エンジニア評価制度のあるべきと各社の育成方法

※本記事は2016年12月に公開された内容です。

FLEXY主催のイベントとして、2016年11月11日に開催された第3回「Ex-CTO meetup」。「エンジニアの評価はどうあるべきか?どう育成していくべきか?」について、経験豊富なCTOの方々にエピソードを交えて語っていただきました。

登壇者紹介

パネラー

  • 貝畑 政徳(かいはた まさのり)氏
    株式会社カヤック 代表取締役CTO兼ゲーム事業部長
  • 白井 英(しらい すぐる)氏
    株式会社サイバーエージェント SGE事業部最高技術責任者
  • 川崎 禎紀(かわさき よしのり)氏
    ウォンテッドリー株式会社 取締役CTO

モデレータ

  • 稲荷 幹夫(いなり みきお)氏
    株式会社レコチョク 執行役員兼CTO

レコチョク・稲荷幹夫氏にインタビューした激変する時代の「特化型エンジニア」だからこそ持てる可能性があるの記事もご覧ください。

エンジニア評価制度について。MBO、自己申告制度や180度評価を実施

株式会社レコチョク執行役員兼CTO 稲荷幹夫さん(以下、稲荷):
本日のテーマは、評価と育成についてです。私自身、レコチョクとサイバードでCTOを経験しましたが、組織の規模や成長度で評価制度は変わるものだと思っていますし、エンジニアそれぞれがやりたいことや目標によって、育成や評価制度も違う物差しをもってこないといけないと思います。

つまり、評価制度には答えはないということです。なので、この場でひとつの答えを出すというよりは、本日集まっていただいた規模の違う4社の考え方や事例をお聞き頂き、最終的には、自分や自社の中で考えてもらって、そこから編み出していただけるといいのかな、と考えています。それではまずは、私からお話させていただきます。

現時点の社員数は約150名で、派遣社員などを入れると300名近くいます。その内、エンジニア数が85名。システム自体がとても大きなシステムになっているので、稼働システム別に担当を置かないといけない。そのためプロジェクト的に動かすことができず、職制に近いような形になっています。現状では、プログラマーがやりたいことをやらせてあげられなくなってしまう環境になってしまっていると思います。また、評価制度も個々人に合わせてというわけにはいかないですし、不満が根付いてるところがありますね。

評価制度自体は、MBO(目標管理)で業績連動させる形で今まで回してきました。ところが、組織が大きくなると、このやり方では限界があって。保有スキルを評価するために、若干のチューニングをしています。加えて、グループ長だとか管理職レベルは180度評価、いわゆる上からの評価というのはストレートに一本、組織評価でいいんですけれども、下からの評価をどういうふうに加味していくかっていうことで、今は下側からの180度評価を入れています。

ちなみに評価については、基本的にはチーム長が実施します。ただ、こうするとどうしてもチーム差が出てしまう。評価の最終決定では公平性を持ちたいので、部長と経営陣で多少の味付けをします。これを半期ごとに行って年俸の改定をしています。
定性、定量面の評価では、MBOによって半期で目標設定をクリアしたかしないかを基本的には重視しています。定性面では、3年後のキャリアマスターみたいな本人の成長を考えた上で、月の成長目標を設定させていますね。

そのほかの特徴でいうと、自己申告制度というものがあるんです。現場から社長宛にストレートに不満とか、上司のこの辺がダメだみたいなことを言える制度で、もちろん僕自身も評価されているんです。こういう意味では、現場と経営陣、社長との距離の近さがあるのかな、と思います。

あとは、海外カンファレンスの参加もやっていますね。ハッカソンや勉強会も労働時間に入れて、勉強会では積極的にプレゼンの機会を設けています。
ということでひと通り話しましたので、次はカヤックさんにバトンタッチします。

カヤックの評価制度。社員全員が人事部。面白く働けているか?を重要視

株式会社カヤック 代表取締役CTO兼ゲーム事業部長 貝畑 政徳さん(以下、貝畑):
カヤックは今、社員数が大体250名くらいで、半分がエンジニアです。基本的には事業部に属しているのですが、一部の人間はプロジェクトや、事業部を掛け持ちしている人もいるような状態になっていますね。

