【CTO meetupイベントレポート】既存ビジネスからの脱却、AI技術を取り込んでビジネスを成功させる秘訣

2018年2月19日、機械学習などAIの技術を用いたビジネス開発をテーマにしたイベント「CTO meetup AI技術をビジネスに活かす」が開催されました。 前半はAI導入が事業に与えるインパクトについて、後半は将来的なAI技術の発展可能性について議論。自社事業でAIを活用する企業のCEOやデータサイエンティストらが登壇し、モデレータはSansan株式会社のプロダクト開発部部長、藤倉成太氏が担当しました。ビジネス分野におけるAIの活用方法と、導入時に注意すべきポイントについてレポートします。

■テーマ1:現在のAI技術

モデレータ

藤倉様
藤倉 成太氏|Sansan事業部 プロダクト開発部 部長/プロダクトマネジャー

1999 年 中央大学理工学部精密機械工学科卒業後に株式会社オージス総研入社。ミドルウェア製品の導入コンサルティング業務に従事。2002 年に OGIS International, Inc に出向し、シリコンバレーにて現地ベンチャー企業との共同開発。 帰国後にソフトウェア工学センターで開発ツールやプロセスの技術開発を行う。2006 年オージス総研で勤務する傍ら、金沢工業大学大学院入学。2007 年同校卒業。

テーマ1の登壇者プロフィール

中林 紀彦氏
中林 紀彦氏|SOMPOホールディングス株式会社 チーフ・データサイエンティスト

2002年に日本アイ・ビー・エムへ入社後、データサイエンティストとして活躍。また、エバンジェリストとしてビッグデータのビジネス活用価値を啓蒙。株式会社オプトホールディングを経て2016年より現職に。2014年から筑波大学大学院の客員准教授、また、2017年4月からはデータサイエンティスト協会の理事にそれぞれ就任。
橋本 武彦氏
橋本 武彦氏|株式会社GA technologies AI戦略室ゼネラルマネージャー

株式会社ブレインパッドにて、マーケティング領域のデータ分析や、データサイエンティスト育成の新規事業に携わった後、現職にJoin。一般社団法人データサイエンティスト協会前事務局長。「統計学ガイダンス(共著)」「社会人のためのデータサイエンス演習(出演)」など。
竹馬 力氏
竹馬 力氏|株式会社リブセンス 不動産ユニット・プロダクトグループ・IESHILデベロップメントチーム・チームリーダー

東京工業大学理学部卒業後、ベンチャー企業を経てフリーランスエンジニアを7年経験。その後ビルコム株式会社で開発マネージャーとして新規事業に従事。2013年にリブセンスに入社後、不動産価格査定サイト「IESHIL(イエシル)」を立ち上げ、開発チームリーダーに就任。

AI事業はトップダウン型で立ち上げる

藤倉:まずお聞きしたいのは、AI関連事業の立ち上げについてです。どういった経緯でAI分野に注力することになったのでしょうか。

中林:かなりトップダウンで進めてきましたね。CEOが、AIなどのデジタル技術によってディスラプトされると予測される保険業界にピボットしよう、と言い出したのがきっかけです。 たとえば自動運転が一般化すれば事故率が低下し、自動車保険に影響が出ますし、また、遺伝子検査による乳がん判定精度が向上すれば生命保険事業も変わらざるをえない。保険分野に起こる新しい変化に備えてR&Dを進めようということで、1年半くらい前にデジタル戦略部が誕生しました。

橋本:GAテクノロジーズは創業当初からトップが「テクノロジーで不動産業界を変えたい」と考えていました。しかし、初期メンバーは10人中8人が営業で、エンジニアは1人もいなかった。過去にはエンジニアの責任者採用を3回失敗などもあったが、徐々にエンジニアが集まるようになり、2018年4月にはAI戦略室が発足し、AI事業が少しずつワークし始めました。

藤倉:リブセンスさんはどうですか。

竹馬:きっかけは弊社代表の村上が、3年くらい前から始めた不動産投資です。村上は投資の過程で不動産業界の不透明さに憤慨し、従来よりも透明性の高い不動産サービスの創出に着手しました。 当社エンジニアと議論を交わしたようですが、最終的に収益化可能なサービスに成長すると判断し、そこから3~4ヶ月で事業を立ち上げました。

藤倉:トップダウンで始めて成功した、という点は皆さん共通していますね。たしかにボトムアップ型でAI事業を始めるのは難しいかもしれません。

AI導入は業務効率化のカギ

藤倉:AI導入によって、自社内の事業構造に変化などはありましたか。

中林:業務効率性の面では大きな改善効果がありましたね。 特に指標予測など、数値を扱う部門への導入効果は大きかった。従来は担当が1件ずつ予測を出して積み上げていましたが、人間の代わりに機械学習を投入して売上予測モデルを作らせたところ、年間数億単位のコスト削減が達成できました。特に大手企業では規模の経済が働くので、そのぶん高い効果が見込めます。

