個人事業主がマイナンバーを求められるケースは?基礎知識や注意点もわかりやすく解説
各種行政手続きの効率化を目指して2016年から開始されたマイナンバー制度。じわじわと世間での認知が広がり、2023年現在、マイナンバーの証明や本人確認に活用されるマイナンバーカードは国内人口の約7割の人が所持している状況です。
本記事では、マイナンバーの用途やマイナンバーを知らないとどうなるか、マイナンバーカードとの違いなどについて紹介します。マイナンバーの重要性はなんとなく理解しているつもりだが、自分の業務や契約のどのタイミングで必要になるかわからないという方に向けて、わかりやすく解説していますのでぜひご覧ください。
目次
マイナンバーとは?
マイナンバーは、正式には「個人番号制度」や「社会保障・税番号制度」とも呼ばれ、日本の住民票を持つすべての方(外国人も含む)が持つ12桁の番号です。マイナンバーは、社会保障・税金・災害対策の3分野で、さまざまな機関や組織に存在する個人情報を同一人物の情報として照合するために活用されています。
これまでは福祉サービスを受けたり保険料の手続きなどをするとなった場合に、国の行政機関と地方公共団体などの間で情報のやりとりが必要なものの、それぞれの機関内で住民票コードや健康保険被保険者番号などをそれぞれの番号で管理しているため、機関をまたいだ情報のやりとりでは同一人物の個人情報の照合に大きなコストがかかっていました。
しかし、マイナンバー制度が導入されたことで、社会保障・税金・災害対策の3分野については分野横断的な共通番号で管理ができ、同一人物の情報の照合を迅速に行うことが可能となりました。
また、行政機関に申請する各種提出書類でもマイナンバーを提示することでこれまで必要とされていた添付書類が不要となったため、審査する行政側も申請するユーザー側も負担が減り手続き時間も短縮されました。
このように、マイナンバー制度導入によって、国は公平・公正な社会の実現、行政の効率化、利便性の向上を目指しています。
マイナンバー以外にも請求書・電子帳簿保存法などの個人事業主に重要な書類や法律があります。マイナンバーについての知識を深めると同時に個人事業主に重要な書類や法律などの情報をまとめたこちらの記事を確認し、他に関係する書類や法律について知識を深めておくとよいでしょう。
マイナンバーとマイナンバーカードの違い
マイナンバーと聞くと、マイナンバーそのものよりマイナンバーカードの方が馴染みがあるかもしれません。しかし、マイナンバーとマイナンバーカードはそれぞれ定義や使用目的が異なります。
以下の表でそれぞれの違いをまとめています。
項目 | マイナンバー | マイナンバーカード |
---|---|---|
指し示すもの | 12桁の番号 | マイナンバーが記載されたICチップ付きのカード |
所有者 | 住民票がある人全員 | 交付申請した人 |
用途 | 行政手続きの事務処理 | マイナンバーや本人であることの証明 |
前章で紹介したように、あくまでもマイナンバーは12桁の番号のことを指し、用途は社会保障・税金・災害対策での事務処理に限定されます。
一方で、マイナンバーカードはカードにマイナンバーが印字された上で、氏名・住所・生年月日などの情報が入ったICチップが内臓されており、本人確認書類として活用することができます。
市役所や勤務先、金融機関でマイナンバーが必要な際、そのマイナンバーが本人のものであるかを確認する必要があります。そこでマイナンバーカードを提示すれば、本人情報とマイナンバー情報を一度に確認することができるようになっています。
マイナンバーの提供を求められる代表的なケース
マイナンバーは社会保障・税金・災害対策の3分野において行政手続きのために活用されますが、ここでは実際に生活する中でマイナンバーの提供が必要となるケースを紹介します。
提供を求める相手は国や地方公共団体、勤務先、金融機関、年金・医療保険者などになりますので、それぞれの提供先ごとに代表的なケースをまとめています。
勤務先
- 給与、退職金などを受け取る場合
- 厚生年金、健康保険及び雇用保険の資格を取得した場合
- 国民年金の第三号被保険者(従業員の配偶者) などの場合
契約先
- 報酬、料金、契約金を受け取る場合
不動産
- 不動産業者もしくは法人から年間100万円超の不動産譲渡の対価、又は年間15万円超の不動産仲介料もしくは家賃を受け取る場合
金融機関
- 金融機関で株、投資信託、公社債などの証券取引をされている場合
- 生命保険契約、損害保険契約もしくは共済契約を行っている場合
税務署/日本年金機構/都道府県・市区町村/全国健康保険協会/健康保険組合等
- 社会保障、税金、災害対策の行政手続きを行う場合
地方公共団体
- 市営住宅への入居申請を行う場合
- 幼稚園・認定こども園・保育所・小規模保育への入所申し込みを行う場合
- 生活保護の申請を行う場合
- 国民健康保険の一部負担金の免除等申請を行う場合
個人事業主やフリーランスはなぜマイナンバー管理が必要なのか?
