ペネトレーションテストとは?テストのやり方や使用ツールを紹介
ペネトレーションテストは、システムやネットワークのセキュリティ耐性を確認するための重要なテストです。ペネトレーションテストについて、脆弱性診断との違いや実施手順など、さらに詳しく知りたい方も多いかと思います。
ペネトレーションテストの概要や具体的な実施手順、使用するツールについて解説します。
目次
ペネトレーションテストとは?
ペネトレーションテスト(通称ペンテスト)は、サイバーセキュリティ診断の一環として実施されるテストです。ホワイトハッカーがネットワークに接続し、システムに攻撃を仕掛けることで、サイバー攻撃への耐性が備わっているかを検証します。実際のシステムに侵入して脆弱性を検証する、いわゆるハッキングを行うため、「侵入テスト」とも呼ばれています。
ペネトレーションテストは、システム運用の開始時や運用中に実施されるのが一般的です。システム運用開始後に問題が浮き彫りになるケースが多いため、開発段階ではなく運用開始後に実施するほうが効果的とされています。ペネトレーションテストの費用は、システムの規模や利用するツール、検証する攻撃シナリオの数などによって大きく異なります。
ペネトレーションテストと脆弱性診断の違い
セキュリティに関連するテストの一つに脆弱性診断がありますが、ペネトレーションテストとは実施目的に大きな違いがあります。両者の特徴は以下のとおりです。
【ペネトレーションテスト】
- 目的:想定される攻撃シナリオを基に、セキュリティ耐性を確認する
- 手法:一部自動化ツールを活用するものの、基本的には手動プロセスが中心
- 期間:大規模なシステムの場合、数週間かかることもある
【脆弱性診断】
- 目的:不正アクセスを招く可能性のある脆弱性を網羅的に検出する
- 手段:自動化ツールと手動プロセスを組み合わせて検証する
- 期間:1ホストあたり数分程度
ペネトレーションテストの重要性
近年、サイバー攻撃が多様化・巧妙化しており、従来の脆弱性診断では脅威を防ぐのが困難になりつつあります。代表例として挙げられるのが標的型攻撃メールです。インターネット回線の接続地点に脆弱性がない場合でも、マルウェアを仕込んだメールによって簡単に侵入されるリスクが想定されます。このような背景から、ペネトレーションテストの重要性がますます高まっています。
また、法規制への対応や信頼性確保の面でもペネトレーションテストは重要です。2024年に金融庁が公表した「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」では、ペネトレーションテスト実施の必要性が明示されました。特に金融業界においては、このガイドラインに基づいてセキュリティ対策を強化することが求められています。
出典:金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン|金融庁
ペネトレーションテストの種類と手法
ペネトレーションテストにはいくつかの種類や手法、形式があります。それぞれの特徴や用いられるケースを確認しておきましょう。
- 種類
- 手法
- 形式
種類
対象とするシステムによって、ペネトレーションテストは「内部ペネトレーションテスト」と「外部ペネトレーションテスト」の2種類に分けられます。各テストの特徴は以下のとおりです。
【内部ペネトレーションテスト】
データベースや認証サーバなど、外部からアクセスできないシステムを対象としたテストです。標的型攻撃メールなどを利用した侵入が想定されるため、内部の脆弱性を確認することが重要です。
【外部ペネトレーションテスト】
Webサーバやメールサーバなど、インターネットを通じて外部からアクセス可能なシステムを対象としたテストです。外部からの侵入が容易であるため、特に標的型攻撃メールを含む多様な攻撃手法に対する耐性が求められます。
手法
ペネトレーションテストの手法は、「ブラックボックス型」と「ホワイトボックス型」の2つに加え、両手法の特徴をかけ合わせた「グレーボックス型」と呼ばれる手法もあります。3つの手法の特徴は以下のとおりです。
【ブラックボックス型】
- 特徴:システム構成や機器情報を知らない状態でテストを実施
- メリット:実際の攻撃に近い状態でテストできる
- デメリット:内部構造は把握できていないため、問題点を発見しにくい
【ホワイトボックス型】
- 特徴:システム構成や機器情報を把握した上でテストを実施
- メリット:脆弱性を狙ってテストを行うため、問題点を発見しやすい
- デメリット:意図していない不具合を発見しにくい
【グレーボックス型】
- 特徴:一部のシステム構成や機器情報を把握した上でテストを実施
- メリット:テストの正確性と効率を両立しやすい
- デメリット:提供する情報の範囲により、結果にバラツキが生じる
いずれの手法にもメリットとデメリットがあります。ペネトレーションテストを実施する際は、目的に適した手法を選ぶことが大切です。
