改正電気通信事業法のガイドラインや企業がすべき対策をわかりやすく解説

改正電気通信事業法の対策まとめ|電気通信事業法の改正ポイント徹底解説

改正電気通信事業法は2022年6月17日に公布され、2023年6月16日から施行されます。この改正により、これまで電気通信事業者として登録・届出が不要だった、SNSプラットフォーマーやオンライン検索サービス等を提供する事業者、ニュースや気象情報の配信、求人・求職、乗り換え案内など情報提供サービスを手掛けている企業は、電気通信事業法の改正で新たに規制対象となります。

本記事では、電気通信事業法の基本的な目的や内容から、改正のポイント、対応事項などについて分かりやすく解説します。上記のような事業担当者で、法改正で何か対応すべきということは把握しつつも、詳しい改正内容や対応事項が分からず悩んでいるという方は必見です。

電気通信事業法について

まずは改正前の電気通信事業法からおさらいしていきましょう。

電気通信事業法の目的

電気通信事業法はそもそも1985年4月1日に施行された法律で、本法律の目的について以下のように記されています。

この法律は、電気通信事業の公共性に鑑み、その運営を適正かつ合理的なものとするとともに、その公正な競争を促進することにより、電気通信役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者等の利益を保護し、もつて電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進することを目的とする。

引用元:電気通信事業法第1条


この法律によって、電気通信に関する多種多様なサービスを低価格で享受できていたり、確実で安定したネットワーク回線の実現、プライバシーが守られ安心して利用できるような通信環境の整備が増進されてきました。

したがって本法律は、電気通信産業の健全な発展に非常に重要な役割を果たしていると言えます。

電気通信事業法における事業者の区分方法と規制対象

電気通信事業法の規制対象を簡潔に説明すると、以下のようにまとめることができます。

電気通信事業を営もうとする者は、法第9条の登録及び第16条の届出を行う義務があり、それらの参入手続きをした者を電気通信事業者として電気通信事業法の規制対象となります。ただし、他人の通信を媒介せず、かつ電気通信回線設備を設置しない電気通信事業を営む事業者は本法律の適用外となります。

以下の図をもとに詳しく解説します。

電気通信事業者とは

出典:電気通信事業 参入マニュアル ( 追補版 )

電気通信事業法を考える上で、まずは「電気通信役務」を提供するかどうかの判定が必要です。電気通信役務とは、電話やパソコンといった電気通信設備を利用して提供されるサービス全般のことを指します。

電気通信役務の提供者の中にはさらに、電気通信役務を他人の需要に応じるために提供する事業かそうでないかで区別することができ、前者は「電気通信事業を営む者」に区分され、こうした事業のことを「電気通信事業」と呼びます。

さらに、電気通信事業を営む者の中で、

  • 他人の通信を媒介するかどうか
  • 電気通信設備を設置するかどうか

の2つの基準によって、どちらか一方でも当てはまる場合は「電気通信事業者」
どちらも当てはまらない場合は、電気通信事業者に当てはまらない電気通信事業を営む者、通称「第3号事業者」として扱われます。

ここまでが電気通信事業法の事業者区分の方法であり、前述したように電気通信事業者として参入する場合は、総務大臣の登録を受け(法第9条)、総務大臣に対し定められた事項について記載した書類を添えて届出が必要(法第16条)となります。

【2023年6月16日施行】改正電気通信事業法のポイント

ここからは具体的な改正法の内容について解説していきます。

改正電気通信事業法の導入背景

改正電気通信事業法が導入される背景ですが、社会のデジタル化やネット社会のグローバル化が近年急速に発達し生活が豊かになる反面、利用者の個人情報漏えいサイバー攻撃による被害も深刻化しているなど、通信サービスに関する事件・事故も年々増加しています。

そうした社会情勢を鑑みて、さらなる電気通信サービスの円滑な提供及び利用者の利益保護に向けて改正電気通信事業法が公布されることとなりました。

電気通信事業法の改正概要

今回の改正で

  • 情報通信インフラの提供確保
  • 安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保
  • 電気通信市場を巡る動向に応じた公正な競争環境の整備

