ビジネスにおける最適なUI/UXデザインの進め方

2020年12月9日に開催された、CREATORs meetup。今回で早くもCREATORs meetupは第3回を迎えることになりました。

テーマは、現在各所で注目度の高いUI/UXデザインの進め方について。

ビジネスにおける引き合いやデザイン価値は高まり続けている一方で、実際の現場には課題も多いものです。

そこでデザイン組織に様々な立場で関わってきた3名の登壇者を招き、現場の課題やその解決策についてお話しいただきました。みなさんが語る、UI/UXデザインの未来についても注目です。

 

本記事の対象者(こんな人におすすめ) – デザイナーの方 – デザイナーのマネジメントを行っている方 – デザイナーの採用にお困りの方 – デザイナー組織課題をお持ちの方 – デザインチームMGR、CDOを目指している方

登壇者

宇野 雄
宇野 雄 氏|クックパッド株式会社 デザイン戦略本部長/UIデザイナー
制作会社やソーシャルゲーム会社勤務の後ヤフー株式会社へ入社。Yahoo!ニュースやYahoo!検索などのデザイン責任者/デザイン部長を務める。2019年より現職。 著書に『フラットデザインで考える 新しい UI デザインのセオリー』(技術評論社)など。
菊池 聡
菊池 聡 氏|Web Directions East 合同会社 代表
アメリカで大学まで生活、そのあと在学中に企業した貿易の仕事を続ける。その後、アメリカ大手電機店との争いに敗れる。その時の経験から、ウェブを勉強する。その後、講師としてウェブを教える傍ら、執筆活動を行う。レスポンシブウェブデザインを日本に初めて広めたりもしている。 講師業と平行して欧米のプレミアムカンファレンスを日本で開催。 技術者向けのWeb Directions East, UX&UIのカンファレンスUX DAYS TOKYO、PdM向けのハーバード大学MBAの講座のProduct Institute Japanの主宰、他には日本インタラクションデザイン協会の理事長を務める。
西宮 一喜
西宮 一喜 氏|株式会社エウレカ Expert of UI/UX, HEAD代行 (モデレータ)
新卒で立ち上げフェーズのベンチャーにジョイン。ソーシャルゲームのディレクター/プランナーを経て、UIデザイナーとなる。 その後はUIデザイン部署を設立やPM兼デザイナーとして経済産業省内コミュニケーションツールやJINS MEME系列のアプリ等の開発を経験。 次第にリリース後のプロダクト成長にも携わりたいと思い、2017年自社プロダクトを持つeureka, Inc.に転職。 現在は100->1000のフェーズにおけるプロダクトデザインや組織のあり方を模索する日々を過ごす。

登壇者のご紹介

異なる立場からUI/UXに携わりデザイン価値を提供する3者

株式会社エウレカ Expert of UI/UX, HEAD代行 西宮 一喜 氏(以下、Nipper):ファシリテーターを務める西宮と申します。僕は普段Nipperと呼ばれているので、お二方にもそう呼んでいただけたらうれしいです。

僕の経歴を簡単に紹介させていただくと、まず新卒で立ち上げフェーズのベンチャーにジョインしました。最初はソーシャルゲームのディレクターやプランナーだったのですが、そのうちサービス系のUIデザインをやりたくなったのがUIデザイナーになったきっかけです。その後はUIデザイン部署の立ち上げやPMなどを経験しつつ、0-1ベースの新規案件開発に関わっていました。次第にサービスリリース後の改善フローも経験したいと思い、エウレカにジョイン。現在は実際に運用フェーズの改善に携わっています。

エウレカはマッチングアプリの「Pairs」を開発している会社です。エウレカは、「マッチグループ」という米国に本社を置く世界最大規模のオンラインデーティング会社の傘下にあたり、私たちにとって、マッチグループは親会社にあたります。マッチグループは、各国の文化や国民性にあったサービスを190ヵ国、42言語で展開し、オンラインによる新しい出会いを生み出し続けているNASDAQ上場企業の世界的優良企業です。

そんな世界規模で展開している会社と横串で情報交換しながら、日々開発を行っているような状態です。

Nipper:当社はもともと受託開発を行っていたのですが、自分たちで事業を立ち上げたいという思いがあり、2012年にPairsをリリースして現在に至ります。ミッションは「人生に『あってよかった』と思ってもらえるものを。」というもので、特にフォーカスしているのが「かけがえのない人との出会いを生み出し、日本、アジアにデーティングサービス文化を定着させる。」というビジョンです。2019年からはPairsに加えて事業が一つ増え、Pairs engageというオンラインで始める結婚相談所サービスをリリースしました。現在はこの2つの事業がメインです。

