【COO×CTO対談】Webでオープンイノベーションの浸透を目指す「eiicon」リブランドの裏側――eiicon company
パーソルイノベーション株式会社の社内ベンチャーに位置するeiicon company(エイコンカンパニー)。
オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」の運営やコンサルティング支援、イベント支援などを通して、企業とオープンイノベーションパートナーのマッチングをサポートしている組織です。
同社は先日、「eiicon」をリブランド。オープンイノベーションプラットフォームの「AUBA(アウバ)」とビジネスパーソンのためのメディア「TOMORUBA(トモルバ)」の2つのサービス展開を図っています。
エンジニア組織は全員業務委託エンジニアで、CTOの池田さんも複数社で活躍されながらCTOとして参画されています。
今回はリブランドの背景や意図、開発の裏話などをCDO兼COOの富田さんとCTOの池田さんの両名にお伺いしました。
目次
Web活用した事業提携が当たり前になることが日本再建につながる
eiicon companyが手がけるオープンイノベーションの支援サービスについて、もともとどのような思いがあったのかお聞かせください。
CDO/COO 富田 直さん(以下、富田):そもそも日本では「オープンイノベーション」という”手段”がまだ一般的な手段として使われていません。Webの活用もコロナ禍が追い風となり、だいぶ進んできてはいますが、まだまだ浸透しきれていない状況です。
例えば地方の企業が大手企業と提携したいと思ったら、地方銀行を通じてゴルフコンペを開いてもらい、さらにアポ取りをして……という形でつながりを得るといったことも、我々がeiiconを立ち上げた当初は散見されていました。
ですが、今の時代なら事業提携であってもWebを活用しない手はありません。企業や人がWebを通してつながっていく世界観を浸透させることが日本の再建にも寄与すると考えて、サービスをご提供しています。
2020年7月11日に「eiicon」をリブランドし「AUBA」と「TOMORUBA」の2つのブランドを発表されていますが、どのような意図があってのことですか?
CTO 池田 達郎さん(以下、池田):今回のリブランドでは、もともとeiiconが持っていた「企業同士をマッチングさせる機能」と、「メディアとしての機能」を2つのブランドに分離させました。両者は明らかに別のスキームだからです。1つのサイトに凝縮すると情報過多になってしまうので、分離させるべきだと判断しました。
富田:フルリニューアル以前のeiiconは、Scala、Go、Python、Elixir、Rubyといった多言語で構築されていたのも大きな要素です。これはひとえにスピードを重視してきた結果の技術選択で、多言語でも上手く作り上げてこられたのはエンジニア組織の力のおかげだと思っています。
ですが、今後のフェーズとしては改めてゼロから作り直したほうがサービスに広がりをもたせることできるだろうということで、スクラップ・アンド・ビルド的に一から再構築しました。
池田:複数言語ではありましたが、技術に対するベストプラクティスなど、それなりの知見は蓄積されていました。ただ、複数言語すぎて対応できるエンジニアがあまりいない状態だったのも問題でしたね。2年前に作られたサービスなのである程度古くもなっていましたし、複数言語ではなく1つ2つの言語に注力したほうが開発スピードも上がるだろうという目論見がありました。
Kubernetesを利用したアーキテクチャへと変更
多言語のサービスをフルリニューアルで分離させていくにあたって、新たに技術を導入されたとのことですが、どのように技術選定をしたのでしょうか?
池田:技術選定はマッチングならマッチング、メディアならメディアそれぞれの特性に適したものを選択するようにしました。また完全リプレイスなので、モダンなアーキテクチャも採用しています。
例えばAUBAのバックエンドはGo言語でフレームワークはgRPCを使っており、AWS EKS上にIstioでネットワークを構築しています。フロントエンドはgRPCクライアントを生成できる言語ならこだわりはなかったのですが、今回はgRPC-WebクライアントにTypeScript、フレームワークはNuxt.js(SPA)を採用しました。gRPC-Webの疎通はIstioを採用しているためYamlを利用してEnvoyへ透過的に使用したいProtocolの設定ができます。iOSやAndroidもgRPCクライアントが生成できますし、Service Methodの再利用など先を見越したアーキテクチャにしたという感じです。
業務委託だからこそハイスペックなエンジニアチームを構成できる
エンジニア組織の概要を教えてください。
富田:基本的に業務委託のメンバーで構成されているので、池田さんのように、立ち上げ当初のころからずっと参画頂いている方もいれば、短期的にご参画頂いてる方など流動的になっています。今回のリニューアルのタイミングで言えばUI/UX側のデザイナーが8名、開発メンバーが10名ほどでした。
なぜ業務委託で構成されたチームにしているのでしょうか?
