朝日新聞デジタルを担うエンジニア組織、レガシーな環境からデジタルイノベーションの時代に移行する時に外部人材が発揮する力とは――朝日新聞社
朝日新聞デジタルを担うデジタル・イノベーション本部商品企画事業部。 現在、外部の優秀なエンジニアからの知見を広く求め、開発組織の革新を図っていこうとしています。
FLEXYからは2名がジョイン。アプリ開発とデザインの面で、アドバイザーの立場として活躍しました。 朝日新聞社のエンジニア組織は現在どのような体制で、どのような開発を行っているのか。 FLEXYからの稼働者はその中でどのような支援を行ったのか、商品企画事業部の3名に詳しく伺いました。
目次
朝日新聞デジタルの開発を担う、熱意を持ったチーム
―朝日新聞社デジタル・イノベーション本部商品企画事業部の概要について教えてください。
都田崇さん(以下、都田):商品企画事業部は、朝日新聞デジタルの運用と開発を担っています。 商品企画事業部の開発メンバーは、社員が主となっておりますが、業務委託のエンジニアの方も参画していただいています。 Webやアプリの開発だけでなく、プロモーション、分析、運用型広告の運用をしているチームなどもあります。
―どのようなエンジニアの方がデジタル・イノベーション本部には多いですか?
草場裕雄さん(以下、草場):みんな好奇心が旺盛ですし、事業に対する熱意が強い人たちばかりです。
都田:よく勉強します。朝日新聞社の、デジタルビジネスを強化していくという目標を強くもっているメンバーで構成されています。
デジタルコンテンツに必要な知見を蓄積していきたかった
―今回、FLEXYからiOSとAndroidのアドバイザリーをするアプリケーションエンジニアを1名と、UI/UXデザイナーを1名ご紹介させていただきました。 お迎え入れる際の開発組織の状況やフェーズを教えていただけますか?
都田:デジタルサービスを扱っている企業として、世の中の先進的なIT企業に追いつくために、外部から経験豊富で優秀な人材の方にジョインしていただき、社員の技術レベルはもちろん、エンジニアとしての考え方も変革していきたいと考えていました。
草場:やはり新聞紙を発行している会社ですから、リリースする情報に対しては非常に慎重な文化があります。 Webのスピーディにリリースしたり情報のアップデートができるという文化を浸透させていきたいと考えていました。
都田:紙で発行する新聞は、売上は数字として見えるもののどんな顧客がどんなページに関心があるのか、お客さんの反応がわかりませんよね。それでも発行すれば売れるのでビジネスモデルとして成功していたのですが、デジタルはそうはいきません。 エンジニアチームの内製化を進め、自分たちの手でユーザー分析にもとづいたサービス改善をする必要があります。そういう意味でも技術的なノウハウを外部から入れたいという思いがありました。 BtoCサービスですから、開発モデルもウォーターフォール型ではなくスクラムやアジャイル型へ移行すべきだと考えています。
スマホアプリとUI/UXデザインそれぞれの指導者としてFLEXYからプロ人材2名がジョイン
―成長を加速するためにプロフェッショナルの知見を積極的に求める中で、FLEXYからジョインしたのがスマホアプリの経験が豊富な方とUI/UXデザイナーだったのですね。
都田:そうですね。アプリのアドバイザリーは草場が、UI/UXデザイナーは菅がカウンターパートとなって支援をしてもらいました。両名の採用の面談には私が立ち会っています。
草場:アプリのアドバイザーの方にはアプリチームにおいてiOSとAndroidのテクニカルな部分の指導と、チームビルディングをお願いしました。ざっくり言うとチームのコーチングですね。
菅洋祐さん(以下、菅):UI/UXとして参画した方はデザイナーの組織づくりやデザイナーの育成経験をお持ちだったので、サイトデザインのアドバイザリーを務めてもらいました。デザイン組織やデザイナーメンバーのスキルアップと、UI/UX全体を俯瞰した目線でのサービスの品質向上のためのアドバイスをいただいています。
メンバーの育成や組織の成長を促してくれる人物かどうかが採用軸に
―今回の2名の採用ポイントはそれぞれどんな部分だったのでしょうか?
都田:FLEXYさんからご紹介いただくのは基本的に優秀な方ばかりで、キャリアや経験以外のお人柄も重視しましたね。主に面談時の雰囲気などから、その人がチーム内に合いそうなタイプかどうかを見ていました。
草場:私はアプリケーションアドバイザリーの方の面接に同席していましたが、確かにコミュニケーションのスタンスが当社に合いそうでした。ほかの方もこちらの質問に対して打てば響くような鋭い答えが返ってはきたのですが、人を指導するというよりは、優秀な人たちの中でバリバリ仕事をこなすというタイプでした。 一方でFLEXYからご紹介していただいた方は、チームに溶け込んで同じ目線で開発を進めてくれるような印象を受けたので、この人ならアプリチームのエンジニアも成長していけるのではというのが最初の印象でした。
都田:メンバーの教育を主眼に置いていたんですよね。ある程度社交的で、コミュニケーション能力の高い方をという採用軸はありました。 UI/UXデザイナーの方の場合も同様です。しかもメンバーの教育に関してかなり苦労されたご経験があった点もポイントが高かったですね。指導に対する熱意があり、組織の成長に伴う痛みもわかってくれそうでした。自分のためというよりは、私たちのために大きなメリットをもたらしてくれそうだと思ったのが決め手です。
スクラム開発の流れを実践形式で学び、開発環境もゼロベースから整備
―iOSとAndroidのアプリケーションアドバイザリーの方の支援はどのような流れだったのでしょうか?
