個人と組織が共にイノベーションする時代【vol.1】〜注目される複業・兼業の働き方〜

2021年7月5日に開催されたCTOmeetup、今回のテーマは複業・兼業の働き方です。

政府の働き方改革の動きを受けて、現在多くの企業で複業・兼業の解禁が進んでいます。

そこで今回は複業・兼業を検討しているエンジニアやデザイナー、あるいは受け入れる側のマネージャーやCTO、VPoEに向けて、実際に複業で活躍していたり、組織として複業制度を整備、あるいは支援をしている3名の登壇者の方々にディスカッションしていただきました。

前編の本記事は個人としての複業・兼業、後編は組織視点でのトークをお届けします。

個人と組織が共にイノベーションする時代 〜個人としての複業・兼業〜

他社のノウハウを知ることで自社での働き方にも活かすことができる

写真左上:株式会社レクター 取締役 広木 大地 氏 写真右上:株式会社BuySell Technologies 取締役CTO 今村 雅幸 氏 写真左下:株式会社カオナビ CTO 松下 雅和 氏

 

株式会社レクター 取締役 広木 大地 氏(以下、広木):早速トークテーマに入っていきますが、まず今村さんから複業などに対する思いなどがあればお聞かせください。

株式会社BuySell Technologies 取締役CTO 今村 雅幸 氏(以下、今村):基本的には推奨しています。特にどんな複業をするのかが重要で、本業に活かす観点で複業をするのがいいのではと感じています。というのも、マネージャーを含めたどのレイヤーのエンジニアも基本的に1社の中だけでプロダクトや組織を見るのは限界があります。他社のやり方を知ることで、所属している組織をより良くできるノウハウがあるのではと考える瞬間は結構あるのではないでしょうか。それを直接自分で体験して取りに行く意味で、複業は推奨できます。

広木:ご自身のキャリアの中で、他社の会社の様子を見に行くことで目の前が開けたような経験はありますか?

今村:2つあります。一つは自分で会社を立ち上げたこと。もう一つは自社と同じようなステージの会社にヘルプとして入り、組織課題を解決したことです。両方役立ちました。

会社を立ち上げた際は、本業で使いたかった技術スタックを自分の会社で試したことがあります。もう一つのケースでは、同じマネジメントをしても会社のメンバーによって上手くいかないことがあるとわかったのが衝撃的でした。マネジメントには「こうすれば上手くいく」というセオリーがあるにはありますが、やはり会社の文化やメンバーの性格によって、全く同じことを同じように伝えても結果は全く違います。これは自分のマネジメントスタイルの確立に役立ちましたし、別の環境を知ることで、自社で考えていることだけが正しいわけではないという認識につながったのがすごく良かったですね。

人生を充実させ、視野を広げる意味で複業にはメリットがある

広木:松下さんはご自身の経験の中で複業・兼業をしてキャリアが開けた、目線が高くなったといったご経験はありますか?

株式会社カオナビ CTO 松下 雅和 氏(以下、松下):正直そこまではまだありません。ただ10年ほど前に、卒業した大学のゼミの手伝いで働いたことはあります。都市計画に関わる分野だったのですが、研究で何を実現したかったのか、どんな取り組みをしようとしているのか、当時学生として研究していたときにはいまいちわからなかった部分が改めてよくわかり、大学の存在意義が見えたのは面白い経験でした。

広木:リカレント教育的に大学の研究室に顔を出してみるだけでも、視野が広がることはあるかもしれませんね。松下さんの会社やご自身の意見としては、複業は推奨派ですか?

松下:私自身もカオナビとしても複業・兼業は推奨しています。自分の趣味で好きなことをやって収入があると人生を充実させられると思いますし、エンジニアのキャリアとしていろいろな会社を見るのもメリットが大きいです。

フリーランスのネットワークを構築しているGNUS(ヌース)という会社があるのですが、私もそこにフリーランスとして所属していて、GNUSにジョインしたい方の面接などを通して今のフリーランス市場を見ています。あとは製造業の企業で技術支援もやっています。Web系以外の業界でどういう動きがあるのかを知れるのは面白いですし、自分のキャリアにもつながるなと思っていますね。

自社の会社環境が整っていれば複業はやりやすい

広木:個人視点で見ると、複業をするとすごく忙しくなるのではという意見もあると思うのですが、実際忙しいですか?

松下:カオナビは徹底的に生産性を高め、残業しないことを当たり前にしている会社なので、会社としての環境がすごく整っています。17時か18時頃には会社を抜けて、複業をしてまた戻ってきて仕事をするという動き※も当たり前にやれる環境ですね。

※カオナビでは5:00~22:00の間の4時間勤務するスーパーフレックス制度を採用

広木:今村さんは前職ではいかがでしょうか。「いい感じに複業をしましょう」と言いつつ忙しくなりすぎてしまって、「あんまり仕事してないな」と思われるようなことはなかったですか?

今村:前職では本業にコミットしていたので、あまり複業らしい複業はしていませんでした。土日に企業をお手伝いするケースが多かったですね。忙しいといえば忙しかったです。仮に平日に複業をするとなると、コンテキストスイッチがすごく大変そうだなと思います。

広木:松下さんがお手伝いされている会社では、平日に時間を使っているんですか?

