(後編)CTOが語る資金調達、CTOの果たすべき役割とは?

2016年5月12日、flexy関連イベントとして開催された、第2回「Ex-CTO meetup」。
資金調達において、CTOは何を考え、何をすべきか?について、事業フェーズの異なるベンチャー企業のCTOの方々に、エピソードを交えて赤裸々に語って頂きました。
《パネラー》
●石川 雄樹(いしかわ ゆうき)氏
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 取締役CTO
●柴山 直樹(しばやま なおき)氏
株式会社プレイド取締役CTO
●黒瀬 瑛之(くろせ えいじ)氏
株式会社BEC取締役CTO / Co-Founder
《モデレータ》
●是澤 太志(これさわ ふとし)氏
株式会社Speeeエンジニアマネジメント責任者 兼 エンジニア採用責任者
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目次
幅広く調達先を検討し、ハンズオンで関わってくれる先を選択/A-SaaS 石川氏
是澤太志氏(以下、是澤):「お金を集めた手段」と「どういう風にお金を使ったか?」について大体の概要はお三方からお話していただいたんですが、ここで資金調達したお金を使うポリシーや体制というところをお聞きしたいなと思います。石川さんからお願いしていいですか。
石川雄樹氏(以下、石川):実際そこまで深く関わってはいないんですけど、ただそういう面でいうと、最初は自分達のお客さんになる人に、業界を変えるぞって言って、同意して頂いた人から集めるっていう感じで。
あと一個おもしろいのが、エンジェル税制っていうのがあるんです。ベンチャー企業に出資した個人投資家、つまりエンジェルに国からお金が出るんです。正確には税金の還付が受けられるんですね。だから、僕らはこの制度の紹介とセットで投資を募ったようです。相手は税制のプロだから、説明が簡単だったんでしょうね。たとえば、最初に投資してくれた税理士の方々には、50万円入れてもらったら、エンジェル税制で20万円還付されます。あと、今会員になっておくと、利用料が優遇されるので、結局先生が使うお金は10万円ですよ、みたいな。そんなトークで崩していった、みたいですね。金額は正確ではありませんのでそこは雰囲気で。
是澤:なるほど、そこはもう実際トークをしにいって、と。
石川:そうですね、営業の人達や当時の社長はそういうトークでやっていって。
あと結果的にでもあるし最初からのポリシーでもあるかもしれないけど、調達元のリードのところは、親身になってハンズオンでガシガシ入ってくれるところに入れてもらっています。そこはやっぱり投資に至るところの相性であるとか、そういったものも含めて良いところに投資してもらってきてると思います。リードの人達は本当にびっくりするくらいハンズオンで入ってきてくれてるんで。当たり前かもしれませんけど、自分のことを我々と呼んでと言ってくれて、そういうところが非常にいいなと。そういうところを探して、マッチしていったみたいな気がしています。
是澤:それって最初分からないんですよね。話していくうちに、あ、この人達だ、みたいので分かってもらうんですか?特に最初からターゲットがあったわけではなく。
石川:そうですね。やっぱりそこはパイプラインは足元広めて、というような感じですね。
長距離を並走してくれる先から調達。ポリシーはやりながら固めていった。/PLAID 柴山氏
是澤:なるほど。柴山さん、どうでした?
柴山直樹氏(以下、柴山):ポリシーとしてはサイズ感のところと、どこから入れるか、というところだと思います。最初の調達をする前に、ちょっと長めに事業計画を引きまして、特に後半にスケールしやすい形で計画をひいていました。そうなってくるとけっこう後ろのところで評価してくれる、そこまで一緒につきあってくれるような人が欲しいなということで、なるべく後半の夢みたいなところに共感してもらえるところを探しましたね。
相手としては一番最初のFemtoさんが僕らを評価してくれたポイントが、より後半側にあったっていうのはけっこう大きかったです。一番最初にVCさんを探した時に、ワンクールっていって、1ヶ月で確か20社くらいダーっとVCに会う形で代表中心にやって、そうやってる間に次の月にだいたいこんなポリシーでいこうかみたいな形で話し合って、第2回はその設定したところで会わせていただいて、その話し合いの間にポリシーを決めていった形です。
サイズ感に関しては、3回分くらいは、だいたいこの位は必要だ、だいたいこの位のバリュエーションで、みたいな形でやっていましたが、その先のことになると本当に分からないので、なるべくそれまではエクイティを残しておこうということで、10〜15%くらいのところに落ち着かせて、バリュエーションは開発費用が2年間くらい持つ程度、そんなような形で、やりとりさせてもらいましたね。
特に2回目のときにFidelityさんに決めたのは、またちょっと違うところもあって、長期のところで満期が少ないというところで、Fidelityさんとやらせてもらったというところもあるのと、あと次の調達のときにFidelityさんは元が大きいので、やっぱり次のときに出してもらいやすいというところで、決めたという感じです。
石川:Fidelityさんはうちも株主なので共通ですね。基本的に長期が特徴ですよね。
柴山:僕らは早めのエグジットがちょっと気持ち悪いなというのがありまして。FidelityさんやFemtoさんもそうなんですけど、そこは関係ないから、みたいなかんじで付き合ってくれています。
調達前にプロダクトをつくるポリシー。実績とアライアンスの観点で調達先を決定/BEC 黒瀬氏
是澤:黒瀬さんは、どうでした?
黒瀬瑛之氏(以下、黒瀬):弊社のポリシーとしてはプロダクトを作ってから調達するっていうのを一貫してやっていて、一番初めの政策金融公庫は違いますが、株式の調達のときには基本的にプロダクトを作って、それを見せるというのをずっとやってます。一番初めの調達元に関して実はCAVさん以外にも選択肢はあったんですが、実績を重視させていただきCAVさんに決めさせていただきました。そのおかげもあってCAVさんから色々と紹介してもらって、2回目の調達先も決まっていったっていうこともあったので、結果的にとても良かったかなと思っています。他にはアライアンスを組みたいっていうこともあって、金融系を中心にまわらせていただいたという感じですね。
是澤:CAVさん入れる以外も考えてたってことですよね、今の話だと。
黒瀬:そうですね。
是澤:もしCAVさん入れなかったら、どうなってたの?(笑)
黒瀬:どうなってたんですかね。2社から同時に受けるみたいな話もあったんですけど。結果的にはCAVさん1社から入れて頂くという形になりました。
是澤:なるほど、いろいろな可能性を模索していった感じなんですね。結果としてはCAVさんがよかった、という感じですか?
黒瀬:良かったですね。
是澤:そのあとはSpeeeも入れさせてもらったんですけど、CAVさんの後に他からも入れようと思ったのって、理由は何だったんですか?
黒瀬:開発費を調達したいと思っていたのが一番にありました。資金調達自体が戦略実行のためのサブセットだと考えているので、市場や時間軸というところをふまえて、そもそも調達をするしない、どのくらいの額調達するかというのが決まってくると思います。うちの場合バックオフィスのクラウド化というところで、既存のニーズがあるところをクラウド化していこうとしていたので、なるべく早く良いものを作るための開発費としてこのくらいの額を調達しようっていうのを決めて、スタートした感じでしたね。
是澤:ありがとうございます。皆さん、開発のための資金調達ってところが大きい感じでしたね。今回お話をお聞きして、やはり会社の資金調達にはCTOがきちんと関わっていかないとダメな部分が大きいように思いました。ですね。そのために技術トップはファイナンスの勉強も少ししたほうがよいかもですね(笑)。
結構きわどい話もありましたが、具体的な話が聞けてよかったです。皆さんありがとうございました。
企画/編集:FLEXY編集部