スクラップアンドビルドに役立つデータドリブン経営とは?

顧客の業種や業態に合わせ、LINE公式アカウントを用いたマーケティングツール「DMMチャットブースト」を展開している株式会社DMM Boost。新規顧客の獲得や、リピート率の増加を通した売上最大化、業務効率化などをサポートした結果、導入企業数は、サービス提供開始から約3年間で5,000を超えています(2023年7月末現在)。
組織も直近1年半で約20名から約200名規模へと急成長を遂げている同社のCEO横関様に組織運営で大事にしていることや、キャリアに対する考え方などを伺いました。

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株式会社DMM Boost CEO 横関 秀樹氏

1988年7月20日生、北海道出身
2007年、はこだて未来大学に入学。在学中に起業を経験し、2013年にはNTTコミュニケーションズ株式会社に入社。翌2014年にはギークス株式会社へと転職し、リードエンジニアや新規事業開発などを手がけた。
2018年には、株式会社ハッシャダイへと転職し、CTOとしてジョイン。人材派遣事業の責任者として、システム開発や運営を幅広く経験。
BtoB向けのSaaS事業「DMMチャットブースト」をリリースし、社名をハッシャダイから「株式会社DMM Boost」へ変更し同社のCEOに就任、現在に至る。

「不器用な自分でもできる」に魅了されてエンジニアに

エンジニアを経てCTOになられた横関さんですが、その経緯やきっかけを教えてください。

幼少期の私は、エンジニアではなくパン屋になりたいと思っていました。そこでパンを作ってみたのですが、その出来を見て「自分は絶望的に不器用だ」ということに気付いたんです。しかし小学3年生くらいの頃、パソコンとインターネットに触れて「プログラミングでもの作りができる」ということを知りました。不器用でもできるもの作りがあることを知り、プログラミングにハマるようになったんです。

2社目のギークスでは、ゲームエンジニアとしてコードを書くようになりました。そして、次に当時エンジニアがいなかった株式会社ハッシャダイ(以下、ハッシャダイ)に出会い、CTOに就任したという経緯です。
エンジニアのバックグラウンドが活かせて、その分スピード感ある展開ができるということは自分のCXOとしての強みなのかもしれません。

エンジニア組織と共に、社内全体のITリテラシーを育てたCTO時代

ハッシャダイ時代はCTOとしてどのような活動をされていますか。

ハッシャダイのCTOに就任した頃はエンジニア組織を作るためのロードマップ作成から始めました。当時は私以外のメンバー全員が営業職で、かつ「今後会社をグロースしていくためには、CTOを入れたいよね」という温度感でのジョインだったんです。そこで、2~4週間ほど会社の様子を見て「技術的にどう支援していけばいいのか」というところから考えていきました。

特に序盤は、まずエンジニアを育てるために情報系の大学を卒業していないメンバーも含めてエンジニアスキルを教えていました。早くプロダクトを作れる組織にしたいと思い、フロントエンドやサーバーサイドなどの領域は分けずに、広く浅く知識を吸収してエンジニアになってもらったんです。使用するコードも、できるだけ初心者が書きやすくSaaSツールの開発もしやすいPHPのフレームワークを導入しました。
自社でサービスを作れるようになってからは、領域をきっちり分けつつ、レガシーな言語だけではなく、React+TypeScriptといった、スタートアップのなかでもモダンな言語も積極的に取り入れていき、徐々にエンジニア組織を作り上げていきました。

エンジニア以外のメンバーにも、ITリテラシーを広めたとお伺いしました。

エンジニア組織を作っても、結局周囲のメンバーのITリテラシーが上がらないと連携がうまくいかないと思ったんです。そこで、エンジニア以外のメンバーにも「最近のスタートアップだとこういうツールを使っています」「こういう便利なSaaSツールがあります」というIT「サービス」リテラシーを上げる勉強会を行いました。

その結果、エンジニアではないメンバーもノーコードツールを使えるようになりました。例えば、メールが届いたらその内容を自動的にスプレッドシートに転記する仕組みやSlackに転送するといった仕組みを作れるようになったんです。
今では営業メンバーが能動的にこうしたSaaSツール連携を行っています。

生き残るために必要な新陳代謝「スクラップアンドビルド」

これからの時代を生き残るために、CEOとして大事にしていることはありますか。

『今』にこだわりすぎないことを大事にしています。文化や流行はどんどん変わっていくので、その時々でベストな方法を探し続けていきたいです。そういう「スクラップアンドビルド」ができる組織にしていきたいですね。
例えば、新しいシステムを作ろうとしたときに従来通りに外注する業者やフリーランスを探すのではなく「最近はこういうノーコードツールがあるから、使ってみないか」という提案が出てくるイメージです。「やり方そのものを変える方法がないか」ということをまずは自分たちで考えていける組織がこれからの時代は強いのではないでしょうか。

弊社もまだ道半ばではありますが、スクラップアンドビルドを意識していることもあり顧客のニーズに全社でスピード感持って応えることができつつあると感じています。
その結果の一つとして、コア事業であるDMMチャットブーストはサービス提供開始から約3年間で導入社数5,000社を超えました(2023年7月末現在)。

スクラップアンドビルドとは?

