【CTOmeetup】データドリブン×オープンイノベーション(後編)~データが事業を、組織を、社会を変える。データドリブンの先にあるものとは~

2018年12月4日に開催されたCTO meetupで、「データドリブン×オープンイノベーション」の後編記事です。(前編記事は、こちらからご覧ください。)膨大なデータをどう抽出し、どう活用すればいいのか。そして、デードリブンがどのようなオープンイノベーションにつながるのか。規模を問わず各企業のCTOやリードエンジニアを招き、エンジニア、プロダクト、そして企業においてデータドリブンがどうあるべきか、たっぷりと語っていただきました。

【ご登壇者】
●THECOO株式会社 執行役員 Product Manager 星川 隼一 氏
早稲田大学 人間科学部卒業。 在学中にCMSを比較.COMに事業売却し、2011年にグーグル株式会社に入社。アジア地域のプロダクト・データ分析スペシャリストとして活躍。個人でWebサービス開発を積極的に行い、2015年のYahoo! Japan Internet Creative Award アプリ部門では金賞を受賞。 2015年8月よりTHECOO株式会社に参画し、会員制ファンコミュニティアプリ「fanicon(ファニコン)」の開発に従事。

●株式会社Hacobu 執行役員 高橋 道幸 氏
日立システムエンジニアリングサービスで大型汎用機、オフコン系の業務システム開発に7年間従事したのち、独立し業務パッケージプロバイダーを起業。そののち、株式会社システム・サイエンスにてモバイルネットワーク、Androidアプリの開発に従事。

●株式会社リブセンス 不動産ユニット IESHILディベロップメントグループリーダー 竹馬 力 氏
東京工業大学理学部を卒業後、ベンチャー企業を経てフリーランスエンジニアを7年経験。戦略PR会社ビルコム株式会社にて 開発マネージャーとして新規事業に従事。2013年に株式会社リブセンスに入社。不動産価格査定サイト「IESHIL(イエシル)」立ち上げを経て、現在、データエンジニア/エンジニアリングマネージャー。本業の傍ら、技術顧問/技術関連の執筆も行っている。

●弊社flexyご登録専門家 本間美香 氏
アクセンチュア(旧株式会社アイエムジェイ)にて制作ディレクション・PM経験を経て現在はリクルートテクノロジーズに在籍中。現職ではリクルートが運営する様々なメディア・WEBサービスにおいてサイト内の行動データやオフラインデータを組み合わせて分析・可視化し、集客及びサービスの各プロセスKPI向上シナリオ設計・UX設計、サイト設計に落とし込む「メディアプランナー」に従事。データ・ドリブンにUXを改善する「UXブートキャンプ」の講師・レビュワーとしても活動中。

【モデレーター】
株式会社マクアケ 執行役員 CTO 生内 洋平 氏
1979年生まれ、弘前大学理工学部卒業。大学在学中から通算7年のインディーズミュージシャン・デザイナー・エンジニアの3足のわらじ生活を経て独立創業。以後、国内外、大手・スタートアップ問わずプロダクトチームへの参加を経て株式会社Socketを創業、CTOとしてWEB接客ツールFlipdeskの立ち上げ〜グロースまでを指揮。2015年にKDDIグループSyn.HDに参加し、Supership株式会社CTO室での業務を経て、2017年にSupership株式会社を退社。2017年12月、株式会社マクアケ執行役員CTOに就任。

【CTOmeetup】データドリブン×オープンイノベーション(後編)

泥臭い努力の積み重ねの先に見える、データドリブンによるイノベーションストーリー

生内:では第2部のテーマは「データドリブン×オープンイノベーション」という大きなくくりでお話しいただきたいと思います。まさしく、自社のプロダクトが次の壁を飛び越えるフェーズにあるという方はいらっしゃいますでしょうか?

