スクラムマスターの認定資格の種類一覧!費用・難易度・合格率を徹底紹介
スクラムマスター認定資格の取得を目指す方向けに、資格の種類ごとの費用、難易度、合格率をお伝えします。資格取得のメリットやスクラムマスターに求められるスキルも必見です。転職やスキルアップに役立つ資格なので、ぜひ取得に向けた準備に役立ててください。
目次
スクラムマスターとは?
システムやソフトウェアの開発における手法である「アジャイル開発手法」の一種である「スクラム」において重要な役割を担う人物が「スクラムマスター」です。
主な役割は、スクラムメンバー全員がスクラムの原則を理解し、正しく実践することでスクラムを確立し、効果的に機能させるためのサポートをすることです。端的に言えば、スクラム開発の調整役やリーダー役を担う立場の人を指します。
スクラムマスターの主な役割
スクラムマスターは、多岐にわたる役割を担い、チームの成功を支える重要な存在です。以下で、主な役割を詳しく解説します。
技術的な計画サポート
スクラムマスターは、プロダクトバックログの作成をサポートし、優先順位を明確にします。プロダクトバックログとは、開発チームが取り組むべきタスクや機能の一覧表です。それぞれの項目には優先順位が付けられています。
スクラム開発に関する知識や経験が豊富なスクラムマスターの視点から、スムーズで効率的な開発を進行します。
開発者の進捗確認(デイリースクラムの開催)
スクラムマスターは、毎日同じ時間に行う短時間のミーティング「デイリースクラム」を開催します。
メンバーが日々の状況、進捗、課題を共有する場であり、チーム全員が同じ方向を向いて作業を進められるようにします。必要に応じてスプリントバックログの修正もサポートし、開発の障害を迅速に取り除くことも役割のひとつです。
スプリントレビューの開催
スクラムマスターは、各スプリント終了後に行う「スプリントレビュー」を進行します。このミーティングでは、チームが開発した機能をステークホルダーにデモンストレーションし、フィードバックを収集します。
ステークホルダーはプロダクトオーナー、顧客、マネジメント層など、プロジェクトに関心を持つ全ての関係者です。次のスプリントに向けた改善点を見つける目的もあり、プロジェクトの進行状況を確認し、計画を調整します。
チーム内外の問題の解決
スクラムマスターは、プロジェクトの進行を妨げる問題の解決に取り組みます。問題が発生した場合、その原因を特定し、迅速に対応することでプロジェクトの遅延を防ぎます。
また、チームが効率的に作業できる環境を提供し、メンバーが最高のパフォーマンスを発揮できるようサポートするのも役割のひとつです。リソースの調整やコミュニケーションの改善を行います。
プロダクトバックログの改善(リファインメント)
スクラムマスターはプロダクトバックログを最新化することも役割で、これを「リファインメント」と呼びます。メンバーとのヒアリングを通じて、バックログアイテムを具体化し、優先順位を適切に設定します。
なお、このリファインメント作業は「グルーミング」とも呼ばれることがありますが、同じ活動です。
プロジェクトマネージャーとの違い
スクラムチームには「プロジェクトマネージャー」も含まれており、スクラムマスターと混同されがちです。プロジェクトマネージャーとスクラムマスターの役割には明確な違いがあります。
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの責任者として予算管理、スケジュール調整、リスク管理などを行うのが役割です。
一方、スクラムマスターは、管理ではなく、スクラムの成果を最大限に発揮できるようチーム全体をサポートします。例えば、スクラムイベントのファシリテーションや障害の除去など、チームが効率的に作業できるようにする役割を担います。
スクラムマスターは、チームを引っ張るリーダーというよりも、組織に奉仕しつつチームを支援する役割です。そのため、スクラムマスターの支援範囲はより広くなります。
スクラムマスターの認定資格の種類|費用・難易度・合格ラインを紹介
スクラムマスター関連の資格はさまざまな団体から発行されています。それぞれ制度に違いがありますが、以下では知名度が高い認定資格をピックアップして詳細をお伝えします。
認定スクラムマスター® (CSM®)
