サービス全体をデザインする、リクルートの新規事業開発室から美容医療サービスのCTOへ―トリビュー/小尾勇太さん

※本記事は2019年3月に公開された内容です。

綺麗になりたい女性をサポートするための美容整形専用のコミュニティサービス「TRIBEAU(トリビュー)」を展開している株式会社トリビュー。2017年より開始した同サービスは、美容整形経験者による写真や体験談などの口コミを検索するほか、美容整形に関する質問や相談、クリニックの予約まで行えます。

スタートアップ企業ながら現在は利用者数10万人、写真投稿数8万枚と、美容整形の口コミアプリのトップを走るトリビューのCTOとして就任したのが、前職はリクルートで新規事業開発を手がけていた小尾さんです。もともとはファッションデザイナーを志していたという小尾さんの来歴や仕事に対する姿勢、そしてトリビューの今後の展開などをお伺いしました。

ファッション業界の環境に疑問を感じ、学生で起業

大学時代に起業された経緯を教えていただけますか?

小尾:もともと大学卒業後は就職せず、イギリスの美大でファッションの勉強をする予定でした。合格が決まってからは現地の学生の自宅に泊まり込み、インターンをしていたのですが、自分自身が果たしてファッションデザイナーになる必要があるのかと迷いが出てきたのです。

さらに、若手のデザイナーがブランドを立ち上げたくてもお金がないし、ファンもいないという非常に動きづらい状況に大きな課題も感じていました。だったらファッションデザイナーになるよりも、目の前に見えている課題を解決できるようなサービスを作ろうと思い立ち、ファッションに特化したクラウドファンディングのサービスをつくりはじめたのが起業のきっかけです。

大学の同級生やサービスに共感してくれた仲間たち数名に手伝ってもらいながら、独学でプログラミングを勉強し、半年ほどでリリースにこぎつけました。ただ、継続的な運営が必要なファッションブランドとクラウドファンディングは相性が悪く、自分の経験不足も感じていたのでサービスは運営から半年ほどでクローズしました。

その後はどのようなキャリアを歩まれたのでしょうか?

小尾:起業時につながりのあった、ECサイトのコンサルティング企業からお声がけをいただき、エンジニアとして参画。ECサイトの集客を行うキュレーションメディアを新規事業として立ち上げました。3年半ほど務めていましたが、サービスとして爆発的に成長させることができず、マネタイズにも苦労しました。

そういった状況で会社が売却されることになり、次のキャリアを考えていた際にご紹介いただいた縁でリクルートへ転職しました。リクルートでは新規事業開発室に在籍し、開発を中心に多くの新規事業立ち上げに関わりました。職種という意味ではエンジニア、プロダクトマネージャー、ときにデザイナーなど広い職種を担当させていただいていました。

リクルートの新規事業開発室にて、新規事業立ち上げはどう行われていたのですか?

小尾:リクルートには「Ring」という社内の新規事業提案制度があります。数千というアイディアが起案され、その中から採択されたアイディアの事業化を行います。

アイデアは業種・業態など本当に様々ですが、基本的にはまず提供価値や仮設の整理・定義から始まり、MVP(Minimum Viable Product)の開発を通じて検証を行いつつ、徐々に拡大していくという流れです。これ自体はスタートアップがサービスを立ち上げるのと大きく違いはないのですが、明確に違うことが1つあります。それが「次世代のリクルートを創るサービスか」という視点です。

古くはゼクシィ、最近ですとスタディサプリなどもRingから生まれたサービスですが、こういったサービスのように次のリクルートの柱となり、社会に大きなインパクトを与えていくにはどうしたらよいのか、というスケール感を常に全員が意識しているというのは日本を代表する企業ならではかと思います。

そこから、トリビューへ参加されたんですね。参加は、兼業がきっかけだったそうですね。

小尾:リクルートは、自由にやりたいことをやらせてくれる会社で、僕も自由な働き方をしていました。リクルートとは別に2社と仕事をしていて、リクルートと合わせると5プロジェクトを同時並行で見ていた形です。

ただ、5つのプロジェクトすべてに100%コミットすることはできないので、どうしても関わりが薄くなり、一歩引いたような立場で入らざるを得ないものもありました。 多くのプロジェクトに関わる中で、再びひとつのことに深く関わりたいという思いもあり、どこよりもこれまでの自分の経験を活かせると思いトリビューに入社しました。

トリビューCTO

多様な視点を持てることが兼業の最大のメリット

そもそも兼業を始めたきっかけやそのメリットについてお話しいただけますか?

小尾:これというきっかけがあったというよりは、これまで関わりのあった会社やプロジェクトの開発やデザインなどをそのまま手伝わせてもらっていたという状況でした。ですので、自分の中では新しい仕事を始めたというより、持つべき視点が増えたという表現のほうがしっくりきます。

兼業のメリットは、そんなふうにさまざまな視点を自分の中に持つことができるという点だと思っています。たとえば立ち上げ初期のプロジェクトに関わっていると、どうやっていち早くビジネスを立ち上げるのか、短期的な視点になりがちです。

一方で、もう少し進んだフェーズのプロジェクトに並行して関わっていると、先を見据えて物事を考えることになる。短い期間にいろいろな視点や発想をしなければならないのは、自分にとっては面白かったですね。もちろんいろいろな人と関わることができるということ自体もメリットだと思います。

兼業や副業で企業と関わる際はどのような姿勢を持つべきだと思われますか?

