Azure認定資格は、クラウド技術のプロフェッショナルであることを証明する強力な手段です。しかし、数多くの種類があるので何を受ければよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。本記事では、Azure認定資格の難易度や種類別の特徴、キャリアに応じたおすすめのロードマップなどを解説します。

Microsoft Azureの認定資格とは

まずは、Azure認定資格の基礎知識や、取得前に把握しておきたい注意点を解説します。

認定資格の概要

Microsoft社のクラウドサービス「Microsoft Azure」に関する知識とスキルを証明する資格が、Azure認定資格です。Microsoft Azureは2010年にサービスを開始し、現在ではクラウドサービス市場で大きなシェアを誇ります。

Azure認定資格はMicrosoft Certification Program（MCP）の一環として提供されており、初級（Fundamentals）、中級（Associate）、上級（Expert）の3つのレベルに分かれています。特定の役割や専門分野に応じてさらに細かく種類が分けられており、資格取得者はその分野での専門性を証明できるのが魅力です。

Azureについて一から知りたい場合は初級（Fundamentals）、実務経験がすでにあり実践的な知識やスキルを身につけたい場合は、中級（Associate）以上の取得を目指すのがおすすめです。

注意点：有効期限は1年

Azure認定資格のうち、基礎レベル（Fundamentals）の資格には有効期限がなく、一度取得すれば更新の必要もありません。他方、中級（Associate）と上級（Expert）の資格には有効期限があるのでご注意ください。

これらの資格は取得日から1年間のみ有効であり、期限が切れる前に更新試験に合格することで延長できます。

更新試験はオンラインで受験でき、費用はかかりません。試験内容はAzureおよび業界の最新の更新に関するものに絞られており、元の試験より簡易になっています。仮に有効期限内に更新しなかった場合は、正規の費用を払って一から試験を受け直すことが必要です。

出典：Microsoft 「資格証明の有効期限ポリシー」

【役割別】Azure 資格のロードマップ

Azure認定資格のうちどの資格を取得すべきかは、自分がどの分野の知識を身につけ、今後のキャリアをどう築いていきたいのかを考慮した上で決定しましょう。

以下では参考例として、組織内での役割別に資格取得に向けたロードマップを紹介します。

出典：Microsoft

ITシステム管理者の場合

ITシステム管理者としてキャリアを築く場合、以下の順で認定資格の取得を目指すのがおすすめです。なお、Azure Fundamentalsは、Azure全般の基礎知識を確認できる点で、キャリアを問わず役立ちます。

開発エンジニアの場合

開発エンジニアとしてキャリアを築く場合は、以下の資格が役立ちます。すでに一定の知識や実務経験がある場合は、Azure Developer Associateから受験するのも手です。

データベースエンジニアの場合

データベースエンジニアのロードマップは、以下が目安です。

AIエンジニアの場合

AIエンジニアのロードマップは、以下の通りです。データアナリストを目指す場合にも参考となります。AI活用に際して必要となるデータサイエンスの資格取得も視野に入れましょう。

Azure 認定資格の一覧

Azure認定資格には、難易度別に以下のようなものがあります。

【難易度別】Azure 認定資格の詳細

各認定資格の特徴や受験料、受験方式などは以下の通りです（2024年7月現在）。受験する資格を検討する際の参考にしてください。

【初心者】AZ-900 Azure Fundamentals

クラウドやAzureのサービス・管理に関する基礎知識を習得していることを示す資格です。数あるAzure認定資格の中でも、最も基本的かつ全般的な内容が扱われるので、Azure初心者が最初に受験する試験として適しています。

出典：Microsoft Certified: Azure Fundamentals

【初心者】DP-900 Azure Data Fundamentals

データ処理やストレージの機能、データセキュリティやデータ活用の手法、そしてAzureのデータサービスなどに関する基礎知識を認定する資格です。クラウド上でデータ管理を始めたばかりの方を対象にしているので、データエンジニアの知識の基礎固めに適しています。

