【後編】エンジニア組織の成果を最大化する「カルチャー」とは?

ご登壇者

・株式会社ナビタイムジャパン VP of Engineering 兼 ACTS(研究開発)ルートグループ責任者 小田中育生 氏 ・株式会社LIFULL CTO 兼 テクノロジー本部長 長沢翼 氏 ・パイオニア株式会社 執行役員CTO 岩田和宏 氏

2021年7月15日に開催されたCTOmeetupのイベントレポート後編記事です。

*前編記事はこちら>> https://flxy.jp/article/20527

後編は、成果を最大化するための「カルチャー」についてディスカッションしていただきました。

カルチャーの打ち出し方

カルチャーは掲げるよりも行動で見せたほうが効果的

 小田中 育生
株式会社ナビタイムジャパン VP of Engineering 兼 ACTS(研究開発)ルートグループ責任者 小田中 育生 氏
2009年株式会社ナビタイムジャパン入社。経路探索の研究開発部門責任者としてGPGPUを活用した超高速エンジンやMaaS時代にフィットしたマルチモーダル経路探索の開発を推進。移動体験のアップデートに携わりながら、VPoEとしてアジャイル開発の導入推進、支援を行う。 著書「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」
株式会社ナビタイムジャパン VP of Engineering 兼 ACTS(研究開発)ルートグループ責任者 小田中 育生 氏(以下、小田中):続いてカルチャーの打ち出し方についても話していきたいと思います。ここはいかに外部発信をするかというところですね。

弊社はインタビューをメインにした採用サイトを展開しており、社長メッセージや各プロジェクトのメンバー、個別の社員のインタビューを掲載しています。

カルチャーはやはり、実際に働いている社員がどのように考えて発言しているかを見せたほうが伝わりやすいと思うんですよね。ベン・ホロウィッツ著の『Who You Are』にも「カルチャーは行動である」という趣旨が書かれていましたが、結局カルチャーは掲げるよりも行動することが大切なので、実際のエンジニアたちの声を載せているわけです。

あとは技術中心にプラスαの内容をnoteで発信しています。例えば社内で受講したアジャイル開発研修の話から新サービスの話、Amazon Braketを利用して量子コンピューターを動かすというゴリゴリにテッキーな話まで、ごった煮感がナビタイムジャパンのカルチャーを発信することにつながっています。

外部イベントにもさまざま登壇させていただいていますね。AWSやFlutterに関するイベントで話した資料を、スライドシェアにまとめて発信もしています。

社内ブログで情報発信すると採用時のフィルタリングになる

岩田 和宏
パイオニア株式会社 執行役員CTO 岩田 和宏 氏
東京工業大学大学院を卒業後、大手セキュリティ会社で画像センサーの開発、外資系ベンチャー、スマホ系ベンチャー、mixi、ストリートアカデミーCTO、JapanTaxi CTOを経てパイオニアCTOに就任。ITのあの字もなかった業界を変革。現在はパイオニアで執行役員CTOを務めながら、複数企業で技術顧問としてDX推進やエンジニア組織構築を支援。
 

パイオニア株式会社 執行役員CTO 岩田 和宏 氏(以下、岩田):僕が経験上一番有効だと思ったのは、どんな媒体でもいいので社内エンジニアもそれ以外の職種も、ブログなどでしっかり発信していくことですね。採用の面談時に「ブログを見て社内の雰囲気がわかりました」と言われるようになるまで研究をしていました。

実際ブログを読み込んでいる人は会社に対する興味の度合いも高いでしょうし、採用時のフィルタリングにもなるので、そこにこだわるのは非常に大事です。ただ、前職ではあまり僕自身が文章チェックはしませんでした。変に飾らないほうがいいのかなと思います。 あとは小田中さんがおっしゃったように、イベントやカンファレンスなどに登壇することで、エンジニアリングにも注力しているところを見せたりするのも重要です。

ブログ、Qiita、OSSの公開などの形でカルチャーをアウトプット

長沢 翼
株式会社LIFULL CTO 兼 テクノロジー本部長 長沢 翼 氏
2008年株式会社ネクスト(現 株式会社LIFULL)入社。 フロント、サーバーサイド、ネイティブアプリなどアプリケーション開発に従事した後、バックエンド・インフラ系を担当し、API基盤の刷新、事業系システムのAWSへの移行チームを責任者として牽引。 2017年4月からCTO就任。 情報システム部門の責任者、ベトナムの開発系子会社の委任代表なども務める。
 