スクラップアンドビルドは、より効率的なやり方を見つけたら今ある体制や方法を手放して最初から構築し直す方法。「新陳代謝を促す」というイメージに近く、変革や革新にも繋がっていきます。 また、スクラップアンドビルドにより新たな需要が生まれることで、新たな仕事・雇用が生まれる効果もあります。
例えば流通業界では、スクラップアンドビルドにより変化する地域・顧客のニーズに合わせて設備・建物を置き換え、サービスの「効率化」や「最適化」が図られ、時代に沿った形の地域性を確立していくことが可能となっています。
プロダクトの改善には、スピード感を持ってスクラップアンドビルドを繰り返し細かい修正を続けることが有効です。

「解決したいこと」に着目した、本質的なファシリテーション

経営者目線で現場に意見を伝える際、大事にしていることはありますか。

例えば弊社だと、プロダクトを作る場面においてカスタマーサクセスチームと開発チームで方向性のすれ違いが起きがちです。一般的にSaaSツールを開発する際は、カスタマーサクセスチームが拾った顧客の声をプロダクトに反映することが主流です。ただ、顧客の声を細かく拾いすぎてしまうと開発や改善がうまく進まないことがあります。そういうときは経営者目線でその方向性を修正することを意識しています。

また、エンジニアと非エンジニアの間には「言語文化の違い」があると思っているのでそのギャップを埋めるように動くこともあります。
例えば「こういうシステムを作ってほしい」という非エンジニアの要望に対してエンジニアは「この場合はどうしますか」「ここはちょっと危なくないですか」と、リスクに着目して回答することが多いと思うんです。この場合、エンジニア側は「今言ったことを解決できればそのシステムを作れます」という前向きな話のつもりなのですが、非エンジニア側は「だから作れません」と否定されたように感じがちです。

そこで、まずは私自身がSlackのエンジニアチャンネルで相談する中でコミュニケーションの仕方をさりげなく伝えたりしてみたりとか、営業メンバーとの間に入ってうまく調整したりする、ということもあります。 調整時は「その提案によって解決したいこと」に立ち戻るようにしています。非エンジニア側からの「こういうシステムが作りたい」という意見が出た場合、その真意は「システムを通して解決したいことがある」ということですよね。ですので、私が具体的にどういうことを解決したいのかヒアリングして、エンジニア側に「この問題が解決する、楽な実装方法はある?」と問いかけるとうまくいったりします。こうすると、「非エンジニア側の望む問題解決もできるし、設計を変えなくても済むから実装工数も減る」ということがよく起きますね。

データを活用した経営が、アイデアの打率を上げる

横関さんにとって、経営における大事な視点とは何ですか。

アイデアに困らないような環境を作っておくことが大事だと考えています。ただ、弊社はあまりアイデアに困ることはないので、アイデアの中から「打率が高いアイデア」を選定することの方が重要です。選定の際に大事にしていることは、「アイデアを実行する前提で、懸念点を洗い出すこと」「自分の仮説を否定するデータがないか、探すこと」の2点です。

「アイデアを実行する前提で、懸念点を洗い出すこと」は、「きっといけるだろう」「これは正しそうだ」というあいまいな点をそのままにせずに、ちゃんと洗い出してから実行するということです。「自分の仮説を否定するデータがないか、探すこと」は、自分の意見に固執しないようにするということです。特に経営者は決定権を持っているため、自分が「GO」と言ってしまえば「GO」になってしまうので。

自分の意見に固執しないために、私は意識的に自分の仮説を否定してくれるようなデータを探すようにしています。「否定的なデータがあまり見つからないのであれば、自分の仮説が正しい確率が高まるのでは」と考えているからです。統計学でいう「帰無仮説の棄却」と似た考え方ですね。

そして、どんなに優れた経営者でも百発百中のビジネスアイデアを考えられる人はいません。大事なのは打席数の多さであり、打率を上げることです。そのためにできることは、経営的視点でデータをしっかり集めて統計的アプローチで打率を上げることではないでしょうか。

変化を恐れず、受け止める。今後も継続できる事業を目指して

DMM Boost様オフィス

横関さんの今後の展望を教えてください。

今はまだラッキーパンチで伸びているDMMチャットブーストを、今後もずっと継続する事業にしたいです。そして、弊社はここ1年半で社員数約20名から約200名へと急成長したので、しっかり皆を引っ張りつつ安心してもらえる組織にしたいと考えています。

採用の観点でいうと、弊社と「働き方の哲学」が合う方を積極的に採用していきたいです。弊社の働き方の哲学は「問題解決ができるか」「内発的動機付け」「不確実性への耐性」の3点です。その中で一番大切なのが、「不確実性への耐性」ですね。スクラップアンドビルドを実行する際、「この先どうなるんですか」と不安になるより、「いろんなことが起きるよね」と受け止めてほしいからです。そういう耐性を持って仕事に臨んでいただける方を、積極的に採用したいと考えています。「変化を味方に。」という弊社のメッセージに、共感を持っていただける方だと嬉しいですね。

エンジニアをCTOにさせた「もの作りへの思い」

ご自身のCTOのキャリアを振り返りつつ、皆さまにメッセージをお願いします。

私は以前から、プログラミング以外のことに関しても、必要に応じて自分から勉強するようにしていました。ですので「CTOになりたくてなった」というより、「求められることに応えていったらCTOになっていた」という意味合いが強いです。「プログラミングが上手くなりたい」というより「よいサービスを作りたい」という気持ちが大きいことも、その理由かもしれません。ただ、エンジニアとしてのバックグラウンドがあるからこそよりスピード感を持ったデータ収集ができますし、それはCTOとしての強みだと思います。だからこそ、こういうキャリアパスがあってもいいのではないかと考えています。

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