ちょっと特徴的なのが、社員全員が人事部に所属しているんです。たとえば、自分が気に入った人にファストパスというカードを渡すと書類の選考はパスできたりとか、ラストパスというカードもあって、それを渡すといきなり役員面接してもらえるんです。社員紹介を増やすとしても、具体的にどうしたらいいかわからない、という人が多かったので取り入れました。社員発案の制度です。社員全員がカヤックの成長にコミットするという意味で、そういった仕組みを行っています。

評価制度ですが、まず、どのように社員の給料を決めているのかを説明します。「あなたが社長だったら給料を高く上げたい順番に並べてください」という質問でメンバーを並び替える『月給ランキング』という仕組みがあります。自分と日々一緒に働いている人たち同士で、相互投票をしてその結果を基に月給を決めます。求めるスキルも変わり続けるので、細かい基準は設定していません。会社へのコミット率の高い人が上に行ったり、逆に、特にコミットしなくても、技術力が半端ないみたいな話だとS評価を付けたりと、上下関係は抜きにしてランク付けしていくんです。その基準は社員それぞれで良くて、ただ社員の投票結果の合計が一番正しいはずだという前提にたっています。

次に、給料とは関係なく「自分の成長」のための360度フィードバック制度があります。自分で自分のことを振り返る設問と、他者からフィードバックをもらえる質問があります。この質問が結構重要ですね。特に、面白法人と名乗っているので、「面白く働けてるか」っていうのが一番大事で10段階評価で聞いています。他にも、「失敗したことをあげてください」という質問があります。失敗をしていないということは、チャレンジしていないということと同義と考えているためです。いろいろあるんですけど、設問項目がダイレクトに会社の価値観そのものになっています。

育成制度で特徴的なのは、全員社長合宿っていうのを年に2回やってます。毎回、自分が社長になったつもりで会社のことについて考えてくださいというお題で、新規サービスや楽しく働くための制度を考えてくださいとか、経営理念を見直してくださいっていうのがあるんです。カヤックをどういう会社にしたいかっていうのを改めて考えさせることで、カヤックへのコミットがあがっていくこともあるし、実際そこから生まれたサービスや制度もたくさんあるんですよ。

稲荷:
面白く働けているかっていうのは重要ですよね。でも実際に聞くのは勇気がいります(笑)では続きまして白井さん。お願いします。

これまでもこれからもベンチャー企業。自分の宣言したことにコミットする

株式会社サイバーエージェントSGE事業部最高技術責任者 白井 英さん(以下、白井):
私が所属している、サイバーエージェントSGE(Smartphone Games & Entertainment)事業部は、ゲーム事業に携わる子会社11社が所属していて、合わせて社員750名くらいの規模感になります。
エンジニアは基本的にはプロジェクトごとに配置されるので、プロジェクトにコミットする体制になっています。

評価制度の話をさせてもらう前に、サイバーエージェントのことを少し話すと、規模は大きくなっていますが、自分たちはベンチャー企業であると、常にそう思ってやっています。そのため、評価制度についても、基本的には本人たちに成果と技術面に関して自分のやりたいことを宣言してもらい、宣言したことに対してどれくらいコミットしたかという指標で評価をしています。
もちろん一人で働いているわけではないので、基本的にはチームや会社としての目標に対してどれだけ、どういうコミットをあなたはできますか、というのを半期ごとに宣言してもらっています。

また、人を目立たせるということにも力をいれており、特に表彰には力をいれています。半年に1回あるサイバーエージェント全体のグループ総会で、活躍したエンジニアを表彰したり、子会社ごとや事業部ごとでも表彰したりしています。

育成に関しては、SGEでは、半期ごとに「あした会議」といって新規事業や課題を解決するためにみんなでアイディアを出して、決議する1泊2日の合宿を実施しているのですが、そこに若手エンジニアを参加させています。全体で研修するなどももちろんあるのですが、本当に自分たちに必要なことを自分たちで考え宣言して、半年かけて責任をもって実行するという、提案から実行までをワンセットで任せていく中で、人が育ってきたと感じているので、育成にはかなり効いていると思っています。

