【CTOインタビュー】新規事業立ち上げのポイントー株式会社コルクCTO萬田氏

新規事業を立ち上げる際は、様々な悩みがあります。

  • まだ誰もやったことがなく正解が見えず絶対成功するという保障もない中、新規事業を始めるには何から始めるのが良いのだろうか。
  • めまぐるしい速さで進化していくWeb業界において新規事業を生み出し続けるタフさを身につけるにはどうしたら良いのだろうか。

今回、リクルートで多くのサービスの立ち上げに携わった経験を持ち、場所を変えた今も常に新しいサービスを考え続けている株式会社コルクCTO萬田氏にそのコツを聞きました。

お話を伺ったCTOの方
萬田大作氏
萬田大作氏
ナビタイムジャパンで経路検索&地図描画エンジンの研究開発、フューチャーアーキテクトでITコンサルタント、リクルートで複数の新規事業開発を担当。ウェブ系と基幹系のエンジニアリングからビジネス開発まで幅広く経験し、2016年からクリエーターエージェンシーのコルクに参画。CTO(最高技術責任者)として、“心に届ける”エンターテイメント作品をテクノロジーで支えている

サービスを作りはじめるのに大事なことは何でしょうか?

サービスを作る前からその事業・サービスについて深く議論できるかが大事です。

だらだらやるのではなく、スピード感を持って数ヶ月でまずは勝ち筋をみつけること。 似たようなサービスは世の中にたくさんありますから、その中で「他社とどう違うのか」ということが明確になっているかが重要です。例えばFacebookに勝てるのか?Googleに勝てるのか?ということです。「Facebookとは違ってこういうところが自分たちの勝ち筋だよね。」ということを事前の準備段階できちんと言語化しておくことです。 わかりやすいのは、リーン・キャンバスを書いてみるのが一番良いと思います。そこで勝ち筋をどう見つけるのか考えてみる。 自分なりの勝ち筋の仮説ができたらいろいろな人に意見をもらうことで見極めていきます。いわゆる“壁打ち”をたくさんしてみることです。その分野で詳しい人に「このサービスってどう思いますか?」ということをたくさん聞くことは事前準備の段階では重要です。 いろいろな人と壁打ちをして、勝ち筋を一言でいったら何?に対して答えられるところまで考え抜くとサービスや機能がシャープになってきます。そこまできて初めて“小さく作ってみる”のです。そしてフィジビリティスタディを行い改善し続けていきます。

事業化された後、ローンチからスケールさせていくまで、どのような流れがあるのでしょうか?

勝ち筋のポイントが見え、自分が思うサービスを小さく作ってみたら、次にユーザーに問うてみるというのが良いと思います。事業化が決定したら、社内も社外もいろんな人を巻き込んだ方が大きいサービスはできると思いますが、関係者を増やしすぎると巻き込んだ人の分だけ意見も聞かなくてはいけなくなってしまい時間がかかることがあります。それよりもユーザーが本当に使うものなのかを考えぬいた方が効率的だと思うので、数ヶ月で開発できるものでローンチしていきます。 ユーザーに使われることがわかったら、次にSEOやSNSなどの集客の問題です。ローンチした後に育てていく、スケールしていく段階ですね。 “そこそこ知っている人は使う”というサービスになってきたら集客の観点が重要になります。最初に勝ち筋が見えていると、ユーザーの使い方に応じて集客をどうすればよいのかわかってきますし、逆にユーザーが決まっていないと集客の観点も変わってきてしまいます。 特にエンジニアは“改善すること”が結構多いので、改善するためにはSEOや集客の観点をエンジニアも知っていると強いです。例えばAIというテクノロジーがあるからAIを入れてみようではなく、集客的に今後これくらい増えそうだからAIをいれようとか、感情の可視化が肝になるサービスだからAIを入れようといった観点でテクノロジーを活用しながらスケールさせていくことができると思います。

新規事業を思いつく時はどんな時でしょうか?

新規事業や新しいサービスについては常に考えています。性格的にそういうことを考えるのが好きだからというのが一番ですね。常にこの業界はどうだろうとかずっと探したり、調べたり、詳しい人に聞きに行ったりしています。 前職のサービスは支援する範囲が「ゆりかごから墓場まで」と言われていたので、日常生活に関わるありとあらゆるサービスを洗い出しては、週に一度チームで議論していました。コンテストを内部でやるなどして、常に新しいアイデアを出す環境も作っていました。 現在は作家のサポートをIT化するという新しいサービスを展開している株式会社コルクでCTOを務めていますが、どちらかと言えばIT化が遅れている出版業界でITによる新サービスに挑戦しています。 今考えているのはAIを活用したサービスです。今までは勘に頼っていた部分をIT化にすることによって作家毎のSNSの反響や、物販のLTV、購入母数と売上の関係を可視化し具体的な改善策に繋げていくなど、出版後の手助けがメインですが、AIを活用することによって出版前の作品作りの段階での手助けをできないかと考えています。まだ現実的ではなく冒頭でお話したいわゆる“準備期間”になりますね。勝ち筋を探しているところです。 今までIT化されていなかったものをIT化するということは無限にアイデアがでてくるので常に考えている感じです。ずっと新規事業の仕込みが続いている状態ですね。

最後に、読者のみなさん伝えたいことはありますでしょうか?

いろいろお話してきましたが、根底として立ち上げたいと思っている事業やサービスに”想い”を持っているということはとても大事です。コルクへの参画のきっかけも、私自身本が好きだから、出版業界が苦境に立たされている中、本の文化がなくなるのは寂しい、ITを使って才能ある作家を発掘し、より作家を増やすことができたら良いなという想いがあったからです。 他のプロジェクトを思い返してみても強い想いを持っている人が多いプロジェクトの方がうまくいきました。 新規事業を立ち上げたいと思った時、1年や3年で結果がでるということはあまりないので、5年給料上がらなくてもやりたいか?それを一生やりたいと思えるのか?そういう想いでやれるのかというのは結構重要です。 今まで新規事業は圧倒的に失敗した数の方が多いです。新規事業はお金がとてもかかるものなので本当に勝ち筋はないのか?ということを死に物狂いで探しましたし、最終的に失敗だったときも最後まであがきました。 勝ち筋がもうこれ以上でないところまでできるか?辞めざるを得ないというところまでやりきれるのかという想いを持ってのぞむことも必要です。

「まずは事業への想い、次に小さく始めて改善を続ける」これが新規事業を動かす際のポイントです。

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