エンジニア採用戦略大公開 【vol.3 】エンジニア組織を醸成する方法とは?

【ご登壇者】 ■藤井 崇介 氏|星野リゾート 情報システムグループ シニアアーキテクト(モデレータ) ■髙山 温 氏|株式会社ニューズピックス 執行役員CTO ■林 拓海 氏|株式会社Gracia 取締役CTO

2021年1月27日に開催されたCTO meetupイベントレポートの後編記事です。前編中編もぜひご覧ください。

今回は星野リゾート、ニューズピックス、Graciaの3社からシステム開発責任者及びCTOの方々が登壇し、エンジニア採用戦略に関するディスカッションが行われました。

IT人材の不足によりエンジニア採用は難しいと言われている中、各社はどのように工夫して採用活動を行っているのか、またどのようにエンジニアが長く働ける組織醸成を行っているのか。エンジニア採用に課題を持っている方々の参考になる話題が満載のイベントレポートです。

優秀な人材のパイを争うのではなく、開発スタイルを変えるという視点

藤井 崇介
藤井 崇介 氏|星野リゾート 情報システムグループ シニアアーキテクト
京都大学大学院知能情報学を2007年に卒業。 開発会社でWebシステム関連の開発を約10年経験後、2018年に星野リゾートに入社。 星野リゾートでは、エンジニア組織の立ち上げの中心となり、2年間かけて、システムの内製化を促進。 現在はシステム開発責任者として全システム開発の責任を請け負っている

藤井 崇介 氏|星野リゾート 情報システムグループ シニアアーキテクト(以下、藤井):では、「組織の醸成方法」というテーマでディスカッションを続けたいと思います。髙山さんはCTOとして入社した前後で何か組織が変わった部分はありますか?

髙山 温 氏|株式会社ニューズピックス 執行役員CTO(以下、髙山):僕が入社してからは、開発生産性を高めるための取り組みとして、日々繰り返し行うようなタスクは自動化しています。特に2020年は1年を通してデプロイ回りの自動化に注力しました。「自動化で開発生産性を高めよう」と会社全体に対して言い続けたので、「これ、ちょっと自動化してみよう」という声が頻繁に上がるようになりましたね。

髙山 温
髙山 温 氏|株式会社ニューズピックス 執行役員CTO
イギリス・カナダで物理を学んだ後に2012年にピクシブ株式会社に入社。同社ではソフトウェアエンジニア、リードエンジニア、CTOを歴任した後に、2020年2月にNewsPicksに執行役員CTOとして入社。事業の長期的な競争力に繋がる重点技術分野を受け持つ。

藤井:昔はそういうことを言い出す人がいなかったんですか?

髙山:以前は技術力のある人が中心となってプロダクトを作っていたので、「全部自分たちがわかっているし、できる」という考えのメンバーが多かったんです。ですが、人が増え始めたフェーズではどれだけ優秀な人材を採用しても、社内全てのシステムに精通はできません。極力前提知識がなくても開発できるスタイルにしようということで、自動化を進めました。

藤井:優秀な人だけを採用すれば当然開発は回るのでしょうが、そうなると会社同士でパイの取り合いになってしまいますからね。2025年の崖でIT人材が深刻化するという話がありますが、現状としては人材不足を解消することができません。ですから、僕たちはいかにIT人材を作るかという点を重要視して、前提知識が不要なノーコード・ローコード開発を行い、誰でも簡単にシステムを作れるようにしています。

組織拡大にあたって課題となる権限委譲とキャリアパスの設計

藤井:林さんは創業からこれまでに何か組織が変わってきた点はありますか?