松下:製造業の企業は週に1時間なので、そこまで両立を考えなければいけない状況ではないですね。

「複業=経験を買う」。自分のスキルを客観的に試せるのもポイント

広木:複業について考えたときに、お二人とも儲かりそうだからやるというよりも、興味のある分野を一つに絞らずに、自己成長、視野を広げるといった観点で複業をするのはいいよね、という認識ですよね。

今村:人によるとは思いますが、特に僕のような立場だと、お金を稼ぐというより経験を買う印象のほうが強いです。現場のエンジニアは純粋にお金を求める部分はあるかもしれませんが、やはり経験のほうがプラスになっている気がします。

広木:次の転職先ややってみたい分野の知識を得る意味では、FLEXYさんなどを通じて複業をするのがお得なのかもしれませんね。FLEXYさん経由で複業として入ってから、そのままその企業に転職するケースもあるそうです。転職活動の一環として複業をしても面白いかもしれません。

僕もいろいろな企業の支援をさせてもらうことになってからは技術的に解決できそうなテーマ全般を目にする機会が多くなり、業界の全体感が掴めてきました。一般論を踏まえて個別では何がいいのかを言えるようになったので、多くの環境を見られるのは純粋に面白いですし、価値があると感じます。

今村:井の中の蛙にならずに済むのは大きいですね。自分の能力をエンジニアの世界の中でフラットに見たときに役立つのかどうかを客観的に評価されると思いますし、スキルを磨く意味でもいいと思います。

複業先の企業選びと労働時間の管理には特に注意が必要

広木:エンジニアとして働いて3年目くらいのジュニアの方だと、給料が安いから複業をしてみようと思うこともあると思います。そのときに請負契約や瑕疵担保責任はちゃんと決めておかないとひどいことになるなどの要素があると思うのですが、そういった意味で伝えておきたい話はありますか?

今村:メインで所属している会社にとっては、社員がどの会社を複業で手伝うかは本人が思っている以上に重要です。しらずしらずの内に気がついたら実は競合企業を手伝っていたということもありますし。よくあるのが労働時間ですよね。トータルの労働時間の管理は本人以外にできないのですが、実はそこが上手くいっていないこともあるので、気を付けたほうがいいです。

複業の仕組みがきちんと整っていない会社ほど、そういったことが起きがちです。誰かが注意してくれるようなものでもないので、自分からきちんと「この会社で複業して大丈夫ですか」と確認する必要があります。僕の前職だとかなり細かいルールが制定されていましたが、それは本人を守るためなんです。複業をして本業が駄目になったら本末転倒ですから、ルールが無い会社は特に気を付けたほうがいいですね。

広木:松下さんはいかがでしょうか?

松下:本業に支障がない範囲できちんと整えられるかが大きいですよね。以前、株やFXに常時張り付いてしまって本業に支障が出ている人を見かけたことがあります。同じように複業に熱中しすぎて本業がおろそかになると会社としてもマイナスなイメージになって止めざるを得なくなるので、まずは支障のない範囲で始め、慣れてきてから負荷を上げるといったバランスが大事だと思います。

本業での信頼値を築く意味での「実務経験3~5年」の重要性

広木:YouTubeで「エンジニア歴1年半ですが、実務経験が浅くても複業はできますか? よく3~5年の経験が必要だと聞きます」という質問をいただいていますが、これはどう思いますか?

今村:経験というよりも、本業での信頼値があってこそだと思うんですよね。信頼があってなおかつ成果を出している状態になるには、3~5年かかるのだと理解しています。非常に優れた人であれば別に3年後である必要はないかもしれませんが、経営者目線で言えば100人中100人は「うちで頑張ってほしい」と思うはずなので、本業に対してコミットしており、その上で本業のためのさらなるスキルアップに向けて動いているような見え方がきっといいはずです。そのためのベースを築く意味でも、3~5年という年数が一般論としてあるのだと思います。

広木:松下さんはいかがですか?

松下:私も完全に今村さんに同意です。やはり本業で信頼感を失ってしまうとその先社内で新しいことをやるときにも手を挙げられなくなってしまうので、少しずつ自分のやれる範囲を広げていくのがいいと思います。

広木:これは難しいところもありますよね。入社して3年くらいで実力がある人でも、なかなか給与が上がりにくい時期はあると思うんですよ。本業でのソーシャルキャピタルが生まれてきて、大きな仕事を任せてもらえるようになるまでにはタイムラグがあります。そういうタイミングで「複業で月10万円収入がアップします」と言われると、ちょっと思い悩みそうです。

僕としては、トラブルは本当に抱えないほうがいいと思うんですよ。特に、知り合いの会社だからとなんとなく手伝う感じで契約したりすると、さっきの今村さんがおっしゃったように競合を手伝っていたとか労務時間が管理できないといった状況になりかねません。そういう意味ではFLEXYさんのようなエージェントを介するのはいいのかもしれませんね。その上であまり時間は増やさずに、少しずつ慣らしていく。

今村:普通に生きていると法律の知識とか身につかないので契約書の内容もどこがリスクなのか多分わからないと思うんですよね。そういう場合はエージェントに頼るのがいろいろな意味でのリスクヘッジになると思います。

 

FLEXYとはABOUT FLEXY

『FLEXY』はエンジニア・デザイナー・CTO・技術顧問を中心に
週1~5日のさまざまな案件を紹介するサービスです