型式
ペネトレーションテストは、対象とするシステムや機器によって「シナリオ型」「脅威リード型」「PCI DSS型」「組込みシステム型」の4つの形式に分類されます。それぞれの型式の特徴は以下のとおりです。
- シナリオ型:複数の攻撃シナリオを想定して実施する形式で、主にソフトウェア製品やリモート環境が対象です。
- 脅威リード型:シナリオ型よりも戦略的にテストを実施する形式で、主に金融システムなどが対象です。
- PCI DSS型:PCI DSSのガイドラインに基づいて実施する形式で、クレジットカード関連のシステムやECサイトが対象です。
- 組込みシステム型:模擬的なハッキングを行う形式で、主に組込み機器やIoT機器が対象です。
テストを実施する際は、対象とするシステムや機器と、テスト型式の相性を確認する必要があります。
ペネトレーションテストのやり方・実施手順
ペネトレーションテストでは、実施前の準備と実施後のレポーティングが欠かせません。以下の具体的な手順を確認しておきましょう。
- 準備(情報収集)
- テストの実施
- レポーティング
1. 準備(情報収集)
準備フェーズでは、テスト対象とするシステムや機器の状況を詳細に分析します。具体的には、以下の準備が必要です。
- 実施対象の検討
- 実施対象の環境分析
- テストの実施手法の検討(ブラックボックス型、ホワイトボックス型、グレーボックス型)
- 実施計画の作成
- テスト環境の構築
実施対象に適した手法や環境を適切に整えることで、実際の攻撃を想定したリアリティのあるテストが可能です。
2. テストの実施
準備が整ったら、実際にシステムを対象にペネトレーションテストを実施します。テストでは、脆弱性を突いた攻撃がどの程度まで被害を拡大させる可能性があるのかを調査します。実施するのは主に「脆弱性評価」と「攻撃シミュレーション」です。
- 脆弱性評価:システムにセキュリティ上の欠陥や弱点がないかを分析する
- 攻撃シミュレーション:攻撃者の視点からシステムに侵入し、潜在的な被害の範囲を評価する
3. レポーティング
発見した脆弱性や、想定される被害の規模をレポートとしてまとめます。レポートには、以下の内容を含めるのが一般的です。
- 攻撃の実行ログ
- 脆弱性の詳細
- リスク評価
- 改善案
また、報告された脆弱性が適切に改善されたかの確認も必要です。必ずしも、一度のペネトレーションテストですべての問題を解決できるとは限りません。リスクを早期に発見するためにも、定期的なテストの実施を検討しましょう。
ペネトレーションテストで使用されるツール5選
ペネトレーションテストのツールには、無料で利用できるツールから、機能が充実した有料ツールまで幅広く存在し、提供企業やツールによって特徴が異なります。ここでは、ペネトレーションテストで使用される代表的なツールを5つ紹介します。
- Kali Linux
- Burp Suite
- Metasploit
- Nmap
- Wireshark
Kali Linux
Kali Linux(カーリーリナックス)は、ペネトレーションテスト向けに設計されたDebian系Linuxディストリビューションです。使いやすさと安定性が特徴で、約600個のセキュリティツールを標準で搭載しています。例えば、sqlmapを利用すれば、SQLインジェクション(Webアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃)を想定したテストが可能です。
- 特徴:約600個のセキュリティツールを利用できる
- 料金:(一部ツールでは別途ライセンス料が必要)
- 詳細:Kali Linux公式サイト
Burp Suite
Burp Suite(バープ スイート)は、Webアプリケーションの脆弱性を診断するための統合プラットフォームです。主要な機能として、通信データの監視と操作を行う「プロキシサーバ(Burp Proxy)」、特定の攻撃パターンのシミュレーションを行う「侵入ツール(Burp Intruder)」、自動的に脆弱性を診断する「脆弱性スキャナ(Burp Scanner)」などがあります。料金プランは、無償の「Community Edition」、運用開始後の手動テストをサポートする「Professional Edition」、対象を継続的かつ自動的に診断する「Enterprise Edition」が用意されています。
- 特徴:Webアプリのセキュリティ対策に特化
- 料金:無償プラン(Community Edition)と有償プラン(Professional Edition:449ドル)
- 詳細:Burp Suite公式サイト
Metasploit
