【CTOインタビュー】DMP最大手企業における、少数精鋭エンジニア組織が持つスピード感の源――インティメート・マージャー 白浜隆男さん

CTOインタビュー

約4.7億件のオーディエンスデータを提供しているパブリックDMP(Data Management Platform)最大手企業、株式会社インティメート・マージャー。ビッグデータを用いて、Google、電通、Yahooなど数々の大手企業に対してデータ提供や分析、マーケティングコンサルティングなどを展開しています。現在、国内のWebブラウザデータの9割という膨大な量のデータを取り扱う同社が、スピーディに事業を推進できる秘密は何なのか。また、秒間数十万件にも及ぶデータを処理するエンジニアに求められるスキル、DMP事業におけるやりがいについて、CTOの白浜さんにお伺いしました。

目次

1,500社以上の企業の導入実績を誇る、高精度なデータ分析

御社の事業内容について簡単に教えていただけますか?

白浜隆男さん(以下、白浜):DMP(Data Management Platform)と呼ばれる事業を展開しています。ビッグデータを用いてクライアントが抱えている問題を解決する、というのが主な業務です。現在メインで取り扱っているのはWebブラウザのアクセスログです。基本的には各Webサイトが集めているアクセスログとほぼ同じものですが、閲覧したWebサイトのコンテンツから自然言語処理を用いてキーワードを収集して、ブラウザ利用者の嗜好性を分析。そこからPDCAにつなげていく、という活用が主になります。Google Analyticsとやっていることはあまり変わらないのですが、GAは埋め込んだサイトしか見ることができないのに対して、当社の場合はサードパーティでいくつもサイトを持っているため、直前にどのサイトを見ていたのかということまで解析可能です。どういった経路の人がコンバージョンしやすいのか、しにくいのか、といった部分をより高い精度で分析できます。
導入社数は1,500社以上で分野も多岐にわたりますが、例えば銀行系であれば与信審査のために利用したり、バイオ系の企業なら健康やスポーツに関わりますから、ヘルスデータと関連付けて健康食品関連のECへ誘導するといった活用が一例として挙げられます。

国内パブリックDMP市場で3年連続売上シェア1位を獲得するまでの道のりや、今後の展開についてお聞かせください。

白浜:2013年の創業以来、何か大きなきっかけがあって爆発的に伸びたというわけではありません。当社のタグを貼ってくれるサイトや、twitterやAdobe、Yahooなどデータ提供・連携している企業が徐々に増えていき、塵も積もれば…といった形で成長してきました。
ただ、現在謳っている「約4.7億件のオーディエンスデータを提供する」といった部分に関しては、これ以上数字的に上がることは無いだろうと見ています。国内のブラウザ数は上限が決まっていて、現在はその9割程度をおさえている状況だからです。データは集まりきっているので、今後はその精度を高めていく、またデータ提供の領域を広げていくといった、縦ではなく横に伸ばしていく部分がメインになっていくと思います。

インティメートマージャーCTO

将棋五段、専攻は宇宙物理学。大手企業で技術を磨いたCTO

白浜さんは将棋五段で、全国オール学生将棋選手権で優勝したご経験もあるそうですが、エンジニアをめざしたきっかけは何だったのでしょうか?

白浜:学生時代は将棋一色でしたね。小学3年生のときに祖父から教わったのですが、5年生のときにその祖父が亡くなって。身内を亡くしたのは初めてだったので、子供なりに自分はどうしたらいいのかいろいろ考えたんです。そこで「おじいちゃんから教わった将棋で日本一になろう」と思い至り、寝る時間以外はずっと将棋に打ち込んでいました。そして大学時代に全国大会で優勝をして、目標だった日本一を成し遂げたのです。
そこからエンジニアを目指すきっかけになったのは、大学で専攻していた宇宙物理学の研究のためにソルトレイクに3ヶ月ほど留学したことです。ソルトレイクは研究施設以外周りに何もありません。近くの村が100km先という世界で、全く人と会わないのでとても寂しい。当時はmixiを使って友達とやりとりをしていたのですが、そのときに「人とつながれるだけで人は生きていけるのだ」と強く感じ、インターネットのすごさを改めて認識しました。この経験から、インターネット関係の仕事に就きたいと思ったんです。
その後、新卒でグリーにエンジニアとして入社し、ポータルサイトの製作に携わりました。その後ディー・エヌ・エーに転職し、技術者として新規事業の立ち上げに携わる一方、組織づくりなどマネジメントも経験。1年後に元グリーの社員で現代表の簗島に誘われ、インティメート・マージャーに参入した形です。

エンジニアとしてはどのような言語を扱うことが多いのでしょうか?

白浜:グリーにいた5年間はPHPでした。ディー・エヌ・エーではPerlとGoで、現在は主にPythonです。データ分析やAI関連はPythonを扱う方が多いですし、機能的にもニーズにマッチしているのではないでしょうか。当社においてはある程度データを加工して叩き込み、それらを実際に使うためのAPI提供などに使用しています。 基本の設計は僕が担当していますが、メンバーが少人数ということもあって、お互いにコードレビューしあう部分は多いかもしれません。

秒間数十万件の圧倒的データ量を扱う、少数精鋭のエンジニア組織

御社のエンジニア組織について、概要を簡単に教えてください。

白浜:会社自体は40名規模で、エンジニアは現在4名です。積極採用中で内定者が2名ほどいます。インフラ、フロントエンド、アプリケーションなどに大きく役割が分かれていますが、少数精鋭なのでそれぞれがフォローし合っています。開発には基本的にGitを使用していて、チケット管理ツールなどを用いてアサインしていく流れです。GitHubでプルリクエストを作成後レビュー、CIツールでマージ、テスト、リリース作業…という、よくあるインテグレーションです。
勤務はフレックス制。少人数なのでリモートで働いているメンバーはまだいませんが、希望する人がいれば検討しようと思っています。

日本最大級の規模でデータ活用を行うエンジニアとして、求められるスキルはどのようなものですか?

