業務委託で「最強のエンジニア」を採用。事業にコミットした活躍ぶりに迫る――MOSHBIT・樋田顕さん
株式会社MOSHIBIT.は、バーチャル上のアバターを介して、リアルな女性とコミュニケーションを取れる次世代恋愛エンターテイメントを提供しています。今回FLEXYを利用したのは、サービス立ち上げ期におけるスケジュール遅延とエンジニアリソースの不足が理由でした。 そんな中で採用されたFLEXYからの稼働者は、見事にチームにフィット。予想していなかった力まで発揮してくれた「最強のエンジニア」だったと代表の樋田さんは語ります。業務委託でありながらコアメンバーとして活躍した稼働者について、FLEXY担当コンサルタントの寺島も交えて詳しくお伺いしました。
FLEXYから紹介した方 | サーバーサイドエンジニア |
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案件概略 | プロダクトのα版、β版の開発推進 |
稼働頻度 | 週3日 |
働き方 | 常駐 |
目次
リアルタイムでアバターに表情を反映する通話アプリをリリース
――御社のサービスについて教えてください。
樋田:アバターによるコミュニケーションサービスを作っていて、まずリリースしたのが「バーチャルカノジョ」という通話アプリのβ版です。「Vカノアバター」と呼ばれる見た目はバーチャル、中身はリアルな女性と疑似恋愛ができるもので、未来のマッチングサービスのようなイメージですね。 現在日本ではVtuberを始めとするバーチャルキャラクターが独特の文化圏の中で、市場としても盛り上がっています。ただ、まだまだそのようなバーチャルキャラクター文化に触れるユーザーは、一部のインターネットサービスやカルチャーに明るい層がメインである気がしていて、今後についてはそういった層のユーザーだけでなく、幅広いジャンルの方々が1人1対のアバターを持ち、複数の人格を持ち得る時代になるのではと考え開発したサービスです。
――「バーチャルカノジョ」で技術的にエッジが効いている部分はありますか?
樋田:一つはiPhone Ⅹに搭載されているARkitのDepthCameraの機能を活用・応用している点ですね。「アニ文字」で使ったことがある人もいると思うのですが、赤外線などを利用してインカメラに映した表情をリアルタイムに認識し、画面上のキャラクターに反映するという技術です。 これまでは匿名でコミュニケーションをする場合は音声で、匿名でなければ顔を出したビデオ通話という方法がありましたが、バーチャルカノジョはその中間に位置します。匿名性は保ちつつも、アバターに表情がつくので表現力が高く、没入感もあるということですね。 もう一つはよくある機能ですが、3Dモデルのキャラクターを自分の端末で一瞬で作成できます。当サービスの場合はチークやリップを変えたりといったような、リアルな女性がやるようなカスタマイズが可能です。 現在は自社サービス内でしか作動できませんが、今後は例えばZoomやapper.inなどのオンラインビデオツールのオプションとして、アバタービデオ通話を展開してもいいのではと思っています。
副業中心のチームに限界を感じ、新チームの編成を検討していた
――FLEXYにはどのような経緯でご依頼いただいたのでしょうか?
樋田:当初、iOSやサーバーサイドは副業の方を中心にチーム編成していたのですが、どうにも進捗が悪かったので、新たにチームを作らなければと思っていました。ただ事業の今後も不透明でしたし、正社員として固定費化したチームを作るのは躊躇があったので、FLEXYさんに相談しました。 FLEXYさんの名前自体は勢いがある会社として前職のときから知っていたので、検索してフォームからお問い合わせしました。
寺島:2019年の3月頃ですね。Web経由でお問い合わせを受け、一度私がお会いしてご状況をお伺いすることになりました。
樋田:結果として、ご紹介いただいたサーバーサイドエンジニアの松田さんという方が当社にドンピシャでマッチしました。同時に他社さんからももう1名業務委託の方を採用したのですが、両名エースのような感じで活躍していただきました。
技術よりも人柄やカルチャーフィットを重視して、採用者はかなり吟味した
――松田さんがかなりマッチしていたということですが、選考はどのように進めましたか?