では次に、クックパッドの宇野さんお願いします。

クックパッド株式会社 デザイン戦略本部長/UIデザイナー 宇野 雄 氏(以下、宇野):クックパッドの宇野と申します。現在はデザイン戦略部本部長という肩書で、社内のデザイン統括をしています。

クックパッドのデザイナーは現在30名ほどで、会社全体の1割程度の人数です。当社にはレシピサービス以外にも新規事業などがいくつかあり、基本的にデザイナーは各事業部に所属することになっています。期末の評価は事業部単位で行いますが、デザイナーとしての能力評価はデザイナー統括マネージャーが下記のように部署をまたいで横断でで行う体制です。

宇野:僕自身が見ているのは3つの領域で、一つはデザイン戦略です。ここでは全社に関わるデザインを作ります。広報物や全てのプロダクトに通じるデザイン基盤、デザインシステム、あるいはそれらを推進するためのツールもデザイン戦略部が用意します。

もう一つがプロダクトデザイン。各事業部にはリードデザイナーがいるのですが、彼らは僕が直接束ねています。最後がデザイナー。先で話した評価と育成に責任を持つデザイナー統括マネージャーが横串の評価を行い、それに加えて僕が最終的な報酬提案を能力評価に合わせて行います。

次に簡単にご説明したいのが「料理のユーザー体験デザイン」という考えです。クックパッドのコーポレートミッションは「毎日の料理を楽しみにする」というもので、僕たちの事業計画やデザインは、ここに向き合っているかどうかから全てが始まります。その上でレシピサービスのほかにもIoT事業や生鮮EC事業を展開していますし、Alexaスキルなども提供しています。というのも、料理は1日3食、365日あるので非常に接触ポイントが多く、さらに料理の体験自体も長くつながっているのが特徴です。朝食を作る、お弁当を作る、食べる、洗う、片付ける、また夕食を考える、買い物をするといったことも料理の体験の一部と捉えています。さらに生活のフェーズや世界のことまで考えると非常に世界は広がります。離乳食や食育、健康、調理器具、環境問題といった、料理にまつわる体験や経験の全てがデザインということです。

オフィス内には大きなキッチンがあり、実際に料理をして自分たちのプロダクトを試しています。(現在は新型コロナの影響で利用はできません)

Nipper:続いて菊池さんよろしくお願いします。

Web Directions East 合同会社 代表 菊池 聡 氏(以下、菊池):僕の場合は小さな制作会社のような感じです。小さな会社で何ができるかをミッションとして考えながら、いつも一人か二人で活動をしています。

最初は制作やコーディングなどを行っていましたが、そのうち友人の影響でUXを始め、現在はWeb Directions East合同会社という名の下でさまざまな事業を展開中です。UXデザイン関係ではもともと海外で行われていたUX&UIのカンファレンスを日本に持ち込み、UX DAYS TOKYOの主宰などを行っています。20年近くこの業界にいていろいろと悶々としてきたこともあったので、最近は教育プログラムやマネージャー育成コースなどの運営も始めています。いろいろな人がUXを勉強できるようなプラットフォームも準備中です。

ビジネスにおけるUI/UXの進め方について

企業の中でデザイナーが持つ役割とプロダクトへの関わり方

Nipper:宇野さんからクックパッドにおけるデザイン領域について簡単にお話ししていただきましたが、その中でデザイナーはどんな役割を担っているのか、ビジネスのどこにフォーカスを置いて仕事をしているのかお伺いしてよろしいでしょうか。

宇野:クックパッドはデザイナーに限らず、全てをみんなで作り上げる傾向があります。僕もクックパッドに入社して驚いたのですが、いわゆるディレクター的ポジションは非常に少ないです。誰が仕様を決めるのかといった役割分担もされていません。

小学生のサッカーのようで、ボールがあれば全員で群るんですね。そのうち誰かがオーナーシップを持って、一定の方向に進んでいく。意思決定者は最初に決めてあるのですが、それ以外の部分は良くも悪くもファジーです。

ですからデザイナーが強く牽引することもありますね。デザイナーという職業は最終的にデザインを仕上げる人という定義ではあるのですが、どこから絡むべきなのかということも定めていません。大体起案の段階から呼ばれ、リリースからグロースまでの長いスパンで関わり続けます。

