有名企業のCTOや開発責任者が語る!海外エンジニアと働く~組織を成長させ続けるために~

2019年12月5日に行われたFLEXY主催のCTOmeetup「海外エンジニアと働く~組織を成長させ続けるために~」。 海外のエンジニアと一緒に働く方々を招き、テーマに関する気になるグローバルな話題をディスカッションしていただきました。

言語も文化も異なるメンバーをどう採用し、オンボーディングさせるのか。 社内ではどの程度の語学力が必要になるのか。 各社から出たさまざまな意見をイベントレポートでお届けします。

ご登壇者 【ファシリテーター】 株式会社LIFULL CTO 長沢 翼さん 【パネラー】 株式会社Craft Egg、株式会社サムザップ CTO 白井 英さん 株式会社メルカリ Director 白石 久彦さん 株式会社ショップエアライン(BEENOSグループ) シスステムグループ マネージャー 小松 清二郎さん

パネルディスカッション1部/海外から見た日本

企業によっては「日本語を喋れるかどうか」は必須要件ではない

【ファシリテーター】 株式会社LIFULL CTO 長沢 翼さん 2008年株式会社ネクスト(現 株式会社LIFULL)入社。フロント、サーバーサイド、ネイティブアプリなどアプリケーション開発に従事した後、バックエンド・インフラ系を担当し、API基盤の刷新、事業系システムのAWSへの移行チームを責任者として牽引。2017年4月からCTO就任。情報システム部門の責任者、ベトナムの開発系子会社の委任代表なども務める。

長沢 翼さん(以下、長沢):まず、みなさんの会社でそれぞれどれくらい海外エンジニアがいてどう働いているのか、簡単にお伺いしたいと思います。

白井 英さん(以下、白井):ゲーム事業に関わっている外国籍の方は子会社も含めて5%程度です。基本的には日本語が流暢な方ばかりですね。一緒にゲーム開発をするメンバーとして働いてもらっています。

白石 久彦さん(以下、白石):メルカリは海外向けにUS事業を展開していて、アメリカのオフィスに関しては基本的に現地採用です。僕が所属しているのはJP向けのプロダクトなのですが、比率としてはエンジニアのうち4割は外国籍の方です。日本語を喋れない方も多いですよ。

長沢:メルカリさんは最近、急激に増えていった感じですよね。小松さんはいかがですか?

小松 清二郎さん(以下、小松):日本人が3名、外国籍は13、14名ほどです。7割ほどは外国籍ですね。このうちフランスとウクライナの方はリモートで働いていただいているようなチーム構成です。ある程度外国籍の方を採用しているのは、やはり日本人エンジニアがどうしても集まらないからですね。日本語を喋れなくてもOKという条件で募集をかけるとわりと来てくれます。

外国籍のエンジニアがあえて日本で働く理由は多種多様

長沢:すでにみなさんのチームにジョインしている外国籍のメンバーは、どんな経緯で採用されたのでしょうか。最初から日本で働きたいと思って来ていただいている感じですかね?

白石:メルカリはスキルがマッチすると思われる方には、海外在住の方にも積極的に声をかけています。海外在住の方が日本で働くモチベーションとしては「クールジャパン」のイメージで日本に興味を持っている方もいらっしゃるかとに思います。

長沢:日本のアニメが好きという方もいますしね。日本という国が持つコンテンツ力がエンジニアに刺さるということはありますよね。みなさん募集はどのよう行われているんですか?

小松:弊社は一般的ですね。会社ごとに記事を読ませるようなサイトで募集すると、日本人に比べて10倍くらいの応募数があります。 その中でみなさんが日本で働くモチベーションはバラバラですが、弊社の場合は日本が好きというよりは日本人と結婚したからという理由が多いです。日本語は喋れないけれど、プログラミングはできるという方ですね。あとはワーキングホリデー中という人も多いです。

白井:弊社の場合は、「良いものを作りたい」というモチベーションの方が多いですね。募集も特に日本人、外国人と区別しているわけではなく、募集をかけてたまたまスキルマッチしたのが外国の方だったという流れです。

長沢:意識せずに採用していたら外国籍の方が増えていった、という形なんですね。メルカリさんは意識的に採用してらっしゃいますよね?

