注目されるスキルアップ方法。Go言語の技術的負債解消のために選んだ、技術顧問の採用という選択―イノベーション・中村瑞基さん
「『働く』を変え組織や個人が成長できる社会へ」をミッションとして掲げ、BtoB領域においてITによる法人営業支援事業を展開している株式会社イノベーション。同社の中村さんは第一号エンジニアとして入社し、現在は技術開発の責任者として活躍されています。
実は、イノベーションのエンジニア組織の歴史には紆余曲折あったと語る中村さん。ほとんどゼロの状態からエンジニア組織を再編し、Go言語でのプロダクト開発にチャレンジされています。
その中でプロ人材として求めたのが、Go言語の技術顧問です。技術顧問は現在どのような関わり方をしているのか、じっくりお伺いしました。
目次
事業とエンジニア組織が真逆の方向に…エンジニア組織再編の歴史
――御社の会社概要について簡単に教えていただけますか?
株式会社イノベーション 技術開発ユニット ユニット長 中村 瑞基 氏(以下、中村):イノベーションは2000年に設立した会社です。社長はリクルート出身だったので最初はテレマーケティング事業を行っており、そこからリスティング広告代理店事業などを経て、2007年にITトレンドというIT製品の比較・資料請求サイトを立ち上げました。
当時の開発は外注しており、私はもともとパートナー会社のエンジニアでした。4~5年近い付き合いを経て、2013年にエンジニア第一号として入社しています。
――中村さんが入社されて以後、エンジニア組織が大きくなっていったのですね。
中村:そうですね。ただ、紆余曲折もありました。私が入社してからしばらくしてからエンジニア組織が本格的に立ち上がり、採用に力を入れてエンジニアをどんどん増やしていったのですが、その当時の採用時の謳い文句は「今後イノベーションはテックに力を入れていくから、新技術をどんどん学べる」でした。
しかし、当社はもともと理念経営を行っていて、会社が掲げる「『働く』が変わる」という理念と、クレドに共感してくれる方だけに入社してもらう方針でした。しかし、それでは求人倍率の高いエンジニアはなかなか採用できないということで、理念を無視した形の採用になっていたんです。
その結果、入社したエンジニアと事業が真逆の方向を向いているような状態になってしまって……。最終的に私以外のエンジニアが全員会社を離れてしまったので、エンジニア組織を一から再構築することになったんです。それが2年ほど前の話ですね。
エンジニア未経験の若手メンバーで技術的負債の解消を目指す
――大変な時期があったのですね…!どのようにエンジニア組織を立て直していったのでしょうか?
中村:最初の1年はとにかく業務委託のメンバーを採用して、引き継ぎを行いました。綱渡りのようでしたね。このときFLEXYのコンサルタントである野谷さんにお会いして、実際にフリーランスの開発エンジニアをご紹介いただきました。今回Go言語の技術顧問を採用させていただいたのもそのご縁です。
業務委託の採用と併せて中途採用もスタートし、1年間で中途を3名、新卒を4名採用できました。2020年4月の段階で、私を入れて9名の体制となっています。
ただ、中途採用者は前職がそれぞれ介護士、バイオリニスト、ADとかなりの異業種な上、メンバーのほぼ全員がエンジニア未経験。PHPに関しては私が教えられるのですが、現在プロダクトの一部に採用しているGo言語は経験者がいないので、FLEXYさんから技術顧問の方に来ていただくことにしました。
FLEXYからご紹介したポジション | Go言語の技術顧問 |
---|---|
案件概略 | Go言語の技術的アドバイス |
期間 | 4ヶ月(更新あり) |
頻度 | 週1回 |
場所 | リモート、オンライン |
――なぜあえて難易度の高いGo言語を選んだのでしょうか?
中村:アプリケーションは基本的にPHPとLaravelをメインで使っているのですが、組織を立て直す前に、エンジニアからの「自分たちの市場価値を高めたい」という要望を受け入れて一部にGo言語を導入したんです。
経験者が開発したわけではないのでかなり素人感のある作りになっていたのですが、フルリニューアルはコスト的にかなり厳しくて。再構築した組織のメンバーで、どうにか技術的負債を解消しなければいけない状況でした。
Go言語はまだ歴史が浅い言語ですし、業務委託を募集してもなかなか実務経験のある方はいません。かと言ってやはり社内だけでは全く対応できない部分だったので、技術顧問の方に実際にアドバイスをもらおうと考えました。
メンバーからの直接指名でGo言語のエキスパートがジョイン
――今回のGo言語の技術顧問の方に来てもらいたいと、決めた理由はなんだったのでしょうか?