林 拓海 氏|株式会社Gracia 取締役CTO(以下、林):創業時には僕とは別にCTOがいたのですが、その方が辞めるタイミングで僕がCTOを引き継ぎました。そこからインターン生と一緒に開発を進め、エンジニアが5名になったのが2021年の段階です。今年はさらに10名ほど採用して組織を拡大したいと考えています。

そのとき課題になりそうなのが、権限委譲とキャリアパスの設計です。組織が大きくなれば今までのように僕一人でエンジニアチーム全体を見る体制には限界が訪れるので、きちんと階層を作る必要があります。

さらに、それぞれのチームリーダーに明確に権限委譲もしなければいけません。階層やポジションが増えれば、当然その位置を目指す人が出てくるので、キャリアパスが大事になります。今年はそういった部分に注力したいですね。

林 拓海
林 拓海 氏|株式会社Gracia 取締役CTO
1995年生まれ、千葉県出身。 東京大学工学部システム創成学科2019年卒業。 在学中からプログラミングを始め、人材・教育・メディア企業での開発経験を経て斎藤・中内と2017年に株式会社Graciaを創業。現在のTANPをフルスクラッチで開発。

藤井:今のエンジニアは世界が広がっていて、僕の中でもキャリアパスが曖昧になっています。正社員が5~6名という体制の中でキャリアパスを設計するのは難しいのではないでしょうか?ベースだけは作って、社員と一緒に考えていかないと上手くいかないような気がします。

林:僕もそこは全く未知なので、各メンバーときちんと話すようにしています。今後マネジメントをしたいのか、技術を突き詰めたいのか、プロジェクトを推進していきたいのかなどについてしっかり会話して、一緒にキャリアを作っていこうとしている感じです。

実績や経験の深堀りがカルチャーフィットを見極めるポイント

藤井:これは視聴者の方から来ていた質問ですが、面接でカルチャーやビジョンへのマッチ度を確認するためにどういう質問をしていますか?

僕のところは普通に会話しているだけだったりします。自分たちはこういう考えを持つフラットな組織で、自分たちから提案することを重視していると話す感じですね。髙山さんのところはいかがでしょうか?

髙山:インスピレーションで判断している部分はあります。

藤井:話していて楽しいと思うか、という感じですよね。

髙山:カルチャー・バリューフィットする人は、仕事をする中で社内に良い影響を波及させていくような性質を持っていると思うので、それを感じるかどうかです。

僕たちの場合は「自由と責任」を大事にしているので、その人が有言実行できるタイプか、あるいはこれまで何か自分で立ち上げて実現してきたトラックレコードがあるかは重要かなと思います。

藤井:では、面接するときに今までの実績やそのときの思いを話してもらう感じでしょうか?

髙山:そうですね、そのあたりがカルチャー・バリューフィットを見るための質問かなと思います。

藤井:Graciaさんも採用では文化を重視しているそうですが、どんな質問をしていますか?

林:具体的な質問というよりは、面接ではその人の過去の経験などをひたすら深堀りして、僕たちの定める行動指針「Be Heartful」「Think Forward」「Challenge Professionally」を満たしているポイントがあるかどうかを見つけていくということをしています。

藤井:自分たちが目指しているものや大事にしていることについて話して、そこにどう反応するかを見ているのかもしれないですよね。

「成果を出せる」だけでは足りない、長く在籍してもらうための視点

藤井:エンジニアを採用するからには当然長く在籍してほしいという思いがあるはずですが、そのために工夫していることはありますか?

髙山:最近はユーザベースが「Fellow」というプレイヤーの最高峰の立場を新設しました。彼らにはマネジメントではなく、技術で価値を出すことを求めています。

また、きちんと利益を出してみんなで力を合わせて給与テーブルを高めていこうと。そして、「かっこいい給与」をもらっている人を増やそうというのが、経営としての総意です。

藤井:事業会社だからこそ、そこはこだわりたいですよね。給与を出すにはビジネスが儲からなければいけないので、みんなで考えて成果を出すのはすごく重要だと思います。林さんはいかがですか?

