アプリケーションエンジニアとは?仕事内容や年収、必要な資格を紹介

IT職種の働き方 アプリケーションエンジニア

スマートフォンの普及でアプリが広く認知され、DXの推進やIoT製品の開発が盛んになったことでアプリケーションエンジニアの注目度が高くなっています。この記事ではアプリケーションエンジニアに関心がある人に向け、仕事内容や平均年収、資格、求められる能力について解説します。

アプリケーションエンジニアとは?仕事内容を解説

アプリケーションは英語では「application」と表記され、「適用」や「申請」を意味します。利用者の目的や業務のために構築されたプログラムであり、スマートフォンやパソコン、家電製品、銀行のATM、エレベーターなど、さまざまな機器の動作を制御します。このアプリケーションの設計や開発、保守などを担うのが「アプリケーションエンジニア」です。「アプリ」や「app」とも略され、主に下記の3つの開発分野があります。

  • 業務系アプリケーション
  • スマートフォン向けアプリケーション
  • Webアプリケーション

それぞれの分野についての解説は、以下のとおりです。

1. 業務系アプリケーション

企業の業務を改善・効率化するためのアプリケーションです。顧客情報や売上の管理などの基幹系をはじめ、グループの共同作業をサポートする情報系システム、営業をサポートするシステムなど、さまざまなタイプがあります。「Word」や「Excel」、「Photoshop」も業務系アプリケーションの一種です。

また、特定の製品や装置の動作を担うアプリケーションは「組み込み系アプリケーション」と呼ばれ、銀行のATMやエレベーター、家電製品などが該当します。業務系アプリケーションエンジニアには業務に関する理解が必要であり、組み込み系の開発に携わる際はハードウェアの知識も必要です。

2. スマートフォン向けアプリケーション

「ネイティブアプリケーション」とも呼ばれるスマートフォン向けアプリケーションはその名のとおり、スマートフォンやタブレットを動かすために開発されたプログラムです。「Google Play」や「App Store」などで配信されているアプリケーション全般を指します。ゲームや音楽再生、健康管理、家計簿など、多種多様なスマートフォン向けアプリケーションが開発・運用されています。

スマートフォンの高い普及率に伴い、需要が高まっているのがスマートフォン向けアプリケーションのエンジニアです。2023年10月時点における日本のスマートフォンのOSシェア率は、「iOS」が70.27%、「Android」は29.47%です。2つのOSがシェアの大半を占めているため、スマートフォン向けアプリケーションのエンジニアを目指す場合は、「iOS」と「Android」のアプリ開発に用いられる言語の習得が推奨されます。

出典:Statcounter Global Stats「Mobile Operating System Market Share Japan」

3. Webアプリケーション

基本的なプログラミング言語のひとつである「HTML5」で開発されたゲームやECサイト、SNSなど、Webブラウザ上で動くアプリケーションを指し、インターネットに接続できれば利用できます。代表的なWebブラウザとして挙げられるのが、Google社の「Google Chrome」やMicrosoft社の「Microsoft Edge」、Apple社の「Safari」などです。

Webアプリケーションの開発には「フロントエンドエンジニア」と「バックエンドエンジニア」が携わり、前者はユーザーの目に触れる部分を担当します。ECサイトを例に挙げると、ユーザーを惹きつけるためのサイトデザインや購入までをスムーズに誘導するボタン、使い勝手の向上につながるパンくずリストなどを構築するのが「フロントエンドエンジニア」です。

一方、ユーザーからは見えない部分であるインフラを担うのが「バックエンドエンジニア」です。システムの監視や保守、アクセスが増えた際の対応などが業務として挙げられます。

アプリケーションエンジニアの平均年収

厚生労働省が職業情報を提供するサイト「job tag」によると、ソフトウェア開発に携わるエンジニアの2022(令和4)年の平均年収は約550万円です。同年の給与所得者全体の平均年収は458万円なので、アプリケーションエンジニアを含むソフトウェア開発に携わるビジネスパーソンは平均より約92万円多い年収を得ています。

出典:厚生労働省「job tag」 ソフトウェア開発(パッケージソフト),
厚生労働省「job tag」 ソフトウェア開発(スマホアプリ),
国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」

