マスターデータマネジメント(MDM)とは?考え方や効率化の仕組みを解説

mdmとは

データドリブンな経営体制を整備するためには、データの整合性と正確性を確保するとともに、部門横断的な情報共有を実現する仕組みが欠かせません。そこで重要な課題となるのがマスターデータマネジメントの推進です。データを活用して経営を改善されたい方に向けて、マスターデータマネジメントの概要やメリットについて解説します。

マスターデータマネジメント(MDM)とは

マスターデータマネジメント(MDM)とは、組織の運営や業務を遂行する際の基本となるマスターデータを一元管理するマネジメント手法です。

組織のデータベースには、大きく分けると「マスターデータ」と「トランザクションデータ」の2種類が存在します。顧客情報を例に挙げると、「顧客ID」「顧客名」「所在地」「連絡先情報」といった固定的なデータがマスターデータ、「問い合わせ履歴」「商談履歴」「購入履歴」「購入金額」などの流動的なデータがトランザクションデータです。

固定的な基本情報であるマスターデータを統合的に管理し、組織内におけるデータの整合性と正確性を維持することがマスターデータマネジメントの役割です。

マスターデータマネジメントはなぜ必要なのか?

マスターデータマネジメントが必要とされる理由はデータの一貫性を確保するためです。各部門の基幹系システムや情報システムでマスターデータを個別管理する場合、データの重複や不整合が生じるケースが少なくありません。このような状態では顧客情報の重複によって同じ顧客にDMを複数送付する、勘定科目の不整合によって会計処理の一貫性が欠如するなどのリスクが懸念されます。

また、マスターデータのサイロ化によってデータ分析の工数が増大し、意思決定の遅れを招く要因になり得ます。こうしたリスクを回避するとともに、オペレーションの効率化やガバナンスの強化を図ることがマスターデータマネジメントの目的です。

MDMで扱うマスターデータの種類

マスターデータマネジメントの対象となる基本的な項目は以下の5つです。

  • 顧客マスターデータ
  • サプライヤーマスターデータ
  • 製品マスターデータ
  • ロケーションマスターデータ
  • 資産マスターデータ

顧客マスターデータ

顧客マスターデータとは、顧客IDや顧客名、所在地、連絡先情報など、顧客情報の中で基本的に変更が加えられない固定的なデータです。その他には、顧客企業の業態や与信情報、宛先情報、取引条件、基本契約の締結日などが含まれます。顧客企業の担当者名とその役職、所属部署といった担当者情報も顧客マスターデータのひとつです。

サプライヤーマスターデータ

サプライヤーマスターデータは、自社の取引先である供給事業者に関する基本的なデータです。企業名や所在地、連絡先情報、担当者情報などの他に、供給事業者が提供する商品・サービスの詳細や価格といった製品情報、契約の条件や期間、支払い方法や締め日などの取引情報も含まれます。サプライヤーマスターデータの一元管理により、調達や購買におけるデータの不整合を最小化できます。

製品マスターデータ

製品マスターデータとは、自社が提供する商品やサービスに関する固定的なデータです。代表的な項目に製品ID、製品名、製造日などが挙げられます。また、製品の原価や定価、寸法と重量、製造に必要な原材料や部材、カラー展開の種類、サイズのバリエーションなども含まれます。製品マスターデータは購買部門や製造部門、販売部門、在庫管理部門など、さまざまな部門で活用されるデータです。

ロケーションマスターデータ

ロケーションマスターデータは、企業が管理するオフィスや店舗、工場、倉庫、物流拠点といった施設に関する基本的なデータです。具体的な項目としては、各施設の住所や連絡先、管理者情報、施設へのアクセス方法、ロケーション間の主要ルートなどが挙げられます。ロケーションマスターデータと他のデータドメインを連携させることで、サプライチェーンマネジメントの最適化や災害時のリスク管理などに活用できます。

資産マスターデータ

資産マスターデータとは、企業が保有する資産に関する固定的なデータです。土地や建物、工作機械や駆動装置、ITインフラ、車両などの有形資産はもちろん、特許や商標権、著作権、ソフトウェアライセンスといった無形資産も資産マスターデータの対象になります。資産マスターデータは財務会計や管理会計で重要な役割を担っており、資産管理の整合性と正確性を確保する上で欠かせない重要なマスターデータです。

マスターデータマネジメントの効果

マスターデータマネジメントの推進によって得られる主な効果は以下の3点です。

  • 情報の一元化で的確な分析が可能になる
  • 顧客に合ったマーケティング・営業活動が行える
  • 業務の効率化や生産性の改善を図れる

情報の一元化で的確な分析が可能になる

マスターデータマネジメントのメリットは、マスターデータの一元管理によって情報の整合性と正確性を確保できる点です。

例えば営業部門とマーケティング部門が顧客マスターデータを共有することで情報の一貫性を保つため、より精度の高い顧客分析やセグメンテーションが可能になります。また、各種マスターデータのフォーマットが統一されることで、データの集計や変換における業務負荷を軽減できる点もメリットのひとつです。