橋本:うちの場合は生産性に対する意識変化という点が大きかった。 不動産業界は「ファックスが唯一現役の業界」といわれるほどアナログです。でもAIを入れて仕入れに係る時間をトータルで1/3に圧縮できたことがきっかけとなり、この状況を変えていける、という意識が広がった。「もしかしたらAIをこういう風に使うこともできませんか」と声をかけてもらう機会も増え、うれしい限りです。

事業展開の障害は“業界の慣習”と“法規制”

竹馬:私たちは不動産の査定額や賃料を機械学習で自動予測するサービスを提供しているのですが、新しいサービスを導入すると不動産業界の重鎮から「一体なんてことをしてくれたんだ」と怒られることもあります。

中林:業界団体の圧力や法規制が事業の足枷になる、ということは結構ありますよね……。

竹馬:各官公庁などを回って、今後の不動産業界がどうあるべきか?などのディスカッションを精力的に行っていますが、面白いのは官公庁の間でサービスへの評価が分かれることです。総務省や内務省の方々からはICTの利活用という文脈で好評価をしていただけるのですが、不動産業界の管轄である国土国交省の場合は渋い評価でした。

AIに使うデータの収集方法

藤倉:AI導入時に障壁となりやすいのが「データをどこから引っ張ってくるのか」という問題です。最初から整形済みのデータセットが用意されているケースはほとんどないでしょう。この点、どうやって乗り越えましたか。

中林:金融機関のシステムの一部には1970年代の技術が使われたレガシーシステムをデータ管理に使っているケースもあります。リレーショナルデータベースではなく階層型データベースを使っている場合もあり、こうした場合はデータの抜き出しがかなり面倒です。 私の場合は対処法として、予め「どのようなデータを集めるか」を目標設定したうえでメタデータを収集するところから作業を始めています。

藤倉:不動産業界に関しては、データはあるけれどもアナログ状態でしか残っていない、という状況からのスタートになりますよね。

橋本:業界自体の特性とは別に、不動産という商品自体の特性も問題になります。 不動産は厳密にいえば同じ条件の物件が存在しない一点物ですし、そもそもリピート購入する商品ではないので、トランザクションの総量も少ない。データ量が少ないためデータサイエンティストにとっては難しい面もある業界です。

竹馬:マンションデータは仲介業者が入力している場合、エクセル上に名寄せブロックを作成していることがあり、これをやられるとデータがぐちゃぐちゃになりやすい。そういう生データから特定の名前と住所を紐付ける処理をするためには、特殊な作業が要求されます。

中林:そういう作業をAIに任せるとかはどうでしょう。

竹馬:取り組んではいるのですが、完全な自動化に至るにはまだ道半ば、といったところです。どこまで手動でやってどこまでを自動化するのか、その線引きが難しい。

中林:最近の人は事業へのテクノロジー導入によって非連続的な状況変化を求めがちです。ですが、現実には導入以前のデータセット制作にすら多大なコストがかかるというのが実情。この点を改善していかなければAIはスケールしないでしょうね。

橋本:おっしゃる通り、フルオートにこだわってもあまり意味はない。半自動であってもコストダウン効果が見込めるならば導入する価値は十分あります。

CTOmeetup

■テーマ2:未来のAI技術

テーマ2の登壇者プロフィール

上路 健介氏
上路 健介氏|株式会社ジョリーグッド 代表取締役 CEO

2008年より博報堂DYメディアパートナーズで事業開発チームのリーダーを務めた後、2011年から3年間ロサンゼルスに渡米し、米国メディア企業らと事業開発を行う。2014年、株式会社ジョリーグッドを設立。米国発の国際カンファレンス「Wearable Tech Expo in Tokyo」の総合ディレクターも務める。
藤田 毅氏
藤田 毅氏|エキサイト株式会社 執行役員 テクノロジー戦略室 室長

2000年、検索エンジン開発のエンジニアとしてエキサイト株式会社に入社。「エキサイトニュース」「Womanエキサイト」などのサービスやインフラ管轄部署の部長を歴任。2008年に退社後、データ解析のスタートアップを経てエキサイトへ戻り、機械学習ベースのコンテンツレコメンドエンジン「wisteria」の事業企画者・技術責任者として従事。
進藤 圭氏
進藤 圭氏|ディップ株式会社 次世代事業準備室/Dip AI.Lab室長

