プロダクトマネージャー・プロダクトオーナー・スクラムマスターとは?それぞれを経験しているFABRIC TOKYOの渡辺さんが定義と役割を解説

エンジニア、デザイナーらが属する開発組織とプロダクトマネージャーやプロダクトオーナーが関わる時に、「開発ディレクターとどう違うのかわからない」「なんだか上手く機能していない」ということはありませんか?

また、現在注目度が高い開発フレームワークとしてスクラムが挙げられますが、そもそもどのように浸透させていけばいいのか、スムーズな実施には何が必要なのかがわからず、とりあえずスクラムで定義されているミーティングを開催しているだけになっていないでしょうか。「スクラムマスター」の存在価値が気になる方も多いはずです。

FABRIC TOKYOの渡辺さんは、プロダクトマネージャーは、スクラムのプロダクトオーナーとスクラムマスターの機能性を兼ね備える存在と考えているそうです。プロダクトマネージャーが、スクラムでいうプロダクトオーナーであり、またスクラムマスターとしても機能している。果たしてそれはどういうことなのか、現役プロダクトマネージャーであるFABRIC TOKYOの渡辺さんにお伺いしました。

各用語の定義と共に、FABRIC TOKYOでの渡辺さんの役割も詳しくお伺いしました。

FABRIC TOKYO 株式会社FABRIC TOKYO システム開発部 渡辺 泰将さん
NTT西日本、NTT、株式会社TIMERSでの経験を経て、2019年から現職。プロダクトマネージャーとしてプロダクト開発を行なっている。認定スクラムマスター(CSM®)及び認定プロダクトオーナー(CSPO®)の資格を持つ。

スクラムをスムーズに機能させるためのスクラムマスター

―――まずは、スクラムについて教えてください。

スクラムはアジャイルな開発フレームワームの一つで、現状を把握することに長けたフレームワークです。多くの人間に予知能力はありませんから、たとえ一定の予測はできたとしても、事業やプロダクトが当たるのかどうかを確実に知ることができません。ですから、まずは仮説を立てて実行し、上手くいくかどうか試すことになります。その時に必要なのが、「より素早く現状を把握すること」です。スクラムは、不確実な未来に対して、現状を把握しながら一つずつものごとを改善して進めていこう、という考え方のフレームワークなのです。

有名な開発手法にウォーターフォール型がありますが、実運用で多く見られるウォーターフォールでは、最初に勘と経験で未来を予測して設計し、開発、テスト、リリースを行います。つまり、予言した計画にひたすら従って開発することを求めるプロジェクト管理手法なので、背景にある考え方がスクラムとは真逆です。

―――具体的にスクラムではどのように開発を行うのでしょうか。

スクラムの三原則として、透明性・検査・適応があります。

【スクラムの三原則】
・透明性 → 現状を把握する前提
・検査 → 現状の良し悪しを把握すること
・適応 → 把握した良いものを定着させ、悪いものを乗り越える動きをすること

スクラムでは、まずはスプリント(1~4週間のタイムボックス、時間制限)を定義し、そのスプリントで何をするのかについて計画を立てます。その中で透明性を保持して現状を把握しながら、検査と適応を繰り返すことになります。

当社の場合は2週間を1スプリントとしていて、スプリントの最初にスプリント計画を実施し、「なぜ、何をするのか」を定めた企画から具体的な開発項目へと落とし込み、開発を進めていきます。1スプリントの中でDaily Scrumで前日と当日の進捗、困っていることを共有することで、細かく検査と適応を行っていきます。
1スプリントが終了したら、スプリントレトロスペクティブ、すなわち振り返りを行います。チームは計画したゴールを達成できたのか、もっと効率的にできる部分はないかなどを議論し、次回のアクションに反映するというのが大きな流れです。

スクラム

――では、スクラムマスターはどのような役割を持つのでしょうか?

