テクノロジーで1日の業務を3時間削減。紙とFAXからの脱却を図る建築SaaSの挑戦――株式会社オクトCTO、CDO、VPoEの対談

建築業界のあらゆる悩みを解決するために開発された施工管理アプリ「&ANDPAD(アンドパッド)」。

リリースから3年を迎えた現在、施工管理アプリとしてのシェアは1位、累計1600社を超え、10万人以上の全国のユーザーに利用されるサービスへと成長しています。そんな建築SaaSを手掛けるのが株式会社オクトです。

今回はCTO、CDO、VPoEの3名にインタビュー。開発におけるそれぞれの役割や開発の内情、今後目指したい体制などについてお伺いしました。

CTO、CDO、VPoEの各人が三位一体となって開発を進行

――本日は、建築Saasのオクト社のCTO、CDO、VPoEの3名にお話をお伺いしたいと思います!
早速ですが、みなさんがそれぞれ持っているミッションや業務内容について教えてください。


VPoE 下司:私は2019年8月に入社したばかりです。ちょうどオクトが資金調達して、組織拡大をしていこうとしたタイミングですね。組織構築をする人材が必要だというところでジョインしたので、それがそのままVPoEとしてのミッションになっています。

VPoEとは?
VPoEはVice President of Engineerの略で、日本語では技術部門のマネジメント責任者と訳されます。 VPoEはエンジニア組織が円滑に仕事をできる環境や、開発を行えるべく技術力を向上させるために採用や指導、環境改善などを行うことによってチームのマネジメントを行う役割を担っています。

執行役員 VPoE 開発部 下司宜治 株式会社オクト 執行役員 VPoE 開発部 下司宜治さん
新卒でヤフーに入社。2、3度の転職を経た後、VOYAGE GROUPやサイバーエージェントにも所属。エンジニアとしての方向性をB向け領域に定める。曽祖父や姉、義理の兄が建築関係の職に就いていたこともあり、オクトにジョイン。VPoEに就任し、現在に至る。

CDO 山下:私は3~4年ほど前からオクトの仕事を手伝いはじめました。
ちょうどモバイルアプリの開発に着手した頃ですね。代表の稲田やCTOの金近が「建築現場の職人さんが外でも使いやすいモバイルアプリを作ることが大事だ」と話していたのを聞いて、面白そうなサービスだなと感じたのが正式なジョインのきっかけです。ですから最初はCMOの役職でしたね。

現在はモバイルアプリの開発をひととおり終えて、Webフロント、アプリ、サーバーサイド、インフラなど領域を問わずに新規事業の開発を進めています。オクトは現在に至るまでサービスを1つのリポジトリで開発してきたため、一部のサービスを新技術でリアーキテクトするプロジェクトも担っています。
具体的には、チャットサービスをFirebaseでサーバーレスな構成に移行したりといったことですね。

CDOとしての大きな役割としては、金近が引いた基本的なロードマップを中長期的な開発に落とし込むことです。
私自身開発が好きですから、テック企業としてアピールできる部分を増やすことも役割として認識しています。

CDOとは?
オクト社のCDOは「Chief Development Officer」の略です。
CDOは、他にもChief Digital Officer(最高デジタル責任者)、Chief Data Officer(最高データ責任者)、Chief Design Officer(最高デザイン責任者)の略で、組織のデジタル変革を経営の視点で推進、またプロダクトにおけるデザインの責任者の役割を担つ時に使用される呼称です。

執行役員 開発部 CDO 山下大輔 株式会社オクト 執行役員 開発部 CDO 山下大輔さん
大学卒業後、新卒で富士通の研究所に入所。ファームウェア、AI、Webサービス、Androidの開発に携わる。ベンチャー企業に興味を持ったことを機に退所し、モバイル開発の立ち上げメンバーとしてビズリーチにジョイン。事業が軌道に乗った段階で誘いを受け、オクトにジョイン。CMOに就任し主にモバイル開発を手掛ける。現在はCDOを務める。

CTO 金近:実際のところ、ロードマップの作成についても漏れも多いですよ。私はもともとベンチャー企業にいて、会社規模としてはオクトが最大なので知らないことが多いんです。

VPoE 下司:誰かが専任で担当しているというよりも、3人でロードマップを作っているという方が正しいですね。

CDO 山下:ただ、金近は創業から携わっているのでANDPADのアーキテクトを構築していますし、サービス全体を熟知しています。

CTO 金近:テーブル構造も全て知っていますから、新規サービスの開発や構造変更などがある場合は私が入ってサポートしますし、自分でやってしまうこともありますね。また、ここ2年ほどはERPという経営基盤の仕組みの立ち上げを行なっています。