平均年収は少しずつ増加している

厚生労働省が実施する「賃金構造基本統計調査」によると、2020(令和2)年のアプリケーションエンジニアの平均年収は511万9,000円でしたが、2021(令和3)年には平均年収522万9,700円に上がりました。そして、上記でも触れたように2022(令和4)年の平均年収は550万2,200円まで上向いています。

年収が上向いている背景として考えられるのが、スマートフォンの高い普及率や、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により業務のデジタル化に取り組む企業が増加傾向にあることです。これまで参入していなかった企業や業界もアプリケーションの開発や運用に取り組み始めているため、アプリケーションエンジニアの需要が高まり、それに伴い年収も年々増加しています。

出典:e-Stat 政府統計の総合窓口「賃金構造基本統計調査」

また、アプリケーションエンジニアは副業をすることでも収入を増加させることが可能です。収入アップを目指しているアプリケーションエンジニアの方はアプリ開発の副業について調べてみてください。

アプリケーションエンジニアの将来性は?

経済産業省が公開する「IT人材需要に関する調査(概要)」によると、調査当時の2018(平成30)年時点ですでに約22万人のIT人材が不足していました。IT人材の不足は深刻化が進むと同省は予想しており、2030年には最大で約79万人の人手不足に陥るという試算が掲載されています。

この試算や市場の状況を踏まえて、以下にアプリケーションエンジニアの将来性について解説します。

出典:経済産業省 情報技術利用推進課 「IT人材需要に関する調査(概要)」P2

引き続き高い需要がある

ネット環境が整い、スマートフォンやタブレットが普及したことにより、ゲームアプリやWebアプリが一般ユーザーにとって身近な存在になりました。さらに、IoT製品の開発が盛んになり、政府がDXの推進を図っていることなどから、業務改善のためのアプリケーションや組み込み系アプリケーションの需要も拡大することが予想されます。

一昔前は「システムの開発・導入」と聞けば大企業のイメージがありましたが、近年では中小企業向けのWebアプリも数多く提供されています。また、アプリケーションの開発環境やデータの管理・保守環境がクラウドサービスでも対応できるようになり、環境整備のための初期投資費用を抑えられることからアプリケーションの開発に参入するハードルが下がりました。そのため大企業だけではなく、中小企業でもアプリケーションエンジニアが求められています。

アプリケーションエンジニアの需要は高まっているものの、すでに触れた経済産業省の試算にあったように人手不足は進むことが予想されているため、引き続き高い需要と待遇面の向上が期待されます。

今後も競争は激しくなっていく

アプリケーションエンジニアの需要は高いので、目指す人口も増えています。一方でIT人材の人手不足は続くことが予想されていることから、企業側は優秀な人材をよりよい待遇で迎えようとします。そのため、整った環境で働きたい人は厳しい競争を勝ち抜かなければいけません。

就職先の選択肢は多いですが、整った環境で働き高い収入を得るには、幅広い業務に対応できる技術や知識、資格、実績が必要になります。

アプリケーションエンジニアに必要な資格とは

アプリケーションエンジニアが、高い収入や整った労働環境を得るために必要なもののひとつが資格です。取得が推奨される資格は、下記の3つが挙げられます。

  • 基本情報技術者試験
  • アプリケーション技術者認定試験
  • C言語プログラミング能力認定試験

資格の詳細は、以下のとおりです。

基本情報技術者試験

基本情報技術者試験は「独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)」が実施する国家試験であり、ITエンジニアの登竜門に位置づけられる資格です。独学でも合格を狙える資格ですが、IPAが公開するデータによると2022(令和4)年度の合格率は約41%、2021(令和3)年度が約42%となっているので、万全を期すなら通信講座やスクールの受講が推奨されます。

未経験から合格を狙うなら、目安となる勉強時間は200時間程度です。試験は「科目A試験(旧午前試験)」と「科目B試験(旧午後試験)」の2つで構成されています。科目A試験は60問90分、範囲は「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の3分野です。ITを支えるさまざまな数字の理論やアルゴリズム、OS、データベース、関連する法律や規格などの幅広い知識が求められます。