高橋:当社は先程ご説明した通り物流業界のプラットフォーマーになりたいという目標を掲げていますが、そのためのデータドリブンには非常に難しい部分があります。これはデンソーさんの事例ですが、実際に車にコンピューターを積んで、ドアを開ける、ハンドルを回す、ワイパーを動かすといったさまざまな情報を全部集めたそうです。そのデータをもとに車をモデリングして走らせてみたところ、車がひっくり返って走ってしまった。原因は現在車が傾いているかどうか、という部分のデータ不足です。 うちのプロダクトも似たようなフェーズに差し掛かっていて、例えばA地点からB地点にいつどんな車両を運んでいるのかという基礎的なデータはあるものの、当社が提供したいのはその先にあるデータで、数ある配送データの中から効率の良いルートを検索したり、どこで荷物をピックアップしてどこで下ろせばいいのかといったことを出したい。しかし、そのためには例えば荷物の種類と、それを同時に運んでいいのかどうかといった付加情報がまだ取り切れていないんです。「もっとプラスアルファのデータを取らなければいけないんだ」ということに気づき始めた段階で、さらにその取得方法が課題になっています。

生内:そうなると膨大なデータ量が増えると思いますが、その点で組織的に変化が望まれるのか、あくまでプロダクトとしての戦略を変えるだけで済むのかといった部分はいかがですか?

高橋:まず、何のデータを取れば有効なのかということを先に決めなければいけません。ただし、取れる情報と取れない情報がもちろんありますから、取れる情報の中から組み合わせて最適化することが今後のビジョンにもつながっていくと思います。データ分析をしっかりできる方がいない状況もあるので、それを構築するための仕組みづくりにも非常に悩んでいるところです。

生内:チームとしても一段ステップアップする必要があるということですね。竹馬さんは1部で事業が少しずつマネタイズできてきたというお話をされていましたが、イノベーションを形にしていくためにはどういった流れがあるのでしょうか。

竹馬:我々も不動産業者と実際に家を売買する方々のプラットフォームとして「IESHIL」を使ってもらうことを目指しています。不動産業界には仲介業者が顧客の囲い込みをしたり、売り手と買い手の両方から仲介手数料を得る両手仲介をするといった状況があります。本来なら売り手は高く売りたい、買い手は安く買いたいという形で利益が相反するので別々の仲介業者が立つ方が健全ですが、1社で行うのが慣例になっている側面があります。そんな状況が普通とされている中で不動産取引の透明性を高めることが我々のビジョンでもあり、いかに既存の業者やユーザーにそのビジョンを浸透させていくか、という部分が肝になります。データをオープンにすることもそうですし、例えば建物の地震のリスクなども普通に伝えています。直接お金に関わることですから、「そんなこと書くな!」という方も当然いらっしゃいます。ただ、それを当たり前にするのがいかに価値の高いことなのかを、文化として認識してもらう必要があるんです。
リリースした当初はサービス自体も相当叩かれて、「勝手に掲載するな、削除しろ」というクレームが少なくありませんでした。ところが3年経過した現在は、「より正確なデータに修正して欲しい」という内容にクレームの質が変わってきた。これは、ネット掲載が実はいろんな人のメリットになっているという認識がだんだん浸透してきた証拠だと思いますし、3年間地道にやってきたことが文化として根付き始めているのかな、と感じています。

生内:Googleのストリートビューと似ているかもしれませんね。泥臭くデータドリブンを続けた先に、今のお話のようなきらきらしたものがあるというのが、オープンイノベーションそのものかと思います。
星川さんにお伺いしたいのですが、ファンコミュニティにおいて、データがこじ開けるオープンイノベーションとはどんなものなのでしょうか?

星川:イメージが湧きやすいところでいうと、アイドルに対する行動が1つあります。ライブに行って、ツイッターで感想を呟いて、ファンクラブに入って、同じアイドルが好きな人と友達になって、物販を購入して、またライブに行って…。これらの行動がこれまで顕在化していた部分ですが、それがユーザー個人に紐付いていくと、一人のファンにものすごく価値がある、という話になると思うんです。「毎回握手会に来ている」というだけだったのが、「毎月50万くらいグッズを買ってくれている」ということをデータによって伝えられれば、ファンがどれくらいアイドルを大切にしているのか、アイドルがその人にとっては人生の一部であるということがより伝わる。そうなれば、タレントがよりファンを大切にしていけるような世界になると思います。
「データ分析してどうプロダクトを改善するか」という使い方が今までの主流でしたが、それがサービスに食い込んでいったときにユーザーにとってどんなメリットがあるのか、という部分を捉えるのが次のフェーズだと思いますし、ユーザーの幸せにもつながるのではないでしょうか。

生内:本間さんはいかがでしょうか?

