AWSへの移行と運用自動化の裏側!会員数 1,000 万IDを保有する日本経済新聞社の取り組み
日本経済新聞社と日経BP のオンラインサービス登録者などで構成され、現在の会員数は 1,000 万人以上と日本最大級の規模を誇る「日経ID」。外部人材の活用により、10年以上オンプレミス環境で運用されてきたシステムをAWSへと移行した支援事例をご紹介します。
目次
インタビュイー
山口 拓也 氏
日本経済新聞社 プラットフォーム推進室 プラットフォームグループ ソフトウェアエンジニア
稼働プロ:井村 元宗 氏
独立系大手SIer、ソーシャルゲーム開発、教育系サービス開発など、さまざまな開発現場、役割・ポジションを経て2016年10月に独立。2017年7月に合同会社yieldsを設立。
稼働プロ:濱口 哲充 氏
2001年よりWebエンジニア・アーキテクトとしてシステム開発に従事。チームラボ株式会社を経て現在はホーウッド株式会社の取締役/CTOを務める。
「日経ID」を運用するプラットフォーム推進室
日本経済新聞社のシステムを支える技術的な取り組み
山口さんの所属している部署について教えていただけますでしょうか。
山口氏(以下、山口):
プラットフォーム推進室 プラットフォームグループという組織で、日経電子版やその他日経サービス全般の課金、決済、認可のシステムを開発・運用しているチームです。
私はスクラムチームのソフトウェアエンジニアとしてプロ人材の方々と関わらせていただいており、日々一緒に開発業務を行っています。
プラットフォーム推進室 ソフトウェアエンジニア 山口氏
山口さんが入社したのが1年前ということですが、入社前から日本経済新聞社はテクノロジーに強い印象をお持ちでしたか?
山口:
日経電子版Webリニューアルで表示速度が高速化したという記事を見て、大企業の大規模サービスなのに技術的なトライができる環境がありテクノロジーに強い会社という印象を持ちました。
技術系のブログを公開したり、エンジニア向けの社外イベントも開催したりと、キャリア採用にも力を入れています。
オンプレミス環境からAWSへ移行する際の課題感
2021年3月から井村さんに参画していただいていますが、具体的な支援内容を教えてください。
井村氏(以下、井村):
「日経ID課金決済システム」をオンプレミス環境からAWSへ移行する時期に参画し、デプロイの仕組み構築からスタート。
当時のデプロイは手作業が多く、効率よくかつ安全にデプロイしたいという要望だったので、デプロイ中に新旧のサーバーが混在して予期せぬエラーが起こらないように、新旧2つのターゲットグループを用意し、ロードバランサーの向き先を変える形でブルーグリーン・デプロイメントを実現しました。
井村氏
2022年8月から濱口さんも参画していただいていますが、支援内容について教えてください。
濱口氏(以下、濱口):
参画当初はGoのアプリケーション開発でした。そこから「日経ID」でログイン後に該当のサービスを使用できるかどうかを判断する認可のシステムの作り替えをJavaで対応したり、EC2からECSに移行したりと、システムの基盤部分含む実装をメインに対応しています。
濱口氏
新旧を融合しながら目指すビジョンの体現
一体感がある開発環境で大切にしたいこと
日本経済新聞社の開発環境の特徴は何でしょうか。
濱口:
さまざまなことに挑戦できる環境で、とても堅実だと思います。定期的にテストも行い、細かくチェックしながら進めるので不具合が少ないと感じました。
エンジニアリングチームが開発環境づくりをする上で意識していることはありますか?
山口:
課金や決済システムを開発・運用しているチームは、特に会社の信頼に関わってくるのでなるべく障害を起こさないようにしています。
エンジニア組織全体としては、エンジニア・デザイナー含めたエンジニアリングビジョンを掲げ、行動指針に沿った環境づくりを心がけています。エンジニア組織の中でチームは分かれていますが、気軽に質問・相談できる環境です。
井村:
業務のコアな部分は、社員の方だけではなく歴の長い経験豊富なベンダーの方にも聞いています。手作業でヒューマンエラーなく開発・運用を丁寧かつ慎重に進めてきた一面に、モダンな技術でチームを改革していくぞという気概が融合した、メンバーそれぞれの特長が活かされたいいチームだと感じます。
信頼関係を築く活発なコミュニケーション
特に苦労した課題はありますか?
井村:
過去の経験から正しい答えが見つからなかったり、調べても意見が分かれるような内容に対して「どうしたら良いですか?」と相談をいただくことがありました。思考を深められるので楽しかったのですが、解を出すのに少し苦労しました。
濱口:
10年ほど続いているシステムなので、積み上がっている課題を咀嚼し解決するのは大変でした。コードを書き換えるのは簡単ですが、何十万行という世界なので一筋縄ではいかなかったです。
印象に残ったエピソードはありますか?