CTOとは?
最高技術責任者(さいこうぎじゅつせきにんしゃ、英語: chief technical officer または chief technology officer、略語: CTO)は ビジネス幹部のポジションで、会社における技術的な統括責任者の役割を担います。

取締役 CTO 金近望さん 株式会社オクト 取締役 CTO 金近望さん
学生時代からアンケートのシステム開発を行うベンチャー企業でアルバイトとして働き、技術と経営について学ぶ。売り上げが数億に到達し、組織拡大の課題を抱える中でオクトの代表と出会う。二人で草ベンチャー的なサービス開発を進めるうち、可能性を感じてリフォーム領域で起業を決意。CTOに就任し、現在に至る。

ドメインの範囲が業界全体に及ぶため、開発の難易度は高い


――オクト社は建築Saasとして自社プロダクトを開発していますが、御社の開発組織について教えてください。エンジニアさんは何名くらい社内にいらっしゃいますか?

VPoE 下司:毎月エンジニアだけでも1~2名は採用している状態なので、人数はかなり変動しています。
2019年の10月時点ではエンジニアが40名ほどで、社員と業務委託の割合が1:1ですね。
働き方としては、フレックスタイム制を導入しています。

――フレックスタイム制いいですね!ちなみに、リモートワークは実施されていないそうですが、特別な理由があるのでしょうか?

CTO 金近:プロダクト開発の難易度が高くプロジェクトマネジメントができる人材が少なかったため、リモートワークはあえて行わないことにしました。何度かチャレンジはしたのですが、当社の状況ではなかなかワークしなかったんです。
現在のオクトは1ヶ月前と全く違うフェーズに変化していたりするので、今は採用する人にもそれを一緒に感じてもらいたいという思いもあります。

CDO 山下:組織の成長を肌で感じられるタイミングですからね。オフィスを移転するワクワク感は、リモートでは味わえない感覚です。

――開発している中で、プロダクトの難易度が高いのはどんな部分ですか?

CDO 山下:建築業界と言っても業種が多様でドメインの範囲が広いんです。
そこにサービスを展開していくとなると会計ソフトや施工管理ソフトといった、一見関連のなさそうなものを建築というテーマでまとめていかなければなりません。
会計ソフトの会社としてその開発だけに注力するというわけではないので、難易度が高くなります。

CTO 金近:まだまだ業界全体が紙やFAXの文化ということもあり、全業務がシステム化の対象になっているんですよね。技術的な部分を補ってもらうために、今までは色々な機能を1つのリポジトリに追加して開発してきたので、巨大なモノリシックな構造になっています。

――サービスに使われている主な技術について教えてください!

CTO 金近:WebもAndroidもiOSも展開しているのですが、例えばチャットや施工管理のアプリはSwiftとKotlin、検査アプリはReact Native、施工管理のライト版はFlutterを用いていたりします。

エンジニアが直接現場の職人にプロダクトの改善点をヒアリングする


――プロダクトは主に建築会社の社員がユーザーなのでしょうか?

CDO 山下:契約するのは会社単位ですが、社員に限らず社外の方が使う場面もあります。
会社に所属していないフリーランスの職人さんを会社が抱えているパターンもありますね。
そのあたりの構造も建築業界は複雑です。

――ANDPADは幅広い業務をカバーするプロダクトですが、まずどこから着手したのでしょうか。

CTO 金近:家づくりは、一業者だけでできるものではなくて工事内容ごとに約30社ほどが関わることになるのですが、メールやFAXなど紙で工程管理をするので非常に手間なんです。
そこを効率化しようというのがプロダクト開発のきっかけでした。
やりとりはチャットで行い、工程表はデジタル化する。1日の作業日報もスマホで撮影した写真を送信できるようにしました。
さらに、これらの情報を現場監督に集約することも重要です。
普段の工事の指示出しはもちろん、雨が降って日程が延期になれば、さまざまな業者をハンドリングしていつ誰が現場に入れるのかを調整しなければなりません。
我々エンジニアにはslackが当たり前の存在になっていますが建築業界はそうではありませんから、工程を一つ一つデジタルに置き換えていきました。

――追加機能などはどのような流れで開発するのでしょうか?

CDO 山下:営業から要望をもらうことが多いですね。

CTO 金近:あとは親しくなった建築業界の人たちから直接聞きます。今後どんな機能が必要なのか教えてもらいながら一緒にプロダクトを育てている側面もあります。

VPoE 下司:山下が導入企業に訪問して、どんな機能なら実現可能なのかといった話をしていますよ。

CDO 山下:私に限らず、エンジニアもデザイナーも現場を訪ねて直接職人さんたちにヒアリングするというのは当社の特徴かもしれません。


レガシーな業界の生産性や業務効率の向上を実感できるのが喜び


――建築SaaSの開発に携わる面白さはどんな部分にあるのでしょうか?