スクラムマスターは文字通り、スクラムをマスターした人のことです。上記にご説明したようなスクラムの考え方に対する周辺理解を得て、組織がスクラムが活用できる状態にする責任があります。スクラム導入時に「なぜスクラムが必要なのか?」「なぜ仕事の仕方を変えなければならないのか?」と疑問に思うメンバーがいるとすれば、まずはスクラムの意義を知ってもらう必要があるということです。

ただ、考え方や意義を理解したからと言って、すぐにスムーズにスクラムを実行できるとは限りません。そこでスクラムマスターは、スクラムがきちんと機能するように、さまざまなアクティビティを通じてチームづくりを行います。例えば、スプリント計画を決める会議のファシリテーションであったり、メンバーの教育やサポートなども役割の一つです。

スクラムマスターの資格取得プロセスと利点

―――スクラムマスターの資格についての概要と、渡辺さんが資格を取得した背景を教えてください。

スクラムマスターの認定資格はScrum AllianceかScrum Inc.のいずれかで取得できます。私が取得したのはScrum Allianceの認定資格です。プロダクトオーナーの資格もScrum Allianceで認定されたものです。

資格を取得したモチベーションとしては、前職でスクラムを導入することになったのがきっかけでした。導入以前もスクラムやアジャイルらしきものを実践をしてはいたのですが、どうも上手くいっているという実感がなかった。そこで、スクラムを実践できるよう認定スクラムマスターの資格を取ろうと思い至ったわけです。

スクラムマスターの認定は、研修トレーニングを三日間受け、トレーニング中に一定のパフォーマンスを発揮し、評価されることに加え、テストに合格することで認定されました。プロダクトオーナーの資格の場合は同じく三日間の研修を受けますがテストはなく、パフォーマンス評価によってのみ認定されるものでした。

スクラムマスター認定資格機関
Scrum Alliance https://www.scrumalliance.org/
Scrum Inc. https://scruminc.jp/


―――スクラムマスターの資格が、普段の仕事の中ではどのように役立っていますか?

認定資格自体は役に立たないのですが、資格取得のための研修トレーニングを経て得た、マインド面での変化が大きいですね。資格取得のための研修トレーニングは楽しいけれど厳しくて、普段のプロダクトやチームへの関わり方を深く考える機会になりました。

とはいうものの、トレーニング中は考えが及ばぬ部分や不安な部分もあり、講師に質問をします。すると、方向性や考え方を提示してもらえるわけですが、「先生に教わらなくても自分でよく考えればわかったじゃないか」ということにも同時に気づかされるのです。つまり、自分が考えきれていなかったとわかってしまいます。となれば、その有様はチームや企画に対して怠惰であったと言わざるをえません。困難を感じた際に「それは自分が考えきれていないだけなのでは?」と自問できる精神性が身についたのは、非常に大きなメリットでした。

「ROIの最大化」がプロダクトオーナーの目的

―――続いて、プロダクトオーナーとはどのような役割なのでしょうか?

「オーナー」という言葉の響きから、事業部長や事業責任者のような「偉い人」のポジションと思われがちですが、実態は異なります。スクラムにおけるプロダクトオーナーの役割では、プロダクトオーナーは「ROI(Return on investment)を最大化する責任を持つ人」です。ROIとは、投資対効果のこと。身近な部分で言えば、エンジニアやデザイナーの人生の一部を捧げてもらうこと、サーバーやAWSなどの維持費がわかりやすい部分です。
組織はさまざまな投資を行なってプロダクトを開発し、それをお客様に提供したり、実際にユーザーに使ってもらうわけですが、それらを通じてユーザー課題が解決されたり、結果的に収益が伸びたりすれば、リターンを得たことになります。事業やプロダクトを取り巻くすべてのリターンを、いかに少ない投資で実現し、ROIを最大化するか。これを追うのがプロダクトオーナーの役割です。よくあるコスパや費用対効果といった話とは少し違います。

―――開発費用以外も投資に含まれるのでしょうか?