井村:
一度ミーティングで「もっとコンピューターを信じましょう」と話したことがありました。
例えば、以前のPHPは「PHPを避ける」と揶揄されたこともありますが、最近では型システムも充実し堅牢で安全な開発言語のひとつになっています。インフラでいえば、AWSをはじめクラウドサービスも充実していて、採用する企業も多く信頼度も高いものになっています。このような背景から「もっとコンピューターを信じて、手作業を減らして自動化していきましょう」と、自らを「自動化おじさん」と称して自動化できる余地がないかミーティングで聞いて回るなどしていました。
濱口:
認可のシステムを本格的にスクラムでやるとなり、一から自分たちで決めてチームとして作りあげていく過程が面白かったです。移行が終わったあともスクラムで運用されており、他の古いシステムより簡単にデプロイができているので、やりがいも感じられました。
井村:
参画したタイミングでリモート勤務になったのですが、コミュニケーションがなくなるわけでもなく温かい雰囲気で迎え入れてくれました。自宅にお弁当とビールを届けてくださり、リモート飲み会に参加できたことも印象的です。
外部人材を活用することで組織成果を最大化
その道のプロに頼りながら新しい風を吹き込む
外部人材を活用するのはどんなときでしょうか?
山口:
会社が新しいことにチャレンジしようとするときです。
開発を早く進めるために、自分たちで一から調べるのではなく、経験や知見がある方に入っていただいた方がいいと考えています。
外部人材と働く上で気をつけていることはありますか?
山口:
非同期で参画いただいている方には、稼働の範囲でできそうなタスクを調整する必要があるので気をつけています。外部人材という枠で役割を与えることは考えておらず、あくまでもチームの一員として一緒に仕事をしていくことを重要視しています。
外部人材を活用してよかったことを教えてください。
山口:
井村さんはインフラ面が強いので、構築から携わっていただきました。現在はシステム全体のIaC化プロジェクトにも携わっていただいており、心強い存在です。またCI/CDの整備によるテストやデプロイの自動化の導入などさまざまな領域で貢献してくださり、本当に助かっています。
濱口さんはアプリケーションの質向上のために、豊富なコーディング技術やインフラに関する知識を共有しながら、PHPやJavaのアプリケーション開発をメインに協力いただいています。指示された内容を実装するだけでなく、要望を伝えると全体的に対応してくださる柔軟性の高さがチームを動かす大きな力となりました。
外部人材に入っていただくことで、開発のスピードも上がりクロスファンクショナルなチームの形成もできるので、よかったと感じています。サーキュレーションさんとは元々接点があり、FLEXYで優秀な方々を素早く探していただけたので助かりました。
テクノロジーで創る日本経済新聞社のこれから
プラットフォーム推進室の今後のミッションを教えてください。
山口:
生成AIの利活用についても組織を設立しており、新しいテクノロジーを取り込みながら「日経ID」を通してサービスを利用してくれる人を増やし、目標に向かって会社を支えていきたいと考えています。
引き続き井村さんと濱口さんに協力していただきながら、残っている技術負債を少しずつ解決し、新しいプロジェクトに即座に対応できるような開発体制を築いていきたいです。
ハングリー精神を持ちベテランならではの活躍を
支援に参画し、成長したことや学んだことがあれば教えてください。
井村:
業務委託がインフラ業務をメインで任されることは珍しいので、企画の段階から携わりAWS経験者としてなんでも経験させてもらえたことは、成長につながりました。
濱口:
一つのプロジェクトに最初から最後まで携われたことで、経験値が高まったと感じています。やってみてダメだったらダメでいいという雰囲気のおかげで、それぞれが意見を発信し知識を共有できる機会ができて、学ぶことが多くありました。
これから先フリーランスとしてどんな経験を積みたいですか?
井村:
相談をもらったときの引き出しを増やしたいです。最近は読書やコミュニティに参加する時間を取れていないので、もっと外に出て刺激を受け、いろいろと吸収し幅を広げていきたいです。
濱口:
若手のエンジニアから新しい情報を入手して、どんどんチャレンジしていきたいです。新しさに経験を足してベテランならではのアレンジを加えていけたらと考えています。
お三方、貴重なお時間をいただきありがとうございました。
まとめ
「日経ID」をオンプレミス環境からAWSへ移行するフェーズで、プロ人材の井村氏と濱口氏に支援をしていただきました。
チームの強みを守りながら、新しい風を取り入れエンジニアリングの貢献を増やすことで、日本経済新聞社のさらなる飛躍の一翼を担うことができます。
あらゆるフェーズに合わせてFLEXYは最適なエンジニアをご提案できますので、お困りごとがありましたらぜひ一度FLEXYまでご相談ください。