【CTO×VPoE対談】ロコガイドが目指す「ユーザーファースト」なエンジニア組織とは?

チラシ・買い物情報サービス「トクバイ」や、店舗や施設、自治体の窓口等の混雑状況を表示する「混雑ランプ」などを提供している株式会社ロコガイド。今回は取締役CTOの前田さんと、2020年4月に新たに執行役員VPoEに就任した小川さんのお二人の対談形式でインタビューを行いました。

同社のサービス内容に加え、お二人が地域に住む人たちの暮らしに対してどのようなビジョンや課題を持っているのか、さらにエンジニアの市場価値を高めるための考え方にも注目です。

写真右:取締役 CTO 前田 卓俊さん 高校卒業後医療情報システムの構築・導入を行うSIerで経験を積み、スタートアップのCTOとしてWebエンジニアのキャリアをスタート。事業売却を経て同CTOを退任後、クックパッド株式会社に入社。有料会員事業の開発、トクバイ事業(当時買物情報事業)の開発統括、開発部長を経て、2016年より株式会社ロコガイド取締役CTOを務める。 写真左:執行役員 VPoE 小川 伸一郎さん 大学院で理論物理を専攻し博士号を取得後、Web制作会社、Webサービス会社にて受託業務からサービス開発まで幅広く経験。クックパッド株式会社では人事部でエンジニアの採用と評価の責任者を務める傍ら技術部の部長も兼務。2016年10月に独立し、レジャリーワークス合同会社を設立。株式会社タレンティオのCTOを経て、2020年4月に株式会社ロコガイドの執行役員VPoEに就任。以降も複数の企業の技術顧問としてエンジニア採用や組織についてのアドバイザーとして活動。オープンソース活動やRubyコミュニティ活動も積極的に行っている。

紙媒体に偏在する地域情報をデジタル化し、地域の暮らしをもっと便利にしたい

―最初に御社の概要について教えていただいてよろしいでしょうか。

取締役 CTO 前田 卓俊さん(以下、前田):メインでご提供しているのは「トクバイ」というチラシ・お買い物情報サービスです。スマホの登場で新聞の購読部数は年々減少しているのですが、新聞購読はやめてもスーパーやドラッグストア、ホームセンターのチラシを見てお得に買い物をしたいというニーズは根強く残っています。トクバイはそういったユーザーに向けて、日々のお得なお買い物情報を提供しています。

普通のチラシは印刷や配達のコストが多くかかるのが通常なのですが、トクバイは月額5000円の定額制で、店舗の方が商品情報を登録することで自由に情報発信できます。情報のマーケットプレイスのようなものですね。

以前は会社名もサービス名と同じ「株式会社トクバイ」だったのですが、1年前に現社名の株式会社ロコガイドに変更しました。トクバイはローカル性が強い情報と買い物という2軸で立ち上げたサービスですが、以前から地域には他にもネット上には発信されていない情報が大量にあると感じていました。具体的にはローカルなイベントや、新しいお店の開店情報、クチコミなど、知ると生活がより豊かになる情報はまだまだアナログな形でたくさん眠っています。

そんな人々の行動や生活が変わるローカル情報をインターネット上にリアルタイムに流通させ、プロダクトを人々の生活に寄り添った総合情報サービスに進化させたい。地域全般にまで事業ドメインを広げ、企業ミッションである「地域のくらしを、かしこく、たのしく」を実現したい。そんな思いで社名を変えました。

―「混雑ランプ」のサービス強化にも力を入れているそうですが、これはどういったものですか?

