【後編】withコロナのエンジニア育成と採用の戦略と実践とは?

2020年8月4日に開催されたCTOmeetupのテーマはwithコロナのエンジニア育成と採用の後編記事です。

コロナ禍が起きた時の対応も含めてエンジニア育成と採用について語っていただきました。

今後のエンジニアの育成や採用に課題を感じているCTO、VPoE、経営層の方はもちろん、テックリードやPMなど直接エンジニアをマネジメントする立場の方もぜひ一読ください。

前編記事はこちらからご覧ください。

【ご登壇者】
●株式会社マクアケ 執行役員 CTO 生内 洋平さん(ファシリテーター)
●株式会社スタメン 常務取締役 VPoE 小林 一樹さん
●BASE株式会社 取締役 EVP of Development 藤川 真一さん
●ShowTalk株式会社 執行役員 CTO 水上 学さん

withコロナの採用方法のペルソナの変化

採用の決断ポイントは「チームがその人を受け入れられるかどうか」

株式会社マクアケ 執行役員 CTO 生内 洋平さん(以下、生内):ここからは採用について、みなさんのこだわりポイントから聞いていこうと思います。

株式会社スタメン 常務取締役 VPoE 小林 一樹さん(以下、小林):採用は非常に重視しています。戦略的には特に素直さや地頭的なコミュニケーション、そして継続的なGRITを見ていて、選考時の技術力の優先度は低くしていますね。技術が進化しているということもあり、ポテンシャルの高い人が頑張れば急激な成長を遂げると実感しているからです。チームワークを大事にする人を採用して、仕事を通じて成長してもらおうという感じです。

生内:僕のところも採用に関しては「既存スキルよりキャッチアップ力」という言い方をしています。技術の動向が激しい世の中なので、今何ができるのかよりも、できるようになるためにどれくらい頑張れるのかを重視していますね。

小林:うちはGRITを大事にして採用していたら、スポーツで優秀な成績を収めた人が多くなってしまいました(笑)。

生内:それってまさに人生そのものがPDCAになっている人ですね(笑)。 藤川さんはいかがですか?

BASE株式会社 取締役 EVP of Development 藤川 真一さん(以下、藤川):先ほど期待値調整の重要性に関する話が出ましたが、やはりそこが外れると辞められてしまうので、僕たちが期待することと入社する人が期待することをしっかり理解できるように面接しようとしていますね。

採用面接においてどこまで人の本質を見抜けるかという話もあると思うのですが、基本的に全部はわかりません。その中で大事にしているのは「自分たちが受け入れられるかどうか」です。「一緒に働きたいかどうか」という使い古された表現になるのかもしれません。

勝手に自走してくれる人材なら全く問題ないのですが、エンジニアリングマネージャーが引っ張っていかないといけないとか、きちんと期待値を理解してもらわなければいけないといったことはやはりありますよね。なので、良し悪しというよりも、マネージャーにその人を受け入れる覚悟があるかどうかを聞きます。想定よりも受け身だった、批判的だったといった場合にきちんと指摘できるのか、受け入れる側に問いただすんです。それが面接の意味だと思いますし、面接後の内定判定会議でもしっかり話す部分です。

小林:うちも全く一緒です。上司になる人をあらかじめ決めておいて面接に出てもらい、あなたに拒否権があるからねという話をします。

生内:うちもチームに入ってもらうイメージがつかない場合は、基本的に採用しないことにしています。その人をどう活かすのかはチームの裁量と責任で決めるべきですし、そういう意識でいたほうがチームの結束やコミットメントも高まります。

水上さんはいかがでしょうか?

ShowTalk株式会社 執行役員 CTO 水上 学さん(以下、水上):一般的なサービスに必要な技術レベルはここ20年ほどの間で下がってきているので、採用も技術というよりチームで一緒に働けるか、エンジニアチームの方針にマッチしているかを軸に進めていこうと思っています。面接はマネージャーだけではなく、同僚になる人にも会ってもらいます。

僕自身はShowTalkにリモート面接で入ったのですが、リモートでいかに楽しく話せるかも一つの重要なスキルだなと思っていますよ。

生内:リモートでコミュニケーションする機会も多いわけですから、リモート面談そのものを参考にするということはあるかもしれませんね。

リモート採用がスタートしたのを機に採用ステップを増やした

生内:そのほかにリモートでの採用活動におけるコツは何かありますか?