樋田:書類段階でそれなりの人数を紹介いただきました。私自身、こだわりが強いほうだという面もあるのですが、特に今回は立ち上げ期でメンバー一人ひとりに対する依存度が高くならざるを得ない状態だったので、採用にはかなり慎重でした。
寺島:最低ライン以上の技術は必要なのですが、その上でそのエンジニアがどういうバックボーンでどういう考えを持った方なのか、という点をすごく気にされていましたね。人柄まで加味した採用はなかなか大変だった覚えがあります。
樋田:スキルベースだけを考えて採用するケースももちろんあるとは思うのですが、今回は6、7割程度は人物としてのポテンシャルやカルチャーフィットを意識して採用しました。
――面談は樋田さんが行なったのでしょうか?
樋田:そうですね。前職でも事業部をゼロから作った経験があるのですが、そのときも正社員が6、7割で業務委託が3、4割程度だったので、業務委託の方の採用にはある程度慣れていました。技術面でわからないことがあれば毎回エンジニアに聞いています。 チームにフィットする人やフェーズに応じたチームリソースなどを具体化することの重要性は前職の経験から学び、ある程度方向性を固めていたため、闇雲に探すというよりはフィットする人をひたすら探す、という感じでしたね。
――松田さんとの面談で印象に残っていることはありますか?
樋田:スタートアップ企業で働きたいという気持ちがある30代後半から40代の方は挑戦的かつ野心的な方が多い印象なのですが、松田さんにもそういうロジックが当てはまっていたかもしれません。わざわざ30代後半で北海道から新しい技術やプロジェクトを求めて上京されるような気合いの入ったかたですしね。 実際、松田さんとの面談では会社の考えなどを真剣に話し合いましたよ。資金調達のスキームであったり、事業の方向性やスケールのためのプランまで、突っ込んだ質問も出ました。技術面だけではなく、プロダクトや事業について気にされている点は非常に面白いという印象を抱きました。
寺島:FLEXYに登録された段階から松田さん自身もどんどん自分をアップデートしているでしょうから、今樋田さんがおっしゃったようなことは面談をして初めて分かることかもしれませんね。
サービス設計の見直しからKPI設定、マネジメントまでこなしてくれた
――松田さんには具体的にどのようなミッションをお願いしたのでしょうか?
樋田:最初は週3日の稼働だったのでミッション的には小さなところから始まりました。事業進捗的には副業メンバーを中心にα版の開発を行なっていた段階です。その次にβ版の開発もしなければならなかったのですが、 α版の進捗が非常に遅れていたので、最終的に松田さんにはα版を巻き取った上でβ版の進捗も早めてほしいというちょっと無茶なお願いをすることになりました。でも、サービス設計の見直しも含めて一緒に取り組んでくれましたよ。 無事にリリースしてからは特に大きなミッションは設定していませんでした。当社はAWSでサーバーレスな構成になっていたので、サーバーサイドエンジニアである松田さんは時間に余裕があるくらいの状態でした。 ここからがありがたいのですが、そのとき松田さんが自分から「ちょっとデータを見てみます」と言ってくれたんです。松田さんはもともとデータアナリスト的な強みもお持ちだったのですが、データを分析してどんどんビジネスの肝となるKPIを発見してくれました。今もその取り組みは継続してしますし、技術力が高くて実装レベルも高いだけでなく、プロジェクトの成功を念頭に入れて動いていただける「最強のエンジニアが来てくれた」と思いました。
――松田さんは人材育成にも携わっているとお伺いしました。
