業務委託の税金の計算方法は?税金の種類や計算方法を紹介
業務委託を行い報酬を得ている方の税金にはどのような種類があるのでしょうか?会社員と違い、フリーランスや個人事業主として業務委託を行なっている方は自分で納税をする必要があります。正しく納税を行うためにどのような税金を納める必要があるのかや税金の計算方法を学んでおきましょう。本記事では、業務委託で報酬を得ている方が支払うべき税金の種類から税金の計算方法などを紹介しています。
目次
業務委託とは
業務委託では、業務を委託する企業または人が特定の業務を依頼し報酬を支払います。依頼を請け負った人は、委託された業務を遂行し、報酬を受け取ります。業務委託契約とは、業務を依頼する側と請け負う側で契約を結ぶことを指します。
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業務委託にかかる税金
業務委託で報酬を受け取ると発生する税金に関しては以下の4種類があります。
- 所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税
所得税
所得税が関連する所得は、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・譲渡所得・三輪所得・一時所得・雑所得の10種類に分けられており、企業に勤めている方には、給与所得、業務委託で生計を立てている方は事業所得(副業の場合は雑所得)が関係します。
会社員の場合では、所属している会社が所得税を納付してくれますが、業務委託で生計を立てている方は、所得税を計算し、税務署へ申告する必要があります。
所得税は、収入が高い人ほど税率が高くなるという累進課税方式が採用されています。1年間で得た収入から経費を引き、税率を掛けて控除額を引くことで算出できます。
個人事業主・フリーランスの場合、所得税の確定申告
業務委託を委託された個人事業主やフリーランスが報酬を得た場合、1年間の所得が48万円を超えた際には所得税の確定申告をしなければなりません。確定申告が必要なのは収入ではなく所得金額のため注意が必要です。収入とは1年間の報酬等で得たお金のことで売上高で、所得は収入から必要経費を差し引いたものが所得になります。所得金額が48万円以上になった場合は、所得税の確定申告が必要ですが、事前の手続きをすることで青色申告を選択でき控除を受けることが可能です。
副業の場合、所得税の確定申告
普段は、企業に所属し会社員として給与所得を受け取っている方が、副業として業務委託で働き、副業所得が20万円を超えた場合には所得税の確定申告が必要です。こちらも個人事業主・フリーランスの場合と同じで収入ではなく所得が判断基準のため注意しましょう。
副業の場合は、所得が雑所得になる可能性が高いです。確定申告で雑所得は青色申告を選択できないので、白色申告を行う必要があります。
住民税
住民税は地方自治体が提供する教育や福祉などの公共サービスに使用するために徴収される地方税の一種です。都道府県によって課税される都道府県税・都民税と、市区町村が課税する市町村民税(区市町村民税)の総称です。
住民税は、納付年の1月1日に住所のある市区町村に納付します。そのため、違う地域に引っ越した場合でも、1月1日の時点に住民票があった市区町村に納税します。住民税には非課税制度があり、各自治体が定めた条件に該当する場合は非課税の対象です。
住民税の納税方法は特別徴収と普通徴収の2種類です。普通徴収は、市区町村から送られた納付書による手続きを納税者個人で行う支払い方法です。基本的に普通徴収では、個人事業主やフリーランスが住民税を支払います。特別徴収は、企業に勤めている場合に従業員が納付すべき住民税を会社が毎月の給料から控除し、会社が納税を行う方法です。
業務委託の報酬で生計を立てていて、給与所得がない場合は基本的に普通徴収で納税する必要があります。確定申告をしている場合、通知書が送付されるため通知に従い、銀行の窓口やコンビニ等で納税を行いましょう。確定申告をしていない場合には、住民税の計算・申告が別途必要です。
個人事業税
個人事業税とは、個人の方が行っている事業の中で定められた事業に対して課税される税金です。個人事業税は、地方税等で定められているため、納税先は国ではなく各都道府県です。事業に対する税金のため居住地ではなく、事業を行っている(事務所等が存在する場所)都道府県に納税します。
個人事業税は個人事業主全員が納める税金ではありません。法定業種に該当する方だけが課税対象です。(課税対象は全部で70種類)また、所得金額が年間290万円未満の方も課税対象外です。所得金額が満たない方は法定業種に該当していても納税の対象外です。
