Rustとはどんなプログラミング言語?使いどころと将来性を徹底解説
Rustは、性能やメモリ安全性、安全な並行処理を重視したプログラミング言語として注目を集めており、近年では需要の高まりを受けて、Rustのスキルを持つエンジニアの活躍の場が増加しています。
Rustの特徴やメリット、開発に適している領域について詳しく解説します。
目次
Rustとは性能・メモリ安全性・安全な並行性を重視したマルチパラダイム言語
Rustは、高い処理性能を発揮しながら、厳密なメモリ管理と安全な並行性を同時に実現可能にしたマルチパラダイム型のプログラミング言語です。CやC++からの置き換えを想定しており、構文はC++に近いため、従来の低レベル言語に慣れた開発者でも比較的スムーズに移行できます。
また、メモリアクセスの不正使用を防ぐために、ボローチェッカーと呼ばれる仕組みを組み込んでおり、メモリリークなどの問題を未然に防ぎやすいことが特長です。
Rustが人気な理由とは?特徴・メリットを紹介
Rustが近年注目を集めている理由は、優れたパフォーマンスを維持しつつ安全性と並行性を確保する複合的な特徴が、多様な開発領域で実用的な選択肢になっている点にあります。
近代的なシステム開発においては、低水準での細かいメモリ制御が求められる一方で、安全で保守性の高いコードが重視されます。Rustはこれらのニーズに対し、厳格なコンパイル時チェックやゼロコスト抽象化を組み合わせることで応え、結果的に開発生産性と堅牢性を両立しています。
以下では、Rustが持つ主な特徴とメリットを解説します。
- メモリの安全性が高い
- 処理速度が速い
- 並行処理ができる
メモリの安全性が高い
Rustは、メモリの安全性を特に重視して設計されたプログラミング言語のため、所有権や借用、ライフタイムといった、ほかの言語にはない独自の概念に基づいたシステムを採用しています。これらの仕組みは複雑に見えるかもしれませんが、プログラムの安全性を確保するために重要な機能です。
例えば、所有権システムはメモリリークを防ぎます。また、借用とライフタイムのシステムは、不正なメモリアクセスやデータ競合などの、発見が難しいバグの発生をコンパイル時に防止します。このように、Rustで書かれたプログラムは、実行時にメモリ関連のエラーでクラッシュするリスクを大幅に低減できるのが特長です。
処理速度が速い
Rustは、CやC++同様に直接マシンコードへコンパイルされるため、ガベージコレクション(GC)を伴う高水準言語よりも実行時オーバーヘッドが小さく、高速な処理が可能です。また、ゼロコスト抽象化を積極的に導入している結果、高レベルな抽象表現を用いても低レベル言語並みの実行性能を保持できます。
これらの要素が相まって、Rustはシステムプログラミングや組み込み領域、パフォーマンス重視のアプリケーション開発に適した選択肢となっています。
並行処理ができる
Rustは、所有権と借用の仕組みを並行処理へ適用し、スレッド間でのデータ競合をコンパイル時に排除できるため、安全な並行処理を実現可能です。伝統的な低レベル言語では、データ共有によるレースコンディションやデッドロックが問題化しやすいですが、Rustは型システムとライフタイム管理を駆使したデザインでこれらを回避します。
結果として、複雑な並行性が要求される環境においても、信頼性と保守性を備えたソフトウェアを開発しやすくなっています。
Rustの欠点・デメリットはある?
