【後編】育成のための制度と定着の工夫/どういう人をマネジメントに登用しているのか

2020年12月15日に開催されたCTO meetupのイベントレポート、進化するエンジニア組織!〜強い開発組織の作り方〜の後編記事です。

LIFULL、Chatwork、LINE Growth Technologyといった名だたる企業の方々をお迎えした本イベント。

前編記事ではエンジニア組織がどのような変遷を遂げてきたのか、そして中編は今後の組織の成長のためにどのようにメンバーの育成を行っているのかといったことをたっぷりディスカッションしていただきました。

後編の本記事は、育成のための制度と定着の工夫/どういう人をマネジメントに登用しているのかを語っていただきます。


【前編】進化するエンジニア組織!理想的なエンジニア組織とは?~各社のエンジニア組織の歴史〜
【中編】進化するエンジニア組織!チームビルディング(オンボーディング含む)の方法/組織文化醸成について

登壇者

長沢 翼
長沢 翼 氏|株式会社LIFULL CTO

2008年株式会社ネクスト(現 株式会社LIFULL)入社。 フロント、サーバーサイド、ネイティブアプリなどアプリケーション開発に従事した後、バックエンド・インフラ系を担当し、API基盤の刷新、事業系システムのAWSへの移行チームを責任者として牽引。2017年4月からCTO就任。情報システム部門の責任者、ベトナムの開発系子会社の委任代表なども務める。
黒木亮太
黒木 亮太 氏|LINE Growth Technology株式会社 東京開発室室長

2008年にYahoo!Japanへ入社し、ソフトウェアエンジニアとして勤めた後、12年にサイバーエージェントへ入社。ニュースSNSサービスや電子書籍サービスの開発リーダーを勤めた後、広告システムの開発責任者を務める。開発組織の整備・改善やサービス開発を担当。19年2月より現職。LINEグループ全体から寄せられる様々なサービスやシステムに関する課題の相談を引き受けたり、社内の組織づくり・採用も担う。
春日重俊
春日 重俊 氏|Chatwork株式会社 執行役員CTO兼開発本部長(※2020年12月時点)

明治大学経営学部を卒業後、電通国際情報サービスに入社、大手企業の基幹会計システム導入の経験を積む。その後リクルートに入社、新規事業の業務に従事し、組織マネジメント・サービス企画・BPRなどに携わり、2016年1月にChatworkに開発本部長として入社。2020年7月に執行役員CTO兼開発本部長に就任。

育成のための制度と定着の工夫/どういう人をマネジメントに登用しているのか

育成のガイドラインとなるのは技術とマネジメントのスキルレベル

株式会社LIFULL CTO 長沢 翼 氏(以下、長沢):次のパネルディスカッションに入ります。まず黒木さんから、育成のための制度や定着の工夫として何かされていることはありますか?

LINE Growth Technology株式会社 東京開発室室長 黒木 亮太 氏(以下、黒木):先程少しお話した部分(中編記事参照)ですが、以下の図にあるのが「Iレベル」です。もう一つ「Mレベル」というものもあり、これはマネジメント職のレベルを示しています。

黒木:Mレベルはチーム成果を意識する部分で、Iレベルは自分のスキル高める部分という感じです。基本的にはこのレベルに沿って、一人ひとり細かい部分を定義するのが育成のベースになっています。

長沢:スキルのレベル感を提示して、それぞれが成長できるようなガイドラインにしているという感じなんですね。ちなみに、IレベルのIは何のことですか?

黒木:IndividualのIです。

長沢:I3とI4の間にM1がありますが、これは同じようなレベル感だということですか?

黒木:イメージ的にはI2が自走できるかどうかのラインで、I3はテックリードのようなポジションです。そのタイミングで役職がついたりするので、マネジメントスキルも必要なものとして書かれています。

長沢:M1からM5のレベルはマネジメントする人数なのかプロジェクトの難易度なのか、どういうところで違いが出てくるのでしょうか?