稲荷:
ありがとうございます。では最後に、川崎さんお願いします。

変化のスピードに合わせて、目標を柔軟に変化させる

ウォンテッドリー株式会社 取締役CTO 川崎 禎紀さん(以下、川崎):
まず従業員数は、海外も含めて100人を超えるぐらいです。エンジニアのインターンも大勢います。で、だいたい半分ぐらいがエンジニア、ないしはデザイナー。組織の形はプロダクト別にチームを作っていて、基本的にはエンジニアがプロダクトオーナーを兼任しています。マーケティングをやるのであればそれも含めてエンジニアが責任を持っていく体制でやっています。

評価の話に移る前に、その一つ手前で一番大切なことがあって、それがモチベーションだと思うんです。ダニエル・ピンクの「モチベーション3.0」という本に書いてあるのですが、クリエイティブなことを仕事としていく人達にとって何より重要なのは、内発的動機づけといって、自分としてその仕事に対して意義を感じているかだとか、自律的に働けるかどうかとか、成長を実感できるかどうか、みたいなところが必要なんです。それで、モチベーションを出している人はパフォーマンスが高い。こういう社会科学的な研究の知見を、できる限り取り入れていこうという思想でやっています。

なので、一人ひとりが自律的に働き、自分の担当しているプロダクトに責任を持って意思決定できるようにしていく。そうすると、失敗したら失敗したなりにものすごく学びがある。誰かにやれって言われてそれをやって失敗すると何も学べないですしね。他の人がやれって言ったからやったんです、みたいな感じじゃなくって、自分で意思決定を繰り返していくので、その分成長を実感していくというような形を大切にしています。
その上で、エクスペクテーション制度というのをやっていて、基本的に自分のマネージャーの期待に応えたのか応えなかったのかっていう一点に集約させるっていう評価を今やっています。

目標を立てることも重要なんですけど、我々みたいな会社だと、会社の環境だったりプロダクトや他の会社の状況に合わせて、フォーカスしなきゃいけない領域っていうのは刻一刻と変わってきます。
なので、例えば半期の頭に目標をたてたとして、その半期の間それしかやらないです、みたいになっていると、やっぱり会社として変化していく速度がすごく遅くなって、競争力が下がると思っているんですよね。なので、そこを柔軟に変えていけるようにするために、エクスペクテーション制度をやっています。

具体的には、週に1回1on1ミーティングをやっています。そうすると、自分ではものすごく良い成果が出たと思っていたのに上司がやってほしいこととは全然違うことをしていたとか、逆に全然ダメだと思っていたのに、すごくいいねみたいな評価を受けてなんだか謎みたいになってしまうことが起こりにくくなってくると思うんです。
それで最終的に、役員による全社員レビューを毎月やっていて、各マネージャーから個別でフィードバック、さらにQ(クオーター)毎で、給与査定と、半期に一度グレード評価をやっています。

育成でユニークなのは、インターンをかなり積極的にみんなとっていいよっていうふうに言っていて。やっぱり自分が弟子みたいなものを作ると、教えることによって一番その本人が学ぶみたいなところも強いのかな、と思うんです。自分自身の成長にもつながるし、かつ、ちゃんと育成すれば自分がやっているプロダクトも、より高速に進んでいく、いい成果が出ていくっていうふうにそこを重視してやっています。

稲荷:
ありがとうございます。ということで、まずは評価・育成について各社の概要をお話いただきました。

360度評価も相対評価も万能ではない。欠点を補完する仕組みが必要

稲荷:
次は、現制度についての課題とか、実際失敗しました、みたいなことがあれば、経験談として話していただければと思っています。
まず、評価制度は大きく2つに分かれると思っていて、360度評価とそれ以外ですね。レコチョクの場合は、360度評価とMBOをミックスしたものなんです。
そこで僕たちの課題は何かというと、目標設定をする時の記述レベルがすごく曖昧なんですね。上長自体も均質化できてないというところがあるし、その下においてはもっとばらけちゃう、いうところがあるんです。