僕はリモートになったのを機に採用のステップを増やしました。それまではチームのマネージャークラスがチームに配属するイメージを持てたらそれでOKということにしていたのですが、最近は現場のリードエンジニアやテックリードにも面接を行ってもらっています。

小林:いずれコロナが収まったら、またオフィスに出社してもらうということはしっかり伝えるようにしています。リモート志向の人を採用してしまうと後に認識がずれると思いますので。

藤川:うちはもともとチームメンバーも面接をするようにしていて、今も特にやり方は変えていません。ただ、全てリモートで面接すると決めたときに、上手くいかなくても割り切ろうと一度示し合わせはしましたね。

生内:そのくらいでないと、リモート採用自体も進化しませんよね。

小林:あと、採用のポリシーではないのですが、今週からヘッドセットを付けて面接し始めました。PCでメモを取りながら面接をするとキーボードの音を拾ってしまって、内職している感じになってしまうんですよ。

生内:なるほど。そういう努力の積み重ねも大事なんだろうなと思います。

「価値あるエンジニア」の在り方は会社が求める価値によって千差万別

生内:視聴者の方から「本当に価値のあるエンジニアをどう見極めるのか」という哲学的な問いが届いているのですが、いかがでしょうか。

藤川:相対的な判断になってしまうのではないでしょうか。例えば僕たちはネット系のスタートアップなので、やはりインターネットが好きな人たちと一緒に働きたいと思うわけですが、じゃあSIerでかっちり真面目にプロジェクト設計ができる人を採用するのかというとそうではないんですよね。スキルの高さは結局文脈によって変わるのだと思います。

生内:自分たちがどういう価値を求めているのかということですよね。

小林:技術的な価値と、影響力を持って組織に貢献し、会社の成長の真ん中に入ってくれる組織的な貢献への価値がありますよね。特に後者の場合、最初は社内にとって普通の存在だった人が、何度も確変を起こして劇的に成長して信頼関係を築き、組織や事業の中心的な存在になったというケースはどんな会社にもあると思います。

そう考えると、技術力がある人はもちろん、組織に貢献してくれるようなすごい人を採用するのはかなり難しいです。だからこそ、カルチャーマッチしやすい新卒に期待をかける会社が多いんでしょうね。

生内:新卒への「将来カルチャーの担い手になってくれるかもしれない」という期待感はやはり大きくなりますよね。みなさんのお話を聞いていると「普遍的な価値ある人材」というものはあまり存在していない気がします。会社の数が星の数ほどあるように、求められる価値もそれぞれ違うわけですから、そこの相性の見極めという話ですよね。

藤川:会社が大きくなればどこかのチームに入ってもらえればいいという話になるのでしょうが、いまのBASEくらいのサイズだとどうしても現場にいるメンバーとの相性によってバイアスがかかりますよね。

生内:それでいいと思いますよ。事業の課題があるときにどうやって解決するのかは現場にどういうエンジニアがいるのかによって見えてくる答えが違いますし、新しい人を迎え入れられるかどうかの判断基準も同じようなことになるはずです。むしろそうあるべきではないでしょうか。

後半の質問回答タイム

イベント応募時に頂いてた参加者からの質問に回答

素早くサービスに馴染み、達成感を得てもらうのが育成のコツ

質問者:未経験やスキルが浅いメンバーにはどのような教育をするのがいいのでしょうか。

小林:最近実験的にやっているのが、新人をお客様からの問い合わせや社内のヘルプデスク、アラート対応にアサインすることです。社内のシステムやプロダクトについて幅広く学べて人間関係も構築できる上に、縁の下の力持ち的な役割なのでみんなからも感謝されるおいしいポジションなんですよね。

水上:完全にTipsですが、いわゆるペアプロと逆のことをやっています。シニアエンジニアの開発画面をジュニアエンジニアに共有して、どう開発しているのかを見てもらうんです。シニアと自分にどれくらいの差があるのか全体像が見えて、自分に何が足りないのかもすぐにわかります。

小林:今だとZoomの画面共有をする感じですか?

水上:そうですね。今は文字の滲みも無いので問題なくできます。

小林:いいですね。やってみたい。

生内:藤川さんはどうですか?

