quintetのCTOが語るエンジニアに求められる”組み合わせ力”とは?

面接試験における新しい採用ツールとしてリモート面接サービス「NEXAM(ネグザム)」を公開したquintet株式会社。

LINE上で一斉配信し、全受験者の試験を同時間帯で同時に実施できることで、アメリカ合衆国・オーストラリア・シンガポール・ドイツなどの国に住む受験者が帰国子女入試において利用されています。

今回は、「NEXAM(ネグザム)」の開発の裏側を代表取締役CTOの坂尻愛明さんにインタビューでお伺いしました。

プロフィール
坂尻 愛明
坂尻 愛明 quintet株式会社 代表取締役CTO
慶應義塾大学総合政策学部卒業。楽天株式会社、株式会社BluePlanet-worksを経た後、quintet 株式会社 (旧: ProgLearn株式会社) を共同創業。新規事業コンサルティング・開発、及び自社サービスの立案・開発をおこなっている。2020年8月 オンライン試験システム NEXAMをリリース。

LINEとオンライン入試試験を連動、全世界同時に実施可能に

最近リリースされたNEXAMはどういうサービスなのですか?

quintet株式会社 代表取締役CTO 坂尻 愛明さん(以下、坂尻):NEXAMとは、オンライン試験ができるサービスです。試験問題の一斉同時配信、回答動画のアップロードを全てLINE上の操作で完結させることができます。試験実施者には専用の管理ダッシュボードを提供し、生徒の回答提出状況や提出された動画の確認を行うことができます。

【運用実証済】リモート面接サービス「NEXAM (ネグザム) 」を公開 – PR Times

LIFFを使ってサービスを実装

サービスの技術構成を教えてください

坂尻: LINEの開発者向け機能として提供されているLIFFアプリを使って実装しています。LIFFアプリのエンドポイントにはLaravelで構築したWebアプリケーションを指定しています。フロント側はHTML / CSSの基本構成ですが、現在Vue.jsに置き換えています。

LIFFとはなんですか?

坂尻: LIFFとはLINE Front-end Frameworkの略で、WebアプリをLINEアプリ上に構築することができるLINEのフレームワークです。昨年10月にバージョン2がリリースされ、TypeScript対応予定やnpmパッケージ化予定についてもアナウンスされている、今注目のフレームワークです。今回はLINE IDを用いて受験生のデータを個別管理するために採択しました。

Webアプリケーションではなく、LINEアカウント上にサービスを実装したのはなぜですか?

坂尻: 理由は2つです。LINEアプリの普及率の高さと実装速度です。

LINE公式の発表によると、国内のMAUは8,000万人、そのうち毎日利用しているユーザは86%にものぼります。 (参考: LINE公式アカウント | LINE for Business)

オンライン試験という、不確定な要素が多く受験生が不安も多い中で、操作に慣れ親しんでいるLINE上でアプリケーションを実装することは受験生のユーザエクスペリエンスをより良いものにできると判断したんです。

もう一つは実装速度です。実は、最初、NEXAMをフルスクラッチのネイティブアプリで作成しようとしていました。しかし、新型コロナの影響もあり、クライアントは3週間での納入を希望されていました。 フルスクラッチの開発では、クライアントが希望する納期にクオリティを担保しつつプロダクトを納入することは非常に困難です。

そこで着目したのがLIFFでした。LIFFを使うことで、Webアプリケーションの技術を使って、かつ審査を通すことなくネイティブアプリに似た挙動をスマホ上に実現することができます。結果、工期・クオリティの双方をクリアしつつ、お客様のニーズを満たすプロダクトを作成することができたのです。

本質的に顧客に寄り添う重要性

その機能、本当に開発が必要?を追求する

技術ファーストではなく、顧客ファーストで使用技術を決めているのですね

坂尻: そのあたりは、弊社が今行っているサービスの影響があるかもしれません。

弊社では新規事業を発足したい企業様に対するコンサルティングを実施しています。その時、必ずお客様と確認するのが、「全ての機能を”今”実装する必要があるのか?」という点です。 特に、新規事業を立ち上げるフェーズにおいては、最初から全ての機能を作ってしまうと「あ、やっぱりこの機能いらなかった」ということが往々にしてあります。

なので、弊社では現時点のMVP(ユーザに価値を提供できる最小のプロダクト)は何かをお客様を定義した上で、使用技術の策定を行います。 また、その際既にあるプロダクトを一部利用できるのであれば、積極的に提案に取り入れています。

エンジニアもお客様の構想から一緒に考えるということですか?

坂尻: その通りです。お客様によくある間違いが「アプリを作る」自体が目的になってしまっているパターンです。お客様が本来やりたいことは「サービスを創る」ことだったはずですし、サービス内容によってはフルスクラッチで開発する必要がないサービスも沢山あります。

開発の最小化・効率化に関する提案は、開発経験があるスタッフから提案すべきですし、開発経験があるからこそできる提案だと考えています。

エンジニアに求められることとは?

“満足”を生み出し続けるための2つのキーワード

坂尻さんは今後エンジニアに求められることはなんだとお考えですか?

坂尻: 2つのキーワードがあると思っています。それは、「ビジネスの理解」と「組み合わせる能力」です。 ビジネスの理解とは先程お話したように、開発案件の1つ上のレイヤーにある、「何故このような案件が発生したのか?」という点を常に意識することです。

2つ目の「組み合わせる能力」とは、既存のライブラリやサービスを組み合わせて、自分が実現したいサービスを作るということです。iPaaSという言葉が誕生したように、既存のサービスを組み合わせて新たな価値を創造するということが今後の世界観の主流になってくると私は思っています。その中で、「ただプログラミングが出来ます!」というだけでは価値提供が出来なくなる時代が必ずやってきます。

相手の本意を汲み取り、その実現手段の最短経路を提案する。これこそが、今後エンジニアに求められる立ち回り方だと考えています。

最後に、quintet株式会社で実現したいことを教えてください

坂尻: quintetでは”満足を生み出し続ける”ことをVisionに掲げています。みなさん一人ひとりの心が満たされることで、世の中を明るくしていきたいと考えています。

IT技術は、満足感を生み出すための強力な武器です。アイディアさえあれば、何もないところから価値を生み出すことができるのですから。お客様が満足するクオリティのものを生み出し続け、自分たちメンバーも充実感を得る。そんな好循環を生み出すことができる会社・組織づくりを実践していきます。

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