いわゆるUIデザインにかけている時間は全体の3割ほどで、残りの7割はデザイナー自身がプロトタイピングをしたりユーザーインタビューなどを頻繁に行い、試行錯誤しています。毎週5名程度のユーザーさんをお呼びして常にユーザーインタビューできる状態を作っているので、インタビューを重ねて何かを作り上げるのが基本スタイルです。

Nipper:エウレカの場合は事業に合わせた組織体制にアップデートしてきているのですが、一昨年ぐらいまではデザイナーがPO(プロダクトーオーナー)をやることが多々ありました。それが事業規模の拡大に合わせ、2020年にかけては各職種のスキルをワールドクラスにまで深堀りしようということになりました。ですから今は(クロスファンクショナルな働き方ができる前提で)各職能の責務が割としっかり定義されています。

ただし、デザイナーの関わり方という意味ではやはりユーザーリサーチの段階から、アンケート設計やコンセプトビジュアル作りなどを、リサーチャーと連携して業務を進めています。菊池さんにお伺いしたいのですが、逆に最近の受託ではどういったプロセスから入るのがトレンドになっているのでしょうか。

菊池:業種によって非常に温度差がありますね。宇野さんがおっしゃっていたように、UI/UXデザイナーがユーザーからの声を聞くといったことからやれたら理想です。

ですが受託の場合はクライアント側の窓口担当の方次第ですね。金融系なんかだとプライバシーの問題も絡むので、我々がインタビューすることはほぼありません。

逆にスタートアップのような小さな企業の場合は、一緒にリサーチからスタートできたりします。こちらがデザインについて先方に手取り足取り教える苦労はあるのですが、コミュニケーションは取りやすいですね。

あとはトレンドかどうかはともかく、コロナの状況下で人に会うことができないので、リモートでどうリサーチするのかは各社苦労していると思います。

制作においてコミュニケーション手段の役割を果たすデザイン

Nipper:デザインのプロセスについて、もう少し深堀りしてお聞きしても大丈夫でしょうか。

宇野:そんなにはっきりとしたプロセスは無いですね。先程お話したように大体最初の段階からデザイナーが入っているので、どこからデザインなのかもあまり区分けしていません。デザイナーがいると認識合わせのためにとりあえずプロトタイプを作ってしまうこともありますし、デザインはコミュニケーションの道具のような使われ方をしています。

クックパッドはFigmaを導入していて、プロダクト制作に関わるメンバーほぼ全員がアカウントを持っています。デザイナー30人に対してアカウントは150ほどあるくらいです。Miroと同じようなコミュニケーションツールとして使っている感じです。UIキットを使い、デザイナー以外の人がデザインをコミュニケーション手段として使うこともあります。

Nipper:デザイナーは最初から並走するということですが、そもそも何かをやってみようというきっかけはどのように生まれるのでしょうか?

宇野:一番大きなパターンはデザインスプリントですね。グーグル・ベンチャーズが生み出したもので、みんな便利なフレームワークとして使っています。

もともとは5日間で行うものですが、Googleの社内で3日間版が行われいるということで、そちらの資料を参照し今は3日間版の方が多く行われていますしています。意思決定者が必要なのでCEOやCTOが参加することもあります。3日間完全に缶詰になって、どういう課題があるのか、どんなソリューションがあるのか、種を作って展開しています。

Nipper:課題発見は、先程おっしゃっていた毎週のユーザーインタビューで行う感じですか?

宇野:ユーザーは自分の課題を認識していなかったりするので、インタビューで発見するというよりはまず僕たち自身が叶えたいゴールの達成のためのソリューションを考え、そこからユーザーが抱えていた悩みなどに当てはめて課題を引き出していきます。

Nipper:エウレカは優秀なリサーチャーがいまして、定期的に市場調査を行ってレポートを作成してくれています。例えば、シングルの方がどういう恋愛観を持っているのか、マッチングアプリに何を求めているのかといったリサーチ結果を集め、その中から特定のセグメントや課題を固めて戦略を練り、実行していく形が多いです。デザイナーはそこにコンセプトモックを作る形で関わったり、インタビューに同席してインサイトを探ったりしています。そういう意味ではプロセスに違いを感じますね。

デザイン価値を発揮できる案件かどうかの判断は重要

Nipper:菊池さんは依頼してきたクライアントが持っている課題に対して、作るモノがソリューションにならなそうだと感じる場合があると思います。リサーチして証明するにしても、なかなかリサーチできない状況もある。

「1000万円で作ってくれ」と言われているけれどそういった不安があるような依頼が来たら、実際どうしていますか?

