CTO・テックリードのその先は~マネジメントと技術の組み立て~(前編)企業規模別に見る組織へのCTOの関わり方

2019年11月5日に行われたFLEXY主催のCTO meetupでは、ヤフー、メルカリ、グリー、一休という名だたる企業のCTO及び取締役に登壇いただきました。

注目度がかなり高く、connpassからは330名以上の応募があり、急遽増席して開催したイベントです。

今回はご来場いただく方からの事前アンケートで寄せられた質問を中心に、技術責任者たちの開発、マネジメント、マインド、採用などさまざまなテーマについてざっくばらんにホンネを語り合っていただきました!

参加枠が限られていたため、ご来場いただけなかった方もいらっしゃいましたので、イベントレポートは、前編と後編に分けてたっぷりお届けします。

ファシリテーター
株式会社 一休 執行役員CTO 伊藤 直也 さん

ご登壇者
・グリー株式会社 取締役 上級執行役員 最高技術責任者 藤本 真樹 さん
・株式会社メルカリ 執行役員CTO 名村 卓 さん
・ヤフー株式会社 取締役 常務執行役員 CTO 藤門 千明 さん

注目CTOが語る!マネジメントと技術のバランスとは?

人数規模とプロダクト数によってCTOの振る舞い方は変化する

一休 執行役員CTO 伊藤 直也 さん ファシリテーター 株式会社一休 執行役員CTO 伊藤 直也さん
1977年生まれ。青山学院大学大学院博士課程前期修了後、新卒で株式会社ニフティに入社し、ブログサービス「ココログ」を開発。その後はてなの取締役CTOに就任。はてなブックマークの開発等、同社サービス開発をリード。グリー統括部長を経てフリーランスとして活動。Kaizen Platform, Inc.、株式会社一休、 日本経済新聞社、ハウテレビジョンほか複数社の技術顧問/技術アドバイザーを務めた。2016年4月、ホテル・旅館・レストランの大手予約サイト「一休」に執行役員CTOとして就任。

伊藤 直也さん(以下、伊藤):本日のテーマは「CTO・テックリードのその先は」ということですが、みなさんから事前にいただいている質問をもとにディスカッションを進めたいと思います。
一番多かったのは、マネジメントと開発のバランスについてです。
まず、みなさんの組織は何名くらいですか?

藤本 真樹さん(以下、藤本):数えかたにもよりますが400~500名規模ですね。

名村 卓さん(以下、名村):メルカリ全体の開発組織でいうと400-500名ほどです。

伊藤:ヤフーの藤門さんに至っては3000人ですよね。
当社は50名ほどのエンジニア組織で、僕は現在開発もしています。ただ一休に入社して半年ほどはマネジメントしかしてなかったんです。
当時は開発とビジネスが多少分断されていて、依頼を受ける開発側がお役所的な対応になってしまっていたので、それを一度壊して再構成するみたいなことをやっていました。それ自体はうまくいったんですが、僕が組織マネジメントのことばかりやっていたら、ミドルマネジメントの人たちまでそれを真似してか、プロダクトや事業のことではなく、組織のことばかり考えるようになってしまって。
50人程度の規模の組織でCTOが組織マネジメントばかりやってるとそういう悪影響が出ることがわかったので、今はやり方を変えているという感じです。

藤本:人数規模はもちろんですが、プロダクトの数もCTOの振る舞いに影響すると思います。300人で1個のプロダクトを作っているのか、30人で10個のプロダクトを作っているのかでは全く違います。
個人的にはあまりエンジニアリングとマネジメントを分けて考えているわけでもありません。どちらも並列的なスキルだと捉えて、自分が何を取捨選択して伸ばしていきたいのかを考えるのが一番いいのではと思います。エンジニアならコードを書けるというスキルがあるわけですから、それと同じ粒度でマネージャーとして自分に何をできるのか、自信を持って言えることがあれば良い気がします。
では僕はどうなのかというと、プロダクション環境でのコードは書いてないです。とはいえマネジメントばかりしているのもどうかと思っているので、趣味でものつくったりイベントで登壇するために必死で勉強したりしてバランスを取っています。

グリー株式会社 取締役 上級執行役員 最高技術責任者 藤本 真樹 さん グリー株式会社 取締役 上級執行役員 最高技術責任者 藤本 真樹さん
2001年、上智大学文学部を卒業後、株式会社アストラザスタジオを経て、2003年1月有限会社テューンビズに入社。PHP等のオープンソースプロジェクトに参画しており、オープンソースソフトウェアシステムのコンサルティング等を担当。2005年6月、グリー株式会社 取締役に就任。

伊藤:名村さんはどうですか?

名村:僕はCTOになったのが2017年の4月なのですが、それから1年ほどアメリカでUS版のメルカリの開発をしていました。つい最近までエンジニアだったんですよ。CTOとして動き始めたのはここ1年くらいなのです。藤本さんと同じくコードは書いていませんが、バランスというのはあまりピンときていませんね。

伊藤:メルカリはマイクロサービスアーキテクチャへの移行がありましたが、あれは名村さんがリードしたんですよね?