の3つの観点からいくつかの追加措置が導入されました。

改正電気通信事業法

出典:利用者に関する情報の外部送信の際の措置について

情報通信インフラの提供確保

まず「情報通信インフラの提供確保」の観点では、生活インフラになりつつあるブロードバンドサービスが整備だけでなく維持の重要性も高まっているとし、ブロードバンドサービスを基礎的電気通信役務に位置付け業務区域での役務提供の義務を課すこととしました。一方で、交付金制度を創設することで、不採算地域でも安定したサービス提供を確保できるようにするとしています。

安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保

「安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保」の観点では、情報通信技術の発達により多様化やグローバル化した通信サービスでの情報漏洩や不適正な情報の取扱いを防ぐため、大規模な検索サービスまたはSNSを提供する事業者が取得する利用者情報について適正な取扱いが義務化されました。

これにより、これまで第3号事業者として届出が不要とされていた一部の事業者が電気通信事業者と同じく登録・届出が必要となりました。

登録・届出が必要となった第3号事業者

検索情報電気通信役務
(例:Google,Yahooなどの検索サービス)
媒介相当電気通信役務
(例:Twitter,InstagramなどのSNS)
に該当するサービスのうち

無料の電気通信役務の場合:
利用者数1,000万人以上の電気通信役務
有料の電気通信役務の場合:
利用者数500万人以上の電気通信役務
に当てはまる事業者等

また、利用者に関する情報を第三者に送信させようとする場合、利用者に確認の機会も付与する必要があります。こちらに関しての具体的な対応は後述のWEBサービス運営者やITエンジニアに求められる対応とは?の章で詳しくご紹介します。

電気通信市場を巡る動向に応じた公正な競争環境の整備

「電気通信市場を巡る動向に応じた公正な競争環境の整備」では、携帯大手3社とNTT東・西の設備を用いた卸役務がMVNO等の他事業者に提供される一方で、卸料金が長年高止まりしている状況を改善するため、卸役務の提供義務および料金算定方法などの情報提供義務が新設されます。

モバイル市場に関しては2019年10月に「モバイル市場の競争の促進及び電気通信市場の環境の変化に対応した利用者利益の保護を図るための電気通信事業法の一部を改正する法律」の施行でも是正措置がなされており、モバイル市場における公正な競争環境の整備はより注力しているものと思われます。

新設される「外部送信規律」に注意するべき理由

外部送信規律とは?

前章で取り上げた改正項目のうち、「安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保」における「利用者に関する情報を第三者に送信させようとする場合、利用者に確認の機会も付与する必要がある」とご紹介しましたが、これがいわゆる「外部送信規律」になります。

SNS/動画共有/ニュース配信/検索等の様々なサービスを提供するプラットフォーム事業者が、利用者に関する情報を取得・集積する傾向が強まっています。利用者に対して利便性を高める側面もある一方で、利用者自身が認識していない状態で利用者の端末から第三者に情報送信されている場合があります(外部送信)
そうして外部送信された情報をもとに、表示広告がカスタマイズされ、利用者が目にする情報が選別されるなどの影響を受けている可能性があります。

ウェブサイトやアプリケーションの運営事業者は、利用者に関するデータの収集・活用について知ってもらい、安心してサービスを利用できるようにすることが重要であり、外部送信される情報についての透明性を高めることによって、自身のサービスの安全性や信頼性をアピールすることにもつながります。

こうした背景からタグや情報収集モジュールを使って、利用者に関する情報を外部送信する場合に利用者が確認できるようにするという外部送信規律が設けられました(法第27条の12)。

外部送信規律の対象事業者

外部送信規律の対象事業者は電気通信事業者、または第3号事業を営む者のうち総務省令で定められた特定の事業者や個人になります。

具体的には、次のような電気通信役務をブラウザまたはアプリケーションを通じて提供し、利用者の端末に外部送信を指示するプログラム等を送信する事業者が外部送信規律の対象となります。