出典：Microsoft Certified: Azure Data Fundamentals

【初心者】AI-900 Azure AI Fundamentals

AIや機械学習に関する基本概念、AzureのAIサービスやその利用方法などに関する基礎知識を認定する資格です。一般的なプログラミング知識があると有利ですが、システムエンジニアとしての実務経験はなくても構いません。そのため、これからAIや機械学習について学習したい初学者の方に適しています。

出典：Microsoft Certified: Azure AI Fundamentals

【中級者】AZ-104 Azure Administrator Associate

Azureのシステム管理に必要となる実務的な知識・スキルを証明する資格です。OS、ストレージ、ネットワーク、仮想化、セキュリティなど、Azureの実装や管理運用に関する全般的な知識が問われます。また、Azure CLIやAzure portalなどの使用経験が前提になります。

出典：Microsoft Certified: Azure Administrator Associate

【中級者】AZ-204 Azure Developer Associate

Azure上での開発で求められる知識とスキルを証明する資格です。この試験では、Azure Functionsの作成、Webアプリケーションの実装と管理、Azureストレージを利用したソリューションの開発などに関する実務的なスキルが問われます。想定されている受験者は、開発およびAzureの経験が2年以上ある方です。

出典：Microsoft Certified: Azure Developer Associate

【中級者】AZ-500 Azure Security Engineer Associate

Azure環境でのセキュリティ管理に必要な知識やスキルを証明する資格です。受験者は、IDとアクセスの管理、データ・アプリケーション・ネットワークの保護、脅威の識別と対策、セキュリティの脆弱性の特定と修正、インシデント対応などの能力が求められます。Azureおよびハイブリッド環境の管理経験がある方が想定対象です。

出典：Microsoft Certified: Azure Security Engineer Associate

【中級】AZ-700 Azure Network Engineer Associate

Azure上でネットワークの設計・実装・管理を担当するエンジニア向けの資格です。この試験では、仮想ネットワークの設計と実装、ネットワークセキュリティの設定、ハイブリッドネットワーキングの実装と管理、ネットワークリソースの監視とトラブルシューティングなどのスキルが問われます。Azureでネットワークリソースの作成や管理をした経験のある方に適した試験です。

出典：Microsoft Certified: Azure Network Engineer Associate

【中級】AZ-800 / AZ-801 Windows Server Hybrid Administrator Associate

Windows Server（オンプレミス）とAzure（クラウド）を使用した、ハイブリッド環境の管理・運用に関するスキルを証明する資格です。この資格を得るには、AZ-800とAZ-801の両試験に合格する必要があります。想定される受験者は、ハイブリッド環境の管理経験が複数年ある方です。

出典：Microsoft 認定: Windows Server Hybrid Administrator Associate

【中級】DP-100 Azure Data Scientist Associate

Azure環境で機械学習のワークロードを実装し、データ活用を推進するためのスキルを証明する資格です。この試験では、データの探索、機械学習モデルのトレーニング、デプロイ、機械学習ソリューションの管理と監視に関する知識が求められます。受験者には、Azure Machine LearningやMLflowを使用したデータサイエンスの経験が必要です。

出典：Microsoft Certified: Azure Data Scientist Associate

【中級】DP-203 Azure Data Engineer Associate

Azure上でデータソリューションの設計・実装・管理を行うエンジニア向けの資格です。この試験では、構造化データや非構造化データ、あるいはストリーミングデータシステムのデータを統合し、分析ソリューションに適したスキーマに変換する能力が求められます。受験にあたっては、Azure Data Factoryなどのツールを使用したデータ処理の経験があった方が望ましいです。