黒木:基準としては両方入っています。ステークホルダーや関連部署の多さなどプロジェクトの規模も含みますし、チームか室かといった単位も関わります。

開発メンバー全てにハンズオンのミドルマネージャー研修を実施


長沢:春日さんは育成のための制度や工夫についていかがでしょうか。

Chatwork株式会社 執行役員CTO兼開発本部長(※2020年12月時点)春日 重俊 氏(以下、春日):当社は組織を拡大するにあたって、ミドルマネージャーを育成する必要がある状況です。そのためには会社としてマネージャーに何を期待しているのかを伝えながらハンズオンで育成しなければいけないということで、マネージャー研修を行っています。

少し前にEVeMの代表取締役社長がnoteに書いた『ベンチャーマネージャーのマニュアル』という記事がバズりましたが、これはやっていて面白いので、機会があればぜひ読んでみてください。ここで紹介されていたのが、急成長企業におけるマネージャーの役割をハンズオンで伴走するようなマネージャー研修です。マネジメント研修はいわゆる座学だけでピンとこないまま終わってしまうものも多いのですが、そうではなく例えば開発本部の全体会で発表した戦略をどのように部署に落とし込むのか、といったことに一緒に取り組みます。

ほかにも1on1をどうやるべきなのかも研修を通じて学びます。こういった形でマネージャーを育成することで、チーム全体のビルドアップにチャレンジしているところです。

長沢:一緒に考えるというのはいいですね。

春日:一方的に言われるだけでは定着しないので、お題を受けて一緒にワーク的に取り組むのは個人的にもいいなと思っています。

黒木:この研修はどの単位の人にやるんですか?

春日:今は開発部のメンバー全員にやっています。大体4、5人ほどに区切って研修しているのですが、例えばデザイナーやPM、クライアント系のアプリケーションエンジニアマネージャーなど、業務的に近いメンバーを混ぜています。自分一人で悩むのではなく、隣の人がどういう風に考えているのかといったことを見ながら一緒に学習を深めることができるので、すごく面白いなと思います。

マネージャーの資質として問われる謙虚・尊敬・信頼


長沢:マネージャーを増やすという話が出ましたが、2つ目のテーマとしてどういう人をマネージャーに登用しているのかをお伺いしたいと思います。各社の基準は僕も気になるところですが、春日さんからいかがでしょうか。

春日:現在内部で議論しているのが、Team Geekで言われているHRTという三原則です。

春日:マネージャーはチームの成果を最大化させることが職責ですが、人格には謙虚さが求められますし、相手を信頼・尊敬しているかといったことは自然と態度に滲み出てくると思います。こういったことがマネージャーの素養として必要だと実体験から感じていますし、Chatworkとしても大事にしている観点です。

長沢:HRTは非常に大切ですよね。マネージャーのみならずメンバー全員が持っていてほしいことです。黒木さんはいかがですか?

黒木:チーム成果の最大化はマネージャーに求められるものなので、そこは春日さんと同じです。あとはメンバーをサポートするところも重要な役割だと思います。そのため、マネージャーを任命する場合には、どこを任せるのかを擦り合わせるのが大切なので、そのあたりは意識しています。

マネジメントの面白さや醍醐味を伝えることが重要課題


長沢:マネージャーも結局やってみないとわからない部分がありますよね。これは答えにくい部分かもしれませんが、こういう人をマネージャーにしてみたけれど上手くいかなかったという話はありますか?

黒木:0か1かで上手くいかなかったというケースはあまりありません。ただ求めた役割に対して強みがあるないなどもあるので、期待値は伝えるようにしています。

そこが自分にとって伸ばせる部分なら伸ばしてもらえればいいですし、逆にその人にとってやりたい部分でないのであれば他の人に任せて、それ以外の部分でしっかり役割を持ってくれればいいかなと思っています。

春日:成功失敗というよりも、当社は組織拡大のため、マネジメント素養を持っている人に頼み込んでやってもらっているという状況です。その上でメンバーから現場に戻りたいと言われるとどうしようかと思うので、そこは僕自身の課題ですね。キャリアの一つとしてマネジメントをやってみようという方向を訴求しきれていないのだと思います。マネジメントにチャレンジしたいと思えるような成功事例なんかを見せながら、マネジメントの何が面白いのかをもっと上手く伝えないといけません。

実際今のマネージャー業務を見ると、月末月初の経費承認や稟議、査定だったりして、メンバーからすると「うーん……」という感じなんですよね。でもそうではなく、複数のメンバーとゴールに向かい大きな成果を出すのがマネージャーにとって何事にも代えがたい喜びだと思いますし、メンバー自身が成長して思いもかけない成果を出してくれる瞬間もあります。

そういった内容を仕組み化して、マネージャー職を面白くしていくというのが一つのテーマだなと思います。

長沢:マネージャーが大変そうに見えてしまう問題はありますよね。マネージャーが褒められることも少ない気がしますし。

春日:中間管理職で上から言われ下から言われというのは、はたから見たらやりたくないですよね。

でもソフトウェアのエンジニアはプロスポーツチームのようなもので、強いチームには強いコーチありだと思っています。コーチの醍醐味を体感できるようになれば、「マネジメントをやってみてもいいかな」と言ってくれるメンバーが増えるのではと思います。

質疑応答

技術的なスキルはマネージャーに必須ではない

質問者:
マネージャーに技術力はどこまで求めますか?