林:きちんとメンバーに向き合うことが大事かなと思っています。給与もキャリアも人によって求めている内容が全く違うので、どんな欲求を持っているのかを把握し、会社として最大限できることを提供していきたいですね。 将来について話をする中で自分のやりたいことが会社の方向性と違うということであればもちろん無理に残ってもらう必要はないですし、きちんと応援して送り出したいと考えています。

藤井:なるほど。僕が長く働いてもらうために一つ重視しているのは、やはりカルチャーとのマッチ度です。どれだけ高い技術を持っていて成果を出したとしても、そこが合わないと長く働けないのかなと思います。 だからこそ採用するときはエンジニア以外の人たちにも会ってもらいますし、入社後も自分たちの戦略を伝え、そこに共感してもらうという取り組みを継続して行っています。

採用を成功させるために企業がエンジニアに提示できるメリットとは

藤井:これはみなさんが気になることだと思いますが、採用が上手くいくコツについて、言える範囲で教えていただけますでしょうか。

まず僕が重視しているのが、星野リゾートそのもののアピールです。会社自体は有名ですが、そこにエンジニアとして入ったときにどういう成果を出せるのかを伝えます。面接では、「僕たちは日本の中では当然トップになりたいし、世界にも挑戦したい。そのためにはエンジニアの力が必要だと思っている」とお話ししていますね。

髙山さんのところはいかがですか?

髙山:そのときの事業計画によって採用する人数を決めているので、例えばこの半年間と決めたらそこに力をかけるんです。それで人が増えるという感じですね。

藤井:事業の中で何を重視するのかという視座があり、そこにみんなで力をかけられるのはある意味強みですよね。

髙山:そうですね。事業における重要なポイントは日々変化していきますが、そこに対応できるような柔軟な組織づくりをしているつもりです。先程のエンジニアに長く働いてもらうために何をしているかという話につながるかもしれませんが、メンバーの役割も頻繁に変えるんです。1年間同じミッションを担当したら飽きてしまうかもしれないので、別のミッションを提案したりします。リーダークラスはもちろん、メンバークラスも同様です。

リファラル採用でも会社との相性の見極めは怠ってはならない

藤井:あと、リファラル採用はみなさんされていますか?

林:積極的に声は掛けています。サービスが成長し始めてからは、話を聞きたいと言ってくださる方も増えました。そういう人たちとコネクションをつないで、会社に遊びに来てもらったりしています。

藤井:リファラル採用と普通の採用で何が違いをつけていたりはしますか?

林:最終的な面接のフローは普通の採用と同じ形式にしています。

藤井:僕たちはリファラル採用をして失敗してしまったことがあるんですよ。「知っている人だから」と採用したのですが、入社してみたら社内の文化と全く合わなかったんです。それ以来、リファラルでも会社に合う人かどうかはきちんと見極めるようにしました。そういう意味ではリファラルだからといって差別化はしないほうがいいですよね。

林:客観的に判断するのは大事だと思いますね。

藤井:髙山さんはリファラル採用で気を付けていることはありますか?

髙山:個人的に重視しているのが、とにかく知り合いとの絆を深めておくことです。オンラインでもちょっと話そうとよく声を掛けたりしています。

最後にひとこと

各社とも今後のエンジニア採用は加速化の予定

藤井:では、最後にみなさんから一言お願いします。

髙山:今回いろいろとお話ししましたが、当社の採用活動が特別上手くいっているというわけではありません。あくまで一つのケースとして捉えていただければと思います。

現在ユーザベースもニューズピックスも積極的に採用をしていますので、少しでも興味のある方がいれば、「Uzabase Connect」で調べてみてください。どうぞよろしくお願いします。

林:僕たちはまだ組織規模が大きくありません。これからいろいろな壁にぶつかっていくはずなので、今後もCTO界隈の方々と情報交換ができれば幸いです。

今年はエンジニア採用をどんどん加速化させていくので、当社のプロダクトに興味を持っていただけたら、カジュアルにお話をできればと思います。

藤井:本日はみなさん、お忙しい中ご参加いただいてありがとうございました。今回はお二人から新しいことをいろいろと教えていただけて面白かったです。印象に残ったのは、やはりみなさん自社の文化を大事にしているということですね。そこは当社も同じなので、今後も重視して採用を続けていきたいと思います。

星野リゾートにはまだまだITのイメージがありませんが、企業とITを上手く組み合わせて、日本に新しい産業を作ることが当社の夢の一つです。エンジニア採用も含めどんどん新しいことに取り組んでいきますので、ご興味のある方はぜひ気軽にお声掛けください。本日はありがとうございました。

企画/編集:FLEXY編集部

 

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