中村:実は、新卒のメンバーの一人がこの方に入って欲しいと指名したんです。twitterでもよく見ていたようですね。
彼は2020年7月に配属されてから2~3ヶ月でかなりPHPを習得していて、現在普通に開発に携わってくれています。年末からはGoの勉強もし始めるほど優秀なメンバーだったので、彼に「Goの技術顧問が出来るエンジニアに実際にコードを見てもらうことを考えている」と話したら、「この方に技術顧問として入って欲しい」と言ってくれました。
実は、その話を受けて個人的にtwitterでご連絡をしたのですが、やはりお返事が無かったので野谷さん経由であればコンタクトが取れるのではないかと思い、FLEXYさんに相談しました。
――FLEXYの野谷(※)にご相談いただいてからはどう進みましたか?
中村:ほかの技術顧問の方もいろいろとご紹介いただき実際に会って面談もしましたが、やはり新卒の希望通りの方にお願いすることにしました。Go言語による技術的負債があるということ、社内のメンバーは若手しかいないことなどをお伝えした上で、支援がスタートしたのが2021年1月です。
エンジニア数名よりも1名の技術顧問による支援が成果に結実
――普段、Goの技術顧問としてジョインしてからはどのようなやり取りをしているのでしょうか?
中村:今は週に1回、オンラインでミーティングをさせていただいています。前回のミーティングで直したほうがいいと指摘された部分を実際に改善してみて、そのコードを見てもらい、新たな指摘をいただいて……という繰り返しです。
――実際にジョインいただいて、手応えはいかがですか?
Go言語のエキスパートにコードを見てもらえるというのは、やはり非常にありがたいですね。実は技術顧問に入ってもらう前にGo言語のスキルがある業務委託の方を採用していましたが、実務経験の無い方がほとんどでした。なのでスキルを向上させながら現場対応をしていただくような形で参画いただいていたため、技術的負債について問合せたところ、「特に無い」という返答が帰ってきたんです。
それが、実際に技術顧問としてジョインいただいてからコードを見てもらったらネックになっている部分がぼろぼろ出てきて……。
正直言えば、技術顧問の方は単価が高いと言えば高いのですが、アドバイスいただいたことで開発が上手く回りだしているので、しっかりペイしていると思っています。
今の目標は、新卒のメンバーにGo言語を社内に普及できるくらいのエンジニアに成長してもらうことと、技術的負債を解消することです。それまでは技術顧問として継続して支援いただければと思っています。
理想はテクノロジーとビジネス両方に通じる「ハイブリッドエンジニア」
――中村さんご自身は、今後どのようなエンジニア組織を作っていきたいと考えていますか?
中村:以前のエンジニア組織が掲げていたような「テックファースト」は全く本質ではないなと思っています。ビジネスの本質は「必要とされているものを提供する」という部分であり、エンジニアリングはその手段の一つなんです。
ですから過去の反省も踏まえて今私がメンバーに伝えているのは、「テクノロジーもビジネスもできるハイブリッドエンジニアを目指そう」というメッセージです。
ものづくりをしようと思ったときに、ディレクターがいないと動けないのでは、一人前のエンジニアとは言えません。それにエンジニアリング以外の周辺領域についても浅く広く知っている、あるいはエンジニアリングとは別に、もう一つ軸となる深い知見を持っているということになれば、将来的に市場価値の高いビジネスパーソンになり、一生エンジニアとして活躍できるはずと思っています。(賛否両論あると思いますが)
この目標を目指すには、まずベースとなるエンジニアリングに卓越する必要があります。上流工程しかやったことがないと、それはそれでエンジニアの見積もりすら適正な判断もできませんからね。今いるメンバーにもまずは「きちんと作れるエンジニア」になってもらいたいので、週3回は勉強会を開催しています。
■気になる方はWantedlyへ
――何かエンジニアを支援するための制度はほかにもありますか?
中村:副業制度を作りました。これは私がもともと受託開発をして思っていたことなのですが、やはり「自社開発をする社内エンジニア」という立場では、どうしても経験できない領域があります。「もっと別の経験がしたいから」という理由で他社に転職されてしまうよりは、副業を通して成長してもらえればと思いますし、それがひいては企業の成長にもつながると考えています。
――ありがとうございます。最後に、今後の展望についてお聞かせください!
中村:現メンバーにはかなり優秀な人材がそろっていますが、まだまだ経験が浅いメンバーが多いのが現状です。全員が成長できる「より良い環境」を作っていき、更なる活躍を期待したいと思います。
また、Go言語以外にも様々な領域に技術を広げていきたいと考えています。そのためには「正社員」という雇用形態に囚われず、外部のスペシャリストの方々のお力添えが必要だと感じております。働き方の多様性を受け入れながら、「世の中に必要とされるサービス」を作れる組織を構築する。まさに「働き方を変革する」という理念を体現していきたいです。
企画/編集:FLEXY編集部(加来)