Rustが魅力的な特徴を持つ一方で、特定の分野では開発が困難になる側面もあるため、その点を把握することが重要です。特にUI分野や学習コストなど、ある種の不便さやハードルは依然として存在しています。
以下では、Rustを利用する際に直面する可能性のある課題や弱点について解説します。
- UI開発には向いていない
- 学習難易度がやや高い
UI開発には向いていない
Rustは、システムプログラミング向けに特化した特性を備える一方、UIツールキットの設計モデルに馴染みにくく、コンポーネントツリーやデータ共有の表現が煩雑になる傾向があります。というのも、UIフレームワークが求める柔軟なツリー構造上での状態管理が、Rustの所有権システムと衝突しやすいためです。
UI領域においては、他言語と比べて開発の生産性が相対的に低下しやすいでしょう。
学習難易度がやや高い
Rustの所有権システム、借用、ライフタイムといった独特の概念を理解するには、慣れないうちは相応の時間と労力を要します。
静的型付けによる明確な型チェックは高品質なコードへ寄与する反面、動的型付け言語に慣れた開発者にとって柔軟性が低いと感じられ、初学者にはハードルとなり得ます。また、特定のタスクを実現するうえでの適切なコードパターンを身につけるまでには、経験を要するため、学習段階での苦労が発生しがちです。
Rustの使いどころ・用途
Rustは、多様な領域で信頼性と性能を両立しながら役立てられるため、幅広い分野で効率的かつ安全な開発を実現できます。Web、クラウド環境やOS、ゲームエンジンなど、要求仕様が厳しい場面においてもRustを使用することが可能です。
以下では、具体的な利用例を通じて、Rustが有するポテンシャルを解説します。
- システムプログラミング
- Webアプリケーションのバックエンド開発
- ゲームエンジンの開発
- OS開発
- クラウドプラットフォームサービス開発
システムプログラミング
システムプログラミング領域では、Rustはメモリ管理の明示性と高速な実行性能が重要視されるため、CやC++に代わる手段として有望です。
従来、デバイスドライバやOSカーネルなどの低レベル実装は、C系言語が主流でした。Rustならば、所有権システムによる安全性確保と、コンパイル時最適化による高パフォーマンスを同時に享受できます。結果として、システム資源を余すところなく引き出すことが可能となり、信頼性の高い組み込みソフトウェアや制御プログラムの実現が促進されます。
Webアプリケーションのバックエンド開発
Webアプリケーションのバックエンド構築においても、Rustは高トラフィック環境下での安定動作と低レイテンシを追求できるため適しています。Actix WebやRocketのようなフレームワークは、非同期処理を有効活用しつつ、コンパイル時に型安全性を担保できる点が特長です。
これによって、セッション管理やAPIレスポンスの提供などにおける効率性・信頼性・保守性が向上し、大規模なサービスでも安定的な運用が可能になります。
ゲームエンジンの開発
ゲームエンジン開発では、Rustはリアルタイム性と精密なメモリ管理が求められるため、有力な選択肢となり得ます。高度な物理シミュレーションやグラフィック描画は、所有権システムによる厳格なメモリ安全性確保と、ガベージコレクションレスによる低オーバーヘッドな処理が求められます。
これらの条件を満たすRustであれば、ゲーム中のパフォーマンス劣化やクラッシュリスクを低減し、ユーザー体験を向上できる可能性が広がります。
OS開発
OS開発分野でも、Rustは開発言語に適しています。実際にLinuxカーネルやAndroid OSの一部へRustが導入されている流れは、所有権と型システムを活用した安全性が評価されている証拠です。メモリアクセスの厳密な管理や型レベルでの不正操作防止など、OS内部で必要とされる信頼性確保が言語仕様によって支えられるため、結果として安定性の高い開発が期待できます。
クラウドプラットフォームサービス開発
クラウドプラットフォーム開発の領域では、Rustは大量のデータ処理や複雑な分散システムを高効率で安全に実装できる点から、注目度が増しています。
ネットワークトラフィックやスケーラビリティ、メモリリーク防止が重要視されるクラウド環境において、Rustはメモリ安全性と高速性能を武器に、セキュアなマイクロサービスやサーバレスでの構築も後押しするため、大規模インフラの信頼性向上と運用コスト削減が見込めます。
Rustの主なWebフレームワーク比較
RustのWebフレームワークは、高性能な非同期処理や型安全性を基盤として、高トラフィックな環境でも効率的な開発を実現できます。Webバックエンド構築にはスケーラビリティや堅牢性が重要視されますが、Rust製のフレームワーク群はコンパイル時の厳格なチェックを介して、メモリ安全性や実行速度を犠牲にせず高度なWebサービスを組み上げることが可能です。
Rustの代表的なフレームワークには、以下が挙げられます。
フレームワーク | 概要 |
---|---|
Axum | 非同期処理を前提としたモダンな設計を採用するため、シンプルなAPIと柔軟なミドルウェア管理が可能です。 |
actix-web | 高性能な非同期ランタイムであるactixをベースとしており、優れたスループットと低レイテンシを提供できます。 |
