総勢50名がフルリモートで働く。事業、採用、コミュニケーション…成功のヒントは?――K.S.ロジャース・民輪一博さん

CTOインタビュー

リモートワークのメリットとデメリット、運用方法の是非に対する議論が尽きない中、オフィスレスで完全フルリモートの会社を立ち上げた民輪さん。創業から1年4ヶ月経過したK.S.ロジャース株式会社は、現在50名規模にまで急成長中。しかもエンジニアの応募は年間700人にも上るほど高い注目を浴びています。 今回は自らもリモートで働く民輪さんに、どのようにフルリモートという働き方を実現しているのか、仕事を獲得する方法、採用基準などの実態を詳しくお伺いしました。

年間700名が採用応募する、完全フルリモートで新規事業を手がける企業

伊藤 大樹
【インタビュアー】

flexyマーケの加来です。本日は、オフィスレスで完全フルリモートの会社を立ち上げた民輪さんにお話をお伺いいたします。所在地がホームページに記載されていない企業にも関わらず、オフィスを持たない完全フルリモートの就業のため、エンジニアの応募は年間700人も来るとのこと。就業環境を用意する固定費や採用費が、一切掛からないとお話されました。代表兼CTOの民輪さんに、設立の背景やエンジニアの働き方、マネージメント方法など詳しくお伺いしました。

インタビュー中民輪さん

flexy加来:まず、K.S.ロジャース株式会社創立のきっかけをご説明いただけますか?

民輪さん:前職を辞めて独立したのを機に創業したのがK.S.ロジャースです。オフィス無し・コアタイム無しのフルリモートの会社で、現在所属しているのは50名。そのほとんどがエンジニアです。 フルリモートにした理由は2つあります。まず、僕自身がもともと神戸に住んでいたので引き続き関西を拠点にしたかったものの、関西ではエンジニアがなかなか集められない現実があったこと。2つ目は、僕自身がオフィスに毎日出社する必要性をあまり感じていなかったことです。必然的に、エンジニアに対しての働き方を追求することを目的とした会社になっています。

flexy加来:主にどのような事業展開をしているのでしょうか?

民輪さん:前職がスタートアップだったということもあり、当社も0→1や新規事業に特化しています。基本的にはクライアントとアライアンスを組むような形で一緒に事業やプロダクトをつくり、成長させていくスタイルです。受託開発や3~6ヶ月程度の短期の仕事は請け負っていません。開発のみならずビジネス的な部分も担うので、どちらかと言えばコンサルタント寄りですね。僕自身がCTOでしたから、自分でどんどん事業を作っていきたいんです。

<CTOコンサルとして行うこと> ・プロダクト、サービスの課題の洗い出し ・タスクの優先順位の決定 ・スケジュールの決定 ・コスト管理 ・ビジネス的視点での意思決定

民輪さん:現在は東証一部上場しているような大企業とも協働していますし、その場合は開発の年度予算決めから入ることもあります。中規模ならレベニューシェアをしたり、さらに小規模であればジョイントベンチャーで出資をする、というスタイルが主ですね。

flexy加来:フルリモートの会社のメリットはどんな部分ですか?

民輪さん:固定費が0円だということです。かかるのは人件費のみなので、会社として非常に戦いやすい。また、採用力も強いんです。年間の採用予算160万円に対して、現在エンジニアの応募が年間700人あります。プロフィール選考で200~300人にまで絞って、毎週4人面接しているような状態ですよ。

flexy加来:営業担当のような方はいないのでしょうか?

民輪さん:いませんね。営業するかどうか悩んだ時期もありますが、現在は営業を絶対にしないことをポリシーにしています。これまでご依頼いただいているのはすべて口コミの紹介です。僕自身がエンジニア畑の人間なので、営業をしてリーチをするというのがあまり好きではないという部分もありますが、リファラルだと紹介時点で相手もポジティブなモチベーションでいてくれるのが大きな利点です。 もちろん、リファラルの場合は会社がパフォーマンスを発揮できなかった際に評価がガクンと落ちるというデメリットもあります。ですから、協働させていただくかどうかはじっくり検討しますし、一度契約をすると決めたら徹底的にパフォーマンスを追求する、というのがうちのやり方です。

flexy加来:今後の展開として考えていらっしゃることはありますか?