出典：Microsoft Certified: Azure Data Engineer Associate

【中級】DP-300 Azure Database Administrator Associate

Azure SQLサービス、およびオンプレミスのSQL Serverの管理・運用に関するスキルを証明する資格です。具体的には、データベースの管理、可用性・セキュリティ・パフォーマンスの監視と最適化、データベースの移行などに関する知識やスキルが求められます。SQLデータベース管理の実務経験がある方におすすめです。

出典：Microsoft Certified: Azure Database Administrator Associate

【中級】 DP-500 Azure Enterprise Data Analyst Associate

大規模なデータ分析ソリューションの設計・作成・デプロイのスキルを証明する資格です。Azure Synapse AnalyticsやPower BIなどを使用して、大規模にデータ分析を実行する知識やスキルが問われます。

なお、この資格は2024年4月30日に廃止され、その代わりに「DP-600 Fabric Analytics Engineer Associate」という新たな認定資格が創設されました。

出典：Microsoft Certified: Azure Enterprise Data Analyst Associate、Microsoft Certified:Fabric Analytics Engineer Associate

【中級】AI-102 Azure AI Engineer Associate

AzureのAIサービスを活用したAIソリューションの設計・実装・管理に関する資格です。受験者には、要件定義から実装後の監視まで、AIソリューション開発の全フェーズにわたる広い知識が問われます。PythonやC#を使用してAIソリューションを開発した経験がある方におすすめの資格です。

出典：Microsoft Certified: Azure AI Engineer Associate

【上級】AZ-305 Azure Solutions Architect Expert

Azure上でのクラウドおよびハイブリッドソリューションの設計に関する高度な専門知識を証明する資格です。Azureの管理と開発、DevOpsプロセスに関する経験が必要であり、ネットワーク、仮想化、ID管理、セキュリティ、データプラットフォームなどの幅広い分野に精通していることが求められます。また、受験者はAzure Administrator Associateの認定資格者であることも必要です。

出典：Microsoft Certified: Azure Solutions Architect Expert

【上級】AZ-400 DevOps Engineer Expert

Azure環境における、DevOpsプラクティスの設計・実装・監視・保守に関する高度な専門知識を証明する資格です。受験者にはDevOpsソリューションを実装し、ワークフローや共同作業、コミュニケーション、ソース管理、自動化などを設計するスキルが求められます。前提条件として、Azure Administrator AssociateまたはAzure Developer Associateの認定資格が必須です。

出典：Microsoft Certified: DevOps Engineer Expert

【上級／専門分野】AZ-120 Azure for SAP Workloads Specialty

Azure環境でのSAPワークロードの実装と管理に関するスキルを認定する資格です。SAPシステムの知識と、クラウドインフラの専門知識が必要とされます。必須ではありませんが、Azure Administrator Associateの認定資格を前もって取得しておくことが推奨されています。

出典：Microsoft Certified: Azure for SAP Workloads Specialty

【上級／専門分野】AZ-140 Azure Virtual Desktop Specialty

Azure Virtual Desktopの設計・実装・管理・メンテナンスに関する高度な専門知識を証明する資格です。受験者には、仮想デスクトップやリモートアプリの計画・配信・管理・監視に関する高度なスキルと経験が求められます。

出典：Microsoft Certified: Azure Virtual Desktop Specialty

【上級／専門分野】DP-420 Azure Cosmos DB Developer Specialty

Azure Cosmos DBを使用した、クラウドネイティブアプリケーションの設計・実装・管理に関する専門知識を証明する資格です。受験者は、SQL APIとSDKを用いた効率的なクエリの作成、インデックス作成ポリシーの設計、リソースのプロビジョニングと管理などのスキルが求められます。

出典：Microsoft Certified: Azure Cosmos DB Developer Specialty

まとめ

Azure認定資格は、Microsoft Azureに関する専門的な知識やスキルを証明するための重要な手段です。Azure認定資格にはキャリアや役割、スキルレベルに応じて多種多様な種類があるので、自分が活躍したい分野にあわせて取得する資格を考えてみましょう。

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