科目B試験は20問100分、プログラミングと情報セキュリティ、アルゴリズムの分野から出題されます。どちらも1000点満点中600点以上で合格です。また、IPAが認定する講座を受け、修了試験に合格すると科目A試験は免除されます。受験手数料は7,500円で、科目A試験の免除を受けた場合も同額です。

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「統計情報(全試験区分)」

アプリケーション技術者認定試験

アプリケーション技術者認定試験は「Android技術者認定試験」とも呼ばれ、Androidアプリの開発に特化した資格です。そのため、Androidアプリの開発に取り組む企業の就職する際には強力な武器になります。

「一般社団法人 IT職業能力支援機構 Android技術者認定試験制度委員会」が試験を実施しており、基本的な知識が求められる「ベーシック」と、高度な業務アプリケーションの開発者を対象とした「プロフェッショナル」の2つの試験があります。試験方式はコンピュータで受験するCTB(Computer Based Test)方式です。70問90分、70%以上の正答率で合格になり、合格者には認定書が送付されます。受験料金は1万6,500円です。

この資格は世界で通用し、試験は英語と日本語、繁体中国語の3言語で配信されています。全国に160カ所以上の試験会場があり、毎日受験可能で、合否がその場で発表されるのが特長です。
日本でのシェアの大部分を占めるiOSアプリの開発にも携わりたい場合は、Apple社が開発したプログラミング言語「Swift」の基礎知識を証明する資格「App Development with Swift」の取得が推奨されます。

C言語プログラミング能力認定試験

C言語は処理速度が速く、汎用性も高い、古くからあるプログラミング言語です。C言語プログラミング能力認定試験を実施する「ビジネス能力検定 サーティファイ」は民間企業ですが、その高い認知度から就職の際に資格が有利になります。

資格は1~3級の難易度に分かれており、自身のレベルに応じて受験できます。受験料金は3級5,200円、2級6,400円、1級7,800円です。3級と2級はリモートで受験でき、1級のみ会場で受験します。

アプリケーションエンジニアに向いている人

アプリケーションエンジニアで成功するビジネスパーソンには、下記の3つの共通点があります。

  • 論理的思考力がある
  • 地道な作業も得意
  • コミュニケーション能力がある

それぞれの共通点についての解説は、以下のとおりです。

論理的思考力がある

アプリケーションの開発はエラーとの戦いと言っても過言ではありません。開発を担当するアプリケーションに不具合が起こった際、冷静に対処する必要があります。また、行き当たりばったりでは解決しないケースもあるため、対処に当たる際は感情を抑え、論理的に考えなければいけません。

どのような手段を用いるのか、人員をどこに配置するのか、自身はどの役割を担うべきなのかといった判断を論理的に導き出せるビジネスパーソンがアプリケーションエンジニアに向いています。

地道な作業も得意

アプリケーションに限らず、プログラミングは膨大なコード(またはソースコード)と向き合います。英語の羅列を相手にした地道な業務が多く、エラーやバグの原因を探す忍耐力も必要です。

後述するコミュニケーション能力も求められますが、コードと向き合い、忍耐強くバグを探す業務にも当たるため、地道な作業が得意なビジネスパーソンがアプリケーションエンジニアに向いています。

コミュニケーション能力がある

大規模なアプリになるほど開発に携わる人数が増えます。そのため、エンジニアにはコミュニケーション能力が必要です。基本である「報・連・相」はもちろん、メンバーと意思疎通を図りながらそれぞれが担当する業務の内容や量を把握し、スケジュールを円滑に進めるため調整しなければいけません。チャット越しのやり取りもあるため対面だけではなく、文章を介したコミュニケーション能力も求められます。

コミュニケーション能力がある上、大所帯をまとめる能力があったり、機微に聡かったりする人は、より高いアプリケーションエンジニアの適性があります。

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まとめ

経済産業省の試算が示すとおり、アプリケーションエンジニアは今後も高い需要が見込まれる職業です。待遇面でも上向いていますが、資格の取得や経験を積むなど、厳しい競争を勝ち抜くための武器が必要になります。
また、コードやバグと向き合い地道な作業に当たりながら、開発に携わるメンバーと円滑にコミュニケーションを図る能力が求められるため、それらの能力に秀でている人はアプリケーションエンジニアに向いているかもしれません。

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