民輪さん:「事業再生」に意識を向けたい気持ちがあります。新規事業はやはり絶対数が少ないですし、その中で僕自身がお客様と直接話をして、やり方が合うかどうか判断した結果協力できないことももちろんあります。 事業再生ならサービスが伸びそうかどうか、面白さがあるか、どういうスタンスの会社なのかなども判断しやすいですし、数も多い。技術的なボトルネックがあれば伸び悩んでいる部分をヒアリングして、方向性を決めていくといった入り方ができると思います。 また、自社からの発信としてはリモートワークしやすくなるようなSaaSのツールを開発していて、社内で運用してからプロダクトとして展開する予定です。

民輪さん

フルリモートでクライアントの事業に素早くコミットする土台とは

flexy加来:実際に組織はどのように運用されているのでしょうか?

民輪さん:エンジニアはフロントエンド、バックエンド、インフラ、Android、iOSなど細かく区分を設けているので、案件ごとにプロジェクトマネージャーを立て、基本的には僕がチームメンバーをアサインします。 現在はフルコミットのメンバーがマネジメントをすることが多いのですが、たとえば副業で働いてくれているメンバーでもマネジメントができないかどうか、実験を繰り返しながらノウハウを構築している最中ですね。 コードレビューはコードを書いた人が見てもらいたい人をアサインする仕組みにしているので、全員がお互いに対して行う形になっています。

flexy加来:コミュニケーションはどのように行っているのでしょうか?

民輪さん:エンジニアとは面接や面談のときはビデオ通話を行いますが、基本的にはslackと音声通話のみでコミュニケーションを取っています。 スクラムのミーティングなどは基本的に行わず、一週間ごとの進捗をすべて文面で共有するようにしています。キックオフなどどうしても対面での会話が必要な場面でない限りは、ミーティングを行わない方針です。 その代わり、文面でも通話でも情報は過多なほど伝えていますね。文面の場合は長文になってしまうことも多々ありますが、伝え漏れが起きるのは怖いですから。

flexy加来:御社が技術的に特化している部分などはあるのでしょうか?

民輪さん:技術面で特に力を入れているのがボイラープレートです。1年の終わりから3ヶ月間ほど技術投資を行い、あらゆる0→1案件や新規事業、スタートアップに迅速にコミットできるよう、自社で設計の基盤をきっちり固めています。それが会社の土台にもなっていますね。設計や技術もどんどんレガシーになっていきますから、1年に1回ブラッシュアップするサイクルを用意しています。

flexy加来:利用しているツールなどを教えてください。

民輪さん:主に以下のような感じです。あまり特別なものは使っていませんね。

テキストチャット→Slack 音声通話→Discord 資料共有→G drive タスク管理→Stock 開発→GitLab

flexy加来:フルリモートの場合、セキュリティ面も気になるポイントだと思います。

民輪さん:一番重要なのはインフラだと思いますが、当社の場合触れるのは僕とフルコミットのエンジニアのみです。逆に言えば、エンジニアが触らなくても完結できるようなインフラを構築しています。DevOpsをかなり厳密に行っているので、インフラ構築が基本的に数時間で終わるのです。命令規則から何まですべてあらかじめ決めています。サービスがグロースしてきたタイミングで変更しなければならない部分があれば対応する形です。そのためのアラート装置も仕込んでありますし、障害などもすべて通知でわかるようになっています。 インフラエンジニアは現在1名なのですが、インフラはこのように「インフラの仕事をゼロにするのが仕事」という状態ですね。実際、インフラエンジニアは今やることがなくなってきたので、今アプリケーション開発も担当しています。

リモート環境でも成長できる人材かどうかが採用のポイント

flexy加来:採用はビデオ通話で行うとのことですが、スキルや適正はどのように見極めているのでしょうか?

民輪さん:スキルごとの質問リストを作成してあるので、すべて順番にヒアリングしていく形式にしています。知識や開発経験、作成したプロダクトに対する考えなどをどんどん聞いていくわけですが、特に重視しているポイントを端的にまとめると3つです。

<採用の際に重視するポイント> (1)自分と合うか (2)実力があるかどうか (3)リモート環境に甘えないかどうか

flexy加来:「リモート環境に甘えないこと」も本当に大事ですね。

民輪さん:当社のみならず、現在エンジニアはリモート環境で働けるケースが増えてきていて、とても良い傾向だと思っています。ただ、その環境に甘えてしまうとエンジニアとして成長できない。その点に懸念を感じているんです。

カフェがメインの仕事場。フルリモートワーカーの1日

flexy加来:民輪さんご自身もオフィスレスで働かれているということですが、1日のワークスタイルを教えていただけますか?