前章で紹介したマイナンバーの提供を求められる代表的なケースにおいて、会社勤めの方であればマイナンバーが必要なタイミングの多くは勤務先とのやりとりに限られますが、個人事業主やフリーランスは各種書類作成及び申請をご自身で行う必要があり、それにともないさまざまな場面でマイナンバーが求められます。
代表的なケースだと確定申告のタイミングです。前章の項目だと税務署に対する税金関連の行政手続きに分類されます。
確定申告についてあまり詳しく理解できていないと感じられる方はフリーランスが理解しておくべき確定申告の基礎知識についても確認しておくと良いでしょう。
取引先企業との報酬や契約金のやりとりにおいてもマイナンバーが必要です。この場合は企業が個人事業主に対し源泉徴収が必要な報酬がある場合は、個人事業主のマイナンバーが記載された支払調書を税務署に提出する必要があります。
マイナンバーが必要な報酬・契約金の例は以下のようなものが挙げられます。
- ライターの方に支払われる原稿料・講演料
- 弁護士や公認会計士などの士業の方に対する報酬
- 外交員の方に払われる外交員報酬
- 馬主へ支払う競馬賞金
- プロスポーツ選手などへの契約金
- 宴会などで接客を務めるホステスなどへの報酬
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
こうした背景から、個人事業主やフリーランスとして仕事をされている方はいつでもマイナンバーが提示できるように日頃から管理しておくことが大切です。
マイナンバーの扱いに関する個人事業主の注意ポイント
ここからは個人事業主がマイナンバーの取り扱いで注意すべきポイントについて解説します。ご自身がどのような立場にいるかで注意すべきポイントが変わってきますので、どのケースが当てはまるか確認してみてください。
受注者として案件を受ける場合
個人事業主が取引先から案件を受注する場合、その取引先事業者にマイナンバーと身元確認書類を提出する必要があります。提出のタイミングは特に決まっておらず、取引先によって、契約開始時、年末時期などまちまちのようです。
また、基本的には年間の支払額が5万円を超える場合にマイナンバーを求められることとなります。ただし個人事業主の職種によっては年間支払額が50万円を超えた場合にマイナンバーが必要となるケースもありますので、ご自身がどのパターンに当てはまるか、しっかりと把握しておくことが重要です。 国税庁のNo.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等では、報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の提出範囲について詳細に説明していますのでこちらを確認しておくと良いでしょう。
マイナンバーの確認はやはりマイナンバーカードで行うのが手っ取り早いです。前述したとおり、マイナンバーカードはマイナンバーの証明のみならず、各種本人確認にも活用できますので、個人事業主であればぜひ取得しておきましょう。
発注者として案件を依頼する場合
個人事業主が発注者として他の事業者に業務を委託する場合は、相手が法人であれば法人番号が、個人事業者であればマイナンバーが必要となります。法人番号は法人番号公表サイトで公表していますので、そちらで番号を取得することができ、個人情報も含んでいないため保管にかかる作業のハードルは低いと言えます。
一方で、取引先が個人事業主であれば、その方のマイナンバーが必要となり、本人からマイナンバーと身元確認書類を提出してもらう必要があります。本人に直接会うことができるのであれば、身元確認書類とマイナンバーを直接確認しておくことをおすすめします。
拠点が海外であったり、何らかの理由で直接会って確認をすることができない場合は、郵送などで書類を提出してもらう必要があります。その場合はコピーを郵送することになるので、簡易書留などの確実に手に渡る郵送方法を選ぶとよいでしょう。
また、確認後の書類は個人情報に関わる重要な情報のため、厳重に保管する必要があります。流出・紛失がないように細心の注意を払いましょう。
従業員がいる場合、従業員のマイナンバーの取得と管理
従業員がいる場合は、従業員のマイナンバーを取得する必要もあります。従業員からマイナンバーを取得する際は、マイナンバーが確認できるマイナンバーカードなどで確認を行いましょう。
従業員のいる個人事業主にとっての大きな問題は、このマイナンバーの収集や保管作業にあります。
まず収集に関しては、従業員に対し、マイナンバーカードのコピーを提出してもらうのが一般的ですが、人数が増えれば増えるだけその収集には工数がかかります。その上、従業員に家族がいる場合には、その扶養親族のマイナンバーも必要となるため、従業員の人数以上に収集すべき対象がいる可能性が高いです。
そして保管の面では、流出・紛失は罰則の対象になりますので、保管は厳重に行う必要があります。万全の体制で管理するためには、社内ネットワークのセキュリティ強化や保管場所の物理的強化、保管を任せられる取り扱い責任者の設置などの対策を講じる必要があります。
このような対策にはそれぞれに追加費用がかかるため、思わぬ出費となる可能性も十分ありますので、事前にしっかりと計画を立てて準備しておくことが重要です。
まとめ
本記事では、個人事業主やフリーランスがマイナンバーを管理する必要性や気をつけるべきポイントについて解説しました。マイナンバー制度自体は今後さらに普及していくことで、社会全体の情報管理や業務効率化につながっていくと考えられます。
それを踏まえて、できるだけ早めに保管のためのセキュリティ対策やマイナンバーカードで行える民間のオンライン取引や各種証明書類の自動交付サービスなどを活用して、効率の良い業務環境を整備していくと良いでしょう。