顧客に合ったマーケティング・営業活動が行える

マスターデータマネジメントの推進で得られる効果として、顧客にパーソナライズされたプロモーションを展開できる点が挙げられます。マーケティング活動や営業活動では見込み顧客をセグメントし、各属性に適したアプローチを仕掛けることが大切です。顧客マスターデータや製品マスターデータを一元管理することで、自社のプロダクトを必要とする見込み顧客をセグメントする精度が向上し、顧客の属性に応じて個別化された販売促進や広告宣伝を実施できます。

業務の効率化や生産性の改善を図れる

マスターデータマネジメントを推進するメリットは業務の効率化と生産性の向上です。これまで各部門で個別に管理していたマスターデータを統合できれば、部門横断的な情報共有と業務連携が実現します。

それによって従来の業務プロセスにおける無駄な工程が削ぎ落とされ、従業員一人ひとりの労働生産性の向上が期待できます。また、全社戦略に基づくマスターデータの共有によって、迅速な意思決定と的確な経営判断につながる点もメリットです。

マスターデータマネジメント成功のためのポイント

マスターデータマネジメントを成功させるためには、以下に挙げる3つの要素を意識することが大切です。

  • 目的を明確にする
  • 社内のデータを整理する
  • 運用プロセスを定義または改善する

目的を明確にする

マスターデータマネジメント成功のためのポイントは目的の明確化です。マスターデータマネジメントは全社戦略に基づいて推進すべき管理手法ですが、目的によって取り組むべき施策と集中すべきリソースが異なります。

そこで必要となるのが最終目標のKGIと、その実現に必要な中間目標であるKPIの設定です。例えば「サプライチェーンへの投入資源に対する利益率:前年比5%」をKGIとするなら、「調達コストの削減率」「在庫回転率」「適正在庫比率」「遅延率」といった指標をKPIとして、具体的な数値目標を設定しなくてはなりません。

このプロセスにより、どんなデータセットを一元的に管理する必要があり、どの部門を中心として戦略・戦術を展開するべきかを把握できます。

社内のデータを整理する

マスターデータマネジメントを成功させるためには、組織内のマスターデータを整理するプロセスが重要です。例えばサプライチェーンの全体最適を図るためには、サプライヤーマスターデータや製品マスターデータ、ロケーションマスターデータを統合的に管理し、購買部門や製造部門、在庫管理部門、物流部門などを中心としてデータを共有・連携する仕組みを整備する必要があります。

また、マスターデータを各部門で個別管理している場合、データのフォーマットや情報の粒度が異なるケースがあります。そのままではデータの整合性と正確性を担保できないため、特定のデータセットを抽出して変換・加工し、データベースへ送出するETL処理の仕組みが必要です。

運用プロセスを定義または改善する

マスターデータマネジメントにおける重要課題のひとつは運用プロセスの定義です。マスターデータの収集や蓄積、保存や運用に関する標準的なガイドラインとルールを定義し、文書化した上で関係者全員への周知徹底を図ります。

マスターデータの取り扱いに関する手順を統一化することで、データを一貫した形式で保管できるため、データの重複や不整合を防止できます。また、マスターデータを一元管理する際は情報が1か所に集約されるため、厳格なセキュリティ体制を整備しなくてはなりません。

そのため、ガイドラインやルールを遵守するためのガバナンスポリシーを策定したり、マスターデータの閲覧・編集・削除に関するアクセス権限を設定したりといった施策が必要です。

マスターデータマネジメント実施の際の注意点

マスターデータマネジメントの注意点として挙げられるのが、正確なマスターデータの取得です。

マスターデータマネジメントを実施する目的のひとつは、組織内におけるマスターデータの一貫性を確保することにあります。しかし各部門でマスターデータを個別に管理している場合、どの部門のシステムに正確なマスターデータが保管されているのかを把握するのは容易ではありません。

例えばマーケティング部門と営業部門が保管している顧客マスターデータに不整合が生じている場合、どちらを正規データとして採用すべきかを調査する必要があります。マスターデータマネジメントの初期段階では、こうしたデータの重複や不整合を解消し、マスターデータの一貫性を確保しなくてはならない点に注意が必要です。

まとめ

マスターデータマネジメント(MDM)とは、顧客情報や供給事業者、製品、施設や拠点、資産などに関するマスターデータを一元管理するマネジメント手法です。主なメリットとして「データ分析の精度向上」「顧客にパーソナライズされた戦略・戦術の展開」「業務効率化と労働生産性の向上」などが挙げられます。

国内ではさまざまな産業でDXの推進が重要課題となっており、多くの企業がマスターデータマネジメントの知見を有する人材を求めています。FLEXYではMDM(マスターデータマネジメント)に関する案件も取り扱っていますので、ぜひ参考にしてください。

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