パラレルワークとは? 新しい働き方のメリット・デメリット

パラレルワークとは

社会変化などに伴って、近年パラレルワークに注目が集まっています。パラレルワークとは複数の仕事を並行して行う働き方のことです。当記事では、パラレルワークに興味を抱く人が増えている背景をはじめ、副業との違い、メリットや注意点、向いている職種などを詳しく解説します。

パラレルワークとは?

近年、注目が集まっているパラレルワークについて紹介します。

新しい働き方「パラレルワーク」について解説

「パラレルワーク」とは、同時並行的に複数の仕事を行う働き方です。パラレル(parallel)とは、「並行の、平行の」という意味を指します。ひとつの組織だけに所属するのではなく、第二、第三の異なる仕事を手がけることで、長期的にキャリアアップ・スキルアップをし続けるのが目的です。詳しくは後述しますが、副業とは異なり、第二、第三の仕事も、メインの仕事と同程度のパワー配分で取り組むことがパラレルワークでは求められています。

経営学者のドラッカーが著作の中で提唱した「パラレルキャリア」を起源とする概念ではありますが、両者のニュアンスは異なります。パラレルワークは「ワーク(仕事、作業)」の言葉が表すとおり、「働く」こと・収入を得ることにフォーカスを当てた言葉です。それに対してパラレルキャリアは、仕事だけでなく、ボランティアや創作活動など、収入には直接結びつかない活動すべてを対象とします。スキルアップ・キャリアアップ、リタイア後の公私の充実、育児・介護中/後のキャリア再構築など、さまざまなライフステージでパラレルワークの需要が高まっています。

パラレルワークとダブルワーク(副業)の違い

パラレルワークと似た言葉に、ダブルワーク(副業)もあります。同じ意味合いで使われることも多いものの、両者には明確な違いがあります。
ダブルワーク(副業)とは、本業以外にサブとなる仕事を行うことです。基本的に本業を優先して行うため、「定時後にナイトワークをする」「休日に飲食店でアルバイトをする」など、時間単位で働ける仕事が副業先に選ばれやすい傾向にあります。この点で、複数の仕事間に優劣を設けないパラレルワークとは異なります。

パラレルワークを始める人が増えている背景

パラレルワークを始める人が増えている理由のうち、特に影響力の強いものを解説します。

年功序列と終身雇用のデメリットが雇用に影響

最も大きな理由が、日本型企業の慣行が崩れつつあり、ひとつの企業にとどまることがリスクにすらなっていることです。
戦後の高度経済成長期の日本企業では、年齢に伴って企業内での序列や賃金が上がり、定年まで同じ企業で働き続けられるという「年功序列」「終身雇用」が一般的でした。従業員は解雇の心配をほとんどすることなく安定的に働き続けられ、企業側も従業員のロイヤルティが高まるというメリットを享受できたわけです。

しかし、バブル崩壊期などを経て、年功序列・終身雇用の問題が顕在化していきます。
社内の年齢構成がピラミッド型であることは、年功序列の前提です。しかし、現在は少子高齢化で、社内の年齢構成がシェイカー型になっています。管理する部下がいなければ、管理職としての高い給与を払う必然性はありません。そのため、年功序列は、人件費が嵩み、実力のある若手に不満を抱かせる、旧いスタイルと捉えられるようになりつつあります。

また、終身雇用は雇用の安定化につながるものの、日本では解雇しにくいため、「採用に失敗したくない企業が、新卒以外の社員の採用基準を極端に高くし、契約を解除しやすい非正規雇用を好む」という問題が生じています。
このように、雇用のスタイルが変化するに伴い、パラレルワークが注目されるようになってきました。

労働力不足による副業などの解禁

近年の少子高齢化による労働力人口の減少も、国が副業やパラレルワークを推進する理由として挙げられます。そうした働き方を解禁することで、労働力を企業で再分配することが可能になるからです。
さらに、労働者が企業間を活発に行き来することで業界の透明度が上がり、イノベーションが起こりやすくなる可能性も期待されています。

コロナ禍でのリモートワークの浸透

さらに、新型コロナウイルス感染症の流行でリモートワークが浸透したことで、多様な働き方を実現するハードルが下がってきました。
こうして、ひとつの組織に依存せず、自分自身の実力で対価を得ることが可能で、幅広いキャリアと人脈も築けるパラレルワークに踏み切る人が増えてます。

