【CTOインタビュー】エンジニアがプロとして自分の仕事を誇れる文化へ。「モノ言うCTO」の仕事論−メドレー・平山宗介さん

誰でも手軽に、信頼できる医療情報を得られるようにする。病院の診療プロセスを効率化する−−。医療・介護業界のさまざまな課題を解決し、「納得できる医療」の実現を目指すため、メドレーは病気や医療機関の情報提供、オンライン診療アプリ、医療・介護従事者の採用支援といったサービス展開を積極的に進めています。

 

高いレベルのエンジニアリングが求められる事業の中心に立ち、プロダクトマネージャーとして、事業をスケールさせていくキーマンとして活躍しているのが取締役CTOの平山宗介さん。エンジニアのキャリアを広げていくヒントを伺いました。

目次

CTOとは「他の職種に対してもモノを言うべき」人

Q:まずは平山さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

平山宗介さん(以下、平山):私はもともと大手系列のSIer出身です。「未踏ソフトウェア創造事業」という国の事業で同世代の起業家と出会い、それがきっかけでグリーに移りました。現場でコードをばりばり書きながら、事業そのものを動かしている人たちの存在に刺激を受けたんです。

 

「ピュアなインターネットサービス」を提供する会社を経てフリーランスを経験し、「リアルの世界に影響を及ぼすような仕事がしたい」と思うようになりました。それでリブセンスへ入社し、CTOを務め、その後メドレーに合流したという流れです。

Q:「医療」という分野にはもともと関わりがあったのでしょうか?

平山:いえ、もともと自分自身は医療に対する興味はありませんでした。代表の瀧口浩平と出会い、「何とエネルギッシュな経営者なんだ」と感じて。それで一緒にやりたいと思うようになったんです。

 

私が加わった当時のメドレーはどちらかというと営業会社的な風土で、エンジニアはまだまだ少数でした。そこにネット文化を持つ人間が入っていき、徐々に変わっていった感じです。自分でコードを書いたり、サイトリニューアルの背景や目的を営業部門に説明したり、社内でのいろいろな折衝に当たったりと、やるべきことはたくさんありました。

Q:どのようにコミュニケーションを取って会社を変えていったのでしょう?

平山:エンジニアのトップとして、事業にもちゃんと意見を出してはっきりモノを言うことで、「俺たちも売上アップに貢献するんだ」という意識を強く持ち、それを伝えるようにしていましたね。個人的に、CTOとは「他の職種の人に対してもモノを言える人」でなければいけないと思うんです。その理由は、リアルな現場に向けたサービスを開発していると、どうしても現場と近い営業側の意見が強くなってしまいがちだからです。そこに切り込んでいかないと、社内受託のような、受け身の意識が消えないと思うので。

 

メドレーが提供したいのは、本質的で大きな社会課題を解決するためのインフラとなり得るプロダクトです。そのためには、営業担当がお客様から吸い上げてきた要望を言われた通りに開発するのではなく、「より大きな視点での課題解決を可能にするためにはどうするべきか」という、プロダクト開発の目線での意見を積極的に発信すべきだと考えています。

 

また、システムに投資したいと思えば、そこに至る文脈や意義を経営陣に明確に伝えていく必要もあります。そのためにはファイナンスの勉強もしなければいけない。

Q:まさに経営者としての「CTO」ということですね。

平山:私自身は、CTOという言葉自体があまり好きじゃないんですけどね(笑)。「Technical」「Technology」という言葉を意識し過ぎて、そこに縛られてしまうような気がします。

 

例えば経営会議でファイナンス周りの話が出たときに、「エンジニアだから技術のことしか分かりません」というのは違うと思っていて、「企業価値を最大化させるためにエンジニアがどうあるべきか」ということをきちんと考える必要があると思うんですね。そういう視点も持ててこそのCTOだと私は思っています。

刺激的な人たちとともに働ける環境が大切

Q:そうした視点を持つために、平山さんはどんな風に経営の知識を身につけて、モノが言えるようになっていったのでしょうか?

平山:知識を得るという意味での勉強はもちろん、経験も大きかったです。グリーではエンジニアも事業の数字を把握することが求められましたし、小さな会社でも同じですよね。フリーランス時代は否が応でも自分自身のPLを直視しなければいけない日々でした。

Q:フリーランスからもう一度企業に戻ったのはなぜですか?

平山:孤独に耐えられなかったんですよ(笑)。一人でモノづくりをしていたんですが、それでいいものができてもあまり喜びを感じられませんでした。

 

それまでに所属していた環境では、いつも優秀な人に引っ張ってもらっていたのだということにも気づきました。もう一度そんな環境に身を置くことが大切なんじゃないか、と。

Q:現在のメドレー社内にも、刺激になる人はいますか?

