ITコーディネータ試験とは?難易度・合格率や試験対策方法を紹介
本記事では、ITコーディネータ試験の概要や取得するメリットを解説します。ITコーディネータ試験の受験を検討する中で、「難易度が高そう」「どんな対策をすべきかよくわからない」などと悩む方は多いでしょう。合格率や勉強時間の目安、おすすめの対策方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
ITコーディネータ試験とは?
ITコーディネータ試験は、経営とITの両方の知識を測定・証明するための試験です。特定非営利活動法人ITコーディネータ協会(ITCA)によって認定されています。企業の経営戦略と、情報システムの構築を支援するのがITコーディネータの役割です。試験概要は以下の通りです。
ITコーディネータ試験の概要
- 試験日程:年2回(各期間50日程度)
- 受験資格:誰でも受験可能
- 試験方式:CBT方式(コンピュータを使って受験)
- 問題方式:多岐選択式
- 問題数:100問(必須60問・選択40問)
- 試験時間:120分
- 受験料:1万9,800円(税込)
試験は年2回で、それぞれ50日程度の期間が設けられています。全国に約300カ所ある会場から指定できるため、自分にとって都合のよい日時と場所で受験できるのが特徴です。また、受験にあたって特別な学歴や資格は不要です。年齢や経験にかかわらず、誰でも受けられます。
ITコーディネータ資格を取得するメリット
ITコーディネータ試験は実践的な知識とスキルを身につけられるほか、転職や独立にも有効です。具体的に、どのような取得メリットがあるのかを確認していきましょう。試験を受けるかどうか迷っている方は、メリットを踏まえて検討してみてください。
実践的なIT知識とスキルが身につく
実践的なIT知識とスキルを身につけられるのがメリットです。試験の出題範囲には、IT経営推進プロセスガイドライン(PGL)に記載の幅広い領域が含まれます。試験勉強に励む中で、IT経営の役割や推進方法、マネジメント方法などの最新知識を学べます。
また、ITコーディネータの資格を認定してもらうには、試験の合格に加えてケース研修の受講が必要です。ケース研修では実際のビジネスシーンを想定した演習を行うため、理論と同時に実践的なスキルも身につけられます。
経営の視点・考え方を学べる
ITコーディネータ試験では、経営戦略やビジネスモデルの構築、業務改革などの経営全般に関わる知識が要求されます。勉強の過程でITの基本的な知識を身につけつつ、経営の視点・考え方も学べる点がメリットです。
なお、ITコーディネータ試験には必須問題と選択問題(経営系または情報系)があります。経営系を選んだ場合には、経営戦略・業務改革・IT戦略の3領域から応用問題が出題されます。経営についてより深く学びたい方は、選択問題で経営系を選ぶのもひとつの方法です。
転職や独立に有利
転職や独立を考えている方にとって大きなアドバンテージになります。ITコーディネータ試験は国家資格ではありませんが、「経済産業省推進資格」に位置づけられています。行政機関が推進する民間資格であるため信頼性が高く、転職や独立に活用可能です。
特にアドバンテージになりやすいのは、IT関連企業やコンサルティング会社への転職です。ITコーディネータの資格を持っていることで、ITと経営の両方に精通した人材であると証明できるため、企業から高く評価してもらえます。
企業からの信頼獲得につながる
資格の維持には毎年の更新が必要で、継続的な学習や実務活動が求められます。そのため、常に最新のIT知識と経営スキルを保持し、最適なIT経営をコーディネートできる専門家であることの客観的な証明が可能です。特に資格の学習範囲と業務の関連性が高いIT業界や、経営コンサルティング業界での信頼獲得につながります。
ITコーディネータ試験のデメリット
多くのメリットがある一方で、ITコーディネータ試験にはデメリットもあります。受験の際は、メリットだけでなくデメリットも理解しておきましょう。
