備を徹底することでカバーできます。
田寺氏:
コミュニケーションは1人でできませんが、言語化は1人でもできます。そのため私の場合は、コミュニケーションの前にまず一人で徹底的に言語化します。自分が言いたいことを自分で理解するステップが重要です。それができて初めて、相手のコンテキストを掛け合わせて質の高いコミュニケーションが取れるようになります。
組織に適合してもらうためのオンボーディング手法は?
Q. 新しいPdMに早く組織に適合してもらうための、効果的なオンボーディング手法はありますか?
松岡氏:
その人が落ち着いてアクセスできる情報を、ドキュメントとして全部まとめて渡すようにしています。戦略資料などは一度聞いただけでは頭に入らないので、後から読める形にしておくことが愚直ですが大事です。
横道氏:
そのプロダクトの歴史をしっかり話すことです。「なぜそういう意思決定をしたのか」という背景は暗黙知になりがちです。社歴の長い人に昔話をしてもらうなど、コンテクストを伝える機会を設けると良いでしょう。
新卒PMに必要な姿勢とは?
Q. 新卒PMに必要な姿勢や、仕事を探しに行く上で気をつけるべきことを知りたいです。
田寺氏:
目の前の仕事に向き合いつつ、そのドメインや市場全体をどう良くしていくか、という高い視座を併せ持とうという意識が評価に繋がったと感じます。
松岡氏:
新卒の時期にしかできないこととして、なるべく偉い人とたくさん喋ることをお勧めします。歴史やコンテクストを教えてもらうことで視座が上がりますし、新卒の率直な意見は偉い人にとっても良いインプットになります。
横道氏:
新卒同期は唯一無二の存在です。切磋琢磨できる新卒同期を見つけることは、一生の財産になります。
ロールチェンジによる部署異動、スキルの活かし方と捨てるべき概念は?
Q. エンジニアからPMなど、ロールチェンジする際に、元のスキルの活かし方や捨てるべき概念について知りたいです。
松岡氏:
捨てるべき概念は基本的にはないと考えています。むしろ、それまでのキャリアで培った得意領域を活かせるようなアサインをすることが重要です。その上で、PdMとして「なぜやるのか(Why)」「何をやるのか(What)」を徹底的に考える癖をつけてもらう。特に技術領域からの方はすぐ「どうやるか(How)」から考えがちなので、そこは強く伝える必要があります。
エンジニア兼PM、どう優先順位付けすればいい?
Q. PdMが浸透していない組織で、エンジニア兼PMとして活動しています。どう優先順位付けすればいいでしょうか?
横道氏:
PdMの有用性を自らが証明したいと思っているなら、まずは本来組織から期待されているであろうエンジニアの仕事で期待を確実に超える必要があります。酷なようですが、その期待を満たしながら、追加でPdMの仕事もやりきる覚悟も必要かもしれません。茨の道ですが、結果がどうであれ財産になる経験なので、無理のない範囲で応援しています。
松岡氏:
横道さんに賛成ですが、その上で「こういうアウトカムをいつまでに出したら、PdMの役割を優先したい」というゴールを握っておくのが良いかなと思います。それくらいのゴール設定がないと、本業と兼業の優先度をスイッチするのは難しいことです。
田寺氏:
楽しい仕事で自分にエンジンをかけて、その勢いで大変な仕事に取り組む、というセルフマネジメントも有効だと思います。
全体のまとめ
今回のイベントでは、新しい環境で「任されるPdM」になるための具体的なマインドセットとアクションが、三者三様の視点から語られました。共通して見えてきたのは、個人のスキルや過去の実績以上に、事業やプロダクトに対する当事者意識とコミットメントが信頼の基盤となる、という事実です。
また、個人の努力だけでなく、受け入れる側のマネジメントがいかに重要であるかも浮き彫りになりました。マネージャーが「組織の防波堤」となり、本人が安心して挑戦できる裁量と環境を意図的に作り出すこと。そして、入社直後の小さな成功体験をデザインし、本人の強みを活かせる機会を提供すること。この両輪が揃って初めて、PdMは本来のパフォーマンスを早期に発揮できるのです。
新しい環境への適応は、誰にとっても困難が伴います。しかし、目の前の課題に真摯に向き合い、周囲を巻き込みながら期待に応え続けることで、信頼は着実に積み上がっていきます。本イベントで語られた数々の知見が、明日から新しい一歩を踏み出す全てのPdM、転載を支えるマネージャーにとって、力強い道標となることを願っています。