名村:一応そうですね。PHPを否定するわけではないですが、前職でもマイクロサービスで開発していてメリットが分かっていた流れもあり移管しました。
詳細な理由は別の場所でも多く語られているので割愛しますが、やはり200人、300人という規模になってくると、開発の細かい部分まで見れないんですよ。どこか一部に自分がコミットするとほかの部分が身動きを取れなくなりますし、何よりCTOがコードを書いたら現場が萎縮するじゃないですか。
ですから現場がきちんとワークするような仕組みづくりをきちんとしなければと思っていた側面もありますね。マイクロサービスにすればみんなが自由に動けるんじゃないかと思ったんです。

株式会社メルカリ 執行役員CTO 名村 卓さん
1980年生まれ。小学生の頃からプログラミングをはじめ、大学はコンピュータ・サイエンスを専門とする会津大学へ進学。コンピュータ理工学部へ進み、在学中からSIerでシステム開発を行う。2004年サイバーエージェントに入社し、『アメーバピグ』『AbemaTV』など主要サービスの数々を開発。2016年メルカリに入社。US版メルカリの開発を担当し、17年4月に執行役員CTOに就任。

伊藤:現場のマネジメントというより技術マネジメントですね。では、3000人のエンジニアのボスである藤門さんはいかがでしょう?

藤門 千明さん(以下、藤門):プロダクションコードを書くことはほとんどありませんね。やっているのは意思決定です。
ヤフーはWebに100以上のサービスを展開していて、新しいことをどんどん始めるのが社是でもあります。
その中で、人的リソースをどう配分するのかという意思決定はかなり重要なんです。
プロダクトで起きている問題を誰がいつまでにどのように解消するのかといった差配もデイリーワークです。
技術部分については、サービスごとに技術責任者が配置されているため基本的に彼らに任せています。ただ、重要なプロダクトや大きな課題に関しては改めてチームを組んでアーキテクチャをレビューすることもあります。
コードに触れるのは新しい技術について調査しているときですね。実際のサービス運営を行っている開発チームは目の前の目標や売上、KPIにフォーカスしているので未来のことはおろそかになりがちです。そこを私がカバーするために自分で新しい技術でソースコードを書いて検証し、上手くいけば社内に反映しています。

ヤフー株式会社 取締役 常務執行役員 CTO 藤門 千明さん ヤフー株式会社 取締役 常務執行役員 CTO 藤門 千明さん
静岡県生まれ。2005年に筑波大学大学院を卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。 エンジニアとして「Yahoo! JAPAN ID」や「Yahoo!ショッピング」「ヤフオク!」の決済システム構築などに携わる。 決済金融部門のテクニカルディレクターや「Yahoo! JAPAN」を支えるプラットフォームの責任者を経て、2015年にCTOに就任。2019年10月より現職。

CTOがヒューマンマネジメントにどこまで関わるべきか?


伊藤:では、ヒューマンマネジメントの部分はみなさんどうされているのでしょうか?
流行りのVPoEの役割だと思いますが。

名村:うちはまさしくVPoEに任せていますね。

伊藤:役割分担はどうしてるんですか?

名村:僕の中に理想のエンジニア組織の最終形態とそのために必要なキーワードがいくつかあるのですが、具体的にどうすれば実現できるかがわからないのであとはよろしくとお願いする感じです。

藤本:超便利じゃないですか(笑)。

伊藤:VPoEのレポートラインは名村さんなんですか?

名村:一応僕ですね。別にしようとも思ったのですが、CEOからエンジニアからの情報は一本にしてほしいと言われたので、CTOが統括することになりました。役職上はVPoEやエンジニアリングマネージャーが僕の直下ということになるのですが、実質的には並列です。

伊藤:エンジニア組織のあるべき姿のイメージはどう描いているんですか?

名村:自分が300人や1000人といった組織の中のエンジニアの一人だったときに、どんな組織なら楽しいだろうというイメージがあるので、それを具現化してもらう感じですね。

伊藤:VPoEのミッションはそれを実現することなんですか?

名村:もちろんプロダクト開発上のミッションもありますが、組織づくりは僕の理想をベースに動いてもらっていますね。

伊藤:VPoEの人はプロダクト開発もするんですか?

名村:しません。完全にピープルマネジメントです。毎日1on1の予定が詰まっていますよ。

伊藤:藤本さんはヒューマンマネジメント部分はどうされていますか?

藤本:うちは各事業セクションごとにプロダクトがあるので、ぼくは開発の共通部門を見ている感じですね。具体的にはインフラやセキュリティといった部分を自分のラインとして見ています。あとはレポートラインはないけど、グループのエンジニアのみなさんとはあれこれ相談したり。

伊藤:一番大変そうなのは藤門さんですが、いかがですか?

