SalesforceのApexとは? 開発言語の基礎を解説

Apex開発

アメリカのSalesforce社が提供するCRMシステム「Salesforce」は、営業やマーケティングにおいて広く利用されています。実はSalesforceでは「Apex」を用いた開発が行えます。本記事ではSalesforceのApexとは何か、基本からわかりやすく解説します。

ApexとはSalesforce専用のプログラミング言語

Apex(エーペックス)とは、Salesforce社が生み出した独自のプログラミング言語です。CRMシステムであるSalesforceのプラットフォーム上でのみ動作します。Apexを用いてプログラムを開発することで、Salesforce上で機能の追加やカスタマイズ、業務の自動化などが可能です。

Apexは2006年に発表され、その後しばらくして一般リリースされました。Salesforceが1999年に誕生したことを考えると、比較的初期から存在することがわかります。リリース以降も、後述する「Apexトリガー」など、さまざまな機能の追加やアップデートが行われてきました。

Salesforceは、営業やマーケティングでの顧客管理を最適化するCRMシステムのシェアで世界をリードしています。そのSalesforceを用いた業務の生産性を高めるApexは、Salesforceを利用する多くの企業にとって有用な言語といえるでしょう。

Apexの基礎知識・特徴

Apexの基本事項として、特徴を押さえておきましょう。Apexの主な特徴は、次の4つです。

Salesforce上での動作が前提

Apexで開発するプログラムは、Salesforceのプラットフォーム上での動作が前提となります。そのため、別のプラットフォーム上でApexプログラムを動作させることは基本的にできません。

Salesforceとの連携がしやすい

Salesforce上で動作させるため、Salesforceとの連携がしやすいといえます。例えば、Salesforceで管理しているデータへ簡単にアクセスすることが可能です。またSalesforceと連携するためのライブラリ(再利用可能なプログラムの部品)が充実しているため、プログラムの記述量を削減できます。

「Java」に似ている

Apexの文法は、定番のプログラミング言語「Java」に似ています。Javaは、システム開発やAndroidアプリ開発など、幅広い分野で高い需要をもつ言語です。Javaのプログラミング経験をもつ方であれば、比較的容易に習得できるでしょう。

オブジェクト指向

Apexは、Javaと同様に「オブジェクト指向」を適用できます。オブジェクト指向とは、人や物などを「オブジェクト」という単位で扱うプログラミング手法のことです。オブジェクト指向には、1つのひな型(クラス)を使いまわしてオブジェクトを生成できるなど、無駄を減らす仕組みが豊富にあります。そのため、規模の大きなプログラム開発でも効率的に進められるでしょう。

Apexと他のプログラミング言語との違いは?

他のプログラミング言語との違いを知ることで、Apexについてイメージしやすくなります。ここでは、Apexに似ている「Java」と比較した際の主な2つの違いを解説します。

大文字・小文字の区別がない

Apexには、大文字・小文字の区別がありません。例えば変数に名前をつける場合、「DOG」「Dog」「dog」はいずれも同じものと見なされます。一方、Javaの場合は大文字・小文字が区別されるため、それぞれ別の変数として扱われる点が大きな違いです。

ただし、ApexではJavaと同様の命名規則が推奨されています。具体的には「クラス(オブジェクトのひな型)の名前は大文字から」「メソッド(クラスがもつ操作や機能)は小文字の動詞から」といった命名規則が挙げられます。

予約語が多い

Apexには、Javaと比べて多くの予約語(プログラム上、特別な意味を持つキーワード)があるのも違いです。2024年7月時点で、Javaの予約語は約50個ですが、Apexには約120個もの予約語があります。これは、Apexが独自の機能を多数サポートしているためです。

例えば、「Apexトリガー」には「trigger」という予約語を使いますが、これはJavaだとサポートされていません。このように、Apexならではの多彩な予約語を使いこなすことで、さまざまな処理を実現できるのが強みです。

Apex開発でできること

Apex開発(Apexを用いた開発)でできることは、主に次の3つです。

Salesforceのカスタマイズ

Salesforceには営業やマーケティングに関するさまざまな機能があります。Apexによりプログラムを開発すれば、こうした標準機能のカスタマイズが可能です。

例えば、GUI(操作画面)の項目に独自の入力規則を追加し、入力内容が社内の運用ルールを満たさないときにエラーを表示できます。

ある程度のカスタマイズはSalesforceのGUIでも行えます。しかし、社内の業務フローに合わせた細かいカスタマイズは行えないケースが少なくありません。その点Apexを使えば、プログラムを駆使して複雑な条件や処理を含むカスタマイズでも実現できます。