認定スクラムマスター®(Certified ScrumMaster、以下CSM®)は、2001年に設立されたアメリカの非営利団体「Scrum Alliance(スクラムアライアンス)」が提供する認定資格です。歴史が古く、日本での認定者数も多いです。受験するには、グループワークを含む研修を受講する必要があります。
基礎となるCSM®の他に、上位レベルの「上級認定スクラムマスター(Advanced Certified ScrumMaster®、以下A-CSM®)」「認定スクラム プロフェッショナルスクラムマスター(Certified Scrum Professional – ScrumMaster®、以下CSP-SM®)」があります。
CSM®の受験費用
受験費用は、研修費用と試験費用を含め20万円~30万円程度が相場です。こちらにはScrum Allianceが提供する認定料や認定試験の受験料が含まれています。90日以内であれば、追加料金なしで2回まで受験が可能です。
資格は2年間有効で、更新費用は100ドルです。(2024年7月時点)
CSM®の合格ライン
50問中の37問以上の正答(正答率75%程度)が合格ラインです。試験形式はオンラインで、日本語の選択もできます。問題形式は4者択一で、試験時間は60分です。
CSM®の難易度
スクラムの基本知識がある人にとって難易度は低めです。研修では認定試験に必要な知識を体系的に学べるため、初心者でも合格しやすいといえます。ただし、研修中にはグループワークでスクラムマスターとしての技量が試されるため、徹底した受講と復習が必要です。そのため、研修が試験よりも厳しいと感じる声もあります。
認定資格スクラムマスター(RSM)
認定資格スクラムマスター研修(Registered Scrum Master®、以下RSM)は、Scrum Inc. Japan(スクラムインクジャパン)が提供する認定資格です。2022年8月より名称が「Licensed Scrum Master(LSM)」から変更されました。事前に「Registered Scrum Master® Training」と呼ばれる研修を受講する必要があります。
スクラムの共同考案者ジェフ・サザーランド博士によって作られた資格で、博士の長年の経験による洞察力や戦略を学べます。
こちらは、日本企業でスクラムを効果的に機能させるためのスキルを証明する資格で、研修も受験も日本語で行われるのが特徴です。研修は、スクラム未経験でも受講できます。「Scrum Inc.認定資格スクラムマスター研修 for Woman」という女性が対象の研修プログラムも提供されています。
RSMの受験費用
受験費用の相場は、約22万円です。こちらには研修費用と認定試験の受験費用が含まれています。受験費用は、研修受講後30日以内に受ける1回目、不合格だった場合に90日以内に受ける2回目までが含まれています。3回目以降からは追加費用が発生するので注意が必要です。
資格は1年間有効です。更新する際は受験する必要がありますが、1年更新・3年更新・永年更新コースがあり、それぞれ費用が異なります。
出典:Registered Scrum Master® Training
RSMの合格ライン
合格ラインに関する情報については公式からの情報は開示されていません。
RSMの難易度
RSM™は研修で学ぶ内容が幅広いため、スクラム未経験者にとっては難しく感じる場合もあります。
まずは、スクラムの基本的な概念や実践方法を理解して、研修での演習やシミュレーションで実践的なスキルを磨くことがポイントです。それらを通じて体系的にスクラムを学びつつ、認定試験に必要な知識を身に付けましょう。取得にあたり最低でも2日間(約16時間)の研修が必要です。
プロフェッショナルスクラムマスター™(PSM)
プロフェッショナルスクラムマスター™(Professional ScrumMaster、以下PSM)は、スクラムの共同考案者ケン・シュウェイバーによって設立された組織「Scrum.Org(スクラムドットオルグ)」による認定資格です。
ほか2つの認定試験よりも低いコストで取得できますが、英語のみの受験可能です。
難易度別に3レベル(PSM1・PSM2・PSM3)があり、上位レベルを受験するには下位レベルの認定試験に合格する必要があります。