パラレルワークのメリット

会社員だけでなく、フリーランスなどの間でも人気を集めるパラレルワークですが、そのメリットは次に挙げるようなものがあります。

収入が増えリスク分散にもなる

最もシンプルなメリットが、複数の仕事を手がけることで、収入源が増えることです。収入源が複数あれば、万が一そのひとつが途切れたとしても、トータルの収入がゼロになることはありません。

また、パラレルワークを通して自分自身の市場価値を高めておけば、企業のリストラによる解雇などに直面しても、動じずにいられるはずです。育児や介護、自分自身の病気やけがなどで一時的に働き方をセーブしなければならなくても、「案件は多いが納期が短いA社の仕事はしばらく休み、ひとつの案件にじっくり取り組めるB社の仕事だけをしばらく続けよう」など、フレキシブルな判断ができます。

日本は先進国の中では特異的に、1997年からほぼ実質賃金指数が上がっていません。給与を上げるための国主導の取り組みもありますが、生活のレベルを維持・向上させるための現実的な取り組みとして、長期的に複数の収入源をつくるパラレルワークは有用です。

出典:全国労働組合総連合

人脈や視野を広げられる

人脈や視野を広げられるのも、パラレルワークの大きなメリットです。パラレルワークで複数の仕事に携わると、今まで関わらなかったようなタイプの人とも出会うことが増え、人脈の幅が広がります。人脈は大切な財産です。培った人脈から、将来のビジネスパートナーを見つけられる可能性もあります。
また、初めての意見や価値観にふれることで、新しいアイディアや改善案なども浮かびやすくなるはずです。

知識や経験を増やせる

ひとつの企業でのみキャリアを積むのではなく、種類の異なる仕事を同時並行で行うことで、幅広い知識や経験、今後の課題などを得られます。かつては新しい会社で働こうとすると、選択肢は転職のみでしたが、パラレルワークで複数の仕事を行えば、退職せずに新たな知識や経験を増やすことが可能です。

また、短期的には収入に結びつかない仕事も、将来的に自分の大きな成長を促したり、別の仕事をつなぐ要になったりすることがあります。そのため、すぐに結果が出なくても、コツコツと続けることが大切です。パラレルワークを続けるうちに、A社での成功体験を自分の中でノウハウとして蓄積し、B社、C社と横に展開していくことも可能になります。ひとつの強みを長年かけて磨くのもよいですが、ある強みに別の強みを次々と掛け合わせていくことで、自分自身の競争優位性を複合的に高めていけるのが、パラレルワークの大きなメリットです。

パラレルワークの注意点

パラレルワークは長期的なキャリア構築に有効ですが、進める上で気を付けたい点もあります。ここでは3つの注意点を取り上げます。

就業規則違反になる可能性がある

通常の会社員であれば、パラレルワークを制限する法律はありません。ただし、企業秘密が漏洩する場合、労務提供上の支障がある場合、会社の名誉・信用を損なうおそれがある場合などは、会社はパラレルワークや副業などを就業規則で禁止・制限できます。就業規則で副業やパラレルワークの禁止が定められている場合、違反すると減給、懲戒免職などのペナルティが科されるおそれもあります。例えば「定時まで勤務した後、深夜まで別の仕事をする」「本業で知り得た情報を使って競合他社で仕事をする」といった場合などは、ペナルティの対象となり得ます。
そのため、パラレルワークを始める前には、就業規則を改めて確認しておく必要があります。国の方針では、原則として企業は副業などを認める方向で調節するのが望ましいとされているので、パラレルワークを始めることを会社に報告し、許可を得るのが理想的です。

どちらも中途半端になる可能性がある

パラレルワークは、それぞれの仕事がどれも中途半端になってしまうというリスクがあります。そうなると、複数のキャリアを構築するのは難しくなり、パラレルワークに取り組む意義が失われてしまいます。中途半端になる要因はいろいろと考えられますが、中でも大きな要因は自分自身に負担がかかり過ぎてしまうことです。自分自身のキャパシティを今一度改めてよく考え、突発的なトラブルが起きてもリカバリーできるくらいの仕事量に留めておかないと、後になって負担が大きくなるかもしれません。
ひとつひとつの仕事へ打ち込むには、各タスクの所要時間を把握した上でバッファー管理をしっかりと行うことが重要です。その上で、自分自身の短期目標と長期目標までしっかりと考慮しながら、現実的なスケジューリングをする必要があります。