前田:コロナの状況下で人々の気にかかる一番大きな要素が、「どれだけ混雑を避けて行動できるか」です。日常の中でも、電車に乗ったときの過密具合に対する嫌悪感は大きく変わりましたよね。お店や施設の方から見ても、どうやって混雑を緩和し、お客様に安心してご来店・ご来場いただくか、また従業員にも安心して働いてもらうかが直近の大きな課題になりました。

こういった状況に対して、廉価に導入でき、簡単に混雑を可視化できるサービスとして提供しているのが混雑ランプです。信号機と同じ赤青黄の3色で混雑具合をリアルタイム発信し、トクバイ上や店舗、施設のアプリ、Webサイトなどに表示できます。赤は混雑、黄色はやや混雑、青が空いているという感じです。

現在では日本全国の小売店舗のほか、浜松市や和歌山市、富士市、岐阜市など複数の自治体の窓口、さらには温泉施設や水族館など観光施設、スタジアムなど多様な施設での利用も進んでいます。

執行役員 VPoE 小川 伸一郎さん(以下、小川):混雑ランプを利用してくださっているある施設では、導入前に1日100件も混雑状況の問い合わせ電話がかかってきていたそうで、担当者の人が参ってしまっていました。それが混雑ランプにより混雑状況の発信をすることで、今ではかなり軽減されています。 混雑ランプが広く受け入れられているのには理由があると思っています。店舗や施設の方々には「ボタンを押すだけで信号が点灯する」という簡単かつシンプルな操作性が評価いただいているポイントだと思います。一方、ユーザーにとっては「誰でもが一目でわかる信号機」のモチーフであることが好評いただいているポイントでしょう。混雑状況を知らせるためには、カメラや画像認識によるソリューションを提供する方法もありますが、サービスを使う店舗や施設の方々にとってもユーザーにとっても、「とにかくシンプルかつ簡単にしないとわかりづらくて使われない」という当社代表の強い思いがあり、それを徹底的に重視しました。結果的に他社との差別化にもなりますしね。

クックパッド時代から馬の合うコンビが7年越しにタッグを組んだ

―お二人はもともとお知り合いだったそうですが、どのような経緯で一緒に働くことになったのでしょうか?

小川:初めて会ったのは2013年です。僕はクックパッドに所属していて、面接を受けに来たのが前田君でした。当時、彼は21歳とかなり若くてなんだかチャラそうな印象だったのですが(笑)、良い人材だと感じたので採用しました。前田君が入社したのは社員旅行の日で、たまたま機会があって少し喋ってみたら、意気投合したんです。それ以来、ほぼ毎月一緒に飲みに行く仲でした。 僕がクックパッドを退職することになったのが2016年で、その後は起業を経てタレンティオのCTOを務めました。一緒に働くことになったのは、前田君に転職を考えていることを話したら「ロコガイドに来ないか」と誘われたのがきっかけですね。そのまま入社しても良かったのですが、いろいろな会社の状況や自分の市場価値も確認したかったので、合計20社ほどを見て回ってから最終的にロコガイドへの就職を決めました。

―20社も!その中でロコガイドが魅力的だったのはどんなところですか?

小川:僕はこれまでゼロからエンジニア組織を作ったことがありますし、50人程度の組織が100人規模にまで成長するフェーズも経験してきました。ですが、ロコガイドにように上場前後の段階でエンジニアが10~20人から50人ほどにまで増えるような組織はまだ経験したことがなかったというのが理由の一つです。また、僕自身は京都の山科という田舎の出身なのですが、たまに帰省するとそのたびにどんどん寂れて、昔通っていたお店などがマンションになっていく様を見ていました。もっと地域が活性化してほしいという思いがあったんです。

このように組織のフェーズ、仕事のしやすさ、事業内容などの諸要素を総合的に見た上で、自分の次のキャリアとして選びました。

ビジョンを打ち立てるCTOと下地作りを担うVPoEの役割分担

―小川さんが入社する以前、会社としてはどのような課題があったのでしょうか?