外部送信規律の対象事業者

特定の利用者間のメッセージ交換をテキスト、音声、画像、動画によって媒介するようなメッセージングアプリや、サービスの一部として特定の利用者間でダイレクトメッセージ機能を提供している場合。

他人の通信を媒介しているため、登録または届出が必要な電気通信事業です。


外部送信規律の対象事業者

SNS・電子掲示板・動画共有プラットフォームのような、不特定多数の利用者間でのテキスト、音声、画像、動画の投稿・閲覧機能により発信者と閲覧者がやりとりを行う「場」を提供する場合や特定の利用者間のみでやりとりできるダイレクトメッセージ機能を提供している場合。

これらは第3号事業者のうち総務省令で定められた特定の事業者や電気通信事業者になります。また、インターネット経由のモール型ECサイトや、フリーマーケット、オークションなどができるものも同じく「場」を提供しているため本カテゴリに該当します。


外部送信規律の対象事業者

GoogleやYahoo、Bingのような膨大な量のWEBサイトデータベースを構築し、WEBサイトのURL等を利用者に提供する場合。

電気通信事業となりますが、他人の通信を媒介していないため第3号事業者になります。
ただし、全てのウェブページが検索対象となる検索サービスを提供し、アクティブ利用者数が1,000万以上である場合は検索情報電気通信役務に該当するため、登録または届出が必要な電気通信事業になります。


外部送信規律の対象事業者

インターネット経由で天気予報やニュース、映像、求人情報などの情報を利用者へ提供する場合。また、ニュース等に対して、不特定多数の者が閲覧できるコメントの投稿・閲覧機能を提供する場合。

これらは第3号事業者に当たりますが、利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務を提供する者とみなされ外部送信規律の適用対象となります。

出典:外部送信規律について

外部送信規律の適用外となる事業者は?

電気通信役務を提供する者のうち、電気通信事業を営む者に該当しない場合は外部送信規律も適用外となります。
具体的には以下のような事業者になります。

外部送信規律の適用外となる事業者

企業等が自社製品やサービスについて周知・宣伝するため、またはそれらの商品やサービスを販売するための手段として、HPを開設・運営する場合。また個人的な情報にまつわるブログを運営する場合。

これらは電気通信役務を必ずしも前提としない別の自らの本来業務の遂行の手段として電気通信役務を提供していると判断できるため、電気通信事業に該当しません。

出典:外部送信規律について

WEBサービス運営者やITエンジニアに求められる対応とは?

ではここから、外部送信規律の対象事業となるWEBサービスの運営者や規制対象となるツールやプラットフォームの開発に携わっているITエンジニア等に求められる対応についてご紹介します。

外部送信規律の対象事業者には外部送信される利用者情報について当該利用者に確認の機会を付与する義務があります。確認の機会の付与方法は3つあり、そのいずれかの措置を行うことが求められます。

以下の表では、必要な措置と事業者の対応方法例をまとめています。

必要な措置事業者の対応例
通知または公表サービスサイトでのポップアップ表示
同意取得CMPツールの導入
オプトアウトオプトアウト用の入力フォームの設置

通知または公表

例えば、企業のマーケティングでよく活用されている「Google アナリティクス」もGoogleに対して情報の外部送信が行われているため、外部送信規律の対象となります。

こうした場合、

  • 「Google アナリティクス」の導入目的
  • 送信される情報はどんな情報か
  • 情報送信先はどこか(この場合:Google社)
  • 送信先では情報をどのように利用するか

を規制対象となるサービスや企業HPにて掲載したり、HPに訪問したタイミングでポップアップ表示される仕組みを構築するなどの対応が求められます。既にCookieの利用についてプライバシーポリシー等で公開している場合は、その公表内容を総務省令に適合するよう整備することで、外部送信規律への対応が可能です。