菊池:受託あるあるですね。これはコミュニケーションが取れないことが原因だと思いますが、デザインチームは最後に見栄えを良くする役割だと思われているらしく、ただ要件定義に沿って作ってくれと言われることがあります。

対応は大体2パターンで、一つは速攻で降ります。こちらとしても時間の無駄になってしまうので、正直にお伝えしてやめるというのが一手です。もう一つは社長などステークホルダーと話す機会を設けてもらうことです。

また、コンセプト部分で簡単なテストをして絶対に当たらないことがわかったらプルーフを見せるのですが、上に伝えてもらう途中で止まってしまうこともあるんですよね。

Nipper:「そう言われても止められないんだ」みたいなことですか?

菊池:社長マターの案件だからすでにプレスリリースを打ってしまった、などですね。そういう場合は申し訳ないのですが早々に退場させていただくことがあります。

Nipper:退場する判断ができるのはかなり強いと思います。もちろん依頼を受ける側としてお金がもらえなくなりますが、デザイナーとしてはそう言わないと不幸な結果を作ることになってしまいますしね。

菊池:相手側に能力が無ければ退場するという契約形態は、そろそろ日本にも出てきていいのかなと思いますよ。

Nipper:海外ではそういう契約もあるんですか?

菊池:ありますよ。「こういう人材が相手企業にいなければうちは受けません」と契約書の中に書くんです。それでグローバル企業が断られたなんて話も聞きますし、企業と組むというのはお金ではないんですよね。

Nipper:デザインの価値が海外では既に認められつつあるんですね。

これからのUI/UXデザインについて

画面の外のリアルな体験をデザインするための試行錯誤

Nipper:では今後、UI/UXはどう進化していくのでしょうか。もともとデスクトップコンピューターがノートパソコンのように持ち歩けるようになったと思ったらiPhoneが登場するといった革命が起き、UIもデバイスの特徴を生かした形に進化してきたと思います。

僕自身は、VRやARといったものが出てきたことで今後はまた新しい操作体験が生まれてくるのかなと想像していますが、宇野さんはいかがでしょうか。デバイスの進化と共に、クックパッドで将来的にやりたいことはあったりしますか?

宇野:今の僕たちはスマホが主戦場ですが、画面を眺めていても料理は完成しないんですよ。当然ですがキッチンに立って手を動かしていろいろなものを作ります。そこが何とかならない限り、料理は楽しくならないなという思いが根底にありますね。買い物にしてもスーパーに行くのが面倒だとか、どの野菜が新鮮なのかわからないといった問題があります。画面の外のことのほうがずっと大事なんです。

今少しだけ始めているのが、家電メーカーと一緒に正しい家電を模索する取り組みです。クックパッドのレシピと連携して、調味料が必要な分量だけ出てくる調味料サーバーなんかを作っています。やはり、何とかしてリアルにつなげたいんですよね。社内には3Dプリンターやレーザーカッターなどの機材が置いてあり、いろいろな試作を続けています。

ARの試作もしてもしていたそうですが、残念ながらあのゴーグルを被って料理はしませんよね。毎年VR元年、AR元年などと言われていますが、2年目を待ち望んでいるような状態です。

Nipper:Apple Glassの登場が噂されていたりもしますが、メガネくらいにまでなれば両手が空くので、料理が楽しくなりそうな気はしますね。

宇野:そうですね。今チャレンジできているのはVUIのほうです。Alexaスキルを提供していますが、VRやARよりも今は料理との親和性が高い気がします。

目的よりも手段が先行しがちなDXの取り組み

Nipper:受託の面白さや醍醐味はやはりいろいろな企業の案件が舞い込んでくることだと思います。菊池さんにお伺いしたいのですが、そういう意味で最近未来を感じるような案件は何かありましたか?

菊池: DXという言葉が流行っているので、案件としてはAIやチャットの依頼が多くなりました。

Nipper:どういう場所で使うものですか?