長沢:LINEさんのスキルレベルの図で言うと、マネージャーにシニアの入り口程度の技術力は求めるということなのでしょうか?

黒木:そうですね。マネージャーは最低限シニアエンジニアになった後のキャリアパスです。マネジメントしながら自分の技術力をどこまで伸ばしていくのかはその人のキャリアによって変わるので、会社として求めるレベルを明確に定義はしていません。

長沢:Chatworkさんはいかがですか?

春日:当社のキャリアパスにはエキスパートコースとマネジメントコースという大きな2つの軸があります。

一人でプロジェクトを動かせるレベルが最低限の条件で、その後マネジメントにいくかエキスパートにいくかということになります。技術が一番できる人間が必ずしもマネージャーである必要はありません。マネージャーはチーム全体で最大の効果を得るための「場回し」というか、目的を合致させるためのファシリテーション技術なんかが必要なのではと思います。

伝えたいビジョンはしつこいほどに繰り返してようやく浸透する

質問者:
組織戦略やビジョンを浸透させるための仕組みや試みがあればお伺いしたいです。



春日:当社にはミッション・ビジョン・バリューがあります。当社のミッションは「働くをもっと楽しく、創造的に」で、ビジョンは「すべての人に、一歩先の働き方を」です。ミッションはずっと変わらないもので、ビジョンはその時点で定義するものかなと思っています。

プロダクト開発においても2023年にはこうなっていたいということを言語化していて、それを半期ごとにリバイスして落とし込むという作業を繰り返しています。これは僕がやりはじめて一年半くらい経過するのですが、最初は全く手応えがありませんでした。「めちゃくちゃ滑ってるんじゃないか?自分の独りよがりなんじゃないか?」と不安にはなるのですが、やり続けたことに対して出てきた組織のフィードバックを見て、きっちり改善していくことこそが重要だと思います。

あとは、マネージャーが部署単位できちんとミッションを発信して、メンバーに浸透させていく循環を流すのも大事ですね。

長沢:半期ごとにリバイスして伝えることとPDCAを回すことは非常に大切ですね。黒木さんはいかがですか?

黒木:前職では本当に一言でわかるくらいのレベルにスローガンを落とし込んで、見える場所に貼っていました。いかに自分ごとにして、それを見えるようにするかは重要だと思います。見ないと何だったか忘れるということは結構ありますし。

春日:スローガンはしつこいくらい何度も言い続けないと、人は覚えないんですよね。考えている側は真剣に考えているので「何で覚えてくれないんだ」と思うのですが、メンバーからすると「また突然変なことを言い始めたな」というワードの一つでしかないんです。

最後にひとこと


長沢:ではパネルディスカッションはこれで終了します。最後にお二人から一言をお願いします。

春日:今回みなさんの前でお話しさせていただきましたが、必ずしも僕が言っていることが正ではありません。組織の状態やフェーズに合わせていろいろなトライが必要なので、自分がトライしたことが駄目だったと悲観するのではなく、一歩引いた目でなぜ駄目だったのかを評価するのが良いと思います。

今回のテーマのような内容はオフラインでもよく尋ねてもらったりしますが、こういうぶっちゃけトークをもっとシェアできるといいなと思いました。

黒木:僕も今日はお二人の話を聞いて勉強になるところがたくさんあり、楽しかったです。こういう課題はやはり企業のフェーズや規模によって対策が異なるので、そこはご自身の中で咀嚼した上で使えるものは使っていただく感じになると思います。

また、実際にどういう打ち手があるのかをカードとして持っておくのも損にはならないと思うので、いずれ使えるかもしれないという感じで頭の片隅に入れておいていただけると良いのかなと思います。本日はありがとうございました。

長沢:マネジメント手法や強い開発組織の作り方は会社によって前提が違いますので、やはり打った手によって起こった変化をフィードバックとしてしっかり捉え、さらに次の手を打ち続けるのが大事なのだろうと僕自身も体感しているところです。

僕も今日の話をいろいろと組織に生かしていきたいと思います。本日はありがとうございました。


   




企画/編集:FLEXY編集部


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