白石:日本国内の採用マーケットだけではエンジニアの採用が難しいという状況が前提にあります。もちろん海外事業をしているのでグローバル展開していきたいという思いもあり、ダイバーシティを意識しています。逆に言えば、そう考えていないとなかなか海外在住の人材を日本で採用するのは難しいのかなとも思います。

白石 久彦さん 株式会社メルカリ Director 白石 久彦さん 大学卒業後、さまざまな業務システム、インターネットサービスの開発プロジェクトに携わる。 ソフトバンクグループ、株式会社レコチョクなどを経て2014年よりドリコムの技術担当役員に就任。技術組織の強化に取り組む。 2018年より株式会社メルカリに参画。採用、育成、オンボーディングなどの組織強化を担当。 同年、並行して株式会社Slicetoneを創業。スタートアップから上場企業まで課題解決の支援を行なっている。

長沢:会場からは「どの国のエンジニアが採用しやすいのか」という質問もきていますが、白石さんの感覚としてはいかがですか?

白石:今は新卒でIIT出身者を採用したこともあり、インドの方が多いですが、採用基準は基本的に一律なのでどこが採用しやすいというのはあまり無いかもしれません。

長沢:そうなんですね。リモートオンリーでの海外採用はしていないんですか?

白石:今はしていません。小松さんのところはリモートの方がいらっしゃいますよね。

小松:2名いますね。1名はフランス人でもともとオフィスで働いていたのですが、家庭の事情でリモートにしています。雇用形態も業務委託という形です。もう1名はウクライナ人で、最初からリモートでトライしてみました。

長沢:実際にリモートで運用してみていかがですか?

小松:ウクライナの方は専属の担当者をつけてやりとりをしている感じですね。まあまあ上手くいっていると思います。

長沢:リモートなら採用の間口が広がりますし、オンボーディングの仕方を工夫すればいろいろな展開ができそうですよね。

小松:ただ、アクセス権などはリモートの人には与えられません。その点で、リモートのエンジニアをどんどん増やせるかというとちょっと難しいですね。

小松 清二郎さん 株式会社ショップエアライン(BEENOSグループ) シスステムグループ マネージャー 小松 清二郎さん 大学卒業後、就職してSIerに。1年半勤務し、海外に出るためSAP系の会社に転職。 オフショア開発側としてインドに渡る。その後は青年海外協力隊でシステム系の仕事に従事し、 フィジー、スーダンなどで有償ボランティアを経験。海外経験や英語スキルを習得し、20代後半に帰国。 自分の作りたいサービス開発を目的として、現在はBEENOSグループである株式会社ショップエアラインのシステムグループマネージャーを務める。

オンボーディングに必要な通訳、翻訳、生活基盤構築のための支援

長沢:オンボーディングに関して工夫していることはありますか?

小松:今のところは日本人と同じようにジョインしてもらっています。もともと外国人採用を積極的に行うという前提の会社ではありませんでしたから、通訳を通してある程度必要な知識は理解してもらう感じですね。ただ、日本の法定労働時間や裁量労働制の仕組みなどを100%理解してもらえているかというと、ちょっとわかりません。

白井:弊社も外国籍だからという意識は特別無いですね。日本人の新規メンバーの受け入れと同じようにしています。とはいえ、中には最初から日本語のコミュニケーションが完璧ではない方もいるので、接し方に気をつけたり、極力こちらから話しかけるようにしたりということはありますね。

白石:メルカリはオンボーディングにはとても力を入れています。僕が担当しているのがまさに採用、オンボーディング、育成、コミュニティづくりです。 外国籍の方のオンボーディング効率的に行えるように、社内ドキュメントやミーティングを英語で行うように環境を整えているところです。特にドキュメントに関してはコストがかかりますが英語版と日本語版を両方作成しています。日本の生活面についてはHRがサポートしています。

長沢:海外のエンジニアに来ていただくときに住宅の手配なんかはどうしているんですか?

白石:来日していただく方によって事情も違いますので、ケースバイケースです。あとは銀行口座の作成なんかも海外の方は大変なので、そのあたりのサポートも会社として行なっています。

長沢:日本から海外に行くパターンも同様だと思いますが、居住する国を変えると生活基盤を整えるところが大変ですよね。

各国の文化・風習を会社で一律的にルール化することは難しい

長沢:国によっては文化風習が違う部分も多いかと思います。その点について大変だったこと・気をつけていることなどはありますか?白井さんいかがでしょう。

白井:特別こちらが何かをするわけではありませんが、宗教的慣習について守らなければならない部分は共有してもらったほうがいいなと思います。

長沢:なにをどこまで聞いて良いかどうかという、むずかしい部分もありますよね。その点は会社として決まっているというよりもマネージャー個人の裁量で上手くやっていくことになるんでしょうか。白石さんはいかがですか?