株式会社LIFULL CTO 兼 テクノロジー本部長 長沢 翼 氏(以下、長沢):LIFULLがやっていることとしては、外部への発信です。イベントに登壇もしていますし、僕は個人的にCTO noteという形で、エンジニアがどんな課題を抱えていて、どんなものを作ったのかを書いていたりします。

エンジニアの課題とその解決方法を外部の方に知っていただく意味では、外部に対して「Ltech」というLIFULL主催の勉強会も開催しています。2017年から2ヶ月に1回ほどの頻度でこれまでに計18回行い、コンパスの登録者数は昨日時点で1648名です。テーマは例えばLIFULL HOME’Sのフロントエンド技術や、不動産領域におけるAI活用などです。

あとはLIFULL Creators Blogでエンジニアの情報発信をしていますし、Qiitaでは細かいTipsを公開しています。外部にOSSも公開していますね。

flexyイベント

カルチャーの発信は社内外に対して好影響を与えられる

小田中:皆さん共通しているのは、やはり登壇をしたりブログを書いたり、長沢さんの場合はOSSを公開したりと、アウトプットをしている点ですね。「こういうカルチャーですよ」と説明するというよりも、カルチャーから生み出されたものを公開することで、カルチャーを感じ取ってもらうアプローチなのかなと思いました。

長沢:社員の顔が見えるというのは大事なのかなと思いますね。LIFULLは転職してきて数ヶ月の方に、入社した感想を社員noteに書いてもらっているんですよ。これは外部だけでなく、社内からも評判が良いです。外部の人からは「転職したらこう感じるんだ」とわかりますし、社員は「うちはこうやって見えているんだ」とわかります。

小田中:うちも去年、2年目の社員の方何名かに記事を書いてもらったのですが、社内の中途メンバーがそれを見て「ナビタイムジャパンはこういうカルチャーなんだな」とか「新入社員を大切に育てているんだな」「良い会社だな」と思ってくれたことでカルチャーフィットにつながったので、内部向けにも効果がありますよね。

岩田:内部向けに顔や趣味の見える化をするのはすごく大事ですよね。特に社員が100名を超えると話さない人も出てくるので、昔はランチルーレットなんかをやっていました。組み合わせをランダムで決めて、会社が1000円くらい補助をしてランチに行ってもらうんです。新入社員が入ってきたときは、2週間以内に一緒にランチに行ったらタダになるようにもしていました。

中途採用も含めて、入社を迷っている人に何が効くかといえば、一緒に働くであろうメンバーとご飯に行くことなんです。今はコロナなのでなかなかできませんが、実際に会ってカジュアルな会話をしてもらうのがいいと思います。

質疑応答

HR系の管理はエクセルベースからSaaSに移行傾向

質問者:HR系のツールは何か使っているのでしょうか?

長沢:HR系のツールというと採用以外にもタレントマネジメントシステムやラーニングマネジメントシステムなどいろいろなジャンルがありますが、それぞれ使っています。

タレントマネジメントシステムを用いて、360度フィードバックなどをしています。十数年前はそれこそエクセルベースでやっていたことが、今はほとんどシステム中心に移行していますね。

小田中:岩田さんはいかがですか?

岩田:採用に関してはSaaSサービスを使っています。タレントマネジメントシステムはまだ導入には至っていません。前職では使っていたのですが、OKRなどをしっかり管理するとなるとUXも含めていろいろな問題があって、なかなか使いこなせないんです。

小田中:うちもタレントマネジメントシステムは使っていますが、岩田さんと同じく使いこなすのが難しいなと思っています。スキルをメンバーに書いてもらう必要があってもなかなか更新されなかったり、知りたい切り口がなかったりですね。使いながらチューニングしていく必要があるのかなと思っています。

flexyイベント

「孤高のエンジニア」よりも「成果を最大化するチーム」が求められる時代

質問者:この10年ほどでエンジニアカルチャーはどのように変わってきたと感じますか?特にコロナ以降で顕著な点があればお聞きしてみたいです。

岩田:10年前はまだスタートアップやベンチャー企業が創業したくらいの時期だったんですよね。そういう意味でこの10年でエンジニアの活躍の場が増えてきました。昔はプログラマーやSEは大企業やベンダーに所属するのがメインでしたから。職種も変わりましたね。

