Fit&Gap分析とは?ERP導入に役立つ進め方を解説

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社内の基幹業務を統合・効率化するために、ERPの導入を考える企業は多いでしょう。ERPのパッケージシステム選びを成功させる上では「Fit&Gap分析」が効果的です。本記事ではFit&Gap分析とは何か、基本からわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。

Fit&Gap分析とは? 概要を解説

Fit&Gap分析とは、導入候補のパッケージシステムと自社のニーズを比較し、一致(Fit)する部分・ずれ(Gap)がある部分を分析する手法のことです。ERPなどを導入する前に、どの製品が自社に最もふさわしいかを決める上でよく用いられます。

パッケージシステムでは、標準機能のラインナップや操作方法、画面仕様などが基本的には決まっています。しかし、選んだ製品が自社のニーズを100%満たしてくれるとは限りません。例えば、操作方法が自社の業務フローとかみ合わないために使いづらいケースも考えられます。

そこで、導入前にパッケージシステムがどれだけ自社のニーズに一致しているかを明らかにするのがFit&Gap分析です。

Fit&Gap分析を行う目的

Fit&Gap分析を行う目的は、パッケージシステムと自社のニーズにおける適合度を可視化し、自社にふさわしい製品を絞り込むことです。

ERPなどのパッケージシステムには数多くの製品があり、どれが自社に最適化かを見極めることは簡単ではありません。イメージだけで安易に選ぶと、導入後に致命的な不適合箇所が見つかり、再導入のために多大な手間やコストがかかるおそれがあります。

このような事態を防ぐために、パッケージシステムと自社のニーズにおける適合度を把握することは非常に大切です。どの製品なら自社のニーズとのギャップを最小化できるか明らかにすることで、導入後の失敗リスクを低減できるでしょう。また多少のギャップがあるとしても、何をカスタマイズすべきなのかが明確になるため、契約時の要件を決めやすくなります。

具体的なFit&Gap分析の進め方

具体的なFit&Gap分析の進め方を紹介します。パッケージシステム導入前にFit&Gap分析を行う場合、大まかに次の3ステップで進めていきます。

  1. システム要件の洗い出し
  2. パッケージシステムのリサーチ・比較
  3. 導入するシステムの選定

1. システム要件の洗い出し

まずは、システム要件を洗い出しましょう。ここでいう「システム要件」とは、自社がパッケージシステムに求める機能や性能といった条件のことです。システム要件を明確にしておかないと、導入の候補となる製品を効率的にリサーチできません。

具体的には、パッケージシステムに求める機能や想定される業務フロー、必要なデータ、画面構成などを明確にしましょう。関係者からのヒアリングや打ち合わせを行い、製品に対するニーズをしっかり掘り下げることが大切です。

2. パッケージシステムのリサーチ・比較

次に、パッケージシステムのリサーチ・比較を行いましょう。さまざまな製品の機能や性能などをリサーチし、自社のシステム要件とマッチしているかを精査していきます。各製品の公式サイト情報やダウンロード可能な資料などを参照するとよいでしょう。

リサーチの結果をわかりやすく整理・比較するために、星取表を活用することが効果的です。星取表の縦軸には各システム要件を列挙し、横軸には各製品を列挙します。どの製品がどのシステム要件を満たしているかを「〇」や「×」などの記号で表記すれば、適合度を比較しやすくなります。

ただし、はじめから全てのパッケージシステムを細かく精査するのは骨が折れる作業です。最初はキーとなるシステム要件(必須機能など)で見込みのある製品をある程度絞り込むとよいでしょう。星取表にピックアップした製品のみを精査すれば、作業の負担を減らせます。

また、現実的には少なからず自社のニーズとギャップは生じてしまうものです。ギャップがある箇所については標準機能をカスタマイズしてカバーすることになります。そのため、カスタマイズができるかどうかもポイントとしてチェックしましょう。

3. 導入するシステムの選定

最後に、リサーチ・比較の結果をもとに導入するパッケージシステムを選定します。適合度の高さを可視化するために、星取表の各項目に点数を設定するのがおすすめです。合計点が最も高くなるものが最も適合度が高い製品と判断できるでしょう。

ただし適合度の高い製品でも、導入費用や運用コストが予算を大幅にオーバーしたり、サポート体制が合わなかったりする場合もあります。そのため、適合度が高い最終候補のなかから導入する製品を選ぶ際には、コストやサポート体制なども加味しましょう。

コストを考慮する際には、導入費用だけでなく運用コストも試算することが大切です。導入費用は安くても運用コストが想像以上に高くなり、使い続けることが難しくなるケースも少なくありません。このようなステップを踏めば、自社に合ったパッケージシステムを選べるでしょう。

Fit&Gap分析を行う際の注意点

Fit&Gap分析はERPなどのパッケージシステム選びに効果的な手法です。しかし、注意点を知っておかないと思わぬトラブルが生じることもあります。Fit&Gap分析を行う際は、次の4つの注意点を知っておきましょう。

  • 全てのシステム利用者から意見を聞く
  • 必須要件と希望要件をはっきりさせておく
  • システム要件は細かい部分まで洗い出す
  • システム開発は依頼先に丸投げしない