Metasploit(メタスプロイト)はRapid7社が提供するペネトレーションテストツールです。システムやアプリの脆弱性を突き、攻撃を行うプログラム「exploitコード」を作成・実行できる点がMetasploitの特徴です。また、ペネトレーションテストの実施後には、また、テスト結果をグラフやチャートで可視化するレポート機能も搭載しています。無償プランと、テストエンジニアやセキュリティチーム向けの有償プラン「Metasploit pro」が用意されています。
- 特徴:exploitコードを作成・実行できる
- 料金:無償プランと有償プラン(料金要問い合わせ)
- 詳細:Metasploit公式サイト
Nmap
Nmap(エヌマップ)は「Network Mapper」の略称で、ネットワーク内のアクティブホスト(デバイス)を探索したり、ネットワーク上のデバイスが実行しているOSを推測したりするためのツールです。主に情報収集フェーズで活用されることが多く、ペネトレーションテストの前段階で対象ネットワークの状況を把握する際に役立ちます。
- 特徴:ホスト探索機能やOS検出機能が情報収集に役立つ
- 料金:無料
- 詳細:Nmap公式サイト
Wireshark
Wireshark(ワイヤーシャーク)は、パケットキャプチャツールとして知られるネットワーク解析ツールです。主にネットワークトラフィックの詳細な解析や解読に使用されます。Windows、macOS、Linuxで利用でき、ペネトレーションテストしても活用可能です。パケットキャプチャ機能だけでなく、キャプチャしたデータを分析する機能や、特定のプロトコルやIPアドレスのトラフィックをフィルタリングする機能を備えています。これにより、ネットワークトラブルの原因究明やセキュリティ監視に貢献します。
- 特徴:ネットワークのトラフィック調査に役立つ
- 料金:無料
- 詳細:Wireshark公式サイト
ペネトレーションテストの学び方
ペネトレーションテストの知識やスキルを身につける方法を紹介します。今後の学習計画や目指す資格の参考にしてください。
- オンライン学習プラットフォームを利用する
- セキュリティ関連の資格を取得する
- 実際の案件に参画する
オンライン学習プラットフォームを使用する
実際に手を動かしながら学習を進めたい方には、ペンテスター向けのオンライン学習プラットフォームがおすすめです。代表的なのは「Hack The Box」です。Hack The Boxは無料で利用可能なプラットフォームで、「Machines」と「Challenges」という2種類のメインコンテンツを提供しています。
例えば、「Machines」では、システムへの侵入を試みる問題が複数用意されています。ユーザーは脆弱性を見つけ、適切な攻撃手法を考えながらチャレンジすることで、実践的なスキルを磨けます。無料でも利用できますが、有料会員になることで、すべての機能が利用可能です。
セキュリティ関連の資格を取得する
専門資格を取得することで、自分の知識やスキルを客観的に証明できます。日本国内にペンテスター資格はありませんが、IPA(情報処理推進機構)が実施する「情報処理技術者試験」にはセキュリティ関連の資格が含まれています。また、国際的には、IACS(国際サイバーセキュリティ協会)が主催する「IACS White Hacker Certification(IWHC)」や、アメリカの「EC-Council」が提供する「CEH(Certified Ethical Hacker:認定ホワイトハッカー)」などが有名です。
資格取得は自分の知識・スキルの証明だけでなく、学習の目標設定としても有用です。モチベーションが上がらないと感じる方や、具体的な目標が必要な方は、資格取得を目指して学習を進めてみてください。
実際の案件に参画する
ペネトレーションテストの経験と実績を積むためには、実際の案件に参画するのがおすすめです。エージェント・案件サイトに登録し、ペネトレーションテストに携われる案件を探してみましょう。
案件探しには「FLEXY(フレキシー)」の利用をご検討ください。FLEXYはフリーランスエンジニア向けの高スキルな人材サービスで、大企業からスタートアップまで、さまざまな企業の案件を取り扱っています。経験を積む場としてぜひご活用ください。
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ペネトレーションテストの知見を深め案件に参加しよう
脆弱性診断が網羅的に脆弱性を検出するのに対し、ペネトレーションテストは、想定される攻撃シナリオを基にセキュリティ耐性を確認することを目的としています。このテストには、ブラックボックス型やホワイトボックス型などさまざまな手法や形式があり、正しい知識を身につけた上で実施することが重要です。
ペネトレーションテストの知識やスキルを習得するには、オンラインプラットフォームを活用した学習や資格取得がおすすめです。学習を進める中で実践的なスキルを磨き、プロ人材サービス「FLEXY」を利用して実際の案件に挑戦することで、さらなる成長を目指しましょう。