白石:国籍数が多いので会社のルールとして一律には決められません。マネージャーには言語だけではなく異文化コミュニケーションの勉強をすることを推奨しています。『異文化理解力』という本を読みましたがなかなか興味深かったです。

白井 英さん 株式会社Craft Egg、株式会社サムザップ CTO 白井 英さん 2009年、サイバーエージェントのゲーム系子会社に中途入社し、グループのゲーム運営の基礎を築く。2014年、サイバーエージェントのゲームやエンターテイメント事業に携わる子会社が所属するSGE(Smartphone Games & Entertainment)事業部設立とともに、CTOに就任。2018年10月より、SGEの子会社3社(Craft Egg、ジークレスト、サムザップ)、2019年11月より、子会社2社(Craft Egg、サムザップ)のCTOを務める

外国籍のメンバーには評価に納得してもらうことがより重要になる

長沢:評価に関してみなさんが気をつけていることはありますか?フィードバックの仕方もいろいろあると思いますが。

白井:日本人でも外国人であっても評価で一番大事なのは納得感だと思っています。フィードバックをしたときにきちんと通じているか、わかってもらえているかという点は特に気をつけますね。

長沢:国籍、というよりも個人に向き合うということですよね。逆にもっとこうしてほしいと要求されることはあるんですか?白石さんどうでしょう。

白石:具体的で実践可能なフィードバックが欲しいと言われる事が多い印象です。明確に何を改善する必要があるか、それによってどのような結果を期待しているかを伝える必要があると感じています。逆に言うとフィードバックの文化が日本より定着しているので、より良くするためにどうするかという視点に立つとシンプルでよい仕事の進め方だなと思うことも多いです。。とはいえ、出身国によって伝え方の適切な強度があるので、きちんと細かく相手を見て判断する必要があります。

小松:弊社は日本人と同じように評価をつけていますが、外国籍の方はどちらかというと評価イコール給与に反映されるものという意識がありますね。ですから「評価に対してどうして昇給がこれだけなんだ」というフィードバックが来たりします。逆に給料に関係のない評価は外国籍の方にはあまり響かないですね。

長沢:曖昧な「言葉」の部分よりも数字として見せていくほうがわかりやすい部分もあるのかなと思いますものね。

白石:外国籍の方は評価に対して数字をもちいて説明して、お互い納得する必要がよりあるなと最近感じています。これは本来は日本の方にも同じように行わないとならないことなのです。外国籍の方と働いて見えてなかったことが見えてくるという良い経験でした。。

長沢:国籍関係なくきちんとメンバーを見て評価するというのは前提だと思うのですが、外国籍の方はよりしっかり見るという意味でコストがかかりますよね。

白井:「本当に納得しているか?」という懸念がある場合は、コミュニケーションをよりとるようにしていますね。日本人同士ですと相手が物事をどう捉えているのかも理解しやすいのですが、外国籍の方は表情を読むのにも慣れが必要です。

自分が海外エンジニア側になって実感した、文化と言葉の壁

長沢:小松さんは海外で働いた経験も豊富ですが、海外で働くエンジニアの立場で感じたことは何かありますか?

小松:お金の管理方法については日本との違いを感じましたね。例えばインド人は9時に始まるミーティングに9時半からぞろぞろ集まりだすほど時間にルーズなのですが、飛行機の時間なんかには絶対に間に合うように出るんですよ。乗り遅れると支払いが発生するからです。ほかにも就業時間に10分遅刻したらその分給料が支払われないなど、お金に関してはシビアです。

長沢:働いている場所に寄り添わないといけないんですね。コミュニケーション面では意識したことはありますか?

小松:インドで働いていた頃はまだ25、6歳で英語力も高くなかったので、日本のクライアントと現地のエンジニア・コンサルタントとのやりとりを訳したら上手くいかなかったことがありました。例えばクライアントから「マスターデータの会社名を変更するとシステムにどのような影響がありますか」というチケットをもらったのですが、直訳してコンサルタントに伝えたら返答が「会社の名称が変わります」だったんですよ。当然クライアントは激怒して、「コンサルタントとしての意見が欲しい」と言ってきたのですが、それをまた直訳で伝えたらコンサルタントが「私たちはコンサルタントです」と言う。全く話が通じなくて、どうしたらいいのかわかりませんでした(笑)。

長沢:言葉のニュアンスが伝わりにくいんでしょうね(笑)。では海外エンジニアと働くにはどの程度の英語力が必要になるのかという部分は、追って話したいと思います。

株式会社LIFULL CTO 長沢 翼さん

パネルディスカッション2部/海外エンジニアと働く

海外エンジニアを採用するに至った戦略とは?