Rocket | 宣言的なルーティングや、型安全なリクエスト/レスポンス処理を強みに持つため、可読性と保守性の高いWebアプリケーション開発をサポートできます。 |
Rustの実践例
Rustは、実際のサービスやシステムで使用され、その信頼性や性能が実証されている言語です。さらに、大規模なデータ処理や分散システム構築にも有効であり、特定の課題解決においてCやC++、Goといった他言語の代替となるケースが増えてきています。
以下、実際にRustが採用されているプロジェクトの事例を紹介します。
- Discord
- Dropbox
- Redox OS
Discord
Discordは、リアルタイムで音声・テキストを用いたコミュニケーション基盤として、世界中で利用され続けています。メモリ安全性と性能改善を図るため、一部の処理ロジックをGoからRustへと移行し、並行タスクの安定性およびレスポンスの高速化を達成しました。これにより、高負荷環境でも安定稼働する優れたチャットプラットフォームの実装に貢献できます。
Dropbox
Dropboxは、世界中のユーザーが利用するオンラインストレージサービスであり、巨大なデータ管理を高効率に行うことが求められます。分散ストレージ「Magic Pocket」は、当初Goで書かれていましたが、高速な実行性能とメモリ安全性を求めてRustへ書き直された経緯がありました。結果として、大量のデータ処理やノード間通信が安定し、高スループットなデータアクセスが容易に維持されます。
Redox OS
Redox OSは、Rustのみで構築される新しいコンセプトのオペレーティングシステムです。型安全性や所有権システムを活用し、メモリ関連の不具合をコンパイル時に排除できるため、堅牢で軽量なOS基盤の確立が目指されています。まだ開発途上ながら、従来のOS設計を見直す実験的な場として、エンジニアから注目を集めているのも特徴です。
Rustに将来性はある?今後流行るか流行らないかを根拠とともに予測
Rustは今後、システムプログラミングやWeb開発、科学計算、クラウドインフラなど、広範な分野で普及が続く可能性が極めて高いと考えられます。その理由として、セキュリティ重視の世相や持続可能性を念頭に置いた開発指針が増えており、効率的かつ安全なメモリ管理を提供するRustが、その要請に応えられるからです。
実際、2024年度のStack Overflow開発者調査では最も愛される言語として選ばれており、安定的なエコシステム整備や導入事例の累積が、さらなる支持拡大を促すことが予想されます。
出典:2024 Stack Overflow Developer Survey _ Admired and Desired|Stack Overflow
出典:2025 年の Rust の未来 [トップトレンドと予測](和訳)|GeeksforGeeks
Rustの入門者向けに学習方法を具体的に紹介
Rustを初めて学ぶ場合、書籍やWebリソース、コミュニティへの参加など多面的なアプローチが有効であり、学習プロセスを効率化できます。特に、所有権システムや借用規則は独特な概念であるため、実践を通じて経験的に理解を深めることが重要です。
以下、具体的な学習手段について解説します。
- 書籍・参考書を利用する
- Web学習リソースを活用する
- 学習コミュニティに参加する
- ITスクールに通う
書籍・参考書を利用する
初学者向け書籍は、言語仕様や基本的な文法構造を理論的かつ段階的に示すため、Rust理解の基盤形成に役立ちます。『RustによるWebアプリケーション開発』など実用的な題材を扱う書籍であれば、開発プロセスを追いながらRustの特徴を整理可能なため、実務にも直結したスキル習得が期待できます。
Web学習リソースを活用する
Web上には「The Rust Programming Language」公式ドキュメントや「Rust by Example」といった、網羅性や実践性に富む無料リソースが整備されています。ドキュメントで基礎知識を得たあと、サンプルコードを自ら動かし、その挙動を確認しながら段階的に理解を深められるため、効率のよい学習方法です。
学習コミュニティに参加する
Rustコミュニティは世界的に活発で、公式フォーラムやDiscordといったオンライン空間で多くの開発者が交流しています。初心者向けチャンネルやフォーラムもあるため、経験が少なくても疑問を迅速に解決できるのが特長です。経験豊富な開発者からのフィードバックを得ることで、学習効率が飛躍的に向上し、より多角的な視点から問題を捉えられます。
ITスクールに通う
プロの講師から直接指導を受けたい場合は、オンラインだけでなく、対面式のITスクールもおすすめです。スクール内でほかの学習者と交流し、共同プロジェクトを行うことで、実務に近い環境下でRustのスキルを磨く経験が積めます。
Rustでのプログラミングスキルを身につけ案件を獲得しよう
Rustを習得することで、システムプログラミング、Webバックエンド開発、ゲームエンジン開発、OS構築など、多様な分野での活躍が可能です。特に、堅牢で高性能なアプリケーション開発が求められる現代において、Rustの知識は大きな武器になります。
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