ディップに新卒入社後、「ナースではたらこ」など20件以上のサービス企画に参加。現在は、人工知能メディア「AINOW」、スタートアップメディア「StartUpTimes」、アニメの舞台めぐり「聖地巡礼マップ」などの責任者として活躍中。AI研究開発や事業提案、講師なども兼任。

AIが本業で活躍

藤倉:まずは各社のAI事業について、それぞれアピールをお願いします。

進藤:弊社では営業業務の一部をAIに担当させています。あまりお話できませんが、 現段階では社員がやっているある業務をかなりの精度で代替できるようになってき ています。中でもAI系のR&Dでは大学生や大学院生のインターンが活躍していて、 彼らがPOCやアルゴリズム開発を担っています。

上路:うちの場合、ヒートマップ解析などと併用する形で、VRユーザーが映像内のどこを見ているのかを解析するためにAIを使っています。VR制作側が意図して映像内に配置した「見せたいもの」をちゃんとユーザーが見てくれているのか、その効果測定を実用レベルで行える点がポイントです。

藤田:ひとつはレコメンデーションシステムですね。ユーザーのニュース閲覧履歴からパターンを見出し、その結果を元におすすめの記事を提案、サイト内回遊率を高めるために運用しています。 それともうひとつ、マッチングサービスにも使っています。ただ、現状では「異なるユーザーのニーズにAIでどう答えていくか」という課題もある。 たとえば弊社の婚活マッチングサービスには「幸せな家庭を築く」「とにかく出会いがほしい」「理想の人に出会いたい」など多様なニーズを抱えるユーザーが多数登録しています。このため単一のマッチング用アルゴリズムで対処するのには限界があり、この点をどう解消していくかが今後の問題です。

AI技術で新たな市場開拓が可能に

藤倉:漠然とした質問ですが、今後、AI技術はどのように発展していくと考えていますか。

藤田:自然言語処理が今後どのように進化していくかに注目していますね。この分野は画像認識や音声認識などとは違い、正直まだまだ発展途上という印象です。現段階ではAIのテキスト認識精度は6割程度といったところで、ここを7、8割の精度まで高められるかどうかが課題になる。ただ、いつになればそこまで精度が向上するのか、正直わかりません。

上路:VRを使えば現実では不可能なシチュエーションを再現できますので、人間の行動データを大量に収集して、AI用のビッグデータとして使う、という応用も可能です。災害など緊急時における人間の行動データは十分に採集されているとは言い難い状況ですが、VRを使えばこの点も解決可能となります。 将来的に音声認識、画像処理などの精度が向上すれば、VR、データ解析技術と上手く組み合わせることによりマーケティングの新たな領域が開拓されるでしょう。

日本のマーケットはどう変わるか

藤倉:今後、AI技術は日本のマーケットをどのように変化させていくのでしょうか。

進藤:実は今回の登壇者の方々にはみんな共通点があります。 労働力の補完や技術の自動化など……いってみれば「真面目」な事業展開をされている方ばかりです。私自身、日本や市場の未来というのは、こうした「真面目」な技術活用の延長線上にあると考えています。

ただし、しばらくはAIよりもRPAが市場をリードする状況が続くと予想しています。AIがスケールするのは、AIに解析させるデータを手軽に整形できるようになった後の話。今後2~3年はAIによる業務自動化の世界が、そして5~10年後になってから、やっと機械学習やディープラーニングなどの技術が活かされるでしょう。

藤田:たしかにAIは技術的に発展途上ではありますが、既にビジネスにおけるAIの恩恵は大きいです。ですから、今からAIの活用方法を検討していく必要があります。そのためのアイデアをどうやって生み出すかが重要です。 実はこのまえ社長から3年後のAI事業戦略について尋ねられ、それに応えた社員が3年どころかなんと「100年後のAI事業戦略」を資料として提出したということがありました。もちろん、この資料がすぐに役立つわけではないことは明らかですが、技術進化のスピードを鑑みると、このように「想像のつかない将来」を今のうちから考えておくことも大事です。

上路:VRは人材トレーニングの分野で大きく注目されています。人材教育が不要な業界はない。やがて全業界でVRトレーニングが導入される時代が来る。ただ、VRで訓練すればそれで良い……というわけではなくて、教育効果はどれくらいか、その結果を知ることも必要。そしてトレーニング結果を解析するテクノロジーとしてAIは有効です。

また、特に日本国内ということでいえば、やはり2020年のオリンピックがAIのひとつの転換点になると睨んでいます。成長著しいVR、AIというテクノロジーを、オリンピックというイベントを通じて世界に発信する。私は、日本がそうした役割を担うと考えています。

【CTO meetup】AI技術をビジネスに活かす


この記事を書いた人
flexy編集部
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