住民税と同様に個人事業税も、確定申告により納税額が決定されるため、確定申告を行っている場合には自分で税額計算を行う必要はありません。
消費税
消費税とは、商品やサービスの取引に対して関係する税金です。消費者は何かを購入した時に消費税を支払い、消費税を受け取った事業者側が一度預かり国に納めるという仕組みです。消費税は消費者から直接国に納税するのではなく、事業者が一度消費者から税を預かり国に納める間接税です。
個人事業主・フリーランスの場合、2年前(または1年前の1月1日から6月30日までの期間)の売上高が年間1000万円を超えた場合に納税義務が生じます。消費税は基本的に納税する必要がありますが、免税事業者として消費税の納税義務が免除される場合があります。フリーランスの場合は、売上が1,000万円未満もしくは開業してから2年以内であれば消費税の納税が免除されます。
2023年10月1日から開始するインボイス制度に消費税は関係しています。個人事業主やフリーランスの方はインボイス制度について調べてみることをおすすめします。
業務委託の税金の計算
業務委託で支払うべき税金の種類を紹介しましたが、ここではその税金の計算方法を紹介します。
所得税の計算
所得税額を算出する際には、
- 収入-必要経費-各種所得控除額=課税所得金額
- 課税所得金額×所得税率-税額控除額=所得税額
確定申告で青色申告を選択すると、青色申告特別控除といって最大65万円の控除が受けられます。
- 年収例:960万円(FLEXYで週5稼働した場合 月80万×12ヶ月)
- 必要経費:150万円
- 青色申告特別控除:65万円
- 各所得控除:48万円(基礎控除)
課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 |
10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 |
20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 |
23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 |
33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 |
40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
このような場合、960万円ー150万円ー65万円ー48万円=697万円が課税所得金額となります。
ここから、所得税率と控除額を使用し、所得税額を求めることができます。
697万円×23%-63万6,000円=96万7,100円
所得税額は96万7,100円と計算されます。
住民税の計算
所得に税率をかけて算出する所得割と、一律の金額である均等割を合算した金額を納税するのが住民税です。
所得割の標準税率市区町村民税率6%、都道府県民税率4%の合計10%、
均等割の標準税額は市区町村民税額3,500円、都道府県民税額1,500円の合計5,000円です。以下が住民税の計算方法です。
- 課税所得金額×住民税率(市区町村民税率+都道府県民税率)-税額控除=所得割額
- 市区町村民税額+都道府県民税額=均等割額
- 所得割額+均等割額 = 住民税額
所得税と同じ年収・必要経費の場合
- 年収例:960万円(FLEXYで週5稼働した場合 月80万×12ヶ月)
- 必要経費:150万円
- 青色申告特別控除:65万円
- 基礎控除のみ:43万円
課税所得は、960万円ー150万円ー65万円ー43万円=702万円 となり
住民税額は、702万円×10%+5,000円=70万7,000円 です。
個人事業税の計算
個人事業税の課税対象は70種類の法定業種で、エンジニアとして業務委託を請け負っている場合には業種が「請負業」にあたり課税対象となる可能性がありますが、準委任契約の報酬に関しては法定業種に該当するものがないため原則非課税になると考えられます。
法定業種の税率は、
請負業などの第1種事業は税率5%
畜産業や水産業などの第2種事業は税率4%
デザイン業や士業などの第3種業種は税率5%
となっています。
個人事業税の計算では、青色申告特別控除や基礎控除といった所得控除も適用外です。しかし、一律290万円の事業主控除が受けられます。
計算方法は、
所得-個人事業税の計算で適用できる各種控除(事業主控除290万円等)×法定業種ごとに定められた税率
です。
こちらを所得税や住民税の例と合わせると
(960万円ー150万円ー290万円)×5%=26万円
という計算式となり、26万円が個人事業税の納税額です。