草場:実践形式で実際にプロダクトを作り、開発の流れをレクチャーしてもらいました。 一つのプロダクトを開発するためにどのような粒度でタスクを分解し、作業量を見積もってスケジュール管理を行うのか、実際に体験できたので組織にとって非常に良い経験になりました。
―手探りだった開発手法を実践で一から学ぶことができたのですね。開発環境にも変化はありましたか?
草場:開発組織を内製化するにあたって必要なツールが当初は何もなかったので、GitHubやCircleCI、Bitriseなどの選定・導入もサポートしてもらいました。開発環境はガラッと変わりましたね。
デザインチームの課題抽出からスタートし、朝日新聞デジタルのデザイン改善へ
―UI/UXデザイナーは、どのような立ち位置で開発にジョインしたのでしょうか?
菅:朝日新聞デジタルのデザインにはUIやコンテンツ内のインフォグラフィックなど分野がいくつかあるので、関わる人やチームも、会社のなかでいくつかに分かれているのですが、今回FLEXYからご参画された方には、私の所属する商品企画事業部内で、WebサイトのUIやプロモーション用のデザインをみていただいています。
―実際にどのように支援を進めたのでしょうか?
菅:最初の1ヶ月ほどで行ったのは、デザイナーたちの1対1の面談をしてもらいました。 個々人の目指したいことや現在の状況をヒアリングした上でデザイナーチーム全体としてどんな課題があるのかを抽出し、理想的な方向性を検討するためです。 ただ、先程ご説明したように朝日新聞デジタルのデザイン機能は細かに分かれているので、コンテンツにおけるデザイン課題を解決しようと思うとほかのチームのデザイナーとの連携も必要になります。そういった、デザイナー同士のつながりの持ち方についてのアドバイスもいただきました。 2ヶ月目以降は、新規ページの制作や既存ページの改修に際してデザインのレビューをお願いしていましたね。その中でいろいろと質問をするのですが、デザイナーがチームの中でどの程度主導権を握って物事を決定していくべきなのか、どういう判断軸を持つべきなのかといったことも教えてもらいました。 実際のUI/UXの経験が豊富なので、過去の業務経験も例として伺って、大いに勉強になりましたね。 また、デザイナーだけでなく、私のようなWebの企画や案件の進行管理を担う立場のメンバーがデザイナーに何をどこまで求めるべきか、どう意思決定すべきなのかという視点もインプットしてもらいました。
―デザインチームの制度などに変化はありましたか?
菅:朝日新聞デジタルのデザイン制作を行う上で、デザイナー個人の都度都度の努力だけでなく、組織としてどのようにデザインの一貫性を保ち、運用していくかという意識は以前に増して高まりました。それを実現するためのフローについてもアドバイスをいただいています。
―稼働頻度は週に1回2時間でどのようなやり取りをしているのでしょうか?
菅:基本的には2時間で私や他のWEBディレクター、デザイナー、チームの上長が相談したいことを直接お話させていただいています。 slack上にコミュニケーションを円滑にするように迅速に相談できるチャンネルを作り、稼働していないタイミングでもちょっとした質問ならすぐに連絡できるようになっています。
優秀なエンジニアにとっては大きなチャンスとなる現場
―エンジニア組織として、今後どのような技術や文化を採り入れていきたいですか?
草場:現在サーバーサイドは内製で開発しているのですが、PHPで開発したレガシーな既存システムとも完全に切り離して、Goで開発しています。マイクロサービス的な構成にしたということですね。今後も自分たちで運用していくものは自由に技術を選ぶ意向です。
都田:従来のやり方しか知らない社内のメンバーだけではなかなか前に進めないことが多い中で、組織の可能性を広げてくれる存在がいてくれるのは心強いですよ。デザインにしろツールにしろ、新しい知見を採り入れることが結果としてコストダウンにもつながりますから、会社としては大きなメリットです。
菅:2018年からCSSのGit管理もスタートしていて、今はより適切な管理方法を探っています。スピードや柔軟性は格段にアップしました。
都田:内部で技術を共有しあえるのは大事なことですよね。 従来に比べてかなり開発環境は変わってきており、エンジニアにとってある意味で大きなチャンスや挑戦の場があるのではと思います。
―朝日新聞デジタルとして、今はどのような目標があるのでしょうか?
都田:広告やサブスクリプションでの収入を増大させることがミッションですが、そのためにも高速に改善できる環境の整備とそれを実行できる人員を増やすことが必要だと考えています。
草場:有料会員のリテンションの取り組みも推進しています。
菅:会社としての短期的な利益と、中長期的な組織の成長の間でバランスを取りながら開発を進めていかなければいけないのは、ジレンマでもありますね。