技術的側面から紐解くFoodTech 【vol.1】 KitchHike、Chompy、ポケマル、各社の取り組み
2021年1月14日に開催されたCTO meetup。年明け最初のテーマは、技術側面から紐解くFoodTechです。
便利になり取り組みが増えてきたFoodTech、各社はどのような事業展開を行っているのか、技術者の目線でリアルな情報を語っていただきました。
今後フードビジネスの展開を考えている方や、FoodTechへの知見を深めたい方はぜひご覧ください。
目次
ご登壇者
株式会社キッチハイク
コロナ前後で大きくサービスのあり方が変わったキッチハイク
株式会社キッチハイク 共同代表 / CTO 藤崎 祥見 氏(以下、藤崎):株式会社キッチハイクの共同創業者でCTOの藤崎と申します。本日はよろしくお願いします。KitchHike(キッチハイク)は食に感度の高いユーザー10万人が集まるサービスです。「もっともぐもぐ、ずっとわくわく」という言葉を哲学として掲げ、全社で共有しています。
コロナ以前は実際に人と人が一緒に食事をする体験を提供するサービスだったのですが、コロナ後はオンラインイベントを中心に展開しています。今最も力を入れているのは、地域から食材が届く「ふるさと食体験」というオンラインイベントです。参加するとご事前に自宅に食材が届き、イベントでそれを一緒に調理して食べ、その後食材を作った地域の人たちとZoomで交流するという流れです。
藤崎:キーワードは「関係人口づくり」です。これは地方創生の文脈でよく登場するワードで、「移住とまではいかないけれど、その地域に関わる人」が関係人口として数えられます。
食をきっかけにした地域との交流は、これまで以下の図にあるような第1世代から第3世代まで段階的に進んできました。キッチハイクは次の第4世代として、地域の人たちと社会的意義のある交流を行い、継続的な関係性を築いていくような、未来を見据えたサービス展開をしています。
株式会社シン
より安価で使いやすいフードデリバリーを目指すチョンピー
株式会社シン 取締役 CTO 八木 達也 氏(以下、八木):株式会社シンの共同創業者として、取締役CTOを務めている八木と申します。当社はChompy(チョンピー)というフードデリバリーアプリを開発しており、サービスコンセプトは「まいにちの暮らしを、おいしく笑顔に。」です。
毎日と言われても、ほとんどのフードデリバリーサービスは単価が高く配達料もかかるため、全ての人が毎日使えるようなサービスではありませんよね。そこで僕たちは配達料を下げ、もっと高い頻度で、日常食としてフードデリバリーを使えるようなサービスを目指しています。例えばメニューもあえて惣菜屋さんに出品していただくなど、「ハレの食事」「ケの食事」でいうところの「ケの食事」をサポートしたいという考えです。
サービスの特徴は3つあり、ひとつは美味しさにこだわっているということです。個店やミニチェーンに絞った上で、出品店舗はかなり厳選しています。
八木:もうひとつは、前述したように安さです。極力まとめて配送する「らくとく便」は事前注文することで送料無料になりますし、2人以上で注文する「まとめて購入」という機能は現在送料無料キャンペーン中です。これはもともと、2人以上で送料を割り勘するような仕組みとして作りました。東急百貨店に出店している複数の店舗を選び、まとめて注文する取り組みも行っています。
八木:最後がサービス品質です。配達員の対応も含めて高いサービス水準を実現したいと思っており、配送のルールを丁寧に決めるなどさまざまな取り組みを行っています。
株式会社ポケットマルシェ
食農の流通を分散し、生産者と消費者が交流もできるポケットマルシェ
株式会社ポケットマルシェ プロダクトマネージャー 宮本 巧 氏(以下、宮本):株式会社ポケットマルシェの宮本と申します。ポケットマルシェ(ポケマル)は生産者と消費者がダイレクトにつながるオンラインマルシェで、我々はC2Cプラットフォームと呼んでいます。仕組みはメルカリに非常に近く、買う人と売る人同士が直接コミュニケーションを取って売買を行います。メルカリとの大きな違いは、一次産業を生業にしている農家さん・漁師さんのみが出品できるプラットフォームであることで、販売者の登録時に審査を行っています。
宮本:既存の流通の仕組みが図の左側で、食材は一度1カ所に集められてから消費者に届きます。ポケマルの流通は右側で、生産者から消費者にダイレクトに食材を届けることで、食の流通が分散するようになっています。
サービスの特徴は、普段スーパーでは出会えないような多様性のある食材と出会えることです。実際に当社のメンバーも毎日ポケマルの売り場を見ながら「こんなものがあるんだ」と珍しがり、ついつい買ってしまいます。
ECとしての機能以外に、コミュニケーションを非常に重視しているのも特徴です。各生産者はポケマル上に「コミュニティ」と呼ばれるページを持っており、畑の様子などを写真付きで投稿したりできますし、商品を買ったユーザーは生産者に対して味の感想などを伝えられます。
宮本:ポケマルを初期から利用している超ヘビーユーザーに茶太郎さんという方がいて、非常に良いポケマル体験の事例になっています。茶太郎さんは以前まで食に全く興味がありませんでした。
それがポケマルで食材を買うようになってから、「どこの誰がどのようにこだわって作った野菜なのか」という前情報を知った上で調理して食べると、全く美味しさが違うことに気づいたそうです。今ではポケマルがご家庭の食のインフラになっており、お子様も天気予報を見ながら生産者のことを気にかけるなど、家族のコミュニケーションや考え方にも大きな変化が生まれました。
宮本:我々はこのような形で生産者と消費者が直接関わり、関係人口を増やすことはもちろん、食のクオリティ・オブ・ライフを高めていけるようにしたいと考えています。