藤門:ヤフーのエンジニアの所属は大きく3つに分かれています。メディア、Eコマース、インフラ基盤ですね。それぞれおおよそ1000人ずつです。
僕は去年までCTOでいながらインフラのトップも担っていました。1000人の部下を見ていたわけです。とにかく大変ですよ。インフラ部門としてKPIを設定し、いろいろとアクションを起こしてく中で1000人分のトラブルがどんどん発生します。ダイレクトなレポートラインは6名でしたが、実際にはその下まで見ていたので40名ほどです。とても回りません。
これではCTOとしての役割を果たせないと思い、「自分はヤフーの技術開発に専念したい」と社長に直訴して、マネジメントには一切タッチしない形にしてもらいました。

藤本:1000人規模の組織で藤門さんレベルにまで報告が上がってくるとしたら、なかなかのレベルですかね?

藤門:はい(笑)。小さな問題だったものがどんどん大きくなって届いたりもします。でも「なんとかするよ!」と対応していました。マネジメントとエンジニアリングを両立したければ、やはり人数は絞るべきです。

伊藤:ヤフー規模だとなかなかそうもいかないんでしょうね。僕はヒューマンマネジメントは自分の仕事の2割程度です。
VPoEがいないので、リーダー4、5人が分散してメンバー5、6人を見ている感じですね。
採用はまた完全に別の人が担当しています。とにかくマネジメントの時間は節約して開発を進めている感じですよ。
というのも、例えば技術的負債の解消などの大きなテーマがあったときに、50人規模の会社ならCTOがしっかりコミットした方がスケールするんです。これが100人規模になるとまた変わってくるとは思うのですが、50名でサービスが2つ、それぞれ20人程度のエンジニアがいるような状態なら、どんどん自分が意思決定をした方がいいんですよね。

CTO

自分自身のスケジュールもマネジメントが必要


伊藤:時間をどう作るかのスケジュールについても質問が来ていますがどうですかね?
僕は放っておくとどんどんミーティングで予定が埋まってしまうので、意識的に時間を空けています。
これは当社の代表の影響です。彼はボストン・コンサルティング・グループ出身のスーパービジネスマンなのですが、過密スケジュールかと思いきやカレンダーはいつも空いていてデータサイエンスや機械学習なんかをやっているんですよ。
僕より明らかに業務量が多いのに。こんなにすごい人でも時間は作れるんだという衝撃を受けてしまって。

藤本:僕もスケジュールは半分埋まっているかどうかという感じです。

伊藤:自分の時間をコントロールするのもマネジメントスキルの一つだと思いますよ。以前は大事な話だけにフォーカスする取捨選択ができていなかったので、会議をどんどん入れてしまっていました。

藤本:ミーティングが入っていたら仕事をしているように見えてしまうのもあまり良くないですしね。

CTO 右側から:
ヤフー株式会社 取締役 常務執行役員 CTO 藤門 千明さん
ファシリテーター 株式会社 一休 執行役員CTO 伊藤 直也さん
グリー株式会社 取締役 上級執行役員 最高技術責任者 藤本 真樹さん
株式会社メルカリ 執行役員CTO 名村 卓さん

最高技術責任者、CTOとしての経営への関わり方

言葉を尽くして技術に関して説明するか、信頼感を高めて任せてもらうか

伊藤:次は経営の関わり方についても質問が来ているので聞きたいのですが、みなさんは経営にどう関わってますか?

藤本:経営会議に出ていますよ。基本的におまかせすることが多いですが、技術や組織の方向性について自分の観点でまずいと思うときは、率直に「それはやめてほしい」とも発言します。とくに、なにかを逆にやらない選択をするのも大事なんで、そいうときとか。

伊藤:具体的には、どういうことですか?

藤本:グリーはいろいろな事業を手掛けてきた結果、おかげさまで運良く伸びてきた会社ですが、今個人的に意識しているのは勝つべくして勝つことかなーと思ってます。次は何を目指すのか、明確なビジョンを持ってフォーカスするなら不要なことはやらないと決めなければならないんです。
できるだけ自由な雰囲気は損なわないようにしつつも、やるべきことに集中していこうと意識しています。

藤門:経営との関わり方で一番重要視しているのが、事業戦略を一緒に決めることですね。
事業サイドが決めたことをエンジニアが請け負って進めるというのは一番嫌な構図ですから。
役員と週に1回は一緒にランチを食べに行って戦略を語り合いますし、経営会議でも積極的に意見をぶつけます。
また、役員に技術者ではない人が多いので、業界の状況や今後組織に求められる技術についてわかりやすく伝えるという部分には一番時間をかけています。例えばマイクロサービスなんかもすごく簡単な言葉で説明するんです。「小さく早く作った方が手戻りは少ないですよね」と。大体納得してもらえます。

名村:メルカリは経営陣が企画をすぐに理解してくれるので、マイクロサービスの採用を提案したときも二つ返事でOKだったんですよ。
でも、逆にそれを現場に落とすのが大変で。エンジニアから「何でマイクロサービスなんですか!?」と言われました。エンジニアを説得する方が難しいです。

伊藤:うちはあまり説明していません。以前は結構やっていましたけど。最近はどちらかというと「直也さんがやらないといけないと言うならそうなんだろう」と言ってもらえるように日々活動している感じですね。
信用してもらうことを重視しています。


後編に続きます>>
【CTOmeetup】CTO・テックリードのその先は…~マネジメントと技術の組み立て~(後編)
最前線を走るCTOの本音




この記事を書いた人
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