本間:あくまで個人的な考えですが、普段0.0数%の範囲で成長していこうと思うと、どうしても同じ課題に行き詰まります。そのとき、見るデータの幅を広げる必要がある。前工程か、後工程か、あるいはドメインを広げるのか、という話です。転職のマーケットデータ見ているとすれば、「労働」というカテゴリにまでデータ範囲を広げて、アルバイトや派遣というマーケットのデータをリクルートの経済商圏で取ることができる。また、オンラインだけではなくオフラインのデータにまで視界を広げて企画をする方が新しい発見もできます。
例えば「後工程か前工程か」という話でいくと、ゼクシィは結婚式場見学というアクションがKPIになっていますが、なかなか見学量は増えない。サイトを改善する必要はもちろんあるかもしれませんが、よく考えると結婚件数自体が減ってきているから、増えないのは当然なんです。そもそも結婚数を増やせば、自分たちのサービスにお客さんが戻ってくるだろうという発想で前工程のデータを取りにいき、課題設定をしてプロダクトを作った形です。
ほかにも、転職を決めた人には引っ越しの需要があるといった関係性がデータベースから見えてきたなら、転職が決定したらすぐに住宅の案内をするといった設計ができる。見るデータの範囲を変えてみる、というのはイノベーションを生み出すための手法だと思います。

CTOmeetupデータドリブン

ビジネスがわからないエンジニアVS数字に興味がない経営層

生内:そのほか、オープンイノベーションをめざすエンジニアに対して伝えたいことはありますか?

本間:大したことではありませんが、未来のデータからアイディエーションするのは0→1の観点では楽しいかもしれませんね。2030年のマーケットがどうなっているのか、例えば外国人の労働人口が増えることで何が困るのか、空き地の増加によって地方は土地の価値が下がるといったことなど、未来でほぼ確実に起こるであろう問題に関するデータを見るのは、私個人も好きです。

生内:信憑性はともかく、世の中を広く見たときのビジネスポテンシャルがどこにあるのか、我々がどこを攻めるべきなのかを見出すことはできるかもしれないですよね。竹馬さんいかがですか?

竹馬:私は総務省や内閣府など行政府に対してオープンデータの活用という文脈で接触する機会がありましたが、データをオープンにしてAPI提供するといった価値を広めるのが、まだまだかなり難しい状況にあるということがよくわかります。例えば待機児童の状況について、各自治体が公開しているわけですが、フォーマットがばらばらで、pdfで出している行政もある。リアルタイム性も乏しい。どうパースすればいいのかもわからない。データ化の仕組みをどう浸透させていくのか、どうオープンな方向に持っていくのかは、社会の課題の1つだと認識しています。
これに関連してもう1つ感じているのは、すでにデータドリブンやオープンイノベーションといった事柄は、エンジニア視点ではもはや当たり前のことだということです。オープンソースを使っているだけでも広い意味ではオープンイノベーションです。そのエンジニアの感性を、いかに硬直したビジネスの現場に取り入れていくのか、ということを考えるのが大事だと思います。

高橋:サービスの導入先の経営者もデータに無頓着な方が非常に多いです。その一方で、早目に世代交代された運送会社さんは導入に非常に熱心ですし、「もうこのサービスを手放せない」とまで言ってくれます。現在はデジタルに慣れている世代とそうでない世代の交代時期なんですね。ですから今後はデータ分析をして提供する仕組みを受け入れてくれる企業様が増えてくるだろうという気風は感じています。