長時間労働になりがちである

パラレルワークは複数の仕事を並行して行うため、どうしても長時間労働になりがちです。時間というリソースは目に見えないので、結果を出したいという気持ちから、必要以上の時間を費やしてしまうことがあります。オーバーワークになると判断力が落ちるので、ヒューマンエラーを連発するなど、各仕事に支障をきたすこともあり得ます。それだけでなく、家庭内などのプライベートな関係までおろそかになったり、自分自身の身の回りのことも億劫になったりする可能性があります。過労によってQOL(生活の質)が大きく下がり、キャリアを一旦諦めざるを得ない状態になるのでは本末転倒です。そのためパラレルワークでは特に体調管理が大切です。定期的にリフレッシュするための時間をあえて設けるなど、心身のバランスを維持しなければいけません。
なお、フリーランスの場合などは適用されませんが、企業と雇用契約を結んでいる場合は、その企業すべてでの労働時間が合算される、いわゆる「通算ルール」もあります。通算での就業時間が長時間に及ばないよう適切な配慮を行うことが企業にも求められているので、属している企業へのパラレルワークの報告は必ず行いましょう。

パラレルワークの事例

続いて、パラレルワークの成功事例をご紹介します。

エンジニアとして研鑽を積んできた白石久彦さんは、自身が掲げていた目標に一度到達したことを機に、キャリアプランの再構築を決意しました。「IT企業に新卒で入社し、そのまま定年まで働いてリタイアする」というモデルケースが世代的にいなかったというのも背景にあるそうです。
現在はメルカリに在籍しDirectorというポジションでエンジニア組織を取りまとめながら、経営型のCTO(最高技術責任者)として複数の企業の相談役も担っているのだといいます。システムと経営をつなぐことを得意分野としており、食品メーカーなどの非IT企業での活動もしてみたいと述べるなど、非常に意欲的です。
白石さんは、自身でWebサービスの開発なども実践しており、今後は課題を抽象化して解決するようなサービスを開発するため試行錯誤しているそうです。

パラレルワークに向いている人とは?

パラレルワークは、誰にでも勧められるものではありません。パラレルワークには向き・不向きがあるので、始める前に「自分はパラレルワークを意欲的に楽しく続けられるだろうか?」と考えてみるのがおすすめです。

自己管理能力が高い

自己管理能力(セルフマネジメント)が高い人は、パラレルワークに適性があります。自己管理能力を強化するには、自分のやるべきこと、仕事に対する倫理観、自分の強み・弱み、目標、ゴールなどをよく研究しなければいけません。各タスクの所要時間を明確にし、無理なスケジュールを組まないように気を配る必要もあります。
「プライベートを犠牲にして仕事にまい進する」などの働き方を実行してしまうと、かえってパフォーマンスが低下します。どれだけ多忙であっても、将来を見据えると、心身へのトラブルを招かないことが何よりも大切です。

マルチタスクが得意である

複数のタスク(作業)に同時にこなす、マルチタスクのスキルも大切です。複数のものごとに優先順位をつけ、頭を切り替えながら柔軟に対応していくのが得意な人なら、パラレルワークもスムーズに始められます。どの仕事でも「ここぞ」という頑張り時がありますが、マルチタスクに慣れていれば「何に今集中するべきか」という見極めを誤りにくくなります。

行動力がある

自分の適性に合った仕事を見つけ、目の前のチャンスをつかむためには、常にフットワークを軽くし、アンテナを高くしておく必要があります。ただし、一時的な気分の高まりで、心身に負荷がかかり過ぎる仕事を受けてしまわないように注意が必要です。自分自身の経験とスキルを具体的に分析し、その強みを生かせる場面を逃さないようにしましょう。

また、複数の仕事をすべて円滑に進めていくためには、自分自身が調整や交渉、確定申告なども含めた事務作業を行わなければいけません。それらも積極的にこなすことが求められます。

パラレルワークにおすすめの仕事

投資やフードデリバリー、物販などは副業として選ぶ人が多いですが、長期的なキャリアを構築するという目的を踏まえると、先に紹介した白石さんの事例のように、長期的に成長を続けられる仕事を選ぶのがおすすめです。例えば、次に挙げるような職種がパラレルワークに適しています。