業務独占資格ではない
ITコーディネータは、法的に定められた業務独占資格ではありません。業務独占資格とは、医師や弁護士のように、持っていないと業務に従事できない資格のことです。
つまり、ITコーディネータ資格は、持っていなくてもITコンサルティングや経営戦略の立案などの業務に携われます。経営とITの橋渡しを担う専門家を認定する資格ではありますが、業務独占資格ほどの専門性はない点に注意しましょう。
更新手続きのために継続的な学習が必要
ITコーディネータ資格は、取得後も毎年の更新手続きが必要です。更新には実践力ポイントの獲得や実務活動報告書の作成が求められるため、合格して終わりではなく、継続的な学習が求められることを十分に理解しておきましょう。資格の維持に必要な条件は以下の通りです。
ITコーディネータ資格の更新条件
- 更新前年度の実践力ポイントが計10以上
- 更新前年度の「実務活動報告書」を提出
- 更新手続料2万2,000円(税込)を入金
- 資格認定後3回目の資格更新までに、フォローアップ研修を3講座受講
また、資格を認定してもらうために受講するケース研修には、22万円(税込)の費用がかかります。資格取得にあたっての初期費用に加え、維持にはランニングコストがかかる点もデメリットです。
出典:ITコーディネータをめざす方へ|ITコーディネータ協会
資格だけでは即戦力にならない
ITコーディネータは、ヒアリングによって顧客の課題を洗い出したり、課題の解決方法や経営戦略を考案したりといった業務を行います。例えば簿記のような一定のルールに従う業務とは異なり、知識だけで正解を導き出すのが困難な業務です。さらに、資格取得によって得られる知識はあくまでも基礎的なものであり、それだけでは、実際の業務で必要となるスキルを十分に満たすとはいえません。
そのため、資格を取得しただけでは即戦力として評価されづらいのが現実です。ITコーディネータとして活躍するには、資格取得に加え、実務を通じて経験を積み、スキルを磨き続けることが求められます。
ITコーディネータ資格取得後のキャリアパス例
ITコーディネータ資格の取得後は、事業会社の情報システム部門や経営企画部門でキャリアを築く人が多く見られます。代表的なキャリアパスは以下の通りです。
- 情報システムコンサルタント
- 経営コンサルタント
- 中小企業診断士
- 公認会計士
- 税理士
ITコーディネータ協会によると、資格認定者のうち約75%が企業内ITコーディネータとして活躍しています。このうち大部分を占めているのがシステムエンジニアおよびコンサルタント(約40%)です。また、経営層・マーケティング職・営業職(30%)の割合も高く、ITコーディネータの知識を活かしてCIOと同等の活躍をする人も一定数います。
ITコーディネータ試験の難易度・合格率
以下では、ITコーディネータ試験の難易度と合格率をそれぞれ解説します。
ITコーディネータ試験の難易度
ITコーディネータ試験の難易度は、受験者のバックグラウンドや準備状況によって異なります。難しいと感じる方もいれば、易しく感じる方もいると理解しておきましょう。試験の傾向としては、出題範囲が広く、ITと経営の両方の幅広い知識を問われるのが特徴です。そのため、公式テキストであるIT経営推進プロセスガイドラインを使って繰り返し学習する必要があります。
試験の過去問は未公開ですが、代わりにサンプル問題や模擬試験が用意されています。試験対策にはこれらの問題を活用しましょう。
以下のサイトから、サンプル問題や模擬試験を確認できます。本番でどのような問題が出題されるのか確かめるためにも、ぜひ受験前に挑戦してみてください。
ITコーディネータ試験の合格率
ITコーディネータ試験の合格率は比較的高く、例年60%から70%の範囲で推移しています。半数以上の受験者が合格することを考えると、しっかりとした対策を進めていけば、十分に合格を狙える水準の試験です。