生内:どうしたら若い世代だけでなくいろいろな世代に受け入れられるようになるのでしょうか。

本間:お互いに好奇心の壁があると思います。データを提供する側もビジネスに対して興味を持って、この数字が一体ビジネスにどう重ねられるかという分析を行う必要がある。ビジネスや企画サイドなどの意思決定層は、ビジネスを数字で見るとどういう構造になっているのかということに興味を持つ必要がある。
そう考えると、自分の知見にとらわれずにフラットに意思決定をし、スピーディに実行し、徹底的に合理化や効率化を図るにはどうしたらいいのか、ということを突き詰めた人たちがデータドリブンに行き着くのだとも思います。だからこそ、カルチャーを変えていくことが大事なのではないでしょうか。

星川:データを見ない経営者と、経営層がわからないアナリストはいい対比ですね。僕自身もこれまでビジネスには触れてきませんでしたし、自分のことをビジネスマンだとも思ったこともありません。クリエイターであるという意識がある中で重要視しているのは、ユーザーがどうしたら幸せになるのだろうか、というところです。そこにお金を絡ませるのは、ほかの人が考えるからいいじゃないか…と感じます。
その一方で、いいものを作るための手段の一つとしてデータがあり、何かしらの権限を持つようなデータを扱って発信していくのは組織としては重要です。そういった視点でいくと、エンジニアそのものがデータを通して評価されるのは、社会的に良いのかなとも思います。

生内:データは一つの言語だと思いますから、新しい言葉を使い慣れていく人が増えていけば、世界の見方をみんなで変えることができる、ということだと思います。
データドリブンは泥臭い努力の積み重ねがあって、はじめて自由気ままに世界を見渡せるようになるものです。そこにイノベーションが生まれてくる可能性がある。我々の手の届くところにある世の中の多くのデータに目を向けることが、オープンイノベーションに近づくコツなのではと感じました。以上を今日の結論にしたいと思います。本日はみなさんどうもありがとうございました。

データドリブン

質疑応答

エンジニアが本当に参加したいのは、リアルなデータを用いたイベント

質問者:私はデータサイエンスアカデミーという会社で、データサイエンティストの人材育成や企業研修を行っています。イベントでは、さまざまなデータを見て仮説を立て、提案をするというデータサイエンティストの仕事の一連の流れを体験するという企画も実施してます。データを触る機会無い方が多い中で非常に好評だったのですが、みなさんの視点で「こういうイベントがあったら面白そうだ」と思うものがあれば教えてください。

竹馬:企業が企画したハッカソンには私も参加したことがありますが、リアルなデータが使用できないことがあり、残念だなと思いました。実際の現場で使うデータはもっと汚いし、問題が山程ある。それらをどう整形して有意義な形にするのか、どう分析するのか、というところが重要だからです。
ですから、もっとOJTに近い形がいいと思います。ビジネスの現場で実際に困っている課題があり、それをどう乗り越えていくのかというテーマはどうでしょう。データ分析や機械学習など、幅広いスキルが必要になりますし、本当の意味でのデータエンジニアリングには、そういった領域をトータルにこなすことができる人材が一番求められている。市場価値も非常に高いと感じています。

星川:僕が行きたいと思うイベントがあるとしたら、「金額以外のデータを全部公開して共有し合う会」ですね。データ分析をして仮説を立て、実際に成功した事例は各企業が社内にたくさん蓄積しているはずです。個人ではそんなデータを出していいのかどうかもわからないし、ぼかすのも難しい。そういったものをすべて共有できる場があれば、参加してみたいですね。

生内:「管理画面チラ見せナイト」なんかあれば、相当盛り上がりますよね。

星川:Google Analyticsを全公開など、いいですね。

本間:業種、業界別に複数企業のデータ開示可能な範囲でBIの構成まで見せたり。整形のプロセスも関数まで入れたら、まったく違う事業ごとでどういう結果が出るのか、といったことを試すのも面白いですね。

ご登壇者及び、ご来場者の皆様、有難うございました!

CTOmeetupデータドリブン


この記事を書いた人
flexy編集部
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