それで今は何をやってるかって言うと、実は目標設定の書き方とか、あと部下に対する期待度の伝え方とか、どっちかというと制度よりも中身に入っていって、公平化というか均質化していくための教育を回していて。制度自体はあまり変えるべきもんじゃない、と思っています。
360度評価の貝畑さんは、何か苦労されていることってありますか。

貝畑:
カヤックでは、「全員に個人の目標を立てなさい」っていうことは、やらなくなりました。一応そういう目標を入れるシートがあるんですけど。360度評価が半年に1回やってくるタイミングで、多分その時の自分の目標はこうだったなって振り返っていってる社員が多いと思います。もちろん目標設定した方がいい社員も多いのですが、目標がなくても頑張れるという社員もいて、そこはどちらでもよい、というのが現在のスタンスです。

いまは、自分の成長より他人の成長にコミットしなさいっていう意味で360度フィードバックをやってるので、他の社員にフィードバックコメントをいれるのに数時間かけたりしてますね。
ものすごく辛辣なこと書かれたりするんですよ。悪口ではなくて、こういうところ直してほしいとか、ここ直したらもっとよくなるっていう意味で書いてもらってるんですけど、上から言われる分にはまあ何かそんなもんだなと思えても、やっぱり下からの突き上げみたいなものは半端なくて。

新入社員も、僕ら代表取締役もその360度フィードバックをされるので、ものすごく傷つくことを書かれたりすると結構へこむんですけど、そういうことにいちいちへこまなくていいように、サイコロによって給料がちょっと増える「サイコロ給」というものがあるんです。人間の評価なんて曖昧なものだから、評価と関連する給料にも、サイコロを振ってゆらぎを持たせているという。人に任せて評価される部分があってもいいと思うし、いちいち評価され傷つくよりは、自分が面白いかどうかっていうのを、一番大事な評価にしてくださいって思ってます。

稲荷:
360 度評価についてはわかるといえばわかるし、欠点もある。相対評価というか順番に並べるというのは僕もやったことがあって、トップ10パーセントを昇給させたこともあります。
では白井さん、何か苦労話とか。ここが課題だなっていうのはありますか。

白井:
みなさんのお話の通りで、たとえば弊社だと、半期に1回、目標宣言してもらうのですが、定期的に最初に立てた目標とその進捗と、そもそもそれって会社の方向性と一緒なんだっけという擦り合わせをしています。

それを少しでも疎かにすると、半年後に、こんなはずじゃなかったということになりかねないので。あとは、この業界だと非常に移り変わりが激しいので、半年前に立てた目標が割と1カ月後とかで、全然違う方向になったりもするんです。そういう意味でも、どういうふうに成長していくとか、どこにコミットするのかみたいなことは定期的に話すことが大切だと思いますね。

5人チームで、きめ細やかなフォローと評価が可能に

稲荷:
川崎さんのほうで何か苦労があれば。改定したばっかりですし。

川崎:
ここにたどり着くまでにかなり苦労してきてまして。一時期、ものすごく大勢を見ている人がいて、10数人見てる状態だったのですが、1on1ミーティングの間隔がどんどん空いていってしまうんです。そうなると、みんな何を頑張っているのかよくわからなくなり、評価もしづらくなっていくし、本人のモチベーションも下がったり、下がってる時に気づけなかったりとか。フォローもちゃんとできなくなるんですね。それで今は、最大5人にしてキャパあけとくみたいな感じにしています。

ちょっと苦労話とは変わっちゃうんですけど、360度評価みたいなのも一応入れていて、書いてはもらうんです。でも結局、ビジビリティの高い人に評価が集まっちゃうんですよね。
たとえば、デザイナーが大勢の人と働いていて、誰から見てもシンプルなものを作れているから、常に上位を占めている。とか、カスタマーサポートの人と一緒に働いてるエンジニアは一緒に働いてる人数が圧倒的に多いので、ユーザーファーストという評価がすごい集まりやすいみたいな。組織とかビジネスの形態によって全然違うんだと思うんですけど、我々の場合はポジションによって大きく異なってしまうので、それを直接評価に入れてしまうことはしないんです。