消費税の計算
計算方法には、本則課税と簡易課税という2つのパターンがあります。消費税は開業から3年目以降に納税する場合がある税金で、基準期間(課税期間の前々年)に課税売上高が1,000万円を超えた場合に納税が必要な課税事業者となります。しかし、2年前の年間課税売上高が1,000万円を超えていない場合は納税義務はありません。年間の課税売上高が5,000万円以下の場合には簡易課税を利用することが可能です。
本則課税での計算方法
本則課税は、原則消費税の計算に用いられる標準的な計算方法です。課税対象の売上高の消費税額から課税仕入高の消費税額を差し引いて計算します。
課税売上高が400万円、課税仕入高が200万円の場合には、
40万円(400万円×10%の課税売上高の消費税) ー 20万円(200万円×10%の課税仕入高の消費税) = 20万円(納付する必要がある消費税)
という形で20万円が消費税の納税額となります。
簡易課税
課税売上高にかかる消費税ー課税売上高にかかる消費税×業種ごとに定められた「みなし仕入れ率」=納付消費税額で計算します。
事業区分 | みなし仕入率 | 該当する事業 |
---|---|---|
第1種事業 | 90% | 卸売業 |
第2種事業 | 80% | 小売業・農業・林業・漁業 |
第3種事業 | 70% | 農業・林業・漁業・鉱業・建設業・製造業・電気業・ガス業・熱供給業および水道業など |
第4種事業 | 60% | 飲食店業など |
第5種事業 | 50% | 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業 |
第6種事業 | 40% | 不動産業 |
エンジニアとして業務委託を請け負っていた場合には、サービス業とみなされ第5種事業のみなし仕入率が適用されます。
課税売上高が400万円、課税仕入高が200万円の場合には、
40万円(400万円×10%の課税売上高の消費税) ー 40万円(400万円×10%の課税売上高の消費税)×50%=20万円
という形で20万円が消費税の納税額となります。
簡易課税制度の適用を受ける場合には、「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前提出する必要があります。届出の提出期間は、課税期間初日の前日までです。
確定申告と源泉徴収
所得によって、業務委託で働いている方は確定申告をする必要があります。もし、確定申告を忘れた場合や納付が遅れた場合は納税額が増加するペナルティがあるため、必ず確定申告の期日を守るために余裕を持って準備しましょう。
また、所得金額が48万円以下であれば、確定申告は不要ですが、税金を先に納めている源泉徴収を受けている場合には、確定申告を行うことにより、多く支払っていた税金が還付されるので確定申告は行うとよいでしょう。
業務委託の節税方法は
業務委託で報酬を得ている方の節税方法には以下のようなものが挙げられます。
- 青色申告を行う
- 経費を適切に計上する
- ふるさと納税を行う
青色申告を行う
青色申告を行うことで、最大65万円の控除が可能です。事業所得がある場合に青色申告は選択することができます。青色申告は青色申告承認申請書を、申告行う年の3月15日まで(1月16日以降に開業しようとする人は開業日から2ヵ月)までに税務署に提出する必要があります。また、青色申告は複式簿記で帳簿を記帳しなければいけないなど、手間がかかります。
経費を適切に計上する
経費を計上することでも節税に繋がります。税金に関する所得を求めるときには収入から経費を引きます。その際に、経費が多ければ所得が少なくなり節税に繋がります。業務でパソコンが必要となる場合には、パソコンの購入費用や依頼主との打ち合わせを行った際のカフェでの代金等を経費として計上することが可能です。個人事業主やフリーランスの方は、経費の種類やどのようなものが経費として計上できるか調べてみましょう。
ふるさと納税を行う
ふるさと納税を行うことで、寄附金控除として申告が可能で、所得税と住民税を軽減できます。(2,000円を超えた寄付額は、限度額まで所得税・住民税の控除の対象)ふるさと納税とは、出身地に関係なく好きな自治体に寄付できる制度で、特産品等をもらうことができます。
まとめ
本記事では、業務委託の税金について、納めるべき税金はどのような種類があるのかや税金の計算方法について紹介しました。業務委託を行なっている場合、所得税や住民税、個人事業税、消費税などの納税義務が生じる場合があります。自分は納税する必要があるのか確認しておきましょう。税金の知識は業務委託を行なっていく上で重要な知識のため、しっかりと身につけておくことをおすすめします。