はい。例えば、スタートアップの創業者が、エンジニアを雇い入れて自分自身は開発をしないとします。この場合、創業者は問い合わせ対応やオペレーション、資金調達といった形で何かしらの行動をすることになりますが、これもプロダクトを成長させていくためのインベストです。
マーケティング費用なども投資ですが、マーケティングをせずに集客ができるのなら、これはROIが高いということになります。ROIを最大化するという点では、必ずしも開発の話だけには留まらないのです。

非常に幅広いプロダクトマネージャーの責任とロール

―――では、渡辺さんが現在担っているプロダクトマネージャーの役割とは何でしょうか?

プロダクトマネージャーは、愛されるプロダクトを作るために「何をするのか、なぜやるのか」を定義する役割です。実業務としては、企画をまとめ、開発チームが解決する課題を定めるといった動きをしています。弊社の場合だと、ITシステム以外にもスーツやシャツといった商品そのものや店舗での体験といった領域もあるので、システム開発だけではなく、商品開発や店舗での動きについても課題を提起していきます。

ただ、これは弊社の場合であって、実態は企業によってバラバラですね。例えば、今まではWebディレクターとしてWebサイトのページ制作のディレクションしていたような人が、時代に合わせてプロダクトマネージャーと呼ばれていることもあります。プロジェクト管理をしているプロジェクトマネージャーが、なぜかプロダクトマネージャーになっていることもあるでしょう。ただ、本来の定義からすれば、プロダクトマネージャーは、ディレクションは開発チームで任せ、プロジェクト管理はチームで自走できるような環境にしていくことが望ましいでしょう。

私が実現したいと考えているプロダクトマネージャー像は、プロダクトオーナーとスクラムマスターの機能性を兼ね備えた存在です。これは欧米におけるプロダクトマネージャーへの憧れも含んでいます。欧米でプロダクトマネージャーが持つべき一般的なスペックは、大学院卒以上でコンピューターサイエンスの学位を取得しており、なおかつMBA並のビジネスに対する知識や能力、経験を持つことです。非常にハイエンドなロールなんです。プロダクトマネージャーはプロダクトのミニCEOだという言われ方もします。

実際、企業の立ち上がり当初は社長がプロダクトマネージャーであることが多いのですが、会社規模が大きくなれば社長一人ではプロダクトを見ることができなくなり、プロダクトマネージャーに任せることになります。
そうなると、ミニCEOたるプロダクトマネージャーは、プロダクトオーナーとスクラムマスター、両方の機能性、それを実現する能力が求められます。プロダクトのROIを高めると同時に、会社の仕組みや組織づくりも行うのがプロダクトマネージャーだということです。

Tips: プロダクトマネージャーの正しい略称は?
プロダクトマネージャーには実はPMとPDM、2つの略し方があります。プロジェクトマネージャーの略称もPMとされることが多いため、区別する意味でPDMと呼ぶことがあるのです。


―――プロダクトマネージャーのやりがいは何でしょうか?

責任が重い大変な仕事ではありますが、だからこそ楽しい側面はたくさんあります。
プロダクトマネージャーは自分でお客様の声を確認し、開発や部署間の連携、サービス全体のことを考えながら、大きな意思決定をするための議論や情報収集を重ねます。その結果、出荷したプロダクトが成功すれば、お客様に喜んでもらえたり、チーム自体も育っていく。そういった流れ全般にインパクトを持てるということは最高です。今のところ、これ以上楽しい仕事はないので、自分の今後のキャリアとしては、プロダクトマネージャーの道を突き詰めていきたいと思っていますね。

現役プロダクトマネージャーの実際の開発の進め方

―――渡辺さんは、現在プロダクトマネージャーとしてどのように開発と関わっているのでしょうか?