前田:ロコガイドが提供しようとしているのは、地域の方一人ひとりの生活に寄り添ったコンシェルジュのようなサービスです。地域の方一人ひとりの生活はとても幅広く様々で、自ずとサービス数も非常に多くなることは明白ですし、さまざまな技術的要素も必要です。あわせて、当社は事業を行う上で大切にしていることの一つとして「ユーザーファースト」を掲げているのですが、その基準は「大切な人に勧めたくなるサービスを作れているかどうか」です。つまり、「数多くの良いサービスをスピーディにリリースするために、開発速度を上げること」が常に重要な課題の一つとなっていました。

しかしながら一方で、以前僕は企画部門の部長を兼務しており、プロダクトの戦略にリソースの9割を割いていたため、エンジニア組織を成長させるための採用や育成、評価に全く手が回っていなかったんです。

小川にはこういった状況と具体的な課題を話して、開発スピードを上げるためにぜひ助けてほしい旨を伝えていました。

―では、実際に小川さんが入社してからCTOとVPoEでどのように役割分担をしているのでしょうか?

前田:僕は今技術本部の取締役本部長を務めていて、同じ本部の執行役員副本部長が小川です。その下に開発部、技術部、ITシステム部の3つの部署があり、僕はITシステム部で社内の情報システムやマネジメントを、小川は技術部でインフラの実務遂行を見ています。

また、本部としての動きなど大枠の技術戦略は僕が担当していて、エンジニア組織の開発強化、採用・育成などの制度設計は小川が担っている状態ですね。

ただ、どちらかに役割を丸投げするというよりは二人三脚で動いている部分が強いかもしれません。

小川:ものごとを一緒に考えはしますが、例えば採用の戦略に関しては完全に僕が主導しています。組織構造を今後どうしていくべきかという案出しも僕の役割です。

例えるなら、三国志の劉備と孔明のような感じでしょうか。前田君はひたすらカリスマを持ってビジョンを打ち立て、僕がその下地作りをするような分担が好ましいのかなと思っています。

「ユーザーファースト」を実行できるプロダクト思考のエンジニア組織

―現在採用はどのように進めていますか?

小川:アプリケーション開発のために、Railsが書けるエンジニアを募集しています。ただ、今後の技術方針としては領域ごとにアプリケーションを分断していこうとしているので、GoやKotlinの利用も選択肢に入れています。実際、ダイレクトスカウトではRails未経験者でも声を掛けていますね。

―採用したいエンジニア像があれば教えてください。

小川:社内では技術に特化するよりも、きちんと良いサービスをユーザーに届けたいという人がほとんどです。逆に、その意識が強くなければユーザーファーストにはなれません。

採用するのも、例えばインフラなどユーザーの目に見えない部分に対しても、きちんとユーザーのためのサービスを作っている会社に貢献したいという思いのある方が望ましいです。

前田:ユーザーである生活者と、店舗や施設で僕らのサービスを使って情報発信をする方々双方について、注意深く洞察しながら「こうなると便利だよね」と一緒に議論して改善を積み重ね、ゴールに向かっていける方がいいですね。それがプロダクト思考です。社内でも自分たちが実現すべきことに対する議論は非常に活発です。

ものごとへの洞察がエンジニアの市場価値の向上につながる

―プロダクト思考やユーザーファーストという視点から、お二人が考えるエンジニアの市場価値についてお聞かせいただけますか?

前田:誰かの困りごとを、技術力を用いて解決し続けることが自分の市場価値を高めるために非常に重要だと思っています。そうなるためには、身近な人が困っていることがないかについて常に目を配り、あるとすればなぜ困っているのか、あらゆる事柄を洞察しなければいけません。

もちろんさまざまな言語や技術要素、ベストプラクティスを学び、設計する手法を身につけるのも市場価値を伸ばす上では大切です。ですが、問題解決のために必ずしも流行っている技術を用いる必要はありません。現実にある問題をしっかり洞察した上でベストなソリューションを提供し続けることができるなら、どんな状況下でも価値を発揮するエンジニアになれるはずです。

ロコガイドとして自社のエンジニアに提供したいキャリアも、そういった方向性です。問題を解決するための本質を捉える力を身につけられる環境を作っていきたいと思っています。

小川:「プロフェッショナルであれ」ということですよね。あと、エンジニアは知的好奇心が旺盛でなければいけないと思います。一つの技術しか知らないと一つの回答しか見つかりませんが、複数の視点があれば複数の異なる解法が出てきますからね。

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