そのかわり、前回と比べて上がったのか下がったのかみたいなところは、割と指標になる。たとえば、新しくその人に票が集まれば、その人は何かしら大きな成長をしたんじゃないかみたいなシグナルになるので、リーダーないし会社の役員が気づけないことを回りから気づかせてもらえるっていう、補助的な仕組みとして1年半前からやるようになりました。

稲荷:
みなさん、社長賞やサンクス賞など、何か選ぶ時は投票制になっているんですね。そこを評価にするか、参考情報にするかっていう違いはあるものの、大体似たようなとこに落ち着いてるんじゃないかというふうには思います。

僕からの質問なのですが、川崎さん。僕も6人1チームを目指してるんですけれど、1週間とか、クオーターで1on1を回すための仕掛けとか、忙しくなる上長に対して気をつけてることとか、何かウォッチしてるような仕組みとか、ありますか。

川崎:
個人的になんですけど、1on1は朝一番に入れるようにしています。朝は予定が押してずれるとかもないし、頭も疲れてないので脳みそが働くのかなあと。なので、朝一番にやるのがベストかなと思ってやっています。

稲荷:
白井さんはどうでしょう。

白井:
今は子会社の現場に任せているんですけど、自分がやっていた時には1日3人までしか面談しないと決めていましたね。面談を通してコミュニケーションをとることも大切なので、いかに自分のパフォーマンスを維持しながら面談時間を設けるかということに気をつけていました。

稲荷:
評価制度は実際に中身をどう運用するかってものすごく気をつけないといけなくて、特にIT業っていうのは目標がもうゴロゴロ変わります。なので、そこを修正するサイクルというのは評価制度とは違うところで入れないといけなくて、かつ、それをちゃんと上長の下で握れるかどうかっていうことをきちんとやっていかなきゃいけないんですね。

どう成長感、裁量の大きさを感じてもらえるか。

稲荷:
育成については目に見えるとこを先ほどお話いただいたと思うのですが、今度は、裏に眠ってる背景だったり思想だったりっていうのを、中心に聞きたいなというふうに思っていて。
まずは僕のことでいうと、新卒は基本的に3年まで責任持たないといけないと思ってます。メンター制度をみっちり入れてヒアリングしてるんですけども、それでも4人中1人は辞めていくっていうそんな世界です。

逆に、中途は会社に馴染むか馴染まないかっていうのがすごくあって。これは失敗談に近いのですが、僕がレコチョクにパラシュート人事のような形で外から引っ張られて部長になった時は、部長とインフラの部長が辞めました。中途を入れる時はカルチャーというかな、マインドとか文化っていうのを相当気をつけないといけないと思っていて、今はどっちかっていうと下から育てるっていうほうに力を入れています。

その中で思ったのが、エンジニア、プログラマーとして優秀な子が実はマネージャーとして優秀と限らないということ。35、6歳になるといきなり、組織や下のスキルを見たり、会話をしないといけない。相手が人間になってしまうんですね。
さらにグループ長とかその上の組織になると、今度は予算を動かせないといけなくなるので、管理会計や財務会計を教えたりしています。そういう意味での教育がものすごく走ってきてるっていうのがレコチョクの特徴かなというふうに思います。カヤックさんの場合は、どうですかね。

貝畑:
育成って意味でいくと、週に1回、キャリアに関するブレストを1on1でやっていたり、人事のほうで特にケアが必要な人に対してやってたりという感じです。
で、なぜそれをやっているかと言うと、退職率が一時期上がった時があって。どんな時に会社辞めちゃうのかを見たときに、成長を感じない時なんだな、と。個人の成長もあるし、マインドや自分の絡んでるプロジェクト、事業部、あとはカヤックが成長してるかってとこで、自分のそのコミットしてる範囲において成長を感じられてないと、他に行かないと成長しないんだ、みたいな話になりがちです。そういったところの悩みとか、もしくは自分が何をすればいいのか分からなくなってる状況っていうのは、早めに相談にのりたいなというところでやっています。