長沢:白井さんのところは主に日本語を喋れる海外エンジニアを採用しているということでしたが、そういった戦略を採っている理由は何かあるのでしょうか?

白井:事業でものづくりをする上でやりやすいように、基本的に既存のノウハウを積み重ねる体制を大事にしているからです。ただ、語学面では外国籍のメンバーから「テックカンパニーとして技術力の向上・発信をするなら英語を学ばないといけない」という指摘も受けています。今後会社として英語学習の施策を進めていこうという流れはありますね。

長沢:逆に日本語を喋れるメンバーのみで構成している分には、大きな問題は顕在化していないという感じですか?

白井:今のところはそうですね。とはいえ、日本のゲーム市場はもうパイが限られています。事業的には海外向けにゲームを展開していかなければならないのですが、そのときに日本人だけでものづくりをしていて通用するのかという懸念はあります。そういう意味でも近い将来、語学と向き合うタイミングが来ると思っています。

長沢:白石さんにお伺いしたいのですが、そもそもメルカリさんが海外エンジニアを採用しようと決めた一歩目の理由はなんだったのでしょうか?

白石:良いエンジニアに出会える確率をあげるためです。やはり日本の方だけをターゲットにしていると確率論としてはさがってしまいますので。日本語必須のチェックボックスを外すだけで採用の幅がぐっと広がりますよね。

長沢:今後事業展開をしていくにあたり、エンジニア不足を見据えて手を打ったという感じですね。

白石:もちろん海外向けのサービスをやっているという理由もありますが、今のメインの目的は一緒に働ける方を増やすということに尽きます。

日本人サイドに求められる語学レベルと言語へのモチベーション

長沢:メルカリさんは外国籍エンジニアの割合が2018年に15%だったところから現在は40%ほどにもなっているそうですが、新たに入社してくる日本人に対して求める英語レベルに変化はありましたか?

白石:エンジニアメンバーには特に語学力は求めていませんが、英語学習に興味がある方が望ましいとしてます。マネージャーとして入社する方に関しては、より英語を使う機会が多いので英語ができるほうが望ましいという話はしています。どちらも少なくとも英語に対する興味がある方が多くなってきています。

長沢:マネージャーの方に求める英語への興味についてTOEIC何点以上、英検何級といった基準はあるのでしょうか?

白石:資格や数字では判断していません。エンジニアとしての技術力と英語力のバランスで見ています。技術力が非常に高くても、英語は全くやりたくないという方は見送るケースもあります。

長沢:チームとして語学力はここまで上げようといった目標も無いのでしょうか?

白石:社内の基準を設けていて、マネージャーに求めるラインを社内的に決めています。

長沢:そのために研修もするという感じですか?

白石:はい、業務時間内に時間を取って英語学習をやっていただいています。。

長沢:小松さんはいかがでしょうか。エンジニアマネージャーを採用する際の語学力の基準はありますか?

小松:ここ1~2年は僕が統括している大きなプロジェクトを手掛けていたので特に語学力は問わなかったのですが、新しいサービスを担当することになってからはどうしてもバイリンガルの人が必要になっていますね。TOEIC700点以上がラインです。面接も全部英語で外国人が同席するので、そこで怖気づかないことも判断基準にしています。 ただ、自分がインドで働いていた頃はTOEIC500点だったりしたんですよ。ですから500点前後でもこれから勉強するやる気があれば採用したいですね。

株式会社ショップエアライン(BEENOSグループ) シスステムグループ マネージャー 小松 清二郎さん

外国籍のメンバーとのコミュニケーションがチームにもたらすもの

長沢:メンバー間のコミュニケーションに話を移したいのですが、まず外国籍メンバーが入って良かった部分はありますか?

白石:メルカリのJPチームが開発しているのは日本国内向けのプロダクトですので、プロダクト理解という面ではやはり日本の方のほう速い印象はあります。ただ海外の幅広い知見の方に入っていただいていることで、開発プロセスや技術面のメリットはかなりあると思います。海外でテックリードを経験された方のノウハウは貴重です。

白井:エンジニアの話ではないのですが、以前アメリカ向けにメジャーリーグのゲームを作っていたことがあるんですよ。アメリカ人から見たメジャーリーガーとはどういう存在なのか、どんな風に見せると良いのかといったことについて、文化理解のある外国籍の方にアドバイスをもらいながら開発していました。

長沢:開発やサービス企画といった仕事上のコミュニケーション以外に、雑談などの半分オフのようなコミュニケーションもありますよね。そちらのほうが難易度は高いと思うのですが、小松さんはそういった点で工夫していることはあったりしますか?