新しい機能の追加

標準機能ではカバーできない要望を抱えている企業やチームもあるでしょう。そのような場合は、Apexによりプログラムを開発することで、新しい機能を追加することも可能です。新しい機能を追加することで、より企業のニーズに対応しやすくなります。

例として、「営業社員のデータと取引先のデータを突き合わせ、相性の良し悪しを分析できる機能」が考えられます。特定のデータを組み合わせたり、独自の画面を作ったりする場合、Apexを使うことで細かいデータ処理や制御が可能です。また、会計システムといった外部サービスとの連携も、Apexによって実現できます。

業務の自動化

Apexにより自動処理のプログラムを開発することで、業務の自動化が可能です。大量のデータをまとめて処理したい、決まった時間や業務時間外に処理したい、といったケースで役立ちます。

例えば、Salesforceにおける商談の進捗状況をもとにレポートを作成し、定期的に関係者へ送信することも可能です。レポート作成のように時間がかかりやすい業務を自動化することで、大幅な負担軽減・生産性向上につながるでしょう。

なお、プログラムを書かずにGUIで業務フローを自動化できる「Salesforceフロー」でも、業務の自動化は行えます。しかし、細かい作業だとGUIがサポートしておらず、自動化が難しいケースも少なくありません。その点Apexを使えば、さまざまな作業を柔軟に自動化できます。

Apex開発の将来性

Apex開発には、高い将来性があるといえます。CRM市場におけるSalesforceのシェアは非常に高く、その価値を高めるApexも需要の拡大が期待できるためです。Salesforceブログによると、Salesforceは11年連続でCRM提供企業の世界一に選出されています(2024年7月時点)。

出典:Salesforce、11年連続で世界No.1 CRMプロバイダーに選出 |Salesforce

このように、世界をリードしているSalesforceを効率化・自動化する上で、Apexは重要なプログラミング言語です。また、Salesforceは20年以上もの歳月を経た今でも進化を続けています。Salesforceの価値が高まるとともに、Apex開発の重要性もより高まっていくでしょう。

Apexの開発スキルを身につければ、Salesforceの導入やカスタマイズを支援する「Salesforceエンジニア」などのキャリアも視野に入ります。フリーランス向け求人サイト「フリーランススタート」によると、Salesforce案件の月額単価相場は約75.3万円(2024年7月時点)と高単価です。Apexの開発スキルを活かして好条件な単価を受注できれば、収入アップも目指せます。

出典:Salesforceのフリーランス求人・案件 | フリーランスITエンジニア向け求人・案件サイト【フリーランススタート】

Apex開発の学習方法

Apexの開発スキルを身につける場合、当然ながら学習が欠かせません。Apex開発の学習方法としては、主に次の2つがポピュラーです。

Apex開発やSalesforceに関する参考書を読む

Apexを用いたプログラミングなどを学べる参考書も存在します。1冊に豊富な知識の詰まった参考書であれば、パソコンを使わず体系的に知識を身につけられるでしょう。ただし2024年7月時点で、Apex開発に特化した日本語の参考書は少ないです。英語が得意でない場合は、Webサイトを活用しましょう。

Webサイトを活用する

SalesforceやApex開発について学習できるWebサイトを活用するのも効果的です。パソコンを用いて知識を得られるWebサイトであれば、プログラミングの実践学習を効率的に行えます。ただし、Webサイトによっては有料のケースもあるため注意しましょう。なお、Salesforce社公式の学習サービス「Trailhead」では、無料でSalesforceの前提知識からの学習が可能です。

Apex開発について学ぶ場合、Apexの文法だけを学ぶのでは不十分です。Salesforceの前提知識はもちろん、Salesforceのデータ操作方法などについてもしっかり学びましょう。

Apex開発について学べる資格:Salesforce認定資格

Apex開発のスキル習得や案件獲得を図る場合、資格取得を目指すのもおすすめです。資格対策の過程で、必要な知識を体系的に身につけられるでしょう。また、SalesforceやApex開発の実務経験が少ない場合、資格は案件獲得の上で頼れるアピールポイントです。

Apex開発を仕事にしたい方におすすめの資格は「Salesforce認定資格」です。Salesforce社公式のため信頼性が高く、公式の学習サービス「Trailhead」でも対策学習を行えます。試験区分はさまざまですが、Apex開発のスキルを証明する上では「Salesforce 認定 Platform デベロッパー」などが役立つでしょう。

Apex開発環境を構築する流れ

Apexに関わらず、プログラムを開発する上では環境の構築が欠かせません。Apex開発における環境を構築する流れは、大まかに次の5ステップです。

(1)Developer Editionのアカウント登録

Apexの開発環境にはいくつかありますが、無料で使える「Developer Edition」がおすすめです。公式サイトでご自身の情報を入力し、Developer Editionのアカウントを登録しましょう。