PSMの受験費用
受験費用は、レベルによって異なります。料金はPSM1が200ドル、PSM2が250ドル、PSM3が500ドルです。この費用には試験パスワードと受験費用が含まれています。(2024年7月時点)
不合格の場合、2回目の受験に際して追加料金は発生しません。2回目も不合格の場合、3回目は受験パスワードを再度購入する必要があります。
事前にProfessional Scrum Master研修の受講が推奨され、日本語の講義も用意されています。Professional Scrum Master研修の受講料は20万円です。(2024年7月時点)
PSMの合格ライン
合格ラインは、各レベルによって違いますが、他の認定試験に比べて比較的高めに設定されています。
PMS1の場合、80問中68問以上正解(正答率85%以上)が必要です。問題形式は多肢選択式、複数回答式、正誤問題で、試験時間は60分となります。
PMS2の場合も正答率は85%以上と同じですが、問題数は30問です。問題形式は多肢選択式、複数回答式、正誤問題で、試験時間は90分となります。
PMS3の場合、問題数は24問、問題形式はエッセイ問題で、試験時間は150分です。合格ラインは公表されていません。
PSMの難易度
レベルによって差がありますが、正答率85%以上なので十分な対策が必要です。
PSM1は、スクラムの基礎知識に加えて実践的な応用力も問われるので、単なる暗記では対応するのが難しいです。PSM2・PSM3はさらに難易度が上がるので、より深い知識と経験が必要とされます。
スクラムマスターの認定資格はいらない?取得するメリット
スクラムマスターの認定資格を取得することで以下のメリットがあります。
スクラムの理解が深まる
認定資格を取得する中で受ける研修や受験勉強を通して、スクラムフレームワークをより深く理解できます。特に研修に関しては実戦形式で行われるため、スクラムマスターの役割や責任がより明確になるでしょう。
また、チームや組織全体でスクラムを効果的に実践するための洞察力が高まるのもポイントです。「チーム全体で効果的に機能させる」というスクラムマスターの重要な役割を果たす力がつきます。
スキル・知識を身に付けられる
スクラムマスターの認定資格を取得すれば、実際に現場で必要な知識やスキルを習得できます。スクラムマスターはチームのリーダーではないものの、リーダー同様のスキルが求められる立場です。
例えばファシリテーションスキルやコーチングスキル、コンフリクト解決スキルなど、チームを効果的に支援するために必要な能力を、研修や受験勉強の際に凝縮して習得できます。また、自身の強みを把握し足りない知見を補えるため、スキルアップにもつながります。
自信を持って実務に取り組める
スクラムマスターの認定資格を取得する前後では、実務の取り組みに対する自信に差が出ます。
資格取得の中で公式に認められた正しいスクラムの知識を得られるため、自身の知識に対して確信を持てます。また、コミュニケーション能力や問題解決能力も身に付き、チーム内でも「安心して任せられる存在」となるでしょう。
スクラムマスター認定資格の取得に求められるスキル
スクラムマスターには、技術的なスキルよりプロジェクトを円滑に進め、かつ成果の最大化を目指すためのスキルが求められます。
認定試験の取得には、スクラムフレームワークに対する深い理解が必要です。そのためには、スクラムの基本原則、スクラムイベント、スクラムチームの役割などを学ばなければいけません。
特に、スプリントの概念やスクラムイベント(デイリースクラム・スプリントレビュー等)の目的や進め方を理解することは重要です。
また、トラブルに対処するスキルも欠かせません。メンバーと即座にコミュニケーションをとって事態を収拾する問題解決能力も求められます。
まとめ
スクラムマスターの認定資格には種類があり、それぞれの違いを把握したうえで受験をすることが効率的です。
研修や受験勉強で理解を深めることで取得した資格は、高度な専門スキルや知識の証明になります。また、就職や転職の際にアピールポイントにもなります。
スクラムマスターの認定資格を取得したら、積極的に活用しましょう。FLEXY(フレキシー)では、フリーランス向けのスクラム開発関連の案件も豊富なので、ぜひ利用してみてください。