クラウドやデータサイエンス、AI、ビッグデータが登場して幅広い職種が増えました。その分、スペシャリストが集まってチームを形成し、プロダクトやサービスを作るというフォーメーションになってきたと思います。フロントエンドなんかも細分化してきて採用は大変だったりしますが、一つひとつの技術がより洗練されてきていると感じます。

小田中:長澤さんはいかがでしょうか。

長沢:エンジニアのカルチャーの観点では、組織やエンジニアリングマネジメントの言語化が進んできた感覚があります。エンジニアリングをきちんと経営の中に入れていこうとする動きが全体感としてあり、そのためにエンジニアリングマネジメントも整備されていったと思います。

スキルは細分化が進んでいる領域と、境界線が曖昧になっている領域の2つが生まれているなと。細分化が進んでいるというのは、まさに岩田さんがおっしゃっていたような部分です。

その一方で、フルサイクルデベロッパーのような言葉も出てきています。それこそクラウドが進化したから、表から裏まで何でもやる人は全部やるといったように、組織や職種の垣根が曖昧になってきている部分があるというのが、ここ10年における特徴なのではないでしょうか。

小田中:僕はこの10年でいうと、やはりいろいろな技術が登場してきたという部分以外に、フィッツパトリック,ブライアン・W/コリンス・サスマン,ベン著の『Team GEEK』にあるような「HRTを大事にする」傾向がすごく増えてきたなと思います。

15年、20年前にまで遡ると、「俺の書くコードが最高だ」と我が道を行く孤高のエンジニアが多かったのですが、職種が細分化してきているがゆえに、「チームとして成果を最大化にしていくと」いう動きが増えてきたのではないでしょうか。

その背景にはHRTの文化という概念が出てきたことや、長沢さんがおっしゃったように、エンジニアリングやマネジメントが言語化されてきたことも関係しています。エンジニアであっても、プロダクトが誰にとって役立つのかを考えるプロダクトマネジメントやUXといったサービスデザインが浸透してきて、より顧客志向・チーム志向に変わってきたと感じます。

最後にひとこと

カルチャーは一日にして成らず。継続的な行動によって初めて体現できる

小田中:では最後に登壇者からひとことということで、まずは僕からお話しさせていただきます。 まずは今日このような素敵な場を作っていただいて、FLEXYの皆さんありがとうございました。カルチャーについて話す機会はこれまでなかったのですごく貴重でしたし、長沢さんや岩田さんのお話を聞いて自社にもフィードバックしたい新たな気付きがえられて良かったです。

やはりカルチャーは一日にして成らずで、掲げたからといってそこに立ち現れるものではありません。実際にそこにいる人たちがカルチャーに沿って繰り返し行動していくことで始めて体現できるものなので、根気強く作っていってほしいと思います。

長沢:短い時間で非常に勉強になるところが多かったです。例えばオンボーディングの話で出た、「新入社員とご飯に行ったらタダになる」みたいな制度は、オンラインであっても明日から取り入れようと思うぐらいには即効性がありそうです。

本当にカルチャーは時間をかけて作っていかなければいけないのですが、コロナで出社できないことで、会社への帰属意識が薄まっていると思うんですよね。その中できちんとみんなで同じ言葉やものを見るためには、今まで以上にエンジニアのカルチャーを浸透させるのが大事になると思います。そういう素敵なカルチャーがたくさんできていくといいですね。本日はありがとうございました。

岩田:例えばナビタイムさんなんかはそうなのですが、社員の人に会うとその会社のカルチャーがわかるんですよ。大手自動車メーカーさんなんかも、皆さんすごくマインドが高いことがわかります。社員に会って「この会社は良い会社だな」と感じてもらえるまでカルチャーを追求することが大事なのだと、経営陣も含めて改めて認識して、粘り強く浸透させていく会社が伸びるのだと思います。自分もここにチャレンジし続けていきたいですね。

小田中:本日のディスカッションは以上です。本日はありがとうございました!

 

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