(2)Salesforce CLIのインストール

Apex開発にあたっては「Salesforce CLI」をインストールするのがおすすめです。ローカルPCとSalesforceのプログラム同期といった作業を、コマンドを用いて効率的に行えます。公式サイトからお使いのOSに合わせたインストーラをダウンロードし、インストールしましょう。

(3)テキストエディタのインストール

実際にApexのプログラムを記述する上では、テキストエディタを用います。なかでも、無料で使えて高機能な「Visual Studio Code」がおすすめです。Visual Studio Codeなどのテキストエディタをインストールし、プログラミングを行えるようにしましょう。

(4)Developer Editionの認証

Developer EditionでApex開発を行うために、Salesforce CLIのコマンドを用いて認証を行いましょう。Visual Studio Codeの「コマンドパレット」で「sf org login web –alias エイリアス名」のように実行すればOKです。ここで言う「エイリアス」は、開発環境に対してつける別名を指します。わかりやすいエイリアス名をつけておくと、長いIDの代わりにエイリアスで手軽にコマンドを実行できるようになります。

(5)プロジェクトの作成

Apex開発では、開発の成果物ごとにプロジェクトを作成することが一般的です。Salesforce CLIで「sf project generate –name プロジェクト名」のように実行し、プロジェクトを作成しましょう。作成したプロジェクトに対して、Visual Studio Codeを用いてApex開発を進めていきます。

Apex開発に関わる基礎知識

Apex開発に関わる基礎知識として、ここでは「Apexトリガー」「Apexクラス」「Apexバッチ」の3つを紹介します。

Apexトリガー

「Apexトリガー」とは、Salesforceにおける特定のデータ操作をトリガー(引き金)としてApexの処理を実行する機能のことです。例えば「商談の進捗が切り替わったときに関係者へメールを送信する」といった処理をApexトリガーで実現できます。

Apexトリガーの基本的な書き方は、次の通りです。タイミングは「追加・更新・削除の前か後か」を指定します。例として「before insert」とすれば、データの追加前に処理を行えます。

trigger トリガー名 on オブジェクト名 (タイミング) {
行いたい処理
}

Apexクラス

「Apexクラス」とは、Apexのオブジェクト指向において、オブジェクトのもととなる「ひな型」のことです。これは、一般的なオブジェクト指向のクラスと基本的には変わりません。フィールド(内部データ)やメソッド(操作や機能)をApexクラス内に宣言・定義できます。

Apexクラスの基本的な書き方は次の通りです。Javaの経験者であれば見慣れているでしょう。

アクセス修飾子 class クラス名 {
フィールドやメソッド
}

Apexバッチ

「Apexバッチ」とは、Apexを用いたバッチ処理(大量データの一括処理)に使える機能のことです。たとえば、大量の顧客データをまとめて処理したい場合などに役立ちます。

Apexバッチは、Apexクラスに「Database.Batchable」というインターフェース(クラスのテンプレート)を実装することで利用可能です。このインターフェースには、start()・execute()・finish()の3メソッドを定義する必要があります。行いたいタイミングに合わせて各処理を実装しましょう。書き方の例は、次の通りです。

public class バッチクラス名 implements Database.Batchable {

public Database.QueryLocator start(Database.BatchableContext bc) {
バッチ処理の開始時に行いたい処理
}

public void execute(Database.BatchableContext bc, List records) {
バッチ処理の本体(引数のリストを処理する)
}

public void finish(Database.BatchableContext bc) {
バッチ処理の終了時に行いたい処理
}
}

Apex開発の案件を獲得するには

Apex開発のスキルを身につけて収入アップにつなげたい方も多いでしょう。それを実現するためには勉強だけでなく、Apex開発の案件獲得方法も重要といえます。

好条件なApex開発の案件を獲得したい場合には、専門の案件紹介サービスを活用するのがおすすめです。なかでも「FLEXY(フレキシー)」にはハイスキルを活かせる高品質な案件が多数あり、Apex開発に関する案件も検索できます。身につけたApex開発スキルを活かして案件獲得・収入アップを実現したい方は、ぜひFLEXYに無料で登録し、自分に合ったApex開発案件を探してみてください。

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まとめ

Apex(エーペックス)とは、Salesforce社が生み出した独自のプログラミング言語です。Salesforceのカスタマイズや機能追加、業務の自動化を実現できます。Salesforceの進化とともに、Apex開発の重要性も高まっていくでしょう。

Apex開発スキルを活かして収入アップを図るためには、正しい方法でスキルを習得し、高品質な案件を獲得することが重要です。Apex開発について学習を始める方は、本記事の内容をぜひ参考にしてください。

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