白浜:Webのログを扱っているので、Webサイトがどう動いているのか、インターネットがどんな仕組みなのかということを熟知しているのは大前提です。基本的に現在のメンバーも前職でWeb系だったエンジニアばかりです。
ビッグデータに関しては、扱ったことのあるデータ規模を絞ってしまうと人材がかなり限られてしまうので、採用においてはあまり意識していません。ただし、当社で扱うデータは膨大なので、秒間数十万件の書き込みリクエストがきたり、1日分のデータ処理が1日で終わらないということが当たり前に起こります。いかに負荷分散・最適化して処理スピードを上げるのかといった工夫ができることは大切ですね。また、書き込みリクエスト100万件をさばきたいという依頼が来たときに、そもそもその桁は現状の構成ではさばききれない、といった判断ができないと厳しい。そうでないと、データを入れただけでサーバーダウンしてしまいますから。

開発者目線で、大量のデータを分析するやりがいはどのような部分なのでしょうか?

白浜:システムとしてはAWSとGCPを併用していますが、データベースの担当者に聞いても、当社ほどピーキーに使用している企業はほかにはなかなか無いそうです。「このくらいのQPS、このくらいのレスポンスタイムを目指したい」という話をすると「そこまで早くは無理じゃないか」と言われることもありますね。ただ、それほど圧倒的に大きなデータ量を扱うということは、やはり他ではなかなか体験できないことです。日本の最先端で仕事をしているというイメージがありますし、その点は大きなやりがいになるのではないでしょうか。

インティメートマージャー社

その日に受けた依頼の方針がその日のうちに決まる、スピード感の秘密

グリー、ディー・エヌ・エーという大手企業での経験を経て、現在40人規模の企業でCTOを務める白浜さんから、これからCTOを目指す方へのキャリアパスのアドバイスがあればお願いします。

白浜:大企業で何かのセクションの技術責任者をやっていた、という立場の方であれば、CTOという職務もさほど違和感なく務めることができると思います。セクションの責任者も経営的な視点が必要ですし、もちろんマネジメントにも精通していなければいけませんから、意外とCTOに近しい動きをしているケースが多いんです。実際、テクニカルリードやボードメンバーなどを立てている企業では、同じようにセクションごとにCTOを立てることもあるという話も聞きます。
僕自身ディー・エヌ・エーではエンジニアリングマネージャーという役職で、その延長線上でCTOになったというイメージが強いですね。現在似たような役職を務めている方は、そのまま能力を伸ばしていけば問題ないのだと思います。
気にするべきなのは、自分が描いたキャリアプランに対して、適切なスピードで向かえているかどうか、ではないでしょうか。そこさえおさえて努力していけば、最終的に目的地には到達できるはずです。

では、CTOとして必要な能力は具体的にどのようなものか、より詳しく伺えますか?

白浜:技術を磨くのは当然として、重要なのは開発関係者との認識齟齬をなくす努力です。特に開発組織というものは他の組織から理解を得ることが難しい部分がありますが、そこを諦めてしまうと改修不能な亀裂が生じかねません。それを回避した上で、アカウンタビリティ(説明責任)を果たすことがCTOに求められるのではと思います。

CTOに必要な能力、要素

・経営者視点
・マネジメント能力
・技術に対する向上心
・関係者との認識齟齬の回避
・アカウンタビリティ(説明責任)

経営視点、マネジメント視点は先程もご説明したような、セクションの技術責任者にも求められるような視点ですね。技術面については僕の場合、前職ではGo、Perl。現職ではPythonという全く別の言語を使いこなしていますが、まとまって何かを勉強するというよりは、ひたすら業務の中で使いながら覚えていく、という側面が強いです。詳しい人に聞くのも近道ですね。やはりエンジニアは止まったら死んでしまうという部分が大きいので、泳ぎ続けることに慣れていく必要があります。

インティメート・マージャーのCTOとして働く中で、白浜さんが面白いと感じる点はどこですか?

白浜:扱っているデータの規模やマルチクラウドができる部分はもちろんですが、代表の簗島と直に話をして物事をどんどん決定できる部分がとりわけ面白いと感じています。先程の認識齟齬をなくすための取り組みの一つとして、毎日30分、簗島と1on1でミーティングをしているのですが、簗島は世界最大級の統計アルゴリズムコンテストで世界3位になるほどの実力の持ち主なので、30分とはいえ会話が非常にハイレベルですし、開発に必要なことをどんどん決めていくことができます。非常に疲れますが、その分楽しい。開発にどんな材料が必要で、どんな結論を出せるのかということにほとんど齟齬がありませんし、エンジニア視点で実現不可能なことがあれば、それも一瞬で理解してもらえるというのもありがたいです。
また、毎日のミーティングというと多く聞こえるかもしれませんが、1日の間でも前の日の夕方に話したことが、次の日の昼頃にはズレはじめている、ということはよくあります。数時間単位でズレていくんです。そこを素早く軌道修正できるというのは、非常にメリットがありますね。それに、クライアントからの依頼を受けて、どんな機能を開発するのか、今後どんな方針でいくのかをその日のうちに話せるというのは、当社がスピード感を持って事業を進められる要因でもあると思います。

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