民輪さん:夜型なので就寝が朝の6時頃で、お昼まで寝ています。アポイントメントも午前中は入れません。

働き方1

民輪さん:今日は東京に来る必要があったので朝6時半の新幹線で移動するイレギュラーでしたね。普通の方は毎日この時間に電車に乗って出社しているわけですから、本当に大変だなと思いました。 働く場所は大半がカフェです。神戸の喫茶店を巡っています。

働き方2

flexy加来:メンバーによって働き方はさまざまなのでしょうね。

民輪さん:基本的に昼から夕方までの間が全員の時間が合うタイミングです。お付き合いいただくお客様にも、こういった当社のスタイルを理解していただく必要があります。

リモート導入時、最大の壁となるのは「今ある会社の文化・環境」

flexy加来:他の企業がリモートワークを導入しようとする際のアドバイスはありますか?

民輪さん:注意すべきなのは、大抵の場合リモートという働き方がすでに構築されている会社の文化と相反するということですね。ある日突然人事や社長が「リモートを導入するぞ」と言っても、社員は困惑してしまいますし、辞める方も必ず出てきます。 ですから、最初はミニマムな規模で実験的にリモート導入するのがいいのではないでしょうか。

<おすすめのリモート導入規模> ・対象:比較的若い社員 ・人数:2~3人 ・期間:2週間~1ヶ月程度

当社の場合は最初からフルリモートに振り切っていたので問題ありませんでしたが、やはりこれまでオフィスで働いていたところからリモートに移行するには、ミニマムで実験をしないとうまくいかないだろうというのが肌感です。

flexy加来:リモート導入の成功のポイントはなんでしょうか?

民輪さん:いかに管理せずに運用できるか、ですね。これまでオフィスに出社するのが当たり前だった環境や文化に基づくと、どうしても管理したくなってしまいます。リモートOKなのに、チャットで10~15分に1回は報告をしなければならない会社もあったりします。これでは上手くいかないでしょう。 当社の場合、日報こそ共有してもらいますが、仕事をした時間は完全に自己申告制です。性善説に任せていますね。明らかに作業時間がおかしいという場合は、なぜ時間がかかったのかヒアリングします。そこできちんと説明ができればどこが作業の落とし穴だったのかがわかりますし、問題は生じません。 こうしたノウハウがありますから、いずれリモートにしたいけれどやり方がわからないという企業に対して、当社でリモート体験をしてもらう企業インターンなどの取り組みも実施できればと考えています。

果たしてリモートワークはコミュニケーションレスになってしまうのか

flexy加来:最近はスタートアップやエンジニアのみで構成されているような組織であっても、ただ単にプロダクトを作るのではなく「ビジネスにコミットしよう」という意欲の強い企業が多くなっていると思います。そうなるとメンバーや企業同士で顔をつけあわせた密なコミュニケーションが重要視され、リモート導入に不安を抱かれることも少なくありません。民輪さんはそういった部分をどう考えていますか?

民輪さん:対面コミュニケーションを重視する企業が、その文化に従ってビジネスを進めるのは全く問題ないと思います。当社としてもそれを強いて崩してくださいというつもりは全くありません。単に当社のスタイルと違うので、そもそも協働が難しいということになります。 もちろん定例ミーティングなんかは絶対に必要ですし、顔を合わせて話し合う機会もある程度避けては通れません。とはいっても、基本的にオンラインミーティングでも事足りますし、ビデオ通話もできますよね。いろいろとやり方があると思っています。

flexy加来:では、いわゆるビジョンやミッションの浸透という視点ではいかがでしょうか。フルリモートにするとそういったマインドセットが薄れ、ただの作業になってしまうという懸念もあるようです。

民輪さん:今の所は感じたことがありません。今後、こんな仕事をしていきたいといった話もよくしますよ。

flexy加来:フルリモートで成功しているということは、自立されている方が多いということなのでしょうね。そこがないとただの作業になったり、サボったりといった心配が出てくるのかもしれません。

民輪さん:ビジネスに対して一歩踏み込む意識があるかないかの違いだと思いますね。当社の場合は何歩でも踏み込んでいくというスタイルなので。受け身になるのか、主体的に踏み込むかという話ではないでしょうか。

flexy加来:能動的な姿勢が大事、またそれが働く楽しさにも繋がるかと思います。本日は、ありがとうございました!

民輪さんの講演されたイベントのご紹介: 「Developers Boost(デブスト)」 内容:関西にいるからこそ感じる関西U30エンジニアの将来を見据えた生存戦略

 

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