現在注力しているのは、ECサイトの導線改善です。Google Analyticsやヒートマップ系のツールを利用して、定量的にお客様が困っているであろうポイントを導き出したり、店舗やCSとのコミュニケーションを通じて、お客様のペインを探ります。お問い合わせの対応に時間がかかっているようであれば、そこを改善するのはお客さんだけでなく社内にもメリットになりますから。
ただ、実際に開発を行うとなると、修正・改善が簡単なものから難しいものまでさまざまです。ROIにも関わる問題ですが、現状の課題をどの優先度で取り組むか、何をもって解決するのかを開発チームと相談して、まずはインパクトが大きく、なおかつ素早く提供できるものから進めるようにしています。

UI 株式会社FABRIC TOKYO

―――今年はオーダーメイドスーツ以外にもポロシャツを新発売されたそうですね。

夏にセットアップでスーツを着られる方は多くないので、夏のビジネスウェアとしてのポロシャツを販売開始しました。ユーザーインタビューやアンケートを行い、夏のビジネスウェアはどうあるべきか、ポロシャツのどんなことに困っているかなどを調査し、課題を見つけ、その解決策として作られた商品となります。

具体的には、ビジネスウェアなのでキレイめに見えること、サイズ感が合っていること、メンテナンスが楽であること、2~3年は着られる耐久性があることなどが課題としてピックアップできたので、これらを叶えたポロシャツになっています。ボタンは貝ボタンがいいかプラスチック製がいいかといった細かなところまで、さまざまなチャネルでアンケートやインタビューを実施して決めていきました。

特にサイズの問題に関しては、弊社がすでにお客様の体型データを持っていることを利用して、新たなサービスを開発しました。「サイズマッチングテクノロジー」と呼んでいるのですが、一度店舗で測っていただいたデータを基に、お客様にフィットするポロシャツのサイズを自動判定してくれるものです。

株式会社FABRIC TOKYO 上図:お客さまが自らサイズを選ばずとも自動的に最適サイズが提案される(サイズマッチングテクノロジーの結果)

このサービスの実装に際しては、そもそもお客様がサイズ感に悩みがあるのはメーカーごとに型のサイズが違うからで、自分で最適なサイズを探すのが大変だからという前提がありました。

だとすれば、サイズマッチングテクノロジーでお客さまの課題を解決できると仮定し、開発を推進していきました。もちろん組織的な意思決定において、開発投資の妥当性を示す論理的な根拠や情緒的価値の背景をきちんと伝える必要があります。そういったその合意形成の責任を担うのも、プロダクトマネージャーの役割ですね。

株式会社FABRIC TOKYO

――御社のCTOである中筋さんのインタビューでは、中筋さんが会社のロードマップを引いているということでした。渡辺さんと業務はどのように切り分けているのでしょうか?

中筋が会社としての中長期開発ロードマップを決める、つまり最もインパクトの大きい開発投資のオーナーシップを持つ中で、現時点での私はその中でロードマップのテーマに応じた領域で企画立案を進めていきます。

中筋はCTOとしての機能性としてプロダクトの全体像を見ていますし、当然意見も想いも持っています。ですから彼と会話しながら、プロダクト開発を進めていますね。この動きはステークホルダーとの合意形成を通じてプロダクト開発を推進する、プロダクトオーナー的な動きです。

スクラムマスター的な動きで言えば、開発チームが成長していけるように振り返りのファシリテーションを行なったり、どのような改善方法があるのかをメンバーに紹介するなど、チームビルディングを支援するのが私の役割です。


この記事を書いた人
加来麻衣子
加来 麻衣子
flexy マーケティング
ハイスキルのエンジニアやCTOの方にインタビューしたり、flexyメディアの記事を書いています。 〜プロフィール〜 上智大学卒。オーストラリアからの帰国子女。日本の大手人材会社を退社しWebデザイナーに転向した後、ハワイに渡米。31歳でハワイ現地法人を設立。代表取締役として、ワイキキビーチ近くでリテールストアーの運営しながら、海外進出企業コンサルティング、グローバル人材育成をハワイのオアフ島にて行う。帰国後、サーキュレーションに参画。

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