1.システムエンジニアやプログラマー

近年は特にIT人材が世界的に不足しています。そのため、既存のITツールの運用・保守、開発はもちろん、AIやML(機械学習)、ビッグデータ、IoTなどの先端技術の知識や経験まで備えた人材は、引く手あまたです。優秀なIT人材はすでにどこかの企業に在籍していることが多いため、各企業はIT人材を少しでも多く確保するために、パラレルワークなどを積極的に導入しつつあります。通勤時間や拘束時間、ひいては業務負荷を減らすために、テレワークを可能にしている企業も少なくありません。
パラレルワークを考えているシステムエンジニアやプログラマーは、より有利な条件でポジションを得られる可能性があります。

2.Webディレクター

Webサイトの企画・設計を担うWebディレクターも、パラレルワークにおすすめの職種です。日本においては外注する企業が多いため、パラレルワーカーが受注する機会も多々あります。コロナ禍で「おうち時間」が増えたことによって、各企業がECサイトなどを強化している傾向にあるのも追い風になっています。コミュニケーション能力をはじめ、進行管理や品質管理の経験、UI/UX、プログラミング言語などの知識もあれば、より競争優位性を保つことが可能です。

Webディレクターとして働くことを考えている場合には、パラレルワークを始める前に、Webディレクターのフリーランスや正社員の年収を調べどれくらい稼げるのか確認してみましょう。

3.Webライター

Webライターもパラレルワークで人気の職種です。パソコンとインターネット環境さえ整っていれば、すぐに仕事が始められることに加え、ライティングの能力は幅広い仕事で役立ちます。ただし、Webライターの報酬はさまざまです。信頼できる企業のサイトや紙媒体などに携われる機会もありますが、1文字1円、それ以下の低単価の案件も多く、限られた時間を浪費するだけの結果になりかねません。
有意義に仕事を進めるためには、美容、アウトドア、旅行、金融、ガジェットなど、自分の得意とする分野をしっかりと確立させておくことが大切です。また、取引先企業の担当者が法律関係に詳しいとは限らないため、薬機法や著作権法などに精通していると重宝されるはずです。英語をはじめ、各国語のスキルも有用です。

パラレルワークを始めるにあたって使えるサービス

パラレルワークを始めるにあたって大切にしたいのは時間です。限られた時間を有効に使うために有用なサービスを解説します。

転職サイト・転職エージェント

転職サイトでは、パラレルワークが可能な仕事に絞って探すことも可能です。各職種に特化した求人サービスもあるため、それらのサイトを利用するのも有効です。また、パラレルワークに適した仕事を転職エージェントから紹介してもらうこともできます。

クラウドソーシングサービス

副業解禁の流れを受けて、クラウドソーシングサービスにも多数の案件が出ています。
あらかじめ条件が提示された案件から、自分の条件やスキルに合ったものに応募できるのが特長です。単発の仕事も多いため、パラレルワークを始めたばかりの人も気負わず挑戦できます。

人材サービス

企業と求職者のマッチングをサポートしてくれるのが、人材サービスです。一度登録しておけば、自分で求人情報を探さなくても、条件・希望にマッチした企業を随時紹介してくれます。
転職活動で用いられることの多いサービスですが、パラレルワークにも活用できます。

パラレルワークならFLEXYの活用もおすすめ

人材サービスを行う企業はさまざまにあります。パラレルワークを志すのであれば、FLEXYのサービスを活用するのもおすすめです。FLEXYは技術顧問、エンジニア、デザイナーなどのハイスキルな人材に特化しているのが特長で、週2~3日、フルリモートの案件が数多くそろっています。Python、C++などの言語別などで案件を探すことも可能です。専門のコーディネーターも親身になってくれると評判で、細かい条件やライフスタイルに合わせた、適切な案件を紹介してくれるのも魅力のひとつです。大企業からスタートアップ企業まで、幅広くスキルアップの機会に出会えます。

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まとめ

複数の仕事を並行してこなすパラレルワークは、社会環境が目まぐるしく変化する近年、注目が集まっている働き方です。複数の仕事を手がけることで豊富な経験と知識が身につくため、将来を見据えたキャリアを構築するのに適しています。パラレルワークに挑戦したいと思うのであれば、希望や条件に応じた企業を紹介してくれる人材サービス会社などを活用するのがおすすめです。

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