菊池:顧客との会話ですね。よくあるのはお問い合わせ部分です。あとはバックオフィスなどサポートチームにAIを入れる案件などで、領域は限られています。

DXという言葉が先行しすぎてしまっていて、AIやチャットを導入したいけれどどうしたらいいかわからない、という流れの依頼は本当に増えました。宇野さんのようにコンテキストを踏まえた上で最終的にボイスになった、というわけではないんです。ボイスを使える場所を探した結果サポートチームだったという感じで依頼されるので、ボツになることも多いです。

Nipper:手段と目的が逆になってしまっているやつですね。

菊池:問題解決の視点はあまり無くて、AIやチャットを使いたいから置き換えているだけになっています。これも受託あるあるですね。

Nipper:2020年はDXが完全にバズワードですよね。事業会社にいたらそれこそ課題ドリブンで物事を考えますから、DXというキーワードは出てこなかったりしますよね。

宇野:確かに無いです。

菊池:言ってみればもうDXが終わっている状態ですからね。サービス系の企業はすでにDXの中にいるから、DXをやらないといけないというマインドも無い。

Nipper:ナチュラルに組み込まれている感じがありますよね。Slack導入がDXだ、なんていう話も聞きますし。

近い将来デザイナーに訪れる能力や報酬の格差社会

Nipper:では、デザイナーの価値や報酬といったリアルな部分は今後どうなっていくと思いますか?

宇野:難しい話ですね。現状としては、今後UI/UXに限らずデザインの価値はどんどん上がっていくと思います。表層的な部分はもちろん。何かを底上げしてレベルアップする役割としていろいろなフェーズに関わっていくでしょう。

一方で、僕がデザイナーになった頃にやっていたようなバナーを作るといった仕事も全くなくなってはいないんです。広告出稿の際に、いろいろなプラットフォームのレギュレーションに合わせて何種類も作らなければいけないといったこともありますよね。言葉を選ばずに言えば、デザイナーが提供できる価値の一番安価な部分はいつまで経っても変わらないんです。どんなに高い技術を持つ人でも、そういう仕事は発生するのが現状です。

ですから報酬はどんどん上がり続けるものの下層部分はそのままで、ただ幅が広がっていくだけのような気がします。エンジニアはここ数年で一気に報酬の水準が上がったと思いますが、デザイナーは下が変わらないかぎり、平均値自体はそこまで変わらないのではないかというイメージです。

Nipper:デザイナーの格差社会問題ですね。

宇野:その人の能力によるものではなく、単純にデザイン業務の幅があまりに広すぎるんだと思います。

Nipper:デザインで表現するという部分にどこまで価値を見出してもらえるのか、受託の依頼で何か変化はありますか?

菊池:UXの相場は上がっていると思いますね。ただ宇野さんがおっしゃったように二極化はしています。ビジュアルデザイナーだった方が急にUIデザイナーとして働くことになり、どっち付かずになって苦しんでいるケースも多いです。ビジュアルデザイナーはビジュアルデザイナーとしてスキルアップをしてもいいと思うのですが、なぜかUIをやり始めてしまうんですよ。

僕が教育事業に目を向けたのも、キャリアパスが日本と海外では決定的に違うからです。海外には優秀なUXデザイナーを排出するための大学のプログラムがあり、卒業したらインターンでAmazonやGoogleに入り、そのまま就職します。そういう大学を出た僕の友人に年収を聞いたら、4000万円と言っていました。すごいなと思いましたよ。

Nipper:すごく特殊なキャリアを歩んできたというよりは、きちんと道を突き詰めて到達しているんですね。

菊池:そうなんです。ですからキャリアをぽんぽん変えるのではなく、グラフィックの分野を突き詰めた人がいてもいいんじゃないかと思います。

UI/UXも、これから先もっと勉強する人は給与が上がるのではないでしょうか。会社に入ると学びが止まってしまうことが多いのですが、どこにいても勉強を続けている人はいますし、そういう人は実力を伸ばして自分の価値を高めていけます。そういう意味ではキャリアパス的にも二極化は起きると思いますね。

Nipper:身が引き締まりますね。こつこつ積み上げている人との、数年後に生まれる差は大きいということですね。

最後にひとこと

Nipper:今回のテーマはなかなか粒度が大きかったのでどうなるかと思いましたが、なかなか濃い話ができたのではと思います。お二人はいかがでしたでしょうか。

宇野:良い話題を抽出していただいて助かりました。

菊池:ぜひ次回もお願いします。

Nipper:クリエイターというくくりでイベントが開催されていくそうなので、次回もこういった形でほかの企業さんやまたこの中の誰かがお話しすることもあるかと思います。

もし我々に興味があって話したいという方がいればぜひ検索していただいて、何かしらの形でご連絡いただければと思います。

宇野:人が足りない状態なのでお待ちしています。

菊池:うちもです(笑)。

Nipper:では本日はありがとうございました!


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編集/企画:FLEXY編集部

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