注意すべきは、今回の改正内容ではCookieを利用しない方法で利用者情報のトラッキングを行う場合や、Googleの脱Cookieの新機能として注目されるTopics APIやFLEDGEも対象となります。ですので、Cookieの公表対応はバッチリだから関係ないと考えず、今一度自社の事業を棚卸しして、外部送信しているサービスが他にないか確認することが重要です。

同意取得

同意取得の方法については、国内ではまだまだ認知が低いですがCMPツール(Consent Management Platform:同意管理プラットフォーム)を導入することがおすすめです。
CMPツールは、Webサイトやアプリを訪問した利用者に対し、利用者のデータを収集することを利用目的とともに明示し、その同意状況を管理する一気通貫のツールです。

同意取得に関しては、改正個人情報保護法の観点からも個人データの出入り記録や同意状況を一元的に管理しておくことが必須となってきますので、この機会に導入を検討してみてください。

オプトアウト

上記の2手段による対応を行わない場合、オプトアウトの導線設置が必要になり、以下事項を公表した上で、オプトアウトのための入力フォームの導線整備等の対応が求められます。

  • オプトアウトを行っている事実
  • オプトアウトが情報の送信と利用のどちらを停止するものか
  • オプトアウトを行う方法
  • オプトアウトを適用することでサービスの利用制限がある場合はその制限内容
  • 送信される情報の詳細
  • 上記の情報を取り扱う者の氏名または名称と、その利用目的

オプトアウトについては、通知または公表の対応と合わせて講じることもできます。両方の措置を実装することで、よりユーザーファーストな導線設計になっていると言えるでしょう。

改正電気通信事業法でよくあるご質問

ここまで改正電気通信事業法について解説しました。本章ではよくあるご質問についてご紹介します。

Q:改正電気通信事業法はいつから施行されますか?

A:改正電気通信事業法は2022年6月17日に公布され、2023年6月16日から施行されます。改正法が施行される背景や目的については【2023年6月16日施行】改正電気通信事業法のポイントをご覧ください。

Q:電気通信事業法の改正により、新たに電気通信事業者として登録・届出が必要となった事業者を教えてください。

A:新たに登録・届出が必要となった事業者としては、Google,Yahooなどの検索サービスに代表される検索情報電気通信役務や、Twitter,InstagramなどのSNSに代表される媒介相当電気通信役務に該当するサービスのうち利用者数が1,000万人以上である事業を扱っている等になります。より詳細な適用条件についてはこちらをご覧ください。

Q:電気通信事業法の新設項目である「外部送信規律」とはなんですか?

A:安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保に向けて利用者に関する情報を第三者に送信させようとする場合、利用者に確認の機会も付与する措置を義務付けたものが外部送信規律です。電気通信事業者または第三号事業を営む者で、「利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」を提供している事業者は全て適用対象となります。自社ECやWEBサイト等を運営されている場合も適用対象となる可能性がありますので注意が必要です。詳しい対象事業者については外部送信規律の対象事業者をご覧ください。

Q:外部送信規律の対象事業者は具体的にどんな措置を講じる必要がありますか?

A:外部送信規律の対象事業者には外部送信される利用者情報について当該利用者に確認の機会を付与する義務があり、「通知または公表」「同意取得」「オプトアウト」のいずれかの措置が求められます。それぞれの措置に対する事業者の対応例について気になる方はWEBサービス運営者やITエンジニアに求められる対応とは?をご覧ください。

まとめ

本記事では、2023年6月16日に施行される電気通信事業法の改正内容について解説しました。今後ますます社会のデジタル化は進むと考えられ、それに合わせてサイトの利用者の個人情報の扱い方に対する法整備も進むと考えられます。
この流れを踏まえると、今回の改正電気通信事業法の適用事業者のみならず、適用外の事業者もいずれは対応する必要性が出てくると考えるべきでしょう。

健全なサービス提供を継続していくためにも、できるだけ早めに個人情報の管理・利用開示に対応した運用に切り替えていきましょう。

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