藤川:よくあるパターンですが、CSの問い合わせ対応を任せますね。問い合わせはチームの持ち回りなので、レビューをしながらサービスを知ってもらいます。うちの場合技術というよりもサービス理解が足りない方が圧倒的に多いので、そこをしっかりフォローしていく体制が重要だと感じています。

生内:サービスのキャッチアップと技術のキャッチアップはどちらも同じくらい大事だし、両方できないと結局開発はできませんからね。

藤川:既存のコードのキャッチアップであれば検索すればいいだけなのですが、サービスに関しては人に聞かなければいけなかったりするので、そちらのほうが難しいことがありますよね。後から入社した場合だと壁も高くなりますし、そこはサービスに慣れている人がある程度意識してあげないと辛いだろうと思います。

もちろん僕たちもいろいろなドキュメントを用意はしているのですが、綺麗に整理されているわけではありません。ソースコードを見て考えるにしても、背景がわからない部分があればSlackなどで聞いてもらうしかない。そのときに問われるのが質問スキルです。気後れせず発言できる人ならどんどん情報をキャッチアップできますが、遠慮してしまう人だと考え込んでしまう。リモート環境では余計のその差が生まれますよね。

小林:割り込む力の必要性が増していますよね。

生内:少し違う角度から回答してみます。うちはOKRを採用しているのですが、業務に慣れてエンジニアリングスキルが高まっている人ほど、抽象的な目的で設定します。一方で未経験やスキルが浅い場合は、そもそもどうやって仕事をするのかがわからないかもしれません。そういうときに例えば「機能を3つリリースする」といった、登りやすいステップを設定することも大事だなと思います。

藤川:入社してから何かにコンバージョンするまでの時間をいかに短くしてあげるのかも重要ですよね。

小林:『マイ・インターン』という映画では、作中で良いことが起きるとオフィスにある鐘を鳴らすのですが、それを倣ってうちもオフィスに鐘を置いています。新人の最初のコードがリリースされたら必ず鐘を鳴らすのですが、それが初日か2日目くらいには起きますね。みんなで達成を祝うというのは大事だと思います。

新しい技術への関心度合いに対して嘘はつけない

質問者:キャッチアップ力はどうやって見極めるのでしょうか。

藤川:どういう技術に興味があるか、新しい技術が出てきたらどうするか、実際どんな風に使っているかなどを聞いていますね。そこで器用に嘘をつく人はあまりいない気がします。何もしていない場合は、話を突き詰めればわかります。

小林:キャッチアップ力は技術的な力や人間的な受け入れ力、素直さが影響すると思うので、過去の勉強や部活、前職で受けたフィードバックとその対応を教えてもらうようにしています。

生内:例えば、土日を使って業務では触れない技術に触れているという方についてどう思いますか?

小林:いいと思いますよ。

藤川:それが加点になるかどうかが一番大事ですよ。実際に何かを作っているかとか、サーバーを建てているとか、技術に対して何をしているのかは聞きたいところです。

業務委託の場合もある程度のカルチャーマッチは必要

質問者:フリーランスと正社員で採用基準に差はありますか?

藤川:うちの場合、フリーランスで独立していて正社員として採用ができないから業務委託でお願いするというケースのほうが多いですね。

生内:業務委託の場合もカルチャーマッチは見ますか?僕は正社員と同じくらい見ます。

水上:業務委託の方のほうがシニアのスキルを持っていますが、だからこそカルチャーフィットしないとマウントを取られやすくなります。なので人柄を重視しつつも、正社員では採用できないシニアエンジニアの方にお願いするようにしていますね。

生内:技術の底上げをしてくれそうな方かどうかということですよね。小林さんはいかがですか?

小林:うちはスポット的な形でしか業務委託の方に依頼したことはありません。知っている人に一時的にお願いするという感じでした。性格も熟知していたので、カルチャーフィットを見るのは最低限でしたよ。

生内:やはりカルチャーフィットしているに越したことはないということですよね。

小林:チーム作業ですからね。

生内:藤川さんの言う通り、マイナスな空気にならないということがやはり大事ですよね。チームワークをより加速させてくれるキャラクターなのかどうかが重要なのだと思いました。 では、以上でディスカッションを終了します。本日はありがとうございました!

関連記事本記事の前編記事は、以下よりご覧ください。 【前編】CTOmeetupイベントレポート!withコロナのエンジニア育成と採用の戦略と実践とは? https://flxy.jp/article/13768

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