全てのシステム利用者から意見を聞く

システム要件を洗い出す際には、想定される全てのシステム利用者から意見を聞きましょう。導入したシステムをあまり使わない経営陣の一存で決めるべきではありません。導入したシステムを利用する立場の意見がシステム要件に反映されないと、導入後に不満が出ることになります。

システムの運用や保守を担う情報システム部門はもちろん、業務フローのなかでシステムが関与しうる全ての部門から意見をヒアリングしましょう。ユーザーや運用担当者の目線からの意見を抽出することが大切です。現場の声をシステム要件に反映することで、本当に必要なシステムを見極めやすくなるでしょう。

必須要件と希望要件をはっきりさせておく

システム要件を洗い出す際には、必須要件と希望要件をはっきりさせておきましょう。簡単にいえば、必須要件は「満たさなければ困る要件」、希望条件は「満たしていればうれしい要件」を指します。希望要件よりも必須要件の方が優先です。

システム利用者の意見を何でも取り込もうとするとシステム要件が多くなり、システム開発の負担・コストが増大してしまいます。しかし希望要件であれば、予算やスケジュールなどの都合によっては見送り・代替手段の検討も可能でしょう。必須要件と希望要件で区別しておくことで、システム要件を取捨選択する際の判断が容易になります。

システム要件は細かい部分まで洗い出す

システム要件は、細かい部分まで洗い出しましょう。システム要件があいまいなまま導入すると、後から機能の不足や不適合が判明し、カスタマイズ費用がかさみます。導入後に多額の追加開発コストをかけるよりは、導入時点でしっかり不備をなくした方が低コストでしょう。

例えば「会計管理機能」をシステム要件に含める場合、管理できるデータ構成や出力できる帳票のフォーマット、外部システムとの連携可否なども明確にすべきです。システム利用者から意見をヒアリングする際には、できる限り詳細にニーズを聞き出すようにしましょう。

システム開発は依頼先に丸投げしない

パッケージシステムを導入する場合でも、足りない要件を補うためのカスタマイズでシステム開発が発生することは一定あります。ただし、システム開発会社に依頼する場合、丸投げするのはNGです。丸投げすると、自社のニーズを導入するシステムに正しく反映できません。導入後に機能の不足や業務フローとの不適合などが判明し、追加開発コストがかかるでしょう。

そのため、システム開発会社に依頼するよりも前にFit&Gap分析を行うべきです。Fit&Gap分析を通して、導入したいパッケージシステムや、カスタマイズでカバーすべき要件を明確にできます。その上でシステム開発会社に要望を伝えれば、導入後の問題発生を抑制することが可能です。システム開発会社との認識違いを防ぐために、システム要件をまとめた資料も作っておきましょう。

Fit&GapとFit to Standardとの違い

Fit&Gap分析と混同されやすい手法に「Fit to Standard」があります。いずれもパッケージシステムを導入する際に用いられる手法ですが、両者の違いを押さえておきましょう。Fit to Standardとは、パッケージシステムの標準機能(Standard)に合わせ、自社の業務を調整することです。

Fit&Gap分析を行う場合、不足している機能の追加開発や、適合しない要件へのカスタマイズが発生します。つまり、自社のニーズに対して、パッケージシステム側をできる限りフィットさせようとする方法です。

一方、Fit to Standardでは標準機能が提供する操作手順や画面仕様などを変えません。Fit&Gap分析とは対照的に、業務をパッケージシステムにフィットさせようとするのです。そのため、Fit to Standardには導入時の開発コスト削減や開発期間の短縮につながるメリットがあります。

その反面、標準機能の仕様に合わせて自社の業務フローを変えなければなりません。結果として現場で混乱が生じたり、社員から不満が出たりしやすいのがデメリットです。

このように、Fit&Gap分析とFit to Standardでは、フィットさせる対象が違います。いずれも一長一短のため、自社に合わせた手法を選びましょう。

Fit&Gapと要件定義との違い

Fit&Gap分析では、システム要件を洗い出すことが必要となることを解説しました。システム開発においてシステム要件を定義する「要件定義」との違いがわからない方もいるでしょう。

まずFit&Gap分析と要件定義では、そもそもの目的が違います。Fit&Gap分析の目的は、パッケージシステムが自社にどの程度適合しているかを可視化し、使いやすい製品を絞り込むことです。一方、要件定義は、企業が導入するシステムの”あるべき姿”を明確にすることを目的とします。

またシステム開発における要件定義は、依頼先を決めた上で発注側・受注側が協力しながら行うものです。ただし現実的には、受注側のシステム開発会社が主体となって実施するケースも少なくありません。一方Fit&Gap分析は、発注側の担当者が行うケースが多いです。

このように、Fit&Gap分析と要件定義では目的や担当者が主な違いといえます。しかし、いずれもシステムの導入にあたって重要なプロセスであることは変わりません。

まとめ

Fit&Gap分析とは、導入候補のパッケージシステムと自社のニーズを比較し、一致(Fit)する部分・ずれ(Gap)がある部分を分析する手法のことです。パッケージシステムと自社のニーズにおける適合度を可視化し、自社にふさわしい製品を絞り込む上で有力な手法といえます。

なお、ERPなどのパッケージシステムを導入する際には、専門的なスキルをもつエンジニアが欠かせません。こうしたスキルを保有している方は、パッケージシステムの導入に関する案件を獲得することで収入アップを目指せます。

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