CDO 山下:建築というよりもSaaSそのものですが、C向けよりもビジネスとして開発がしやすい点がまず魅力的です。
データを見て何を開発すれば売上を伸ばせるのか、ロジカルに考えることができます。開発と売上が直接紐付いているということですね。
また、身につく知識が多いので非常に勉強になるのもうれしいですね。SaaSには「チャーン」や「アップセル」といった専門用語があり、開発をしながらビジネス面を学べます。当社のサービスの場合はその中でもさらに会計やプロジェクト管理の知識が必要とされますから、業務システム全般に対する能力を高められるのが面白い点です。

VPoE 下司:建築業界は日本の中でもかなり生産性が低いと言われる業界です。その中で建築SaaSを利用してもらうことで生産性の向上や業務効率化ができていると実感できるのが一番の喜びですね。
ANDPADを導入したことで1日の業務が3時間も削減されたという声も実際にいただいています。
ANDPADがミッションとして掲げている、「施工現場を幸せに」が果たせているのだなと思いますね。SaaSですから、どんどんアップデートして機能を追加していけばさらに建築業界良い方向に導けるのも魅力です。

CTO 金近:当社のビジネスは売って終わりではありません。お客様が日々サービスを使い続けるからこそ、開発、CS、営業が連携して改善していかないと成り立たないプロダクトなのだと日々感じています。
営業と開発は揉めやすいという話も他社ではよく耳にしますが、当社は同じ目的に向かって両者がコラボレーションしていかなければなりません。

ドメインドリブンを目指して、プロダクトをマイクロサービス化したい


――今後のエンジニア組織の成長戦略はどうお考えでしょうか?

VPoE 下司:1年以内に100名体制にしたいですね。そのときどういう組織構造であるべきか議論中です。
サービスのマイクロサービス化も検討しています。

CTO 金近:建築業界がいろいろな工事の組み合わせであるのと同様に、私たちもいろいろなサービスの組み合わせとしてとらえることが可能な、マイクロサービスを推進していきたいと思っております。
今後は建築業界の中の一つのテーマを深堀りした競合他社の製品が登場すると思うので、私たちも一つのテーマを深く追求できるような構造を作りたいです。
そのときに、責務が対象ドメインに閉じており、開発スピードを上げられる、マイクロサービスという技術が重要になると思っております。
風土としては、主体的な行動が推進され、プロジェクトクォリティが担保できるような、承認ではなくレビューを通してモノゴトが進んでいくようにしていきたいと思っております。
さらに言えば、開発という分野に留まらずプロダクトに関わるあらゆる業務に関心を持ってもらいたいとも思っています。
山下はよく「デザインも開発だ」と言いますが、エンジニアがプロダクト、デザイン、プロジェクトの要件定義、販売方法にまで関心を持てば、もっと主体的に動けるはずです。これは現在の課題でもあるので、組織の仕組みとして解決できるようにしたいです。

CDO 山下:理想はサッカーの日本代表チームですね。一人ひとりがスーパープレイヤーだけど、チームになればさらに強くなる。役割分担をしすぎて、実は一人では全くサービスが作れないという状態は避けたいです。

――そのために現在エンジニアに対して行なっていることはありますか?

VPoE 下司:1on1は定期的に実施しています。例えばUI/UXのプロになりたいというメンバーがいれば本人の意思を尊重しますし、極力目指す方向の仕事をしてもらいます。一律にキャリアを提案するというよりは、人に合わせてカスタマイズする感じですね。


――テック企業として実施している広報活動はありますか?

CDO 山下:これまではサービス開発に追われていたので、社内で面白い取り組みをしていてもあまり発信できていませんでした。2018年の年末頃から採用も力を入れだしたので、ここ1年で広報も頑張ろうとしています。
テックブログなんかも最近は力を入れていて、Webフロントのメンバーが中心となって技術紹介などをしています。
開発スタイルがチームごとに違うので、実はいろいろな取り組みをしているんですよね。

VPoE 下司:チームごとに最適な技術を選んでもらうようにしているので、選択の幅は大きいですね。自分がやりたいと思ったことはすぐにやれる環境だと思います。

CTO 金近:手掛けている領域が広いからこそですね。


この記事を書いた人
加来麻衣子
加来 麻衣子
株式会社サーキュレーション flexy事業部 マーケティング
上智大学文学部卒。15歳から4年間はオーストラリアに住んでた帰国子女。旧インテリンジェンスを退社しWebデザイナーに転向した後、2014年から渡米、ハワイ現地法人を設立。ワイキキでお土産物屋さんの運営しながら、ハワイ州進出企業の支援を行っていました。帰国後、サーキュレーションに入社し、現在はflexyのマーケティング担当です。

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