平山:はい。私より技術に長けているエンジニアもいますし、エンジニアリングだけでなく、経営やセールス面でもとても刺激的な人たちが集まっていますね。

「課題だらけ」の医療だから面白い

Q:現在の社内体制について教えてください。

平山:医師たちがつくるオンライン病気事典「MEDLEY」 (メドレー)、スマホで診察が受けられるアプリ「CLINICS」(クリニクス)、医療介護分野の人材不足を解消する求人サイト「JobMedley」(ジョブメドレー)、口コミで探せる介護施設の検索サイト「介護のほんね」という4つの事業を展開しています。

 

エンジニアは、この4つを横断する開発本部に属しています。縦軸で事業部、横軸で開発本部という形ですね。

 

私が加わった2015年当時はジョブメドレー事業のみで、エンジニアはまだ5名しかいませんでした。その後、サービス展開が広がるに連れて横軸でのマネジメントをするようになっていきました。

Q:メドレーで働くエンジニアは、どんな動機で集まってくるのでしょうか?

平山:これまでは、一定の経験を積んだエンジニアが集まってきています。既婚者で子持ちという方も多いですね。エンジニアにとって医療業界は遠い世界だと思いますが、家族を持つようになって興味が湧いたという話をよく聞きます。もちろん若手にも、「次のチャレンジとして医療をテーマにしたい」と考えて移ってきた人がいます。

 

領域的な面白さとして、「医療は課題だらけ」ということが挙げられると思うんです。ただ薬を処方してもらうためだけに通院しても、「2時間待たされる」ようなことが当たり前。診療プロセスを効率化したり、医療リテラシーの向上に貢献したりといった事業は、その課題解決に直結するものです。医療・介護業界の人材不足を解消したり、施設情報を透明化したりといった事業も業界を変えることにつながっていきます。そこに魅力を感じる人が多いですね。

エンジニアは「コードを書けること」そのものに誇りを持つべき

Q:エンジニアの育成や評価、キャリアパスを考える上で、どのような工夫をしていますか?

平山:技術的な部分の教育は仕組み化しています。

 

その上で個人的にエンジニアに語りかけているのは、「心構え」の部分ですね。「エンジニアだから」「専門職だから」という甘えを持ってほしくないんですよ。期限までに仕上げるとか、ちゃんと定時に出社するとか、そうした「規律」を大切にしたいと思っています。

 

経営陣で議論する際に、「エンジニアの評価は難しいな」と感じることもあります。エンジニアのパフォーマンスというものは、簡単に説明できない部分もある。だからこそ、人としての基本的なことを大切にして、圧倒的な成果を出さなければいけないと考えています。

Q:自社のエンジニアには、どのような成長を望んでいますか?

平山:自走できるエンジニアになってほしいですね。自力で食べていけるくらいのスキルを身につけてほしい。社内でもそれを言い続けているので、言われたものをただ作るような受託スタンスではなく、自らベストな方法を提案できる人間が多くなってきていると思います。

 

メドレーは一人ひとりの裁量がとても大きいので、小さなチーム単位で、数字にも責任を持ちながら事業を動かしていくことができます。そうした経験も大切にしてほしいですね。

Q:社外も含め、「これからのキャリアをどのように考えるべきか」と悩む若いエンジニアに対してアドバイスできることはありますか?

平山:昔と比べると技術はコモディティ化してきていますし、10年後、20年後を考えると、「技術をつくる人」と「技術をつかう人」の二極化はどんどん進んでいくと思っています。技術をつくるひとは中途半端な技術ではなく「Rubyを作れます」とか「AWSのインフラをつくれます」とか、そのようなレベルまで貪欲に挑んでほしいですね。

 

また、技術をつかうひとでも技術への深い理解は引き続き求められます。インフラなどの根っこの技術が分かっている人は、上のレイヤーの技術にも対応しやすいです。今やっている仕事への興味の幅を広げて、例えば「なぜRubyは動くのか?」といったことにも関心を持って、突き詰めていくことが大切なのだと感じます。いずれのキャリアを歩むとしても「コードを書ける」ということにはずっと誇りを持ち続けてほしいですね。

Q:平山さん自身は、今後どのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか?

平山:まずは今向き合っている医療の世界で、「診療プロセス効率化」というミッションをやりきりたいと思っています。

 

技術の力でリアルな世界を変えていくことは、「エンジニアがプロフェッショナルとして自分の仕事を誇れる」という状態につながっていきます。そんな実績を積み上げて、エンジニアの存在感をどんどん高めていきたいですね。

 

取材・記事作成:多田 慎介

平山 宗介

株式会社メドレー取締役CTO。 2005年に日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社へ入社。未踏ソフトウェア創造事業に採択され、グリー株式会社に転職。その後フリーランスなどを経て株式会社リブセンスに入社。CTOとして組織拡大やサービス開発の責任者を務める。2015年よりメドレーに参加し、取締役CTOに就任。同社のサービス開発体制を主導しながら、新規事業開発を担う。

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