小松:僕自身や会社でというよりはチームが率先して一緒にランチに行ったりしていますね。ランチの間はドイツ語を喋ろう、今日は英語にしようといったやりとりもしていますよ。

長沢:言語に対してモチベーションが高いメンバーを採用基準にしているからこそ、メンバーも話すことに意欲的なんですね。白石さんはいかがですか?

白石:僕の場合は最近社内では50%近く英語を使っているのではないかと思います。もっとカジュアルに雑談をしたいという気持ちはあるのですが、日本語と同じ感覚を表現できなくてもどかしい面があります(笑)。

株式会社メルカリ Director 白石 久彦さん

自己主張が強い海外エンジニアの開発スタイルにどう寄り添うべきなのか

長沢:ではコミュニケーションで苦戦した点についてはどうでしょうか?

白井:外国籍のメンバーに限った話ではなく日本人でもあるのですが、自己主張が強いメンバーの場合だと「こうやって作ってほしい」と打ち合わせをしたにも関わらず、完成してから「こっちのほうが良いと思うから別の方法で作りました」と途中の相談がなく最後に報告を受けることがあります。

長沢:なるほど。そういう事態を受けて仕様書を改善するなど対策はしましたか?

白井:単純にすり合わせの頻度を増やしました。「これで作ってください」と言った後に「どう作ろうと思ってる?」と聞くと、指示と違う答えが返ってきますから(笑)。いやいや、こうやって作ってください、とこまめにやりとりします。

長沢:LIFULLもベトナムに開発の子会社があるのですが、やはり誰が見てもわかるような形にするというところは気を使っています。そのほうが新しく人が入って来たときに何を意図したのかもわかりますしね。小松さんはいかがでしょう?

小松:日本人のほうがテストパターンの数が多いなとは思いますね。海外の方は初速がすごく早いのですが、90%以上のクオリティを出すための最後のきめ細やかな部分は日本人に任せたほうがいい気がします。

長沢:QA、QCといった品質管理的な部分に少し差がある感じなんですね。白石さんも品質面に日本人エンジニアと海外エンジニアで違いは感じますか?

白石:僕個人はあまりそういう部分は感じていません。どちらかというと納期への意識に違いを感じます。日本人は納期に間に合わせようという気持ちが強いように思います。グローバルエンジニアの場合は「良いものを作るためにはその納期ではできない」という思いがより強いように感じます。とはいえ納期もあるので、そのコントロールが難しいですね。

長沢:逆に納期が決まっているものに対して「もっとこうしたほうがいい」という主張が出ることで、国内のエンジニアが良い影響を受けることはあるんですか?

白石:日本の多くの会社がそうであるようにメルカリも今は企画が上流で、エンジニアは下流で最後にものを作るというような関係が残っています。そこを会社として一緒にものを作っている感覚に持っていくとこは意識して推進したいと考えてます。その面でやはり海外のメンバーのアイディアが効果を発揮する場面もあります。

長沢:そういう影響はすごく良いですよね。

白井:あとはオンオフもはっきりしていますよね。外国籍の方はきっちり定時で帰ってプライベートな時間を楽しんでいる方が多いと思います。いわゆるワークライフバランスが取れているというのでしょうか。そこは日本人も真似るべきだと思って見ています。

長沢:あとは納期をいかに間に合わせるかですよね。

白井:定時で帰って果たして作業が間に合っているのかは、マネージャが気にしてないとわからなかったりします。

白井 英さん 株式会社Craft Egg、株式会社サムザップ CTO 白井 英さん

エンジニア不足を見据えた、今後の海外エンジニア採用の展開

長沢:白石さんや小松さんは今後エンジニアが不足しそうだから海外にも手を伸ばすことにしたということでしたよね。今後も採用を広げていくなら外国籍の方を中心にしていく方向性ですか?

小松:次のプロジェクト次第かなと思います。ここ1~2年はディレクターがバイリンガルだったので日本語が喋れないエンジニアでも問題なかったのですが、次のプロジェクトで関わる非エンジニアに英語を喋れる人がいないので、そこは影響しそうです。

長沢:組織的な体制を見て入れられるなら入れたいというところですね。白井さんは今後どうしていきたいという展望はありますか?

白井:海外の優秀な方が働ける環境を作るというのは今後のエンジニア不足に対する一番わかりやすい答えなので、取り組んでいきたいですね。

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