ただし、スキル標準ユーザー協会が定義する「ITSSキャリアフレームワーク」の中で、ITコーディネータ試験はミドルレベルの「レベル4」に位置づけられています。合格率が高いとはいえ、十分にハイレベルな試験であることを理解しておきましょう。
ITコーディネータ試験に必要な勉強時間
合格に必要な勉強時間は50時間程度とされています。ただし、これはあくまでも目安であり、個人の経験やスキルレベルによっても変わる点に注意しましょう。IT業界で実務経験がある方や、経営の知識が豊富な方であれば、より短時間で対策できる可能性があります。
ちなみに、ケース研修では事前学習と集合研修が実施されます。集合研修は1日7時間30分×6日間の長時間にわたって実施されるため、すでに一定の知識と経験がある方でも十分な時間の確保が必要です。
ITコーディネータ試験におすすめの試験対策
最後に、おすすめの試験対策法を紹介します。サンプル問題や模擬試験を使って自分で対策を進めつつ、研修機関が実施する講座なども活用しながら効率的に学習していくことが大切です。
試験対策講座を受講する
サンプル問題や模擬試験を自分で解くだけでは不安な方は、試験対策講座を受講するのがおすすめです。ITコーディネータ協会が認定する研修機関が独自に講座を実施しており、試験の出題傾向や重要ポイントを体系的に学習できます。
試験対策講座には、会場に出向いてしっかりと学習するものもあれば、オンラインで気軽に参加できるものもあります。研修機関によって提供スタイルや受講料が異なるため、自分に合う講座を探してみてください。
なお試験対策講座は、ITコーディネータ試験への合格を保証するものではありません。講座を受講しても、試験に合格できるとは限らない点に注意が必要です。
IT経営推進プロセスガイドラインを熟読する
ITコーディネータ試験の問題は、「IT経営推進プロセスガイドライン(PGL)」に基づいて作られています。ガイドラインを熟読し、試験に必要な知識を網羅的に理解しておきましょう。ガイドラインは自分で購入すると書籍版2,750円(税込)、電子版1,650円(税込)の費用が必要ですが、ケース研修に参加する場合は配布してもらえます。
出典:出題範囲とガイドライン/試験区分/試験ガイドブック|ITコーディネータ協会
ケース研修を先に受講する
ITコーディネータ試験とケース研修のどちらを先に受けるかは、特に指定されていません。研修の内容は試験の出題範囲と密接に関係しているため、特別なこだわりがない限りはケース研修を先に受講するのがおすすめです。
■ケース研修を先に受講するメリット
- 実践的な学習を通じて、IT経営の推進方法やITコーディネータの役割を理解できる
- 研修で得た知識と経験が試験対策に直結する
- 自分の得意分野と苦手分野がわかる
- 選択問題で経営系と情報系のどちらが解きやすいか判断できる
ケース研修には、「集合開催」「オンライン開催」「集合+オンライン併用開催」の3つの実施形態があります。集合開催は講師や受講生と直接意見を交わせることがメリットです。一方のオンライン開催は、通学の必要がなく、どこにいても学習しやすいメリットがあります。ぜひ自分に合う実施形態を選んでみてください。
時間配分の練習をする
ITコーディネータ試験は、全100問を120分で解答する形式で実施されます。単純計算で1問あたり1分12秒の時間しかないため、すばやく正確に問題を解く練習が欠かせません。本番で焦らずに解答できるように、受験前に模擬試験を繰り返して時間配分の感覚を身につけておきましょう。
出題される100問の内訳は、必須問題が60問(基本問題40問、応用問題20問)、選択問題が40問(経営系または情報系の応用問題)となっています。基本問題はできる限りすばやく解き、応用問題に時間をかけられるようにするのも試験対策のポイントです。
まとめ
ITコーディネータ試験の勉強をする過程で、経営の視点や考え方を深く学べます。実践的なIT知識とスキルを身につけることで、転職や独立に有利に働くメリットもあるため、ぜひ取得を目指してみましょう。
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