あと、カヤックでもう1つ変わってるところでいうと、基本的に複数の事業部を体験してから辞めて欲しいということを入社時に言ってます。ゲーム、Lobi、クライアントワーク、それぞれ全く違う業態なんですね。違う会社が3つ集まっているというようなものなので、そこで知見とかスキルであったりとか働き方いうものが全く違うので、3つ体験してください、それがカヤックの価値のひとつです、という感じですね。
カヤックは何をするかよりも誰とするかっていうのが大事だと公言してるので、その誰かっていうのが見つかれば楽しくなるはずだ、辞めなくなるという考え方です。

あとは、新卒、中途で気をつけていることですよね。新卒は採用する前にブレストをして、その人の一生のキャリアパスを考えるというのをやっています。1回、現時点でのレールを引いてみて、それが魅力的かどうかっていうことを考える感じですね。中途では違う文化の人が入ってくるので、その人が一番活躍できるポジションに1回つけるっていうことは気をつけてやってます。1回結果を出せば周りから認められて居心地がよくなるので、それは意図してやったりもします。

稲荷:
白井さん、お願いします。

白井:
組織文化に合ってるかどうかを大事にしています。会社に入って育つ人と育たない人というのが、はっきり言うとあるんですね。
どういう特徴かというと、弊社は子会社戦略も取っていて、組織を小さい単位にすることで意思決定を早くするというのをやっているんですけど、つまり、裁量を、どんどん渡すことでスピード感早く次の打ち手が打てるということなのですが。

自分で情報を取りにいったり、やりたいんですというと、裁量を渡して「じゃあ、やってみよう」と任せているので、自分で成長したい人が育つ会社です。基本的にやりたいと言ったことはやってもらうようにしているので、ある意味それが育成施策にもなっていて、そういう文化を大切にしていますし、そういうことができる人を今は受け入れています。ただ、SGEという事業部自体できて1年半くらいの組織なので、いろいろな人を受け入れ、文化自体もみんなで作っていけたらいいと思っています。今エンジニアでは、「若手が若手を育てる」文化というのを浸透させようとしています。自分たちがこうなったらいいと思う組織を、自分たちで作っていける組織をこれからも作っていきたいと思っています。そうすると会社もより強くなると思っています。

マネジメントを「役割」にすると、リーダーやマネージャーがちゃんと育つ

川崎:
重視してるのは、みんなにアウトプットしてもらう対外発表であったり、エンジニアブログみたいなところですね。こういう機会があると、考えてることを言語化しなきゃいけなくなる。で、考えて仕事してこないと、何も書けないみたいな状態に陥るんですよね。で、順番回ってくるなって思ってると、何かの問題に取り組む時にこうというふうに考えて、こういうアプローチしてこういうふうにしました、みたいに言語化が最終的にまとめて出せるようになるんです。

あとは、エンジニアが新しく見つけた技術みたいなのを横展開していく速習会っていう勉強会を隔週でやっていまして。これも内輪の勉強会にすると甘えが出てきてしまうので、外部の人も同時に参加できるようにしたんです。

さっきの5人ルールの話にちょっと戻っちゃうんですけど、これも裏返しで1個いいことがあったんです。何かというと、リーダーになりたくないです、って、マネジメントしたくないんです、みたいなエンジニアって、いっぱいいると思うんですね。 でも最大5人までというルールにすると、必然的に誰かを見なきゃいけない人の数が、増えるんですよね。そこで、もう役割だから、ノウハウ覚えれば誰でもできることだからっていうふうにして、入社2年目だったとしても1人や2人を見はじめるっていうことをやってもらい始めたんです。 これができてくると、エンジニアリーダーが下から、新卒社員からもちゃんと育っていってスケールする組織になるんじゃないかな、と。まだ、始めたてなので結果がでてくるのはもう少し先ですけど、期待を込めてそういうふうに思っています。

稲荷:
ここはたぶん、共通認識があるところが1個ありますよね。IT業界だと、若いうちから自分で考えて自分で発想して思考を自分でクリエイトするっていうかな、自分で考えて自分自ら動ける人間にいかに育てるかっていうところが、どの会社でも共通してるかなというふうに思っています。
本日は、具体的な話をしてくださってありがとうございました。
少しでもみなさんの課題解決のヒントになればと思います。

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