樋田:そこも全く期待していなかった部分なので驚きました。マネジメントをしたいという話も松田さんからいただいたんです。もともとマネジメントしたそうなオーラは出ていましたけどね(笑)。 そこで、まずは私が優秀なインターン生をとにかく採用するから、松田さんは彼らの技術評価や人間的な適性評価をしてほしいと提案しました。会社にはまだコアメンバーがいませんでしたから。現在は1週間に1度くらいの頻度で評価について話をしています。松田さんは教え方や仕事の振り方もとても丁寧で上手なので、マネージャーとしてのメンタル面も非常に優秀な方なのだなと思いましたね。先輩というよりは会社の一人の技術者として学生と対等に接してくれているのが、会社の風土にもマッチしているのでうれしいです。
――今後、ほかの業務委託の方もFLEXYから稼働予定だそうですね。
樋田:これまで紹介いただいた方がそうだったように、今後入ってくれる方も事業的にインパクトを起こしてくれる方だと期待しています。現在に至るまで業務委託の方がいなければ進まなかったケースが非常に多かったので、FLEXYさんには、事業的に非常に重要な部分を手伝っていただけたと思っています。
今後、経営者が「正社員」という雇用形態にこだわる必要はなくなる
――当社は「プロシェアリング」という言葉を世の中に広めていこうとしていますが、樋田さんはプロシェアリングについてどのようにお考えでしょうか。
樋田:プロフェッショナルの方を採用する際は経営者として単価を気にしなければならないのですが、むしろそのコストを加味した事業設計をしなければならない時代だと思っています。プロの力を借りた上でも利益が出るようなモデルにするということですね。今、日本のエンジニアの単価はまだまだ安いですから、現時点で黒字化しないのであれば、自分の選択肢が間違っているのではと疑うくらいでないと厳しいと思います。 一方、経営者目線で言うとプロ人材がどこまでビジョンをトレースしてくれるか、どこまで事業にコミットしてくれるか不透明なのが悩みどころかもしれません。その点のビジョンの共有は正社員の方が浸透させやすいかなという気はします。ただ、松田さんをはじめ今うちにいらっしゃる業務委託の方々はかなりビジョンに沿ってくれています。それはパフォーマンスを見ればわかります。そう考えると、業務形態を問わずともチームを強くすることは可能なのではないでしょうか。 その上で、今後、「正社員」でなくてはいけないということが古くなっていくようなイメージを持っていますよ。
寺島:我々も自信を持ってプロ人材をご紹介しているので、ビジョンのトレースをしやすい要素をお持ちの方を積極的に紹介したいなと思っています。会社に染まれるのもプロだからこそですしね。
――今後のエンジニアの働き方についてはいかがでしょうか。
樋田:どんな働き方が今後のメインになるのだろう、とよく考えます。1つあるのは技術的なイノベーションや通信規格の問題に関連するのはあるかもしれません。技術的にシームレス化が進んで例えばホログラムが横にいて仕事をしているような状態を作れたら、リモートでも全く問題がないだろうと思います。
当社の場合は今、社員に対して週に1日はリモートワークでOKという取り組みをしています。そのとき同期的に働くためにビデオ通話をつなげておくんですよ。何かあればすぐに返事をしてもらえるので安心しますし、十分使える方法だなと思っています。
寺島:環境構築次第なところはありますよね。当社もリモートが初めてだという企業様に対しては、導入ナレッジをお伝えしてあらかじめ起きそうな問題は防ぐといった活動をしています。やはりリアルなコミュニケーションとの差によってしわ寄せが出る部分はありますから。ただ、リアルだからと言って全てが成功するわけでもありませんから、その点はリモートもリアルも同じだと思います。
樋田:そこも踏まえると、少なくとも一極集中型や中央集権型の働き方は古くなっていく気がします。エリアとしても東京から分散していくのは間違いないです。チーム力を高めて一緒に働く、そんな青春はどこへ行ってしまうんだろう……とは思いますが、この感覚も昭和の男っぽい気がしますし(笑)。10年後、実際どうなっているかわかりませんよね。