小尾:新しい働き方として、兼業や副業が注目される流れになってきていますが、「副業」という言葉を気軽に考えてほしくはないですね。働き手からは本業と副業かもしれませんが、副業先にとってはそれが本業です。

ですから、時間配分という意味では副業なのかもしれませんが、姿勢としては「兼業」であるべきだと思います。やるからにはしっかりと覚悟を持って取り組むべきですし、実際自分もそう心がけていました。トリビューにも兼業で関わっていただいているエンジニアがいますが、そういった価値観で仕事に向き合っていただいています。

美しくなりたい女性の不安にトータルで寄り添うサービスを目指す

現在のトリビューのフェーズと、開発体制について教えていただけますか?

小尾:サービスとしては非常に熱量の高いユーザーが集まったコミュニティができてきています。マネタイズももちろんですが、現在の熱量を維持し、いかに多くの方に使ってもらうかということを考え始めた段階です。

開発者は4名で、iOS/Android、ウェブフロントエンド、サーバーサイドとそれぞれメインの担当はあるものの、かなりグラデーションがあり、全員がなんでもやるという体制です。開発ができればよいというよりは、ビジネス的な視点でプロダクトを考えられることを開発者にも求めてもとめており、少数精鋭でなるべくコンパクトな体制を目指しています。

開発のフローについては、4名ですとまだ管理が必要な規模ではありませんので、GitHubとZenHubを使い、カンバンでタスクを管理しているぐらいです。ツールという点ですと、弊社では営業やマーケティングのスタッフも含め全員がプロダクトに関するコミュニケーションをGitHub上で行っており、開発者としては非常にありがたい環境です。

今後のサービス展開についてお聞かせください。

小尾:これまでは美容整形の疑問や不安をすべて解消できるサービスづくりに力を入れてきました。ユーザーからも温かい感謝の声をいただけるようになり、ある程度のものが形にできてきているかと思います。今後はより便利に使っていただくために全国の美容外科クリニックがトリビューから簡単に予約できることをひとつの目標にしています。

また、長期的には美容整形という選択肢を選ぶことに後ろめたさを感じなくてよいような世界を目指していきたいと思っています。お金だけでなく、自分の体に針やメスをいれてでも明るく生きられるようになりたい、という価値観がより肯定的に受け入れられるよう取り組んでいきたいです。

トリビューCTO2

インフラサービスの充実でビジネスの本質に主眼を置けるようになった

リクルート時代や現職を含め、インパクトのあった技術はありますか?

小尾:技術の変化という観点では、DockerやKubernetesなど、コンテナサービスの充実によってインフラを直接保守する必要性がなくなってきているのはうれしいですね。インフラを手軽に扱えるようになることで、ビジネスの本質的な部分の開発に時間をかけられるようになってきています。

リクルートもそうでしたし、トリビューもすべてkubernetesを利用して運用しています。GCPやAWSのサポートが整ってきているのも非常にありがたいです。

トリビューのCTOとして、経営に携わる上で心がけていることと、技術選定でこだわりがあれば教えてください。

小尾:CTOという視点からは、自分たちはプロダクトや技術を通して、どういった影響を社会に与えられているか?与えていくことができるか?という点を意識して考えるようにしています。そのため、選定する技術に強いこだわりがあるというわけではなく、ある程度だれでも触れたことのある技術やリファレンスの多い技術を選ぶようにしています。

具体的にはトリビューはサーバーサイドがRuby on Rails、フロントエンドはReact.jsで構築しています。ネイティブアプリもiOS、AndroidはそれぞれSwift、Kotlinです。

マイナスをゼロにするサービス、幅広い意味でのデザイナーが理想

新規事業開発が小尾さんご自身の強みや得意分野なのでしょうか?また、今後のキャリアはどうお考えですか?

小尾:これまで長く携わってきたという意味でも得意な分野だと思います。もともと大学卒業後にファッションデザインを学ぼうとしていたのも、自分で企画、製造、マーケティング、販売までをすべて一貫してできるからというのが理由でした。

0から1を作り出すことに興味があったのです。エンジニアリングだけをしていたいというよりは、開発を軸足としながら、サービス全体をデザインしたいと思いでここまで来ています。社内外においても、サービスを通してどういう価値を生んでいきたいのかという本質的なをコミュニケーションを心がけています。

トリビューでは、「生き方の選択肢を増やす」ということをひとつのミッションにしています。これは弊社代表の毛(もう)が大切にしている考え方で、いまはなんらかのハードルがあり選べない選択肢を選べる環境やサポートをしていきたいというものです。トリビューもそういったミッションに根ざしたサービスであり、ゼロからイチ、ではなくマイナスからゼロを作るサービスということもできるかもしれません。

今後の僕個人のキャリアとしても、事業、サービス、組織、カルチャーなど、全体がうまく回るように枠組みをチューニングしてデザインしていきたいですね。なにか一つにこだわるというよりは、とても広い意味でのデザイナーになりたいと思っています。

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