富田:一番の理由はスキルです。僕から見ると、エンジニアリング業界で業務委託を請け負っている方はスキルが高く、きちんと自分のスキルセットをアウトプットとして正確に出すことが出来ている、スキルをお金にも変えることができているという印象なんです。Githubを見れば大体わかりますし、信頼ができます。
実際に業務委託でもしっかりチームは作れますし、業務委託はスキルセットが明確ですので、それぞれの強みを生かしたチームビルドがしやすいです。
正社員も採用をしようとはしているのですが、やはり技術レベルが違うという印象です。業務委託のメンバーで構成したほうが、開発が回る部分は大きいですね。
次々と新技術に触れてきたことで培われた高いエンジニアリング能力
池田さんはCTOとしてeiicon companyで活躍されていますが、ほかにも複数の企業にも並行して関わっているとお伺いしています。フリーランス的な働き方をされている背景について教えてください。
池田:今でこそフリーランスという働き方が流行っていますが、僕が社会人になりたての頃は正社員として働くのが当たり前でしたし、僕も最初はそうでした。ですが実際に複数社と関わる働き方をしてみると、正社員のときにはほとんど無かったプレッシャーがあるのだとわかりました。報酬条件が提示される分、積極的にコミットしていくことになるのも、取り組んでいて面白い部分です。
また、僕が以前在籍していた会社はPythonを中心とした受託業務を行っていたのですが、そこでは3~4ヶ月という短いスパンで新しいプロジェクトに参画していました。触れる技術やベストプラクティスが日々変わっていく中でスキルの向上を図ることができる環境は、僕にはすごく合っていたんですよね。ですから、同じような環境で働くフリーランスという在り方も自分にマッチしているのだと思います。
先程富田さんが池田さんはかなり技術レベルが高いとおっしゃっていましたが、どのように最新技術の情報をキャッチアップしているのでしょうか?
池田:僕は新しい情報を知るとまず試したくなるタイプで、実際にサービスの形にまで持っていくということをずっと自宅と現場で繰り返してきました。フレームワークはもちろん、その言語で使用するライブラリなどのベストプラクティスを全て調べます。その時にインフラの構築も勿論するのですが、モダンな技術にもずっと触れてきましたね。それが当たり前の状態で今に至っているので、特に特別な情報のキャッチアップは自分の中でしているとは思っていません。
富田:池田さんのすごいところであり、大事なポイントでもあるのですが「新しい技術を使ってみる」のレベル感がサービスレベルだということです。アカデミックなレベルで新技術に触れたことのある人はごまんといますが、世の中にサービスとして出すほどのものを作っているわけではありません。
「池田さんはそこまでやってくれるんだ」という前提があるのは助かりますし、新しい技術を選定しても全く問題無いのだろうと判断できます。
どんな企業も気軽にオープンイノベーションという手段を使ってほしい
今後のサービスの展望について、富田さんはどのようにお考えでしょうか。
富田:今後は全国各地のあらゆる業種の人たちが、オープンイノベーションという手段を普通に使えるようになる必要があります。そのために、サービスとしてはなかなか日の目を浴びないような地方の企業や海外とも連携ができるようにしなければなりません。実際、海外からのお声掛けもよくいただいています。
今回のリブランドによって、事業を広く展開できる状態にできました。多彩な連携によって企業が自分たちに欠けているミッシングピースを埋められるようになるために、当社の動きもさらに加速していくはずです。
池田さんはご自身の今後のビジョンはありますか?
池田:現状の働き方を継続させるというのが、まず生きていく上で必要なことです。現在は技術寄りで開発を進めていますが、やはり会社のサービスが売れないと自分の雇用も維持できません。フリーランスだからこそ、我々が会社を守っていかなければと思っています。